神社のある風景

山里の神社を中心に、歴史や建築等からの観点ではなく、風景という視点で巡ります。

毘沙門の滝

2021年05月07日 | 滝・渓谷

この一年半、どこにも出掛けていない。
よく一緒に出掛けていたT君が忙しいというのもあるし、私自身も忙しかった。
何より、新型コロナの影響が大きかった。
一年半の間で他県に出たのは三度だけで、親戚の家が二回と、中古車の購入のためが一回である。
もともと外食はあまりしないし生活必需品以外はネットで買っていたから、それこそ仕事と日用品の買い物以外はほぼゼロに等しい外出頻度であった。
趣味は多い方なので、休日に家に引き籠ることはそれほど苦痛ではない。
とはいえ、たまには遠くへ出掛けたい。
しかし、この状況下では、あまり電車に乗って出掛ける気にもなれない。
というわけで、先ほども少し触れたが、この春、中古車を購入した。
車を所有するのは六年半ぶりである。
さあ、これで遠くへ行けるぞ、と思った矢先に、三度目の緊急事態宣言が出た。
三重県南部の滝に行くつもりをしていたのだが、どうしたものか。
まず滅多に人の行かないような山奥だし、食料も持参して行くので、向こうではコンビニすら寄るつもりは無い。
何ら影響は無い筈……だが、やはり延期することにした。
代わりに、近場の篠山に出掛けることにした。
誰にも会わないようなところへ行き、何の店にも入らないならどこへ出掛けようと同じだとは思うが、神戸ナンバーの範囲内にとどめておくのが無難であろう。

毘沙門の滝の存在は知っていたが、近くを何度も通っているのに寄ったことは無い。
地形図を見ると、集水面積はかなり狭く、普段はチョロチョロ程度の水しか落ちていないように思える。
ちょうど前日、それなりの雨が降ったので行ってみることにした。
国道173号線から横道に入り、舗装が途切れたところの広場に駐車。
そこから歩いて10分ほどで、まずは一の滝がある。



思ったよりも水量は少ない。
昨日の雨量でこれなら、渇水期には岩が濡れる程度になるかも知れない。



ただ、雨上がりの朝ということで、霧が出ていい雰囲気になってくれた。
ここからは山道になる。



二の滝は倒木が見栄えを悪くしている。
写真も一枚のみ。



三の滝は落差20メートルほどあって、最も見応えがある。
ただ、やはりもう少し水量がほしいところ。



しかしながら、閉塞感のある岩の造形と霧のおかげで、どこか深山のような趣がある。



近寄れば覆いかぶさるように岩が迫ってくる。



あまり期待していなかったし普段の水量に難はあるが、滝が少ないこの辺りでは最も見応えがあるように思う。


さて、タイトルは「毘沙門の滝」としたが、写真としてはこっちがメイン。
過去にも掲載したことのある溜池であるが、滝へ行く前に立ち寄り、滴るような緑と霧の光景を楽しんだ。


























ここは気軽に行けるし、季節を問わずいい風景に出逢える場所だ。
朝四時半に家を出て、九時半に帰宅という短いお出掛けだったが、久しぶりの撮影は気持ちが良かった。

滅多に更新しない状態が続いているため、ブログの容量を気にする必要も無いので、今回から画像サイズを大きくしました。


撮影日時 210506 6時40分~7時30分
地図


清納の滝

2019年05月18日 | 滝・渓谷

奈良県吉野郡十津川村小川

高尾谷からは来た道を少し戻り、国道425号線に入って大峰山脈を越える。
この辺りの大峰山脈は、北部に比べてだいぶ標高が下がっているが、それでも近畿の屋根と言われる山脈だから、カーブの連続する長い道のりである。
芦廼瀬川に沿うようになって暫くで、右から大野川が合流する。
芦廼瀬川ほどではないが大野川も大きな谷川で、普通の山地であれば本流といっていい規模がある。
大野川の橋を渡ってすぐの国道沿いに広場があるので、そこに駐車する。
大野川沿いの林道に入り、すぐに行き止まり。
ここに車を駐車してもいいだろう。
そこからは僅かな距離で清納の滝で、極めてお手軽に見られる滝である。



林道から樹林の中の斜面を下ると、地響きを伴うような轟音が響き、眼前が一気に開けて滝が現れる。
普段は上流で発電用に取水されているらしく、やや惨めな姿のこともあるようだが、今日は雨後なので豪快だ。



