神社のある風景

山里の神社を中心に、歴史や建築等からの観点ではなく、風景という視点で巡ります。

前川神社

2008年06月30日 | 福井県

福井県三方上中郡若狭町南前川

若狭地方の神社を巡ろうと地形図を眺めていたとき、最も気になったのが、以前に紹介した廣嶺神社と、この前川神社だった。
どちらも参道が長そうで、東に向かって進むという共通点があり、私が写真を撮る上で好む条件でもある。
この前川神社、地形図に名称が記載されているものの、ネットで調べてみても情報が少なく、神社そのものよりも佐久間勉という人物の記事に行き当たる。
明治の頃、海軍の潜水艇沈没事故によって殉死した人物らしく、その彼がこの前川神社の神官の次男であったことによるもので、神社敷地には佐久間記念館なるものも建てられている。
というわけで、彼の記事はネット上で幾つも見つかるのだが、神社の風景については皆無に近い。とても素敵な場所だと思うし、隠れた神社というわけでもないのに、どなたも紹介されていないのが不思議である。



国道沿いのコンビニの裏手に入り口があって、辺りの雰囲気は落ち着いた風情からは程遠いのだが、鳥居の先を見れば、深く、豊かな空気に満ちているであろう期待が膨らむ。


緩いカーブを曲がると、大きな杉と、涼しげな竹の緑に覆われた一直線の道になる。
奥へ、高みへといざなわれる見事な小道だ。


左手には佐久間記念館。奥に見えている鳥居の手前には神主さんのお宅があるが、落ち着きは揺るぎない。右にあるポストは神主さん宅のものだ。


階段の上から振り返る。
ああ、いいなぁ・・・と、心の底から寛いだ気分になる。


境内は明るいが、苔生した潤いある環境。


正面の階段だけでなく、左右の石段からも本殿へ行ける。
左の石段から。


本殿左から。


本殿右から。
背後の杜は緑濃く、地面は苔生している。あまり大きくは無い本殿で装飾も華美ではないが、環境に溶け込んで美しい佇まい。


本殿背後。
杉を基調とした杜ではあるが、なかなかに表情豊かで奥深い。


2万5千分1地形図 三方
撮影日時 080618 11時20分~12時半

駐車場 あり
地図


松尾神社

2008年06月28日 | 京都府
京都府亀岡市西別院町犬甘野

たまには神社にも行かず、のんびりとドライブをしようと亀岡方面へ車を走らせた。神社巡りはのんびりしているようでいて、写真を撮ったり地図と睨めっこしたり駐車場所を探したりと、案外と忙しないものなのである。
気の向くままに走った帰り道、やはり神社に寄りたくなった。幸いカメラは車に積んでいる。ただ、地図は持ってきていない。適当に山中の道を走り、歩いていたお婆さんに、「この辺に神社はありませんか」と尋ねた。ストレートでありながらも曖昧な質問に、お婆さんは、この松尾神社を教えてくれたのである。
丁寧に道順やお祭りのことを教えて下さったお婆さんに感謝、である。



さして期待せずに神社前まで来たのだが、鳥居のずっと奥まで続く参道に驚いた。


参道というより山道に近い感じだが、杉林の中、気持ちよい小道が200メートルほども続く。
これは入り口方向に向かって撮ったもの。


二の鳥居。拝殿の向こうには三の鳥居も見えている。


三の鳥居手前で右手に小道が分かれ、磐座へと続いている。


三の鳥居。落ちてしまったのか、扁額が右の柱に立て掛けられてある。


四の鳥居と本殿覆屋。三の鳥居と四の鳥居の間は、短い距離だが苔生して鬱蒼としている。右手には小さな流れ。


本殿覆屋とやや丸っこい狛犬。覆屋の中にはアライグマ捕獲用の罠が仕掛けてあった。

お婆さんから教えて頂いた御田祭りと呼ばれるお祭りは割と有名なようで、新聞社も取材に来たという。帰宅後、調べてみると、京都府の無形民俗文化財とのことであった。
お祭りの日はともかく、普段は静かな神社で、家から40分ほどで行けるお気に入りの場所である。


2万5千分1地形図 法貴
撮影日時 070719 11時10分~12時

駐車場 なし 神社前の道路に駐車できないこともないが、邪魔にならないよう。少し離れた広い場所に停めた方が無難。
地図

八柱神社 その2

2008年06月25日 | 再訪

兵庫県篠山市初田

ここは以前に紹介した神社である。
ホームページなどの場合、写真の差し替え、といった形で済ますところだし、ブログでも、過去の記事をトップに持ってきて写真を差し替えることは出来るのだけど、過去の記事は過去の記事として残しておきたいので(消してしまいたいものもあるが・・・)、こういった形を取らせて頂くことにした。
過去の記事でも書いているけれど、とても好きな神社の一つである。
四季の変化が乏しい神社ではあるし、あまり代わり映えのしない写真かも知れないが、今後も時々、こういった風に過去の神社を再掲載したいと思っている。



