神社のある風景

山里の神社を中心に、歴史や建築等からの観点ではなく、風景という視点で巡ります。

六所神社

2008年09月28日 | 京都府
京都府相楽郡南山城村野殿


地図を見ていると、こんな山奥に集落があるのか、と驚くことがある。
鉄道駅からの距離、幹線道路からの距離、そこに至るまでの道路事情、地形などなど、山奥と感じさせる要素はいろいろあるけれど、標高もその一つであろう。
京都府唯一の村である南山城村にある野殿集落の標高は約500m。これが中部山岳地帯なら何でもない高さだが、京都府南部となると、かなりの意外性がある。
周辺の山々の標高は500~600m台。ほぼ山頂に村があるようなものなのだ。
事実、どの方面から入るにしても、長い坂道を上らねばならないし、幹線道路である木津川沿いの国道を走ってみても、そこから見える斜面の上に、集落が存在するとはとても思えない、まさに隠れ里のような場所である。
そんな場所にあって、気になる集落の野殿であるが、そこに六所神社という茅葺の社殿を持つ神社があるというのだから、私としては行ってみるのが当然の成行きで・・・。



狭く九十九折の道を野殿に向かって走る。峠を越えれば、地形が変わり、伸びやかな風景となる。
標高が高いのだから、当然のことながら周りの山々は丘のように低い。何となく「山奥」というイメージのせいか、その広く明るい風景が予想外に感じられる。
集落手前で夜明けを待つ。


清々しい目覚めを邪魔してしまったか、背後の民家で犬が吠え立てる。気になりつつも、心は目の前の参道に奪われる。


勧請縄がある。何を模ったものだろうか、魚らしきもの、箒らしきものなどがあって興味深い。


鳥居手前に杉の大木がある。
残念ながら、大木といえるほどのものはこの一本のみ。


整然と、よく清められた参道だ。


徐々に社殿へと近づいていく。
が、実は光の状態が良くなるのを待って、何度も往復していたりする。


事前に調べて、参道は杉林で暗いこと、社殿のある境内は砂地で明るそうなことは判っていた。太陽が出てからだとコントラストが強くなりそうなので、ここを撮るなら早朝と決めていた。
参道を行ったり来たりして、何回往復したか判らなくなる頃、この光線状態に出会う。ほぼ予想通りで理想的な光。お気に入りの一枚が撮れた。


早朝が終わり、朝の訪れである。


本殿に見える建物は、覆屋のようなもので、中には朱塗りの小さな社殿が六つある。
拝殿もそうだが、どちらの茅葺も葺き替えてからそんなに月日は経っていないようだ。


社殿の横から背後の森へと小道が続いている。さして深い森ではないが、小さな流れもあって鳥が囀っていた。


2万5千分1地形図 島ヶ原
撮影日時 080731 5時~6時40分

駐車場 なし 神社への分岐点辺りにある公民館前に駐車可
地図
 

彼岸花

2008年09月26日 | その他

京都府亀岡市曽我部町周辺


この季節、田の畦を彩る彼岸花には、何かしら郷愁のようなものを感じる。
夏眠性の植物で、花期には花だけしかないこと、そして激しすぎるくらいの赤色が、幼心にも焼きつくような印象を与えたからだろうか。

冬には青々とした葉を茂らせているけれど、それが彼岸花であることを言い当てられる人は少ない。
だが、種子も作らず、有毒でありながら、これほど各地に広まり親しまれている花も少ないであろう。

毎年、彼岸花を本格的に撮りに行きたいなぁ、と思いつつ、それは叶わないでいる。
どこか目的地へ行く道中、彼岸花が綺麗に咲いていれば、という「ついで」になってしまうのだ。
今回も神社に行った帰り道。
本当は、水辺や樹林下の群生や、雨の日などを狙ってみたいけれど、なかなかいい場所は見つからない。
彼岸花が群生するような神社があれば、ぜひ見てみたいのだけど・・・。
結局、国道沿いの田圃での撮影で、ありがちな写真かも知れないけれど、季節のものということで。


