周囲のスケールが大きいので滝は低く見えるが、落差は15メートル以上あるだろう。
滝壺はまさにプールで、25メートルプールくらいはありそうだ。



ただ、ここは以前、瀬野滝(瀬野の滝)と呼んでいたはずで、いつから清納の滝と言うようになったのだろうか?
何となく、「せの」の音にイメージが良さそうな漢字を当てはめただけのような…。
もしかしたら何か謂れがあるのかも知れないが、改名のお蔭かどうか、最近は訪れる人も多くなったようで、三組ほどの家族連れが遊んでいる。
夏など水遊びに最高だろう。



ただ、この滝は水に濡れない限り、ほぼ正面からしか撮れない。
豪快で楽しいところであるが、撮影としては面白味に欠ける。
幸い、日差しが強く明るかったので、高速シャッターで変化はつけられた。



T君が、滝に打たれてみたいですね、などと言うが、首の骨が折れるんじゃないかと思えるほどの水勢だ。



撮影はともかく、気持ちの良い場所であるし、こんなに豪快な滝を見るのも珍しいので楽しめた。


撮影日時 190502 13時10分~13時30分
地図


お滝さん

2019年03月18日 | 滝・渓谷

和歌山県田辺市本宮町請川 

 
継桜王子から小広峠を越えると本宮町に入る。
日置川水系から熊野川水系に入ったわけで、大層に言えば文化圏や風土といったものの境界に当たるが、分水嶺を越えても田辺市のまま、というのは、旧本宮町の頃から何度か訪れたことのある私には、未だに違和感がある。

本宮の中心地は、言わずと知れた本宮大社があり、過去に二、三度参拝したことがある。
今回はどうしようかと思ったが、参道の石段を埋める人波を見て、寄らないことにした。
世界遺産に登録される前は、チラホラであったのに、今はゾロゾロである。
代わりにというわけではないが、すぐ近くの店に入って、T君と蕎麦を食べる。
昼食を食べてから、まだ三時間ほどしか経っていないけれど、何故か二人とも食べたくなったのだ。
観光客相手の店だからと期待していなかったが、悪くなかった。

本宮の中心から、熊野川に沿って少し下った請川というところに、「お滝さん」と呼ばれる滝がある。
これは地元の人が、親しみを込めて呼ぶ際の通称あり、正式な名前が他にあるのだろう、と思ったが、どうも「お滝さん」という名前しか使われていないようだ。
素朴で微笑ましい。

国道から横道に入り、すぐのところにある広場に駐車。
が、これは失敗で、狭くなると思っていた林道は、終点まで普通車で難なく通れる良い道であった。
そこからは山道になるが、よく踏まれており、道標もある。
お滝さんは有名な滝ではないと思うし、滝の多いこの辺りでは特に目立つ存在ではないが、以前、NHKの朝の連続テレビ小説「ほんまもん」で、修行するシーンのロケ地に使われたという。
それからは、地元の人以外も少しは訪れるようになって、道標も立てられたのだろう。
道は谷川沿いではなく、登り坂で峠を越え、やや平坦な道を暫く進むと滝の手前で急坂を下る、といったルートを辿る。
運動不足の身には、前半の登りですらキツイものだったのに、帰りにはこの急坂を登らなければならないのかと思うとウンザリする。



やがて滝音が足下から届いてきて、樹間からその全容が望める。


落差はそれほど無く、姿も特に際立つものは無い。


優しい姿の平凡な滝、といった印象。


右側には岩に穴が開いていて、不動尊がある。


平凡な印象、と書いたが、滝壺は広く、部分的に深く抉られていて、夏ならば泳ぎたくなるようなところだ。


この滝壺は魅力的である。


滝の左側へと移動する。



右からも左からも近付いて撮れるのは有難い。


そして、やはり滝壺は美しい。
立派な滝壺と、滝前に寛げる空間があるというのは、写真としてはともかく、滝を楽しむという点では重要な要素だ。


だが、私がこの滝に行ってみようと思ったのは、他の要素だ。
それは、滝の右側、不動尊よりも更に右にある。


滝壺の右側には、逆擂鉢状というか、お椀の欠片を伏せたような形状の岩が、頭上を覆っている。
湛えられた滝壺の穏やかな水と、異形の岩との対比が凄まじく、私は、異空間のようだ、と思った。