林道から参道に入ったところ。
初めて、ここからの景色を見たときの高揚感は忘れられない。
左手には摂末社。林道の少し先にも摂末社がある。


この深い緑の空間は、なかなか得難いものだと思う。
大きな自然石を使った石灯籠は、上部が落ちてしまっている。


写真では判らないが、本殿には2対の狛犬がいる。


苔生した境内に、苔生した狛犬。


相変わらず虫が多いのには閉口させられるが、それでもやっぱり長居してしまった。


2万5千分1地形図 篠山
撮影日時 080615 10時10分~11時10分

駐車場 なし 軽自動車なら参道に乗り入れ可。普通車は、集落外れの広い場所に駐車した方が無難。
地図
 


日雲神社

2008年06月23日 | 滋賀県

滋賀県甲賀市信楽町牧

信楽といえばタヌキの町である。
町を貫く国道を走っていれば、そこかしこにタヌキの焼物を並べた店がある。
そういえば幼い頃、父の運転で信楽にドライブに来た際、タヌキの焼物を買ったような記憶があるのだが、あれはどうなっただろう? なんてことを考えながら運転していると、いつの間にか右折すべき場所を通り過ぎてしまい、Uターンする羽目になった。

例によって、下調べもせずに来ているので、日雲神社は大きな神社、という勝手な思い込みがあったのだが、鳥居前は静かな住宅地で、タヌキの町の賑わいは感じられない。普段の神社巡りと同じく、鳥居をくぐってから出るまで、誰にも出会わない参拝だった。



地図で想像していたよりも長い参道。
朝陽が差し込み、拝殿までの道のりを白い帯で描く。


両脇の杉木立は細いもので、鬱蒼としているわけではないが、なかなか気持ちの良い道だ。


境内に入る手前に車止めがあるのだが、何かヘンな感じが・・・


信楽高原鉄道のレールが、参道を横切っているのだった。
遮断機や警報機が無いのはともかく、「注意」や「止まれ」の看板さえないから違和感があったのだろう。


拝殿は典雅な趣。


拝殿内部。


拝殿横から本殿方向。
本殿は撮りにくい位置にあり、しかも逆光だったのでまともに撮れず。
それにしても、この狛犬は・・・


ちょっと怖い。
口の中まで妙にリアルで、老獪な表情。


こちらには角がある。
正面からだとそうでもないが、横から見ると、かなり怖い表情であった。


2万5千分1地形図 信楽
撮影日時 080508 9時~9時半

駐車場 あり
地図



大馬神社

2008年06月20日 | 三重県

三重県熊野市井戸町

熊野國総鎮守とあるが、あまり神社関連サイトでの記述を見かけない。
どちらかといえば、巨樹関連サイトでよく取り上げられる神社で、私自身、その自然環境に惹かれたクチである。
明るく雄大な熊野灘から4kmほどの山中、滝と巨木が創り上げる環境は、海や市街地から近いとは思えないほどの自然の息吹で満ち、自然崇拝が盛んであった熊野の面影を見る思いがする。



車が擦れ違えないほどの狭い谷間の道を抜けると、ぱっと周りが開けて一の鳥居。
背後にはニョキニョキと杉の大木が聳える。


橋を渡って社務所の前を直角に曲がると二の鳥居。
周りの木々が太いので、鳥居が小さく見える。


参道途中、右手に小道が分かれる。少し進むと谷に出て禊場がある。


立派な拝殿。背後には神明造の本殿がある。


朝の淡い光を浴びる境内社。こちらも神明造だ。


本殿右手にある境内社。右にある木が、大きすぎて壁のようだ。


参道途中からも、ちらっとだけ見えるのだが、境内右手の小道を辿ると、この「大馬の清滝」の前に出られる。二段で30メートルほどだろうか。


熊野灘から昇った朝陽が、やっと境内にも差し込んできた。
光線状態が良くなったので、参道は帰り道で紹介。


「杜」というより「森」の雰囲気。


深い緑が、朝の空気に染まる瞬間の美しさは言葉に尽くし難い。


本来、信仰とは教えられるものではなく、自ずと生じてくるものだと思うことがある。
こういう森や、神々しい自然景観に接したとき、出てくるのは言葉ではなく、ただ感嘆の声を漏らすのみ。