撮影日時 080924 11時半~12時半
 


兵主神社

2008年09月24日 | 兵庫県

兵庫県丹波市春日町黒井


恐らく、旧春日町で最も大きい神社であろう。町の中心近くにあって、神社の隣には高校もある。
どうも私が敬遠したくなる要素が多そうで、訪れるには躊躇いがあったのだが、昨年、友人とドライブをしている時に近くを通りかかったので立ち寄った。
確かに大きい。けれど、それは豊かな空間というべきものであった。
参道は明るすぎる。しかしそれも、思いの外の深さで広がる杜と、明暗の対比を際立たせる演出効果となる。
今回、写真を撮り直すために再び訪れた。
私は撮影の際、薄曇の天気を好むが、ここは何となく爽やかな印象があったので、そう写るような天気を選んでみた。



町の中心に近いといっても、やや民家が多いくらいで長閑な場所。
鳥居脇の狛犬は大きいものだが、かなり傷んでいる。


長い参道をのんびり歩くと、やがて二の鳥居。まずはその扁額の大きさに驚かされる。


大きいだけでなく、力強さを感じさせる。


参道のすぐ隣は氷上高校の通学路で、校舎もそばに見えている。学校の隣にこんな神社があるのは羨ましいなぁ、と思いつつも、高校生だったときの自分が、学校の隣に神社があったからといって喜ぶかどうかは微妙なところである。
でも、恵まれた環境であるのは間違いない。


広い境内ではあっても、背後の杜が豊かなので落ち着きがある。
爽やかな印象、と前に述べたが、それは、この清潔に保たれた空間からくるものかも知れない。


拝殿の彫刻は、なかなか凝っている。


拝殿前から鳥居方向を振り返る。


幣殿と本殿。電線が・・・。


重厚感のある本殿だ。


本殿背後から。


本殿右手より。


本殿背後は鬱蒼たる杜であるが、ここはどうも撮影が難しい。
この奥には磐座と思しき大きな露岩がある。


本殿左手奥にも小道があって、岩に龍神と刻まれた場所がある。
杜の、深い息遣いが聞こえてきそうな場所だ。


入り口近くにある境内社。
竹と落葉樹が涼しげな木陰を作る。


2万5千分1地形図 黒井
撮影日時 080831 9時50分~11時

駐車場 神社前駐車可
地図
 


桑の木の滝

2008年09月21日 | 滝・渓谷

和歌山県新宮市相賀


桑の木の滝は、「日本の滝100選」に選ばれている滝である。
熊野川の支流である高田川の、そのまた支流の桑の木谷に懸かっている。
紀伊半島は全国的にみても滝の多い地域で、地形図を見れば、凄絶とも言えるような険しい谷が随所に見られ、その深い山々に無数の滝が内包されている。
しかも落差100mを超える巨瀑、技術のある登山者のみが見られる秘瀑、知名度の高い名瀑と、それぞれ枚挙に暇が無いほどであるから、100選の選定は難しい地域であったと思われる。
そんな中で、落差20mほどの桑の木の滝も選ばれたのは、やはりその優美な姿からであろう。
幅広の整った形と、繊細な水の表情が魅力的で、とても好きな滝である。

100選に選ばれるくらいであるから、ネット上に画像は溢れている。その中には、素晴らしい表情の桑の木の滝を捉えた写真も多いので、ここに今さら掲載するのもどうかと思うが、滝のみでなく、周辺も含めて紹介すれば、それなりに面白いのではなかろうか。
滝の紹介サイトは、恐らく神社紹介サイトより多いと思うのだけど、その殆どが滝のみの紹介である。神社でいえば、本殿のみを紹介されている気分なのだ。
私としては、滝以外の流れも見たいし、周辺の風景も見たい。そうやって、トータルで周辺を見ていくと、滝の魅力は更に高まると思うのだが。



桑の木谷に入るには、まず高田川の橋を渡る。
上流には集落もあるが、美しい流れだ。


桑の木谷に入ると、辺りは一気に苔生して様相が一変する。


根元だけでなく、幹の中ほどにも苔を纏った木々が多く、さすがは温暖多雨な南紀だと感心させられる。


地形図を見ても判るように、桑の木谷はこの辺りでは珍しく穏やかな地形だ。
こういう木々の間を縫うような穏やかな流れは、私には、滝と並ぶくらい魅力的に映る。
流れの右手にある丸い草の塊、実は苔や羊歯が岩を覆っているものである。こんなのが幾つもあって、南紀は凄いなぁ、と再び感心してしまう。