で、矮小な人間との対比の意味でも、何やら物思いに耽っているようなT君を入れて撮っておく。
決して彼が矮小な人間という意味ではないです。


小屋があるのがちょっと難だが、ただならぬ気配を感じる場所だ。


超広角レンズが無いので全容が写せないのは残念。
信仰心が育まれるのが当然と思える場所だった。

もう時間はだいぶ遅いが、この近くでもう一ヶ所だけ寄ってから帰ろうと思う。
本宮大社の近くから、音無川沿いの道に入り、1.5キロほど遡ったところで駐車。
入口はちょっと判り難いが、西側から入ってくる小さな谷に小道がついているので辿ると、すぐに目的地到着。


ちちさま、或いは、乳子大師、子安弘法とも呼ばれるところで、乳房を思わせる天然の丸い石が二つ、岩から顔を出している。
お滝さんと同じく、ここも「ちちさま」という呼称が、素朴で飾り気なくていいなぁと思う。
母乳の出が悪い女性や、子育ての信仰対象になったのは当然と思える判りやすさだが、T君は、「胸というよりキン〇マに見える」と言う。


うーん…判らなくもないような…?
それはともかく、お滝さんもちちさまも、自然の妙に感心させられる場所で、熊野の自然と信仰の面白さが感じられて楽しかった。


撮影日時 190224 お滝さん 15時50分~16時30分 ちちさま 17時20分~17時30分
地図 お滝さん ちちさま


隠れ滝

2018年06月05日 | 滝・渓谷

奈良県吉野郡上北山村河合


千尋の滝からは、車を更に尾鷲方面へと走らせ、隠れ滝を目指す。
9年ほど前に千尋の滝を訪れた際にも立ち寄っており、その時はまともな写真が一枚しか撮れず、千尋の滝の記事にオマケ扱いで載せた。
実は今回も納得のいく写真は無くて、やはりオマケで載せようと思ったのだが、落差100メートルクラスの滝を二回もオマケ扱いにするのもどうかと思ったので、少ない写真でも一つの記事として掲載しておくことにした。

途中、不動滝がダム湖に直接落ちており、更にその上部に銚子滝も見える。
水量が多いときは絵になる景観だが、残念ながら今回は見栄えがしないので素通り。
ダム湖が尽きて、道路が左岸に移るとすぐに小さな谷川を渡る。
そこが隠れ滝への入り口で、車道からは隠れるように存在しているのだが、歩き出して一分も要さずに滝の全容が見えてくる。



水量はやや乏しいとはいえ、落差はかなりのもの。



紀伊半島の南部には、100メートルクラスの滝がいくつかあるが、その殆どが一部の滝好きや山好きにしか知られていないのが凄いところだ。



ただ、水量が乏しいだけでなく、ほぼ同じ角度からしか撮れないのが残念。



滝の下部。



滝壺は小さく浅いが、見事に円形に岩を穿っている。



そして、その滝壺から見上げると───空から落ちてくるようだ。
水量が少ないことが難点であるかのように言ったが、ここまで落下点に近付けるのは水量が少ないお陰でもある。
落差100メートル以上の滝で、こんなに傍に寄れる滝はあまり無いだろうし、しかも車道から僅かな距離であることを考えると、類稀な有難い存在の滝かも知れない。



T君はといえば、滝前の平らな岩に寝そべって目を閉じている。
大きな滝のわりに狭い空間だが、のんびり寛いで滝音に浸れた。


撮影日時 180529 12時~12時20分
地図


千尋の滝

2018年06月01日 | 滝・渓谷

奈良県吉野郡上北山村白川

去年から何度か尾鷲方面へ行く計画を立てているのだが、その度に、天気が思わしくなかったり、他に行きたい場所を見つけて気が変わったりで行けないままになっている。
今回も同じパターンで、天気は終日曇りの予報。
海を撮るなら青空がいいから、尾鷲は断念して行先変更、でも、かといって北部の天気が良いわけではなさそうなので、海はともかく、南へと向かうことにする。
まずは、尾鷲に行く計画段階で、寄ろうかどうか迷っていた千尋の滝へ向かう。
過去に掲載したことのある滝だが、もう9年も前のことだし、手軽に行ける滝としては相当な規模のものだから、T君にも見せておきたい。
もっとも、T君が滝好きというわけではないけれど。

