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一目散に逃げ出した社長に怒り…帝国データバンク調査員が見た、衝撃の倒産現場

2023年07月13日 07時27分32秒 | 経営

2022年度の倒産件数は3年ぶりの増加となった。倒産企業は企業規模もさまざまだが、それぞれに「企業の最期」という非日常のドラマがある。倒産現場ではどのようなことが起きているのか。そのリアルな実態として、2つの事例を紹介する。(帝国データバンク情報部 藤坂 亘)

業界環境が悪化する中で

ゼロゼロ融資も断られたO社

 2022年度は全国で6799件の倒産が発生し、倒産件数は3年ぶりの増加となった。コロナ禍で落ち込んだ業績や、その間に抱えた債務、昨今のエネルギー価格高騰、物価高、円安など、企業を取り巻く環境はめまぐるしく変化しており、今までのビジネスモデルでは対応できない企業も数多く出てきている。

 企業倒産の増減は、景気を表す一つの経済指標として捉えられることが多い。そのこと自体は経済全体を見通すために必要なことだろう。しかし、倒産したそれぞれの企業には多くの人が関わり、多くの人生が詰まっていることも忘れてはならない事実だ。

 帝国データバンクの情報記者は、企業倒産を取材する過程で、その人間模様を目の当たりにすることがある。1年に6799件発生する倒産のうちの一つでしかなく、負債も決して大きくない企業であっても、そこには「企業の最期」という非日常のドラマがある。

 これが倒産現場のリアルだ。

 以下、一つ目として紹介するのが、新聞の折り込みチラシを扱っていたO社の事例である。

 大阪メトロ中央線の長田駅の改札を抜けると、既に午後7時を回っていた。駅前のショッピングセンターの横を通り過ぎると広がる紙文具団地。人けもなく、だだっ広い上に、トラックの往来でひどくひずんだ道路が続く。「関係先に倒産の通知が届いているようだ」という問い合わせがあったその会社は、そんな企業団地を抜けた先にあった。

 受任通知が出ているなら張り紙があるはずと考えていたが、会社に到着するとシャッターが開いていた。前には1台のハイエースが止まっている。予想外の展開に、一度会社の前を通り過ぎ、念のため、問い合わせ元に社名と状況を再確認する。万が一にも間違いは許されない。間違いのないことを確認し、意を決して会社へ向かった。

 ガランとした倉庫内には、パイプ椅子に腰掛け、携帯を見つめる男性が一人。取材に来た経緯を説明すると、取締役を名乗るその男性は小さくうなずき、倒産の事実を認めた。そして、倒産に至った経緯を訥々(とつとつ)と話し始めた。

「新聞の発行部数も減ったし、ネット広告が普及したし、折り込みチラシが少なくなったからなぁ。そんなときにコロナ。うちはパチンコ店や不動産関係のチラシが多かったから。コロナの感染が拡大した当初、『パチンコ店などが感染源』って相当たたかれたましたよね? だからチラシ広告を出すパチンコ店なんてどこもありませんよ」

 新聞折り込みチラシを扱っていた同社は、業界環境の悪化とコロナ禍での急激な受注減に苦しめられていた。

「ゼロゼロ融資は受けたんですか?」

「二度、申し込みました。そして二度、断られました。『融資を受けられなければ、うちは倒産します』と言っても駄目でした」

 取締役は口惜しそうな様子で続ける。

「でも、政治家による違法な融資仲介がニュースになってましたよね。不正をした企業は生き残っていいんですか。うちだってそうすれば良かったんですかね」

 私は言葉に詰まった。「ゾンビ企業を救った」「甘い審査」「金融モラルハザードを生んだ」といった、ゼロゼロ融資に対する世間の追及。だが、どんな企業でも融資を受けられたかのような前提に立った批判も、融資を受けられなかった企業を目の前にすると、あっけなく崩れ落ちるだろう。

「実は弁護士には『絶対にシャッターを開けないように』と念を押されてたんです……。でも、最後の片付けですから(シャッターを開けていました)。これも何かの偶然ですね。世間に現実を伝えてください」

 

 取締役との立ち話は30分以上に及んだ。O社を出たときは既に午後8時を回っていた。

 一層寂しさが増した企業団地。開かれたシャッターは、救いの手から零れ落ちてしまったこの企業の「生きた証を遺したい」という取締役の思いを表しているようだった。

 