ちょっと辺りの雰囲気が変わって石垣が現れる。


谷沿いにある相賀八幡神社の石垣である。
流れのそば、岩壁の立つ境内、狭いながらも素敵な環境で、本来ならここをメインに紹介すべきかも知れないが、岩壁からの落石により、本殿は木端微塵の状態である。
昨年の早春に訪れた時にも同じ状態であったし、立ち入り禁止のままであるから、落石の危険は去っていないのだろう。


それなりに訪れる人は多いのだが、ずっと苔生した道が続く。


やがて小さな吊橋が現れる。


思いの外よく揺れる。


少しだけ道が険しくなると、すぐ桑の木の滝に到着。


滝前に立ち籠める水煙に光が射す。
滝の左手前に咲く小さな花はイワタバコで、夏の渓谷を代表するような花だ。


水の描くラインは、優美で品のあるもの。


下部は左右非対称で、表情に変化を与える。


イワタバコ。
花期はやや過ぎていて、萎れたものが多く、色もちょっと薄くなっていた。本来はもう少し濃い紫色。
星型の花で夏の渓谷を彩る姿は印象深い。

さて、来た道を戻り、高田川沿いに少し上流に行くことにする。


高田トンネルを抜けた先の高田川。飛び込みたくなるような場所だ。
流れの右手の木々は、神社の杜である。


そしてこちらがその神社。高倉神社というらしい。


本殿。
素人目には貴重さが判らないが、周りの樹叢は新宮市の天然記念物。
また、ヒメボタルの多い場所らしい。
以前、ここから近い南紀勝浦でヒメボタルを見たことがあるが、ゲンジボタルを幻想的とするなら、ヒメボタルは神秘的、という印象を持った。


2万5千分1地形図 新宮
撮影日時 080910 9時40分~12時10分

駐車場 なし 高田川を渡る橋の近くに、少し道路が広くなっている場所がある。
地図
 


大野神社

2008年09月19日 | 滋賀県

滋賀県栗東市荒張


ここは、私がよく行くような神社とは趣が異なる。
長い参道も無ければ、杜と言えるほどの木々もなく、明るく開放的な境内の神社である。
とは言え、周りは静かな環境であり、あまり知られていないと思えるのに社殿は見事で、さすが滋賀県といった印象を受けた。
社殿を堪能するには申し分ないのだけど、やはり私は木々に囲まれた空間を欲する。
もう少し、じっくり見て周ればいいのに、と思いつつも、早々に退散してしまった。



狭い道路に面して鳥居。
広く明るく、きっちり手入れされている様子がよく判る。


国指定重要文化財の楼門。


美しいのだけど、左手の開けた空間のせいか、ややちぐはぐな印象を受けた。


楼門越しに拝殿。これも立派なものだ。


本殿を囲う瑞垣も立派で、地形図に名前も載らないような神社とは思えない。


こういった形態の神社は、通常、拝所から本殿を窺うことになるのだが、ここは自由に瑞垣の中に出入り出来る。


とても整った佇まいの本殿だ。


殆どの社殿が檜皮葺であるが、杮葺のものも見られる。
屋根に手の届く高さの境内社なので、間近で見られるのがありがたい。


こちらは檜皮葺。
どちらも繊細に光と影を描き出し、その表情は優美である。屋根というのは大事だなと改めて思う。


2万5千分1地形図 三雲
撮影日時 080828 11時10分~11時半

駐車場 あり
地図

 


朱智神社

2008年09月17日 | 京都府

京都府京田辺市天王高ケ峯


京都府京田辺市の西部、あと僅かで大阪の枚方市というところにある。と書けば、イメージとしては宅地開発の進んだ地域を思い浮かべてしまいそうだが、実際は山中にある神社で、公共交通機関で訪れるには不便な地域である。
周辺の山は、せいぜい300メートルほど。決して山深いというわけではないけれど、京阪間とは思えぬ長閑な集落が斜面に展開し、その集落の更に上に神社がある。
山頂に近い斜面にある神社としては、ちょっと意外なほど奥行きがあり、境内にはモミジの木も多く潤いの感じられる空間となっている。
境内のみならず、社殿も美しいもので、南山城を代表する神社の一つであろう。