国道169号線から425号線に入る。
T君は寝不足なのか疲れているのか、少し前から助手席で眠っている。
169号線からずっとカーブが多かったし、425号線は林道のような国道なので、T君の首が前後左右に振られる。
もうそろそろ起そうかな、と思っているとT君が目を覚まし、開口一番に言った。
「いやぁ、もうちょっとで寝るとこでしたわー」
「………。」

廃小屋のあるところに駐車し、その小屋の脇から山道に入る。
滝までは15分ほどの道のりだ。
特に険しいところは無く、谷川に沿った樹林帯の中の道を抜けると、眼前が開け、千尋の滝の全容が目に飛び込んでくる。



T君が歓声を上げる。
滝に興味が無くても、これは普通の反応だろう。



こういった大きな滝は、青空を背景にすると映えるし、実際、前回はそういう写真を撮ったが、今回は曇天なので、空を入れないように撮る。
ただ、ここ最近の濁った空気ではなく、曇天であっても光と影にメリハリがある。



そりなりに高速シャッターも切れる。



この滝は、上部から中間辺りは高速シャッターが似合うように思う。



T君に滝の前に立ってもらう。
これでも滝の手前10メートルほどだが、滝の大きさがある程度判るだろうか。



滝の下部はスローで撮ると、豪快な姿が意外と神秘的な表情に変わる。



前回は青空で、しかも滝に虹が出ていたけれど、今回のほうがいい滝に見える。



滝の右側に移動する。
手前の岩が邪魔で、近づかないと滝壺が見えないのが残念。



普段より水量は少なめだろうか。
風も無いし、近づいてもあまり水飛沫は飛んで来ない。



正面から。









滝壺はそれほど深くないが、やはり滝は滝壺があった方がいいなと思う。



所々でサツキが咲いていた。
滝とセットで撮りたかったが、都合のいい場所では咲いていない。
サツキ、アワモリショウマの蕾、ゼンマイの葉。



滝の近くから下流を見ると、緑いっぱいの谷川の風景。



水面にも緑。



こんな風に水を撮るのは久しぶりで、とても楽しめた。
ここは以前に比べて、だいぶ知られるようになってきたようだが、ゴミも見当たらなかったし、ちょっとした秘境気分が手軽に味わえるのが嬉しい。


撮影日時 180529 10時20分~11時30分
地図


琉璃渓

2018年01月31日 | 滝・渓谷

京都府南丹市園部町大河内


寒い日が続いた。
家の近所では水溜りが凍っていたし、時おり雪が降ったりもした。
ただ、大寒波というわりに、気象庁のホームページで日々アメダスの気温を確認していると、山間部の気温は例年とさして変わらないように思えた。
寒いのは嫌なのだが、厳冬の風景、となると、何となく物足りないのではないかという気もする。
果たして実際の山間部はどんなものなのか、T君と休日が一緒になった日、久しぶりの琉璃渓で確かめることにした。

川西市の北部辺りから、日陰に少し雪が見え始め、能勢に入ると田畑は白く染まっていた。
二人とも雪道に慣れていないので、やや不安ではあるが、凍結防止剤のお陰で路面に雪は無く、凍結している様子も無い。
それでも怖々、といった体で琉璃渓の入り口駐車場に到着してホッとする。

積雪は5cm~10cmといったところで、下り坂の遊歩道はなかなかに滑る。
ただ、車での雪道はともかく、歩きに関してはそれほど苦手意識は無い。
よく滑る谷歩きをしてきたからだろうか、多少は滑っても直ぐに体勢を立て直せる。
が、T君は度々滑って悲鳴を上げる。
「ズルイっすよねぇ、滑り止めのついた靴を履いてきて」
なんて冗談を言うが、勿論、ただのカジュアルシューズである。 



