神社のある風景

山里の神社を中心に、歴史や建築等からの観点ではなく、風景という視点で巡ります。

九頭神社

2008年03月31日 | 京都府

京都府京都市右京区京北細野町

九頭神社と言えば大和に多い神社であるが、ここ、右京区の山中にも九頭神社がある。
尤も、右京区の京北であって、普通の人にとっての右京区の概念からは遠く離れている。私自身、今でも京北は京北町という捉え方をしているし、京北の中心は周山であると思っている。
市町村合併の是非はともかく、行政区画というものは、時に地形的、地勢的な位置付けや、歴史的な成り立ちなどを無視したものになるから、暫く違和感は拭えないだろう。

神社と全く関係の無いことを書いてしまったけれど、交通量の多い周山街道から少し逸れた山中にある静かな良い神社である。



余野集落の外れの山裾に鳥居が見える。
鳥居の両脇には杉の大木がある。こういう神社は時々あるけれど、とても好きな風景の一つだ。
恐らくは植えた人が居た筈で、百年単位の歳月を経たこの風景を、果たして脳裏に描いていただろうか・・・見せてあげられたらな、などと思ってしまう。
私事だけれど、私が卒業した小学校は、私達が第1回卒業生で、記念に校庭の周りに植樹した。
一人1本は割り当てられたので、私自身が植えたものもあるのだが、今となってはどれがどれだか判らない。ただ、私の身長とさほど変わらなかった木は、今、どれもが二階建ての屋根くらいにまで成長している。
久しぶりにその木達と再開した時は、言葉に出来ないような感動を覚えたものである。


参道は短いけれど、横には小さな流れもあって、緑濃く潤っている。


拝殿。


本殿は残念ながら完全に覆われてしまっている。
本殿右手には小さな池があって、モリアオガエルの卵塊が幾つもぶら下がっていた。


2万5千分1地形図 周山(北西)
撮影日時 070705 9時~9時半

地図


新井神社

2008年03月30日 | 兵庫県

兵庫県丹波市柏原町大新屋

式内社でもある新井神社は、茅葺の本殿で知られており、県の重要文化財にも指定されている。
いままで祭神や建築には触れてこなかったし、今後もそのつもりだけれど、建築の重要度はともかく、良い建物は風景としても映えるものである。
ただ、一般的には開放的で爽やかな神社と言うべきなのだろうが、正直なところ、根暗(?)な私には身の置き場に困ってしまうような明るさがあって、早々に退散してしまった。
本殿にある、有名な猿の木彫りも撮り忘れ・・・。



道路からすぐ境内。垣根なども無く、境内が見渡せてしまう。


苔生した茅葺の屋根は、素朴で温もりを感じさせるものだ。


柔らかな雰囲気でありながら、木の陰影は重厚感あるもの。
・・・しかし、重文でありながら、屋根の傷みは激しい。


これが深い杜にあったならなぁ、と思わなくもないが、いままで見た茅葺の社殿は、どれも比較的明るい場所にあったように思う。
日当たり悪く、湿度が高いような場所は、茅葺では傷み易いのかも知れない。


2万5千分1地形図 柏原(北西)
撮影日時 080313 10時過ぎ

地図 


加茂神社

2008年03月28日 | 兵庫県
兵庫県丹波市山南町金屋

丹波市の山南町は、どういうわけか桧皮葺の神社が多い。
しかも、本殿を覆屋で保護しているところも少なく、「観る」という立場の人間からすれば、とても有難い状態であるが、維持管理する方は大変であろうと思われる。

この加茂神社も、小さいながらも見ごたえのある本殿だ。
地図にこういった情報が載るわけではないし、開けた谷の傍にある神社としか読み取れなかったのだが、こういう神社を見ると、とても得をした気分になってしまう。
ごく普通な山里にある、小粋な神社といった感じだ。



