奈良県吉野郡東吉野村大字瀧野
滝や渓谷が好きなので、神社を巡っていても近くに滝などがあれば立ち寄ったりする。
やはり神社の場合と同じで、観光地化されたような人の多い場所は避ける傾向にあって、規模などよりも雰囲気を重視してしまう。
滝も地形図に名称が記載されないことが多く、かなり大きな滝であっても記号さえ載っていないことはザラなのだが、神社と違って、地形を読めば大体の判断はつく。
投石ノ滝は、さして大きなものではないが、地形図に名称もあって、それなりに有名なようだ。ネットで検索しても、いくつかの記事を見つけることが出来る。
近くを通ったのは紅葉シーズン。
とは言え、もとより人が多く訪れる地域ではないし、平日でもあったので、立ち寄ってみることにした。
地形図にも神社記号があるし、神社の記事として扱うべきか迷ったのだが、鳥居の扁額にもあるように、不動明王が祀られている。
広義には神社になるのかも知れないが、いわゆる一般の神社とは違うし、滝の方が有名なので、「ちょっと寄り道」で書くことにした。
落差12m。派手さは無いが、優美な滝である。
モミジの色は、赤や黄色は殆ど無く、橙色を主体としたもので、あまり冴えない。
御神木と社殿。
出会ったのは1組の夫婦のみ。その方たちの、砂利を踏み締める音が遠くへ聞こえなくなると、あとは滝音のみに包まれる。
地味だけれど、暖かな色合い。
谷に沿った遊歩道は僅かな距離だが、ゆっくり歩いて駐車場へと戻る。
2万5千分1地形図 高見山(北西)
撮影日時 071122 11時半頃
地図
京都府亀岡市宮前町宮川
亀岡にある半国山は、京都周辺の山に登る人達には、比較的よく知られた山である。
宮川神社は、その半国山の麓の谷沿いにある。
谷間にある神社は少なくないが、清流と呼べるほどの流れが境内のすぐ横にある神社は数少ない。
ここは、そんな数少ない神社の一つで、そのせいか清冽な印象を与えてくれる。
すぐそばには水田と民家の密集地があるのに、鳥居を一歩くぐれば山の気に包まれる。
職場の後輩T君と訪れたとき、都会育ちの彼は神社の雰囲気を、「冷気を感じる」と表したが、山慣れた私には、もう少し柔らかな、優しい空気に感じられた。
お互いの感じ方は違えど、いいところだなぁという感想は一致し、何度も訪れている神社でもある。
鳥居をくぐると、ちょっとお寺の雰囲気のような参道。
苔に覆われた境内から鳥居を振り返る。
舞殿越しに、谷の対岸を見る。竹林があるので緑が柔らかい。
境内に入って右手に本殿があるのだが、真っ直ぐ奥へ進めば、こんな小径が森の中へ伸びている。
なんとも言えない素敵な小径だ。
小径の横には清流が流れている。
清流は、緑のトンネルの中を縫うように流れる。
谷中の岩にも苔が多いのは、流量が安定しているからであろう。
本殿横から舞殿を見る。こちらも苔に覆われた潤いある空間。
右手が本殿で、覆屋の中にある。
本殿背後には大きな磐座があって、建物と接するように迫り出している。
2万5千分1地形図 埴生(南東)
撮影日時 1~3、6~9枚目 070625 5時半~7時
4、5、10枚目 080116 9時半頃
地図
地形図をちょっと見た限りでは山麓にあるように見えるが、よくよく見れば、極めて小さな谷地形に鎮座していることが判る。
実際、境内は行き止まりを感じさせる狭く小さな空間にある。
だがそれが、参道入口からは、奥行きのある景観を見せ、いかにも神域に相応しい雰囲気を湛えている。
水など無いと思える小さな谷だが、滲み出す程度の水はあり、地形的にも湿度は高いらしく、境内は苔むしている。
訪れたのは、夏の早朝。
社務所らしき建屋には縁側があり、地元の男の子二人がそこに腰掛けていた。