白を基調とした風景の中、流れが黒い帯を描いている。
冬の琉璃渓には何度も来ているが、今までで一番積雪量は多い。



冬らしい風景ではあるけれど、流れは凍結しておらず、過去と比べても物足りない。
でも、風景としては物足りなくても、雪道はただ歩いているだけで楽しく、童心に返る。






水面は雪や氷で覆われていないけれど、冬の景色を映している。



流れ自体は凍っていないが、水飛沫がかかるような場所や、水が滴るようなところは、ほぼ例年通りに凍っている。



岩に溜まった水も、素敵な模様を描いて凍る。



ファインダーを覗けば、氷と水だけの世界になる。



雪道を歩くのも楽しかったが、やはりファインダーの中の世界にのめり込んでいく感覚は、他に代え難い楽しさがある。



暫しT君をほったらかしにして、夢中になってシャッターを切る。



滝の手前の白い部分は、雪ではなく泡である。
これが琉璃渓の残念なところで、いつまで経っても水質は改善されそうにない。



氷はとても綺麗に見えるけれど、これも川の水飛沫がだんだんと凍って氷柱になったものだから、たぶん、汚れているんだろうなぁ…。



それでもやはり、氷の美しさには魅せられる。






ここの氷柱は壮観だったが、遊歩道から少し離れていて、見逃してしまいそうなところだ。
T君が、10mほど高い場所にある遊歩道からこちらを見下ろしている。
何をチンタラやってるんだ、と思っていそう。









今日いちばん印象的だったのはこの辺りで、冬の厳しさや幻想的な感じが出ていると思う。
と言っても、それは写真的にはという意味で、肉眼ではもっとあっさりしてるというか、そんなに特別な感じではない。
だからT君に撮ったばかりの写真を見せると、「ええっ! そんな幻想的になるんですか!?」と驚く。
なんか「騙し」ではないかと言いたげだ。
光の見え方、色の見え方、時間を写し止めるということ、そういった要素が絡み合って、肉眼とは違った表情が捉えられるのであって───なんてことを説明しようかとも思ったが、メンドクサイのでやめる。



ここまで軽く滑る程度だったのに、ここで盛大に転んだ。
その衝撃で三脚が壊れてしまい、ちょっとへこむ。
ああ、と空を見上げると、ずっと曇天だったのにいつの間にか冬らしい青空が広がっていたので、手持ちでパチリと写真を撮った。


撮影日時 180129 8時30分~10時30分 
地図


水無瀬渓谷

2016年01月08日 | 滝・渓谷

大阪府三島郡島本町尺代


年明けの最初の記事は雪化粧をした神社を、と考えていたのだが、そう都合よく雪が降るわけもないので、前回の若山神社の後に立ち寄った場所を載せることにする。
それはともかく、改まって新年の記事は書きませんでしたが、本年もよろしくお願いいたします。
更新が少ないせいもあって、以前よりアクセス数も随分と減ってしまいましたが、地道に続けていくつもりです。
コメントも減って、果たして見て下さる方がどれくらいいらっしゃるのか判りませんが…。

タイトルは水無瀬渓谷としたが、地形図を見ても特にどうということもない地形で、凡そ渓谷と呼ぶには相応しくないと思える。
この程度の谷川は山間部に行けばどこでも見られるし、京阪間からちょっと山に入ったところ、といった場所柄から、普通の谷川が渓谷と称されているのだろう。
山吹渓谷とも呼ばれていて、割と長い距離に亘って民家も無く、確かに近辺に於いては希少な存在かも知れない。 
あまり期待は出来ないが、久しぶりに山を歩いてみたかったので足を延ばすことにした。 

若山神社の本殿横から車道を下り始めると、 すぐに右へと大きくカーブするところにトイレがある。
その辺りで左へと分岐する山道があって、尺代へ、と書かれた看板が立っている。
よく踏まれた道で、迷う心配は無い。



途中、右手に畑があって、まだ霧が残っているせいか、どこか高地の畑のようだ。
道は概ね竹林の中を行くが、神社付近と比べれば少し荒れており、写真にはしにくい。
やがて急な下り坂になり、尺代集落へ出る。
橋を渡ってすぐに左への林道に入る。



舗装されていた道は暫くで地道になり、こんな切通しもある。
途中に、落石の危険があるため通行止め、という看板とゲートがあるが、もう長い間この状態であるらしく、誰も気にせず入っているようなので、私も気にせず奥へと進む。



林道は谷川に沿っているものの、流れからそんなに近くない場所が多い。
所々で水際へと降りていく踏み跡があるので、流れの様子を見に行く。



上流に集落や採石場らしきものがあるので、少し濁りがある。
まあ夏ならば水遊びしたい程度には綺麗な水だ。
この季節の平日だから人の気配は全く無いが、それなりに賑わう時期もあるのだろう。
あまりそういう時期には来たくないと思いつつ、そういった緑濃い季節に訪れれば、結構いい表情の水が撮れるのでは、と思ったりもする。