見ての通り、入り口から本殿までは直ぐで、境内は狭く、小さな神社。
写真では判り難いが、左側にある小さな境内社も桧皮葺である。


複雑な形状の屋根。秀麗な姿だ。


彫刻等、細かいところも凝っていて、ひとつひとつ見ていくのも楽しい。


振り返れば、水田と集落が望まれる。




境内社も趣がある。
明るく伸びやかな場所でありながら、繊細で味わい深く、気持ちの良い空間だった。


2万5千分1地形図 柏原(南西)
撮影日時 070718 11時過ぎ

地図

朝倉神社

2008年03月26日 | 京都府
京都府南丹市園部町千妻

南丹市の園部町から日吉町へ向かう道を走っていると、「千妻の大杉」という小さな看板が出ているので、以前から気になっていた。
道路からも、水田の向こうの山裾に、それらしき背の高い杉の姿が見えていた。

朝倉神社は千妻集落の鎮守で、ここの境内に「千妻の大杉」がある。
神社が目的なのか、大杉が目的なのか判らなくなるけれど、とにかく集落へと続く狭い道に入ってみた。



道路が左へ曲がるところから神社への小径が分かれていて、すぐに鳥居が見えてくる。
道の脇の茂みで、蜘蛛の巣に引っ掛かって藻掻いている虫がいる。何かと思ってよく見ると、スジクワガタだった。
巣から助け出してみるが、胴体を糸で雁字搦めにされていて身動きが出来ない状態。恐らく、蜘蛛にしてみても鋏まれては堪らないから、取り敢えず縛って弱らせる算段だったのだろう。
かなり苦労して全ての糸を取り除く。
が、私を敵と見做して威嚇してから逃げていく。


ここまで来ると、大杉の存在感が、ひしひしと伝わってくる。


振り返ってみる。
短いけれど、気持ちの良い小径だ。


小さな本殿に、大きな御神木。
真ん中辺りで裂けたようになっているのは落雷によるものらしく、一部、黒く焦げた痕がある。
この裂け目から根元にかけて腐朽が見られ、やや樹勢も衰えているようである。


京都府下最大級の杉で、府指定天然記念物である。
何だか、「巨木のある風景」になってしまった・・・。


2万5千分1地形図 園部(北東)
撮影日時 070627 7時半前後

地図


2008年03月25日 | その他

いつも季節など全く考えずに記事をアップしているので、たまには季節感のあるものを、と思い、桜の画像を取り上げてみた。
尤も、桜を目的に撮影に行ったことは無いし、神社巡りのついでに去年撮ったものしかないので、今年はもう少し撮りたいなぁ、と考えている。

この時期、各地の山里の神社を巡っていると、日本というのは、つくづく桜なのだな、と思う。
濃い杉の緑に覆われた山肌に、或いは、まだ芽吹く前の茶褐色の山肌に、河川の堤防に、民家の軒先に、学校の校庭に・・・。
とにかく、そこかしこに桜はあって、鮮やかに春の訪れを伝えてくれる。



和歌山県新宮市熊野川町瀧本    070405 9:31


和歌山県那智勝浦町高遠井    070405 16:01


京都府綾部市和木町    070411 13:55


京都府綾部市和木町    070411 13:46


兵庫県篠山市福井    070409 6:58


兵庫県篠山市小田中    070409 5:51


兵庫県篠山市小田中    070409 5:48

追手神社

2008年03月24日 | 兵庫県
兵庫県篠山市大山宮

篠山では比較的知られた神社で、近くには追入神社というものもあり、追いかける神様と追われる神様の伝承などがあるのだが、伝承や神社そのものよりも、境内に聳える「千年モミ」の方が有名だろう。
ただ、訪れたのが黄葉シーズンだったため、同じく境内にある「夫婦イチョウ」の方が目立っていた。
国道からも見えるので、その見事な黄葉につられて、つい立ち寄るドライバーも多く、やや落ち着けなかったが、普段は案外とひっそりしている。
明るく開けた場所ではあるけれど、木陰にベンチなどあって、付近の方々の憩いの場といった雰囲気である。



黄色く染まった境内の奥に本殿。
絵になる光景なのだけど、立て看板が・・・。


モミの木としては日本最大の「千年モミ」。
遠近感のせいもあるが、それなりの大木である「夫婦イチョウ」が小さく見える。
こんな木を見て育った人は、「木」というものの概念が、私などとは違っているのではないだろうか。