大馬神社に狛犬は無い。
4キロ離れた海岸にある、この獅子岩が、大馬神社の狛犬だという。


2万5千分1地形図 木本
撮影日時 080522 4時50分~6時20分

駐車場 あり
地図



海神社

2008年06月19日 | 奈良県

奈良県宇陀市室生区大野

以前にも書いたことがあるが、私は三重県の名張市に住んでいたことがあって、当時、大阪方面への通勤電車の窓から、この神社の鳥居を何度となく見てきた。
他の地方の人からすると、三重県から大阪へ通勤? と訝しく思われるかも知れないが、名張市は奈良県に接しているし、大阪のベッドタウンとしての性格も持っていて、室生辺りの山中を、10両編成の通勤電車が走っていたりする。
当時、神社に特別の関心は無かったけれど、車窓を流れる景色の中に鳥居が見えると、つい目を奪われた。
そこにはやはり、立ち寄ってみたいという感覚もあったのだろう、神社巡りをするようになってからも、この神社には「行かねば」と思い続けていた。
見覚えのある辺りの風景と、初めて見る境内の風景。懐かしいような新鮮なような不思議な感覚。
たぶん、神社に限らず、日常の中にもそういった感覚を抱かせてくれるものは、たくさんあるのだろう。

ちなみに、海の無い奈良県には、ここに限らず複数の海神社がある。その由来は知らないままだけど・・・。



これは二の鳥居。集落内に朱色の一の鳥居がある。


参道横には杉の大木。神代杉と銘打たれているが、ちょっとオーバーなような・・・。


拝殿。
扁額に「拝殿」と書いてあるのは初めて見た気がする。


本殿は朱塗りの桧皮葺。
桧皮葺も美しいが、その屋根を覆った苔が美しい。


境内社にも、鳥居と狛犬たち。


こちらにも鳥居と狛犬。
左手が工事中だったため、やや窮屈な写真に。


2万5千分1地形図 大和大野
撮影日時 080416 7時半~7時50分

駐車場 なし  役所の関連施設が近くにあるので、頼んで駐車場に停めさせてもらうか、離れた場所で道路の広いところを探すか・・・。
地図




天神宮

2008年06月16日 | 京都府

京都府福知山市大内

地図によっては天神社、または天神神社とも書かれているが、ここは扁額に合わせて天神宮としておく。

地図を見て、参道がありそうだということと、川のそばという立地条件に惹かれて立ち寄ってみた。
正直なところ、あまり印象に残っていない神社だし、写真としても出来は良くないと思うのだけど、この辺りの地域の神社はネットでも空白地帯のようであるから取り上げてみることにした。
写真はともかく、のどかな場所であり、ちょっと捨て難い魅力もあると思う。



道路から階段を下りたところに鳥居がある。両脇の狛犬は、出雲構えというタイプだろうか、ちょっと珍しい。


木漏れ日がとても心地よくて、優しい雰囲気に満ちている。


本殿覆屋はけっこう大きい。
麗らかな春の日差しを浴びて、狛犬も気持ち良さそうである。


通常、覆屋の中は暗くてジメジメした印象があるが、ここは窓があって明るい。
本殿は、なかなか凝った装飾で、全体像が見られないのが残念。とはいえ、こんな立派な覆屋にあるのは恵まれた状態であろう。


境内社。
よく見れば、この小さな境内社にまで鈴緒がある。
更に、左右に祀られた小さな自然石と手作りの祠の可愛らしいこと。まさにてのひらサイズで、地元の方の愛情が感じられる。


2万5千分1地形図 市島
撮影日時 080327 11時20分~11時40分

駐車場 神社前に駐車スペースあり
地図


菅原神社

2008年06月13日 | 滋賀県

滋賀県東近江市愛東外町

湖東には有名な神社が数多く存在する。
どれも魅力的であるし、それらは色んなホームページ等で紹介されているのを目にするけれど、さらに東、永源寺辺りの範囲になると、極端に情報量が減ってしまう。
情報量が少ない=詰まらない、というわけではないと考えているし、私はひねくれ者でもあるので、地図情報だけを頼りに幾つかの神社を巡ってみた。
ここはそのうちの一つで、現地に行くまで名前も判らなかったのだけど、「あ、いいな」と思わせる風景で迎えてくれた神社である。



