福井県越前市荒谷町
越前富士とも呼ばれる日野山の北麓に位置する。
信仰の対象となる秀麗な姿の山なのだろうが、運転中は、神社や杜を探すためにあまり遠くに視線を向けないので、その姿を見逃してしまった。
山頂には奥宮があるらしいが、山の西麓、越前市中平吹町にも同名の日野神社があって、そちらの奥宮ということらしく、こちらはちょっと地味な存在である。
近くには北陸自動車道も通っていて、境内にも車の走行音が届きそうな様子。とはいえ、北向きの谷間にある神社というのは、しっとりと落ち着いた風情を湛えていることも多いので、期待のほうが高かった。
山懐に抱かれる感覚。奥行きと、横にも広がりのある空間。そばには谷川も流れ、心地良い風も通る。
予想通り、車の走行音が耳障りではあったが、良いほうの予想も当たってくれた。
尚、谷川を少し遡ると「荒谷の滝」というのがあって、看板も立てられているが、近くて手軽である点を考慮しても、一見の価値があるとは言えず、写真も撮らなかった。
陽射しの降り注ぐ水田地帯を抜け、山際の荒谷集落最奥の民家を過ぎると、正面に石灯籠が見えてくる。
電気柵があるが、跨いで通れる高さだ。
参道に一歩入れば、しっとりとした緑の空間。
一の鳥居、二の鳥居、そして拝殿へと、緩やかな上り道が続く。
一の鳥居。
杉を主体とした杜だが、モミジも多く、緑の濃淡が美しい。
一の鳥居と二の鳥居の間は、奥行きだけでなく横への広がりもあるが、それでいて乾いた感じは無く、豊かな木々が潤いを包み込んでいる。
二の鳥居。
秋には紅葉が美しそうだ。
二の鳥居を参道右手から。
お気に入りの一枚。
参道を振り返る。
二の鳥居付近から拝殿。
何と言うか、柔らかな気配に満ちていて、とても居心地がいい。
杜の外は眩しいくらいだが、ここは木漏れ日が優しく降り注ぐ。
拝殿と本殿。
本殿は硝子張りの覆屋の中で、硝子が汚れていて中がよく見えなかった。
特に大きな木も無く、さして深い杜でもないが、とても心休まる場所で、狛犬たちも機嫌が良さそうに見えた。
2万5千分1地形図 武生
撮影日時 090618 8時45分~9時15分
駐車場 神社前にスペースあり
地図
福井県今立郡池田町稲荷
池田町の中心、といっても小さな町であるけれど、とにかく開けた場所にあるので、ここで掲載する神社としては異例の明るさである。
神社背後の山には福井県でも最大級の杉があるということで立ち寄ってみたのだが、いま調べてみると式内論社であった。越前まで足を伸ばしておきながら、碌に下調べもしていないのである。
須波阿須疑は「すわあづき」と読むようで、地図でも他の情報を見ても、「づ」には「須」の漢字が当てられていたが、本殿前の案内板では「湏」の字が用いられていた。
とある巨木サイトでは、この池田町にある巨木を見て周っている時に、他府県ナンバーだから、という理由で警官に職務質問された話が書かれていた。
嫌な予感がするなぁ、なんて思っていたら、この神社から3キロ近く西へ行った国道沿いの駐車スペースで休憩していると、パトカーがやってきて職務質問。「あまり見かけない他府県ナンバーだから」という理由だった。
ちょっと皮肉を込めて、「福井は職務質問が多いね」と返すと、「いや、田舎やし、滅多に余所から人も来ないし」などと言う。ここよりもっと田舎にしょっちゅう行っているけれど、職務質問などされることはまず無い。
お巡りさんは愛想の良い人だったし、防犯に熱心なのは結構だと思うが、やはり気分のいいものではないし、他府県民の犯罪比率が高いなんて事実も無いだろうに・・・。