本殿。
地元の方が来て、本殿と全ての摂社の蝋燭を灯されていかれた。


本殿前から境内を振り返る。
秋色の絨毯といった感じであるが、知らないうちにギンナンを踏み潰していたらしく、帰りの車の中では暫くギンナンの匂いに悩まされ・・・。


2万5千分1地形図 柏原(南東)
撮影日時 071114 13時前後

地図

岩神社

2008年03月23日 | 奈良県

奈良県宇陀市大宇陀区栗野

国道370号線を北上しているとき、右手に鳥居が見えた。
予定に無かった神社を見つける度に寄るわけではないが、ちょうど国道沿いに広い駐車スペースがあったので、急遽、立ち寄った次第。
どういうわけか、どの地図を見ても記載されておらず、予定の立てようも無かったわけで、こういう偶然も、神社巡りの楽しみの一つである。

神社自体は、大きくは無いが趣のあるもので、この地方独特の雰囲気を湛えている。
本殿背後に磐座があって、それが名の由来らしいが、なんとも素朴なネーミングで気持ちよい。



国道から狭い道に入り、津風呂川を渡ると神社前。
なかなか立派な鎮守の杜である。


境内にも岩が露出している。
本殿は高みにある鳥居の奥で、手前にある摂社群と共に、鮮やかな彩色が施されている。


なんとも神さびた雰囲気が漂う。


本殿前から、この鳥居まで、一直線に土が盛り上げられていた。鳥居の向うは杉の木と石垣で、普通に人が通るためのものとは思えない。
まるで、神様の通り道のように思えたが、実際のところはどうなのだろう?

どの地図にも載っていないため、下の地図リンクで表示される位置は、私が「恐らくこの辺り」といった程度で判断したもので、正確でない可能性があります。


2万5千分1地形図 古市場(南東)
撮影日時 070823 13時半過ぎ

地図


若狭姫神社

2008年03月20日 | 福井県

福井県小浜市遠敷

若狭彦神社の北、1.5kmほどの場所に鎮座。
若狭彦神社の上宮に対して下宮と呼ばれる。
付近は山里と言うよりも町の気配。民家が立ち並び、目の前には小学校があって、子供達の喚声が聞こえてきたりする。
境内も、若狭彦神社より開けて明るく、参拝者も幾分か多いようだ。
本来なら、落ち着けない環境と感じる筈なのだが、何故か居心地がいい。
あまり昨今風の言い回しは使いたくないけれど、若狭彦神社が癒し系ならば、若狭姫神社は和み系といったところだろうか。
神域の空気と町の賑わいとが、見事に溶け合った素敵な場所である。



これは二の鳥居で、一の鳥居は数十メートル手前の家並みの間にある。
若狭彦神社のような深い参道は無く、明るく伸びやかな空間が広がる。


神門。
左手には、木々の茂る気持ちのよい広場。右手には社務所がある。


若狭彦神社と似た空間の構成と本殿。
千年杉と呼ばれる御神木の存在感が凄い。


本殿向かって右手の摂社。


左手の摂社。
摂社と言っても、山里の小さな神社の本殿くらいの大きさがある。


全体的に若狭彦神社よりも明るいが、所々に大木があって、豊かな杜を形成している。


2万5千分1地形図 遠敷(北西)
撮影日時 070913 13時前後

地図


若狭彦神社

2008年03月19日 | 福井県
福井県小浜市竜前

道路地図などを見ると、有名な観光地や寺社は、赤字や太字、或いは大きな文字で名称が記載されている。
若狭彦神社もその一つで、子供の頃から地図をよく見ていた私は、幼いながらもその名称を記憶していた。
だが、神社に特別の興味があったわけでもなく、若狭の海や山に行くことはあっても、若狭彦神社を訪ねることは無かった。
初めて訪れたのが一昨年のこと。
道路地図で刷り込まれた記憶には、有名観光地と同じように記載されていた若狭彦神社に対して、参拝客が多く、神社前には土産物屋が立ち並ぶ、といったイメージが伴っていた。

長閑な山里の風景。鳥居の周辺には普通の民家と、たった3台ぶんほどの駐車スペース。
深い木々と、それに溶け込む品のある社殿。
イメージとは懸け離れた、静かで、神さびた空間があった。
諸国の一ノ宮を巡ったわけではないけれど、一ノ宮という位置付けにありながら、ここまで落ち着いた雰囲気に浸れる神社も珍しいのではないかと思う。