集落内の道は狭く、上りもきつい。
民家が尽きて、日当たりの良い坂道が木陰に覆われ出すと、この鳥居が現れる。


左の一の鳥居から直角に曲がってすぐに二の鳥居。


二の鳥居から石段の上を見上げると、紅葉しているわけでもないのに、「燃えるよう」と表現したくなるようなモミジの緑が見える。


石段を上りきると広い空間に出る。モミジの葉を透かして更に高みには社殿。


左手には何やら苔生した空間。礎石のようなものも見える。


本殿のある高みまで上って振り返る。
木陰から見る陽だまりの空間というものは、雑念を払う効果でもあるのか、暫し無心になって見入ってしまう。


本殿周辺は明るい空間だが、拝所は落ち着いた佇まい。


本殿のほうは極めて華やかな彩色。
事前にネットで見た画像では、もっと落ち着いた色合いだったから、最近になって塗り替えられたのであろう。


本殿左右には末社が並ぶ。


2万5千分1地形図 枚方
撮影日時 080731 13時~13時50分

駐車場 なし  軽自動車なら神社前まで乗り入れ可能と思う。普通車は、麓の道路の広いところに停めてかなり歩くことになる。
地図

 


玉置神社

2008年09月14日 | 奈良県

奈良県吉野郡十津川村玉置川


京都に生まれ育った私は、中学生の頃から山歩きに興味を持つようになった。もともと野生の植物が好きだったし、滝や渓谷に惹かれていたから、ある程度の体力と判断力を持ち合わせる年齢になれば、自らの足で山を目指すのは必然といえた。
京都には千メートルを超える山は無く、滝も少ない。「山高きがゆえに貴からず、樹あるを以って貴しと為す」、という言葉を中学の時に知って、なるほど、と思いはしたものの、「近畿の屋根」と言われ、無数の滝を有する大峰山脈や台高山脈には憧憬を抱いていた。
それでも、「樹あるを以って貴しと為す」の部分は絶対的で、岩と雪の三千メートル級の山には全く興味を抱かなかった。
私は山に挑む気はさらさらなく、対立や挑戦といった言葉とは逆の、「融合」というべき山歩きに憧れた。
その憧れの大峰山脈には行く機会の無いまま大人になり、そして山歩きからも離れてしまったけれど、その存在は今でも大きく、ネット上で写真を見ることも多い。
しかも、大峰山脈の南端に近い玉置山には、熊野奥宮と言われる玉置神社がある。行かねば、と思っていた。
初めて訪れたのは昨年の四月。寒い日で境内は薄っすらと雪化粧しており、それはそれで美しかったのだが、私はもっと緑濃い季節に再訪したいと思った。
そしてつい先日、深い緑に覆われた玉置を見ることが出来た。
実はこのブログで紹介する神社が、これでちょうど100社め、ということで、この憧れの場所を紹介しようと思う。



十津川沿いの道は、何度走っても長く感じる。深い谷間の屈曲した道。行けども行けども山また山という感じだ。
途中から川沿いを離れ、玉置山への道に入る。こちらもカーブの連続だが、標高約1000メートルの駐車場まで車で行けるのだから有難い。駐車場は広く、数十台が駐車可能。
まだ暗い時間帯に到着したので、駐車場横の鳥居が薄っすら浮かび上がるのを待つ。


参道は、最初のうちは林道のような雰囲気。
ありがたいことに夜明けとともに霧が出てきた。霧の玉置山を見たいと思っていたのだ。


この辺りの木々は細いけれど、それでも山深さを感じさせる。


神社職員用駐車スペースを過ぎると、だんだん参道らしくなってくる。


ここで道は二手に分かれる。右が正規の参道と思われるので、往路は右の道を、帰路は左の道から戻ってくることにする。


徐々に神域の気配が深まってくる。


木々が細く見えるが、決して細くはなく、背が高いのでそう見えるのである。


やがて、かなりの太さの木も現れだす。


杉が主体ではあるが、所々にある広葉樹も美しい。


俄かに大木が増えだすと高みに社殿が見えてくる。
見えているのは恐らく大日社。左奥の注連縄の巻かれた木が、樹齢三千年と言われる「神代杉」。これは後でゆっくり撮影しようと思って先へ進んだのだが、それが失敗で、暫くすると霧が晴れてしまい、幻想的な雰囲気が減ってしまうことになる。