思っていたよりも渓谷らしくなる。
京阪間の駅から徒歩で来られることを思えば、なかなかいいのではなかろうか。

やがて対岸に細い滝が見える場所に出る。
乙女の滝と呼ばれているらしく、事前に調べていたので知っていたが、支流の貧弱な滝と思っていたわりに、雨後のせいかそれなりに水量がある。
林道からはよく見えないので、少し戻って谷川へと降りる踏み跡を使う。



水車の残骸が現れる。
結構な大きさで、稼動していた頃の姿を見てみたかったと思う。



ちょっと険しいところを下って水際に降り立つ。
なるほど、渓谷と称しても差し支えないような表情に出逢う。



この辺りの標高は120mほどだ。
渓相も悪くないし、意外と植林が少なく、それでいて常緑広葉樹が多くて、この季節でも緑が多い。



乙女の滝が見えてくる。



滝そのものよりも、滝のある周囲の雰囲気がいい。






水量は少ないが、結構な落差がある。



本流の方は廊下状になって、この先の風景が気になる。
とはいえ、足を濡らさずに先へ進むのは難しそうだ。
対岸ならもう少し先へと行けそうなので、飛び石伝いに対岸へと渡る。



まずは乙女の滝の傍へ。






やはり対岸から、本流と絡めて見る姿が美しいように思うが、全く期待していなかったので、充分に嬉しくなる風景だ。



本流の方にも滝が見えて、しかも険しい表情を見せて先へは進めない。
夏ならば、もう少し滝へ近寄ろうと試みたかも知れないが、今回はここで引き返すことにする。
若山神社も水無瀬渓谷も、大阪近郊とは思えない風景に出逢えて楽しい一日であった。


撮影日時 151224 9時50分~11時50分
地図


桃尾の滝

2015年10月29日 | 滝・渓谷

奈良県天理市滝本町


ちょっと間が空いてしまったが、前回からの続きで桃尾の滝を。
石上神社からは200mも無く、歩いてすぐである。

最近、滝や流れの風景を見ていない。
不動小屋谷が最後だから、一年以上前のことになる。
とはいえ、電車で、となると、駅から徒歩で行けるような滝や渓谷は限られており、神社のようなわけにはいかない。
天理に桃尾の滝があるのは以前から知っていた。
当初は天理の神社をあちこち巡るつもりでいたが、やはり久しぶりに滝が撮りたい。
山の奥深くにある滝ほど惹かれはしないけど、無性に行ってみたくなった。
というわけで、今回はここがメイン。



滝の手前は広場になっていて、こんなに滝前が開けているのは三重県の飛雪の滝くらいしか思いつかない。
着いたときには陽射しが強く、滝の左側の岩ばかりが照らされて、全く写真にならなかった。
今回はブログ掲載を諦めるか、と思ったほど光線状態は悪かったが、30分ほど待つと日が翳ってきた。



見ての通り、とても宗教色の強い滝で、市街地に近いこともあって、古くから信仰の対象とされてきたようだ。



滝の手前左側には不動三尊磨崖仏がある。
鎌倉時代の作というから、7、800年は経過している筈で、そういったものは日本各地にあるのだろうが、野ざらしにされているのが不思議なような気もする。



最近は雨が降っていないので、水量はやや少なめか。



一部、黄葉が始まっている木もあった。



岩壁の裂け目にも不動明王像。



あちこちに供えられた花はどれも瑞々しいから、篤く信仰されているのだろう。



基本的には深い滝壺を持つ滝が好きだけれど、ゴツゴツした岩肌に水が弾け、濡れた岩の表情も面白い。






この角度から見た姿が一番好みだろうか。
滝手前の開放的な地形を忘れさせる、岩が迫ってくるような気配がいい。



また陽が差してきた。
虹が出るかと期待したが叶わず。
水飛沫が写し止められるほど明るくもならず、中途半端な明るさで、多彩な水の表情といったものは撮れずじまい。
滝に至るまでの流れにもいいものがあれば、と思ったが、心惹かれるような流れは無く、せっかく水の写真を撮りにきたのに、寧ろ欲求不満になってしまった。

帰りは往きと同じ道を辿る。
蟷螂を見かけて、懐かしいなぁ、なんて思ってスマホで写真を撮ったりしたが、その後、次から次へと蟷螂が現れたりした。

石上神宮への道標を見て、やっぱり立ち寄りたい衝動を堪えつつ、この近所にある豊日神社には立ち寄ることにする。
小さな神社であるし、そんなに時間を費やすことも無いだろう。