駐車車両がまともに写り込んでいる画像を使うのは初めてかも知れない・・・。
それなりに車の通りかかる道路から写真を撮るときは、いつもおざなりになってしまう。
参道の中ほどに楼門。朱塗り、というよりはレンガ色で、どこかモダンな雰囲気。
左手はグラウンドのように開けており、公共施設らしき建物と、野外ステージのようなものがある。
楼門の向こうに拝殿が見えてくる。
楼門の左右には等身大以上の大きな随神像。
仰ぎ見る拝殿は大きい。
この二の鳥居辺りから、やっと木々に覆われた空間になる。
拝殿。
昭和57年までは茅葺だったらしく、出来れば当時の姿を見てみたかったものだ。
もっとも、当時の私はまだ子供だが。
拝殿内部。
正面中央が能舞台らしく、右手奥は現在は神輿殿だが楽屋として使われていたらしい。
左手奥には囲炉裏があって、厄年にあたる氏子達が大晦日の夜に参籠し、火に当たることで厄払い出来るという。
大きいだけあって、なかなか多目的な拝殿である。
拝殿前から振り返る。
拝殿の背後へと廻り、本殿を見上げる。
さすがに杜の気配も濃くなってきた。
本殿は大きな覆屋の中。
福井県内最古の神社建築だという。
それにしても、何故こんな右寄りのアングルで撮ってしまったのだろう・・・。
本殿の右手から、山道を10分ほども登ると「稲荷の大杉」と呼ばれる巨杉の前に出る。
辺りは開けていて鬱蒼とした雰囲気は無く明るいが、樹齢千数百年と言われるだけあって、その樹皮の表情は厳かで、周囲を圧倒する風格がある。
目通り10m、樹高40mと、大きさもかなりのもの。
2万5千分1地形図 稲荷
撮影日時 090617 11時~11時40分
駐車場 神社前から南へ向かう道に入ってすぐに、観光客向け?らしき駐車スペースあり。
地図
地図を見て、それなりに参道が長そうだ、という理由で訪ねてみた神社である。
撮影日時を見てもらえば判るが、撮影してから随分と月日が経ってしまっている。
というのも、その参道の雰囲気が予想以上に素晴らしく、中途半端な時間帯の撮影であったことに納得がいかなかったからである。
その後、本腰を入れて夜明け前から行ってみたりしたものの、狙っていた光には出逢えず、参道の苔も、一度目の時に比べて色褪せていたし、更に紅葉シーズンにも訪ねてみたが、まだ色付いておらず、しかも参道脇には何故か土嚢が積まれていたりして、撮影自体を断念したり・・・。
そんなこんなで、また撮り直しに行こうと思いつつ、三度も行ったので半ば諦めも混じってそのままになっていた。
で、撮影日時が古いということは、撮り直しを諦めたということだけれど、まだちょっと未練が残っていたり・・・。
何の変哲も無い地元の人しか知らない神社と言えるが、苔と参道が好きな私には、思いがけず素敵な風景で迎えてくれた場所である。
車道からY字状に分岐して参道がある。車なら気付かずに通り過ぎてしまいそうな場所だ。
道路の交通量は多く付近の風景も平凡なので、鳥居の先の奥深さは意外なほどに感じる。もう一目見て気に入ってしまった。
参道に入り、鳥居を振り返る。
アスファルトの参道であるが、その表面は苔がびっしりと覆っている。
緑の帯に、陽射しが降り注ぐ。
日が翳れば、ちょっと幽玄な気配も漂う。
ただ、左手は木の間越しにすぐ民家があるし、車の音や犬の鳴き声なども聞こえてきて、ちょっと落ち着けない雰囲気であったりもする。
正面に階段。その上に僅かに拝殿が見えている。
アスファルトの上をコンクリートで補修してあるのか、斑模様を描く人口的な道だが、苔と周りの佇まいが、何とも言えず美しい道に変えてくれている。
鳥居を振り返る。
何だかとても厳かな、特別な道に見えてきた。