朝の光を浴びて、何だか夏の田舎を舞台にした映画のワンシーンのようだった。
小さな社だけれど、とても趣ある神社である。
神社前は長閑な田園風景。
参道には、まだ朝の光は届いておらず、青味を帯びた、深く清浄な空気に包まれている。
本殿周りもまだ薄暗い。
左右と前方が斜面で形成される行き止まりの空間は、厳かな気配を感じる反面、どこか包まれているような落ち着きも感じさせてくれる。
振り返れば、参道が青い帯を描き、その向うは朝陽で眩しく輝いていた。
夏とは思えないほど清清しい朝のひとときだった。
2万5千分1地形図 宮田(南西)
撮影日時 070816 6時過ぎ
地図
椙杜神社とは、いい名前だと思う。いかにも木々が豊かな境内を想像させる。
実際は、椙(杉)もあることはあるが、本殿横のツガの大木が目立っている。
また、本殿より奥に進んだ摂社のそばにもハリギリの大木があって、どちらも町指定の天然記念物となっている。
集落近くには、若狭テクノバレーという工業団地が出来ているが、神社付近は地形的に行き止まりの場所であり、静かな環境にある。
集落を抜けると神社前到着。ちょうど百日紅の花が満開だった。
参道は、木漏れ日の降り注ぐ雰囲気の良い小道で、距離は短いけれど、ゆっくりと味わうように歩く。
木々に囲まれた空間に、苔生した狛犬。
本殿左後方にある摂社への道は、まさに苔の絨毯だ。
思わず、歩みを躊躇ってしまう。
2万5千分1地形図 遠敷(北東)
撮影日時 070913 10時頃
地図
京都府南丹市園部町仁江
篠山市から南丹市の園部町へ抜ける道は、よく利用する。
蛭子神社はその道沿いにあり、神社入り口にある奇妙な形の大木はよく目に付いた。
が、なぜかいつも素通りしていた。すぐ横に人家があるので落ち着けなさそうという気がしたし、まあいつでも寄れるという気持ちもあったのだろう。
ところがある日、衝動的に寄りたくなった。雨上がりの夕暮れ時で、撮影には暗すぎる条件。しかも、通り過ぎる瞬間に芽生えた衝動だから、車をユーターンさせねばならない。
よく判らないけれど、とにかく無性に、といった感じで参拝し、そしてその分、満ち足りた思いになれた神社である。
神社は小さく、境内は狭い。隣には人家もある。が、静謐な空気に満ちていた。
訪れる時間帯や天候によって、全く印象は変わるかも知れないが、濡れた地面と淡い光が、沁み入るような落ち着きを醸し出していた。
本殿の背後には磐座があって、その辺りは更に暗く静まり返っている。
境内から神社入り口を見る。
手前の広場は小学校跡らしいが、さほど広くはない。小さな小学校だったのだろう。
奥にある大木はケヤキだそうで、逆S字形の奇妙な樹形をしている。
大木は山中にあった方がいいと思うが、こういう場所にある方が、より時代の移り変わりを見てきていると言えるだろう。
子供たちや地域の人たちに親しまれ、見る人の思いに触れ、道路が出来、車が走るようになり・・・そういった変遷を生き抜いてきたのだ、と考えると、深い畏敬の念を覚える。
2万5千分1地形図 園部(南西)
撮影日時 070425 18時半頃
地図
宇陀市の、かつての大宇陀町辺りの地形は複雑で、深さや険しさは無いものの、小さな谷と尾根が入り組んで、掴みどころが無いといった感じである。
そんな山襞に隠れるように、地図に名前も載らないような小さな神社が多数あって、しかもそれらの多くが境内に大木を擁しているので、歴史と自然との融和を感じさせ、探訪の興味は尽きない。
この八坂神社もその一つで、何の変哲も無い穏やかな山懐で、思いがけず立派な木々に出会わせてくれた場所である。