土産物屋が無い、駐車場が小さいことにも驚いたが、鳥居が質素なことにも驚いた。
けれど、この環境に堂々たる威容を誇る鳥居など必要ないと思える。


深い緑に包まれた参道。
山里から、森の雰囲気に変わる。


神門。その向うは日差しが溢れる。
胸が高鳴る空間の構成だ。


神門から本殿を見る。


派手さの無い、緑と調和した姿。


私が普段、訪れているような山里の小さな神社とは違い、さすがに時おり参拝者は来る。
が、懐深く、静けさは揺るがない。


手水も質素で風情がある。


境内周辺は大木も多く、落葉の深く積もった森になっている。


2万5千分1地形図 遠敷(北西)
撮影日時 070913 13時半~14時

地図


滞在時間

2008年03月17日 | その他

 今までに訪れた神社の数は、およそ400社。この数は、一般の人に言うと驚かれるが、同好の方からすれば、大したものでは無いと思われる。
 先日、ふと気になって、それぞれの神社における滞在時間を調べてみた。いちいち記録を取っているわけではないが、デジカメのデータを見れば、おおよその時間は調べられる。
 滞在時間の長い神社は、それだけ印象に残っている筈だし、複数の神社名を挙げることが出来るけれど、意外なことに極端に短時間しかいなかった神社も、逆にハッキリと覚えているものだ。
 例えば、京丹波町小野にある熊野神社。ここは、神社の横に民家があり、そこの犬が、やたらと吠え立てる。とにかく落ち着いていられないし、半ば不審者の心境で、逃げるように退散してしまった。滞在時間は約1分。
 更に短いのが、おおい町神崎の熊野神社。ここは夕暮れ時に訪れたのだが、鳥居の先には凄まじい蚊柱が立っていた。蚊柱は吉兆とされることもあるようだが、それは見かけた時のことであって、わざわざ蚊柱の中を突っ切りたい人はいないだろう。
 結局ここは、境内には入らず鳥居前から簡単に参拝を済ました。滞在時間、約20秒。
 どちらも写真の撮影枚数は1枚。そしてどちらも熊野神社である。私は熊野の地が好きなのだが、熊野の神様には好かれていないのかも知れない。
 さて、滞在時間の長い方であるが、約6時間超というのが2社あった。もちろんこれは1回の時間ではなく、複数回訪れた合計時間である。
 一つは既にここでも紹介した、篠山市後川上の春日神社。ここへは6回訪れているから、1回あたり1時間といったところだ。
 理由としては、
 神社前に駐車場所があること。これが意外と重要で、路肩などに停めていると、他の車の邪魔にならないだろうかと、落ち着いて参拝出来ない。
 夏でも比較的涼しく、しかも虫が少ないこと。亀岡の走田神社などは、1分に3箇所は刺される。
 訪れる人が少ないこと。というか、6時間以上いて、誰ひとり出会ったことがない。
 けっこう植物が豊かであり、光線状態も良いこと。
 などが挙げられる。
 最後の理由以外は写真には写らないものであるが、とにかくここは、居心地の良さといったものが魅力である。
 もう一つ6時間以上滞在した神社は、丹波市氷上町にある内尾神社である。訪問回数3回で6時間だから、1回あたり2時間だ。
 ここは、鳥居、参道、石段、拝殿という構成が絵にしやすいのと、木々や雰囲気が魅力である。
 同じく神社前には駐車場があるし、訪れる人も少なく、6時間で出会ったのは親子連れ1組のみ。私にとっては、とっておきの神社の一つで、いずれ紹介せねばと思う。
 が、以前に、写真の出来などから紹介できるのは10社のうち1社くらいだと述べた。今現在、紹介した神社が31社。訪れたことのある神社が400弱だから、残り9社くらいしか紹介出来ない計算になる。
 もちろん、これから訪れる神社もあるし、少々気に入らない写真も使えば2、30社くらいは紹介できそうだが、「とっておき」を出してしまうと後が無いぞ、という気になってしまい、出し惜しみしてしまうのだ。
 と、こんなことを書いていて、ふと撮影枚数が一番多いのはどこだろうなんて疑問が浮かんできた。
 いや、さすがに面倒だから数えはしないけれど・・・たぶん。