陽射しは強くて写真にはしにくいものの、鳥居前はいい雰囲気。
奥へと進むと、左に社務所らしき建物、前方の狭苦しいところに拝殿らしき建物があり、本殿はその拝殿の右手、斜面の上にあった。
石段があって、見上げた本殿は何やら工事中の様子。
取り敢えず石段を上ると、宮大工の方が本殿を修繕してらっしゃった。
本殿横に作業台のようなものを設えて、その場で木材を加工されている。
ブルーシート等もあって、写真に撮れる状況でもないが、いろいろと話をさせてもらい、楽しいひとときを過ごせた。



本殿修繕中ということと、光線状態のこともあって、撮った写真は鳥居付近の二枚のみ。
山の辺の道に接しているからか立ち寄る人も多かったが、いい雰囲気を味わえた。

ちょうどいい時間、と思って駅まで歩く。
だがどうしたことか、途中、何度か信号に引っ掛かったせいもあって、ホームへの階段を上っている途中で電車は発車してしまった。
次の電車は一時間後。
こんなことなら、石上神宮に寄ればよかった………。 


撮影日時 151015 11時20分~12時半
地図


不動小屋谷 その2

2014年06月13日 | 滝・渓谷

奈良県吉野郡十津川村旭


この日の天気予報は、午前中は晴れで午後から曇り。
不動滝は結構大きな滝なので、青空をバックに撮りたいと思っていたのだが、時おり薄日が射すものの、綺麗な青空は見えないまま。
それでも、不動滝が見えた瞬間には、周囲がぱーっと開けて、光が降り注いでいるような感覚になる。



そんなに閉塞感のある谷では無かったけれど、やはり大滝が見えた時の開放感は心躍るものがある。
落差は50mと書かれているサイトが多いが、40mあるかないか、といった印象。



普段から滝の高さには拘っていないけれど、それでも高い滝を見れば、「おお」と心の中で声を上げる。



薄日ではありながら、滝の右側の緑は輝く。



左側は、陰を纏って濃密な緑。



滝壺は広く深い。
色付いた落ち葉がたくさん浮かんでいて、ここもちょっと秋っぽい。



泳げるほどの広さはあるし、水色の美しさに定評のある場所だが、正直、期待したほどでは無いかも。
滝壺は広いわりに、周囲に寛げる空間はあまり無い。
水色もイマイチ冴えない。
数年前に訪れた南紀の滝本北谷の比丘尼滝は、泳げる広さの滝壺と、走り回れるほどの空間があって、心から寛げるお気に入りの場所になっていたから、それと比較してしまうのだろう。



空が少し明るくなれば、滝壺の色も少し変化する。
たぶん、もっと美しい色に出逢える瞬間がある筈と思って待ち続ける。



滝から吹き付けてくる風は冷たく、長い時間その風に当たっていると手先が悴んでくる。



滝壺の美しさに、少しは近づけただろうか。



肉眼ではこれほど鮮やかな色では無いのだけれど、少なくともカメラでその色が捉えられれば。



滝壺だけでなく、滝そのものも光の強弱で表情を変える。



岩は輝いて、水は飛沫を上げて迸る。



多彩な表情を見せてくれるのは、名瀑の条件だと思う。



ほんの僅かな時間だけ、滝身に日が当たる。



珍しく縦向きの写真で全容を。
期待通りとは言えないかも知れないが、ここに来られたことに満足。



ふと思い立って、スマホで滝壺の水面を撮ってみる。
あれ? 何だか一眼で撮るより透明感があるような・・・。



更にスマホが防水であることを思い出して、滝壺に突っ込んで写真を。
それなりに面白い写真も撮れる。



さて、そろそろ帰ることにする。
振り返れば、岩壁が聳え、柔らかな新緑に包まれながらも険しく深い山中にいることを思い出させる。
こんな場所にいたのだ、と自分がいま立っている場所を改めて見渡せば、とても満ち足りた気分になれた。