これだけ苔生すということは訪れる人も少ないのであろうが、参道両脇の砂地を見れば、きちんと掃き清められている様子が窺える。
拝殿越しに本殿。
階段を上がってすぐに拝殿があるので、拝殿の撮影をするスペースが無い。
狛犬は、普通の犬っぽい風貌。
狛犬の両脇(外側)には神牛も一対。
本殿。
境内社。
背後の斜面には、ウラジロの大きな葉が茂っている。
2万5千分1地形図 奈良
撮影日時 7枚目と社殿 080925 7時半~8時半
上記以外 080731 11時半~12時 3枚目のみ10時頃
駐車場 参道入り口付近にスペースあり
地図
福井県越前市朽飯町
鯖江駅のほぼ真東6kmほどのところにある。
朽飯の集落を貫く道路の突き当たりからが社域で、山と集落との明確な境界でもある。
集落自体は山間部の印象はなく、明るく開けていて、そこから急にせり上がった山の斜面に神社がある形だ。
地形図からは特徴を見出しにくい。南向き斜面にあることから明るい神社を思わせるし、そもそも斜面上にある神社は潤いに欠けることが多い。
だが、境内の雰囲気は、そういった条件とは全く逆の、潤いに充ちた空間であった。
集落名である朽飯は「くだし」と読む。この神社の祭神は機織の神様であるらしく、
百済から渡来した織姫達により機織技術が伝えられたことに因むらしいが、一時期は、集落名を「百済氏(使)」と称していたことがあったようで、それが転じて「くだし」になった・・・のかも? と思っていたら、何だか諸説あるようで・・・。
一の鳥居は集落内にあって、これは二の鳥居。
すぐ背後には民家が連なり、平地が大きく開けているが、鳥居の先は鬱蒼とした空間で、三の鳥居が木々に溶け入りそうに立っているのが見える。
三の鳥居。
三の鳥居をくぐると、山の斜面上とは思えない空間が広がる。
斜面の地形を利用して、縦の奥行きでなく、横の広がりを持たせたようだ。
本殿は、更に一段、高い位置にあり、鳥居正面にある奥の階段、そして手前の階段どちらからでも行ける。
これは上の写真とは反対側から境内を見渡したもの。
境内から三の鳥居。
奥に見える階段は、宝物殿への道。
サツキの植え込みなどもあり、よく手入れされた空間であるが、まるで谷間のように苔も見事である。
南向き斜面にあるとは思えない。
特に、この境内右手にある境内社周りは絨毯のようで、思わず忍び足で歩いてしまう。
こういう環境の中に佇んでいると、心まで潤っていくようで、ありがたく「ぼぉー」っとさせていただく。
こちには拝殿手前の石垣の下。
拝殿。
本殿。
2万5千分1地形図 河和田
撮影日時 090618 7時20分~8時10分
駐車場 集落内の道路、民家の前を避けて邪魔にならないように。
地図
毎年この時期になると、蛍を見に行ったりする。
都市部に住んでいるので、山地に向かって車を一時間ほど走らせねばならないが、とにかく山間部へ行けば、けっこう至る所でゲンジボタルを見ることが出来る。
子供の頃は京都に住んでいたが、行動範囲内に蛍はいなかった。
蛍を見るのは、一、二年に1回くらい、石川県の親戚の家に行ったときくらいで、それも水田にいるヘイケボタルだった。
高校生くらいになると、わざわざ滋賀県まで友達と蛍を見に行ったりもしたが、いちばん蛍が身近だったのは、三重県の名張市に住んでいたときだろう。
家から徒歩30秒の用水路にゲンジボタルがいたし、時には家まで飛んでくることもあった。
子供の頃、クワガタムシ捕りに夢中になったことがあって、大人になった今でもたまに「捕ってみたい」なんて思うこともあるが、蛍も、いつまで経っても特別な虫なのである。