大宇陀健民運動場のそばから山際の狭い道に入る。左手には田畑が広がり、風景は明るい。
参道左手はフェンスと車道のため、やや味気ない。
鳥居付近は大木が林立するが、南向きのせいか、雰囲気は明るい。
境内は、やや高い位置にあるので、田畑や集落を見渡すことが出来る。
2万5千分1地形図 古市場(北西)
撮影日時 071122
地図
大歳神社は西日本に多く、中でも兵庫県には400近くの大歳神社があるという。
農耕神らしく、大抵は田畑のそばに多いように思うが、ここは山懐に抱かれた場所である。
ただ、神社の横には溜池があるので、田畑を育む水源となる大切な場所、という意味合いがあるのかも知れない。
神社へは、集落内の狭い道を通らなければならない。
民家が途切れるところで害獣避けのゲートがあって、近くの民家で飼われている犬が吠え立てる。何となく不法侵入しているような気分で、あまり音を立てずに素早くゲートを開けたいのだが、やたらと大きな金属音を発してくれる。
ゲートから先は、山の中といった雰囲気で、のんびりと林道を進めば、すぐに神社前に辿り着く。
鳥居と石段と社殿に、苔と紅葉。暫し心奪われる。
小さな広場に、ぽつんと本殿。拝殿や狛犬は無い。左手には池を背にして摂社がある。
境内背後の林内では、紅と黄の鮮やかな饗宴。
手水鉢の中も、落葉が彩りを添えていた。
撮影日時 071202 12時前後
夏の大歳神社
撮影日時 070718 14時半前後
2万5千分1地形図 柏原(南東)
地図
ここも、どの地図を見ても記号の記載が無い神社である。
もっと小さな神社が記載されていることも珍しくないのだが、どういうわけか、そうなっている。
園部の市街地から園部川を少し遡った北側に、黒田の集落がある。
人家は山際に固まってあり、辺りは広い水田地帯だ。
集落の西にお寺の記号があるが、この北側が神社の入り口で、ここから長い参道が続く。
等高線が、極めて小さな谷の切れ込みを描いており、標高差にして40メートルほど登ったその谷沿いに神社がある。
ややキツイ登りを強いられるが、ひっそりと落ち着いた風情の神社である。
お寺の奥の一の鳥居を過ぎて暫くで、この簡素な石段が現れる。一直線にのびていて、何となく襟を正す気分になる。
石段を登りきり、道が平坦になると二の鳥居が見えてくる。
二の鳥居から、奥の拝殿を望む。
よくあるタイプの拝殿に見えたが、中を通り抜けられるようになっており、割り拝殿のようでもある。
拝殿から本殿。本殿は覆屋の中。
左手に手水舎があり、小さな谷の水で直接手を洗うようになっているが、水は少ない。
2万5千分1地形図 園部(南東)
撮影日時 070909 9時半前後
地図
大阪府高槻市田能
高槻市の最北端に近い、京都府境に接する場所にある。
大阪も、この辺りまで来ると鄙びた山里の風情があるが、昭和の半ば頃までは京都府だったところで、距離的に見れば、昔は亀岡との結び付きが強かったのも容易に想像出来る。
神社は尾根上にあり、参道は長い。およそ船とは無縁の地にあって、樫船神社の名称は不思議に思われるが、これは、かつて亀岡盆地が湖沼であったことに因むという。
亀岡が湖沼だったのは4世紀頃まで。地名や名称の語源を辿るのは、その場所の、かつての姿を垣間見るようで楽しい。恐らくは樫も多かったのだろう。
急な石段の先に一の鳥居。
尾根上に出て、道がやや平坦になると二の鳥居がある。この辺りは、ひっそりとしていて良い雰囲気だ。
境内は、尾根上にしては広く開けている。
紅葉のピークは少し過ぎているようで、色合いは今ひとつ。
本殿の周りも晩秋の風情。
2万5千分1地形図 法貴(北東)
撮影日時 8時半過ぎ
地図