駐車場所に戻るまでの間に、スマホのカメラレンズの内側に、水滴がビッシリ着いていることに気付く。
おいおい、キミは防水の筈だろうが、などと問い掛けながら、電源を入れれば画面は表示される。
ただ、一部が白っぽく表示され、ちょっと目障りでもある。
別にスマホのカメラなんて普段は使わないし、画面の表示も使用に不都合があるわけではないから、まあいいか、なんて強がってみる。
だが、車に戻って暫く休んでいると、スマホの画面が表示されなくなった。
車のヒーターに当てて乾かしてみるものの、画面は真っ暗なまま。
ちょっとマテ、PCのデータも大事だが、キミにもそれなりのデータが! などとちょっと焦る。
家に帰ってから、微かな希望を託してアツアツになるくらいファンヒーターに当ててみると、正常に戻った。
とはいえ、SDカードのデータは一部破損していたから、防水は過信してはいけないのだろう。


撮影日時 140514 9時~12時
地図


不動小屋谷 その1

2014年06月06日 | 滝・渓谷

奈良県吉野郡十津川村旭


朝の4時に目を覚ます。
車での睡眠は決して寝心地がいいとは言い難いけれど、目覚めと同時に夜明け前の山が目に飛び込んでくるから、ゆったりと爽やかな気分でもある。
軽く朝食を摂っている間にも、周囲がだんだんと明るくなってくる。
気温はあまり下がらなかったようで、寒さは無い。
数年前の五月に、この近くの舟ノ川に行ったときは10度以下まで下がって水も冷たかったが、今日は問題ないだろう。
昨日とは違い、リュックを背負って四時半に出発。
久しぶりの山歩きなので、ちょっと緊張というか、身の引き締まるような思いで林道を進む。



林道はゴツゴツした石が多くて歩きにくいが、周囲の緑は豊かで退屈しない。
杉の植林が殆ど無い山は、なんと柔らかなのだろうと思う。



不動小屋谷を渡る橋の近くから、下流方向を望む。
左上には歩いてきた林道が見える。
ここからは不動小屋谷の流れに沿って、道の無い谷中を進むのだが、ここに来てちょっと悩む。
このまま林道を進んで、旭川の上流である宇無ノ川を見る方が楽しいのではないだろうか。
答が出ないので、もう暫く林道を進んでみる。



悩みながらも寛げる緑の中、いいなぁ、どうしようかなぁ、を繰り返す。 



いいなぁと思いつつ、引き返して不動小屋谷に行くことに決める。



不動小屋谷の橋の上から上流方向を見れば、いきなり滝がある。
橋の下流にも滝があって、池小屋滝という名前のついた結構大きな滝なのだが、降りるのは大変そうだし、あまり惹かれる姿でもないのでそのまま上流に向かう。
この滝は左岸を巻いて越えたものの、初っ端からちょっと恐怖を感じてしまった。
年をとるほどに高所恐怖症になっていっている気がする・・・。



ただ、この谷は癒し渓と言われているくらいで、最初の滝を越えれば上流にある不動滝まで難所は無く、こんな感じの穏やかな流れになる。



何故か色付いている落ち葉が多くて、まるで秋の風情。



当たり前だけれど、目を上げれば秋の風情ではなく緑いっぱいで、春の谷川を彩っている。









時に足を濡らしたりしなければならないが、いちばん深くて膝上くらい。
もちろん、足を滑らせれば身長より深いところはあるものの、思ったほど滑りやすくはなかった。
基本的にはのんびり緑を見ながら、適当にルートを選んで進んで行ける。






逆に、滝と言えるほどの険しい場所がなくて、沢歩きに慣れた人なら退屈だろうなと思う。
私としては綺麗な水と緑があればそれでいいけれど、それでもちょっと撮影ポイントが少ないかな、とは思う。






でもまあ、誰も居ない山の真っ只中で水と戯れるのは楽しい。



この辺りまで、慣れた人なら一時間以内で来られるだろうけど、既に二時間以上経過。
でも、時間はまだまだある。
今日はここだけで費やすつもりなので、もっとのんびりしてもいい。



虫が苦手な人には恐縮だが、途中で見かけた虫の死骸があまりに鮮やかな金属光沢を放っていたのでパチリ。
往復で三匹の死骸を見たから珍しいものではないのだろうけど、家に帰ってからネットで調べてみても名前は判らなかった。
ご存知の方がいらっしゃったら教えてください。



やがて谷間にも日が差し込んできて、水面が光と色で賑わう。



きらきら、さらさら、ゆらゆら、自然の音や情景を表現するオノマトペは沢山あって、それらが競演する。






私自身は、じゃぶじゃぶ、わくわく、のろのろと、自然の奏でる言葉に混じって進む。
目的地である不動滝まではもうすぐだ。


撮影日時 140514 4時50分~9時
地図