神社入り口付近は公園のように手入れされている。
その奥にひっそりと佇む鳥居に、何とも言えない魅力を感じる。
参道奥へといざなわれる感じだ。


整備され過ぎた参道は好まないのだけど、ここは何故か惹かれた。
暗がりの奥に見える真新しい拝殿も、本来は古びている方が好みなのに、輝くように美しく見えた。


同じ場所を撮影位置だけ変えた写真ばかりで恐縮だが、気に入った風景はいつもこうなる・・・。


さして長くは無いが、とても気持ちの良い参道だ。


拝殿右手から本殿覆屋。


どういうわけか、本殿側から拝殿の中に入れるようになっている。
拝殿の中から本殿を撮影。


拝殿左手から本殿覆屋。


境内社への参拝路も、きちっと整備されている。
撮影後、地元の方が清掃に来られた。とても大事にされている神社なのだろう。


2万5千分1地形図 百済寺
撮影日時 080605 6時半~7時

駐車場 なし 神社前に停められないことはないが、歩道の邪魔にならないよう。
地図



琉璃渓

2008年06月11日 | 滝・渓谷

京都府南丹市園部町大河内

京都府には滝や渓谷が少ない。
山地は多いけれど、地形的には老年期の様相を呈しており、高い山や激しい浸食作用なども見られないのである。
最高峰も標高1000mに満たない。これは全国でも、京都と沖縄、千葉だけであったと思う。
琉璃渓は、そんな京都にあって数少ない名の知れた渓谷であり、国の名勝、及び、府立自然公園に指定されている。
が、水は汚い。
上流にはゴルフ場や宿泊施設、そして小規模ながらダムもある。
薄黒く濁った水が勢い良く流れ、滝壺には茶色い泡が浮く。時おり、平野部を流れる川のような、少し生臭い水の匂いも漂ってくる。
「自然を大切に」と書かれた看板が、そこかしこに見られるが、なんとも白々しく感じられ、オオサンショウウオ生息地というのも信じ難く、恐らくは一部の支流で細々と生き永らえているのみと思われる。そもそも、琉璃渓の本流で魚影を見たことが無い。魚の棲まぬ川に、オオサンショウウオが棲める筈が無いのである。
上流のダム湖では、釣りに興じる人もいる。釣れるのは、鮒や鯉、ブラックバスの類であろう。と思いきや、トラウト(鱒類)、イワナの放流をしているようだ。トラウトはともかく、イワナは生き続けられるとは思えないし、やはりブルーギルなどは野生化しているようである。
名勝、府立自然公園と銘打っておいて、このような現状を放置している行政の良識を疑う。

あまり声高にこういったことを述べるのは好まない。
けれど、ここを訪れる度に、その水の汚さに悲しくなってしまうのだ。
渓谷そのものは美しい。高い滝や迫力ある岩壁などは無いけれど、庭園的で優美な姿を見せる。
写真は、現状の醜い部分は敢えて写さず、そういった本来の美しさを引き出せたら、と思って撮った。
夏ならば飛び込みたくなるような、喉が渇けば口にしたくなるような、そんな流れになってほしいと思う。



支流に懸かる滝。
普段は滴る程度の水量だが、雨で増水して、ちょっと赤目四十八滝の荷担滝を思わせる姿に。


広葉樹が多く、両側の山もなだらかなので、谷間の暗い印象は無く明るい。


滝よりも、こういった早瀬が琉璃渓の魅力だと思う。


写真では判りにくいけれど、やはり水深のある部分は水の透明感が足りない。


新緑を縫って流れる様は、庭園の趣だ。


やはり透明感が・・・。


琉璃渓で最も美しいと思った場所。
苔と木々の緑を映し出す水面は、それこそ瑠璃色に輝いたのではないかと思う。


琉璃渓に触れているホームページはたくさんあるのに、何故か水質に言及しているものが見当たらず・・・。


水が描く模様は、美しくあるけれど・・・。


2万5千分1地形図 埴生
撮影日時 080514 12時~13時半

駐車場 ダムそばにあり
地図



春日神社

2008年06月09日 | 兵庫県

兵庫県篠山市大野

道を間違えてしまったので、とりあえず右折した。ちょうど道が広くなっている場所があったので、そこでUターン。直前、鳥居が見えたから、Uターンしてそのまま駐車。
とまあ、そんな経緯で訪れた神社である。

辺りは住宅と田畑が混在するような地域で開けており、朝の静けさよりも、朝の慌しい気配の方が優勢だ。
篠山盆地には残丘といえるような小山が点在し、この神社がある場所も、そんな地形の一つであるが、残丘部分は濃い緑に覆われていて、辺りの慌しさをよそに静けさに包まれていた。

地形図を見ると、この神社は記号すら載っておらず、100メートルほど北、同じ小山にある大歳神社の方は記載されている。春日神社の方が、やや大きいのだが・・・。



通常、小山にある神社は上り一辺倒になることが多いが、ここは懐の深い地形になっていて、包み込まれるような雰囲気がある。


平坦な参道の先に、階段と割拝殿。


道路や住宅からの音は伝わってくるが、静寂を感じさせる参道だ。


本殿周りは苔生して、落ち着いた雰囲気。


本殿横から小道が伸びていて、元の参道へと繋がっている。
そんな緑の小道に末社が点在する。


2万5千分1地形図 宮田
撮影日時 070524 7時~7時20分

駐車場 神社横に駐車スペースあり
地図