本殿へ向かう鳥居が見えてきたところで、右手に降りる小道がある。その先にある「大杉」は、神代杉や常立杉、磐余杉など名付けられた周りの他の巨杉に比べ、随分とありふれた名称である。
が、その大きさはありふれたものではなく、名実ともに「大杉」であり、奈良県下最大の杉となっている。
写真ではその大きさを測りにくいだろうが、参考までに言うと、根元に巻かれた注連縄の左側、つまり低い方が、成人男性の身長くらいの高さである。


その森厳さに息を呑む。
厳しくも美しい表情の木々。


画角を変えただけだがお気に入りなので・・・。


元の道に戻り、本殿へ向かう。


本殿前の鳥居横から社務所を見る。かなり大きな建物で、仏教的な雰囲気が色濃く出ている。


朝陽を浴びる本殿。


本殿横の神武社(手前)と若宮社。


社務所の横を通り、左から先ほど分岐した道が合流してくる。その先にある三柱社。


小さな水神社の横を通り、玉置山山頂へと至る道の途中にある玉石社へ向かう。
この辺りも立派な杉が林立する。


山道と言っていい登りの先に玉石社。
ここから山頂までは僅かなので、気力のある人は登ってみるのもいいと思う。晴れていれば熊野灘まで見渡せる。ただし、距離は短いがキツイ登りではある。


今回は山頂へは行かず、もと来た道を戻る。
往きに通った水神社の前を通るときに、ちょうど朝陽が射し込んで来た。


本殿周辺の、大きな木を見て周る。


緩やかに訪れていた朝が、一気に勢いを増す。森が目覚めて、俄かに賑わいだしたかのような気配に充ちる。


至福の時だ。


玉置神社を代表する神代杉。
もはや杉であるかも定かでないような樹形をなしている。三千年の時とは、人が描く概念や想像すらも隔たりのある時の流れであろう。


ちょっと見ただけでは、枯れているのか生きているのかさえ判らない。
幹の途中からは、芽吹いて成長した他の木が何本も生えている。恐らくは、そういった木々は切ってしまった方が神代杉にとってはいいのだろうとは思う。けれど、三千年生きるとは、こういうことなのだとも思う。自然のまま、あるべき姿のまま、神代杉は立っている。


さて、三柱社の手前まで戻り、往きには通らなかった道で帰ることにする。
山蔭になっているので、まだ早朝の気配。
左手にあるのは白山社。


やはり杉林は見事だ。右下に、往きに通った道の幟が見えている。


間もなく分岐点に到着。深い森ともお別れである。


社殿周辺よりだいぶ遅れて、この辺りにも朝陽が射し込んで来た。


駐車場に到着。
雲が眼下にあって、駐車場の時点で下界とは違うのだという気がする。
この広い山域自体が、聖地であり神域であるのだろう。


2万5千分1地形図 十津川温泉
撮影日時 080910 5時20分~8時10分

駐車場 あり
地図

 


佐々伎神社

2008年09月11日 | 兵庫県
兵庫県豊岡市但東町佐々木


神社のある場所を地形で大まかに分けると、「山頂、尾根上」、「山腹」、「山裾」、「谷間」、「平地」の五つになると思う。中には中間的なものや例外もあるけれど、この括りで言えば谷間にある神社に最も惹かれる。
この佐々伎神社は山頂型である。山頂といっても小さな尾根上のピークであり、車道からの高低差も30メートルほどの小山なのだが、どうも私はこの山頂型が苦手なのである。
山頂だから、当然のことながら周囲より高いわけで、山頂周りの木々の背後は空中であるわけだから、奥深く樹林が続くなんてことは有り得ないわけで、しかも基本的には日当たりが良いから、写真を撮る上で、奥行き、陰影ともに表現し難いのである。
勿論、登りがシンドイという理由もないわけではないけれど・・・。
案の定、撮影は難しかったが、山頂型としては、樹叢は豊かな神社だと思う。



集落の端っこ、集会所の横に神社の入り口がある。


参道途中、左側に「なんじゃもんじゃの木」というのがある。「なんじゃもんじゃの木」というのは、その地方ではあまり見かけない木に付けられる俗称のようなもので、同じように呼ばれている木が各地にある。近江の沙沙貴神社にもあるのが面白い。近江のものは正確にはヒトツバタゴという木であるが、ここ、但馬の佐々伎神社のものはカゴノキである。