そういえば、職場の女性に蛍の話をしたら、
「光っててもただの虫じゃないですか」
と言われてがっかり、というか愕然としたのがつい先日の話・・・。
春日神社 兵庫県篠山市東吹
篠山盆地内の残丘にあって、周囲は水田が広がる。
市街地は近いが、周囲は静かで、散歩するのに良さそうな環境だった。
春日神社 兵庫県篠山市川北
田圃の真ん中にこんもりと鎮守の杜。木々はそれほど深くはないが、周りが明るいので参道はトンネルのよう。参道脇に生えていたシダも、外から射し込む光に輝いていた。
春日神社 兵庫県篠山市野尻
春日神社が続くが、篠山はとにかく春日神社が多い。
ここは集落内にあって、背後の道は交通量が多く、やや落ち着きに欠けるが、愛嬌のある狛犬が出迎えてくれる。
春日神社 福井県小浜市口田縄
ここも春日神社だが、べつに意図したわけでなく、たまたまです。
八所神社 滋賀県大津市伊香立下在地町
集落内にある神社だが、思いのほか奥深い雰囲気だった。
拝所の奥には同規模の社殿が二つ並ぶ。
江文神社 京都府京都市左京区大原野村町
観光客で賑わう大原も、ちょっと外れれば静まり返った空間。それでいて、京都らしい雰囲気も伝わってくる。
日吉神社 京都府京都市右京区京北矢代中町
谷間の奥にあるので、深い参道と苔生した空間を期待したが、参道は林道になっており、境内の先は伐採地で明るくなっていた。
大神宮社 京都府京都市右京区京北細野町
この辺りでは珍しく、茅葺の神明造。
境内の一画は児童公園になっているが、ここで遊ぶ子供はいるのだろうか。
奈良県奈良市邑地町
奈良の神社に行こうかと思い立てば、普通は奈良市街、あるいは奈良盆地に目が行くのだろうけれど、私は例によって、山間部の地形図に目を凝らす。
奈良市東部の山中に、布目ダムという中規模のダムがある。その下流、布目川の右岸に、民家から離れて神社記号がある。
ネットの地図で、水越神社という名称であることが判り、その名前から更に調べると、巨木関連サイトで「水越神社のスギ」として紹介されるほどの大木があることが判った。
社叢林は奈良市の天然記念物にも指定されているようで、こうなるともう行かずにはおれない。
大して山深いところではないし、神社前は「水越神社前」というバス停だったりするが、時刻表を見ればバスは1日1本のみ。
木々は豊かで、静かでのんびりとしたところである。
布目川に架かる橋の向こうに神社入り口。
境内が川縁より低くなっているので、鳥居も低く見える。
民家からは離れているし、紹介されることも少ない神社だが、良く手入れされた綺麗な参道が真っ直ぐ伸びている。
一の鳥居をくぐり抜けると、木々のせいか、空気の色合いが変わったように感じられる。
上手く説明できないのだけど、外では光と空気がぶつかり合っているような感じなのに、境内では溶け合っているというか、写真を撮っても、素直に写ってくれるのだ。
参道を横から見る。
湿度が高いという意味ではなく、とても潤いのある空気感だ。
二の鳥居の右、舞殿の背後に、杉の巨木が見えてくる。
そして重なり合った鳥居と社殿の奥に、本殿の朱色がちらりと顔を覗かせる。
二の鳥居と舞殿。
舞殿の右から、拝殿と杉の巨木。
本殿をすっきりと見通せる場所がなく・・・。
ここから見ると、大木は三本あることが判る。
本殿の右手に回り込むと、木の柵越しに真横から見られる場所があった。
鮮やかな朱塗りと、淡く光を反射する檜皮葺の屋根が美しかった。
2万5千分1地形図 柳生
撮影日時 090522 10時10分~11時
駐車場 橋の近くにスペースあり
地図