石段横に立ち並ぶ杉は、なかなか立派なもの。


振り返ると、鳥居周りの空間が緑と木漏れ日に包まれていた。光と影が、対立せずに溶け合うかのよう。


どういうわけか、よく観光地で見かけるような、顔を出して記念撮影する平安装束の人型看板がある。目障りだったので石灯篭の背後に隠れてもらうが、隠し切れず。
本殿は側面がブルーシートで保護されており、これはちょっとあまりにも目障りだったので割愛。風雪や雨から本殿を守るためであるのは判るけれど、ブルーシートは・・・。


2万5千分1地形図 出石
撮影日時 080717 11時20分~11時40分

駐車場 なし  集落の入り口近くで道路がかなり広くなっている。
地図 

 

仲山神社

2008年09月07日 | 三重県

三重県津市美杉町下之川


津市といっても、かつての美杉村で山深いところだ。
八手俣川という何か曰くありげな名前の川が、蛇行して小さな平地を形成するところに下之川の集落がある。
700メートル級の山々に囲まれた場所であるが、集落の周辺はなだらかな斜面が多いせいか、思いのほか明るく伸びやかだ。
そんな伸びやかな南東向き斜面の高台、村を見守る好適地といえる場所に仲山神社がある。
集落の規模に比して立派な神社であり、また、伊賀や大和の影響を受けているのか、三重に多い神明造ではなく、流造に華美な彩色を施したものとなっている。本殿彫刻は津市指定文化財であり・・・・・・いや、ここの見所は、個性的な狛犬かも知れない。



水田を見渡せる山裾にある鳥居。
ここの狛犬は、まあ普通のタイプである。


木々に覆われた参道。そしてその両脇にある狛犬は・・・


なんとブサ───


───いや、なんとユーモラスでマンガチックな狛犬だろう。つい微笑まずにはいられない。


石段を上りきると、木々に囲まれた広い空間。
不安定な天気で、日が射したかと思うと───


雨が落ちてきたりする。


本殿は瑞垣に囲まれていて見えにくいので、隙間から撮らせていただく。左右の摂社と真ん中奥に本殿。
見ての通り、非常に鮮やかな彩色であるが、派手、というより華やかという表現を使いたい。賑わいと軽やかさをも感じさせる絶妙な色合いと配色だと思う。


明るい境内だが、周りには何本かの大木が聳えている。
鳥居は境内社のもの。


2万5千分1地形図 伊勢奥津
撮影日時 080813 13時~13時50分

駐車場 あり
地図

  


吉野山口神社

2008年09月05日 | 奈良県

奈良県吉野郡吉野町山口



奈良県には山口神社が多い。その殆どが大山祇命を祀っているけれど、山口神社の場合、単純に大山祇命=山の神様という位置付けでなく、皇室の造営用材を伐り出す山の神、であるらしい。
なるほど、それで奈良に多いのか、と私などは安易に納得してしまうのだが、ならば京都では見た覚えが無いのは何でだろう? なんて疑問も出てきたりする。
とまあ、こんなことを書くのは私らしくないし、誤りだらけになっても困るのでこれくらいにするとして、神社そのものは集落内にあって、かつてそのような御料林が近くにあった様子は窺えない。
ただ、目の前に民家があるわりには参道は深い。神社の横を通る狭い道は伊勢街道であり、昔は参拝者も多かったのかも知れないが、今は集落の外れに新道が通っているので、車も人もあまり通らず、静かに佇んでいる。



正直なところ、明るく開けた神社を予想していたので、この参道が見えたときには少し胸が高鳴った。



ここを訪れたのは二度。どちらも夏の盛りのことだったので、この緑濃い参道に入るとホッとする。



時おり遠雷の鳴る曇天と鬱蒼とした木々のせいか、石灯籠に明かりが灯っている。
拝殿は、ちょっと変わった形状のもの。





拝殿前の狛犬は、狸っぽい顔つきで愛嬌がある。



同じ境内にある高鉾神社。



こんな風に、本殿の真ん前に灯篭が立っているのは初めて見た。
山口神社も式内社であるが、この高鉾神社も、かつて竜門岳山頂にあったものを遷座した式内社である。



こちらは吉野山口神社の本殿。



規模はあまり変わらないが、こちらの方が造りが凝っているようである。



本殿を横から見る。彩色が美しい。




2万5千分1地形図 新子
撮影日時 080813 15時40分~16時20分


駐車場 なし 神社西側に公民館駐車場あり
地図