債権者が事務所に来るや

社長が逃げ出したM社

 私は倒産の問い合わせのあった運送会社のM社へ向かった。県道を曲がると異様な光景が目に入った。稼働せず、敷地内に停められたままの多数のトラックと、会社を囲うように停められた多数の乗用車だ。

 会社の敷地には背の高い男性が一人。声をかけたが、彼は無言でプレハブの2階を指さした。私は事務所1階の自己破産を告げる張り紙を確認し、急な階段を静かに上った。

「はい」

 香水とタバコのにおいが混じった事務所に入るなり、書類一式を渡された。解雇通知書だ。

「従業員じゃないです。帝国データバンクです。社長はいらっしゃいますか?」

 10人ほどの視線が一気に集まり、事務所は静まり返る。

「自分ですけど、なんですか?」。奥でしゃがむ男性が答えた。

「張り紙を見ました。少しお話……」

「帝国さんに話すことなんかありません」

 社長は私の言葉を遮り、吐き捨てるようにそう言った。

 現場で取材を拒否されることはよくあることだ。ただ、会社の前にいるトラックドライバーたちの不満げな表情と、ある一台のトラック(詳しくは後述)に違和感を覚え、現場に残って取材を続けることにした。

 しばらくすると、乗用車が二台、目の前に止まった。降りてきたのは、いかにもベテランドライバーという感じのいかつい男性2人。しかし、こういう人たちこそ話が通じるというのが世の常。予想通り、世間話をしているうちに心を開いてくれた。

「社長と何人かの役員待遇の社員は良い生活しているのに、おれらは給料すら払われてないんだよ」

「いつからですか……。トラブルとかありました?」

 給与未払いの情報は、既に数カ月前からつかんでいたが、あえて聞かずにはいられなかった。

「最初は、(取材時の約5カ月前となる)6月に集められて、『数%カット』と言われた。確かあのとき、トラックの事故があった後かな。幹線道路をふさいで大変だった。あそこにあるぐちゃぐちゃの、それ」

 そう言って指さす先には、窓ガラスが割れ、左フロントから荷台側面がひしゃげたトラックが、痛々しい姿のまま放置されていた。私が違和感を覚えたトラックだ。

「でも、ずっと前からひどかった。社長が代わってから。大口のお客さんもあきれてた。社長に意見できた唯一のベテラン社員も辞めてしまったしな」

 帰り際、社長と役員であろう男性が事務所から出てきたので、しばらく様子をうかがっていた。そこに、白色の営業車に乗ったスーツ姿の男性が訪ねてきた。おそらく債権者だ。彼が事務所へ向かうのを見るや、社長らは急いで車に乗り込み、逃げるように会社を去っていった。

 その瞬間、私は怒りが込み上げた。

 これまで、数多くの倒産現場で経営者を見てきた。全ての取引先に謝罪して回っていた社長、私財をなげうって従業員を守った社長、そこには最後まで責任を全うしようとした経営者の姿があった。その人たちに比べて……。

 その後も何人かの従業員が訪ねてきたが、社長がいないことに皆困った様子で会社を後にした。その中には、3カ月前に入社したばかりという20代の男性もいた。

 M社の事務所から最寄り駅までの約1.5キロメートル。帰り道、取材に応じてくれた従業員らの顔が浮かぶ。従業員の人生を背負う覚悟のない経営者の下で働くのは不幸だ。そんなことを考えているうちに、大通りに出た。突然解雇通知書を受け取ったドライバーたちは、どんな思いで家路に就くのだろうか。

 こうした一つ一つの倒産が積み上がり、年間の倒産件数が算出される。景気動向、技術革新、業界環境の変化、法律の規制といった外部環境と照らし合わせて分析される倒産件数の増減。しかし、倒産する全ての企業が、そんな一般論で語られるようなことだけが原因で倒産するわけではない。

 関係者もしくは現場でしかわからないそれぞれの企業の内部環境こそが、本当の倒産要因といっても過言ではないだろう。今まで見届けてきた数々の企業と従業員のためにも、それぞれの倒産を机上の空論で片付けるべきではない。倒産は現場で起きているのだから。

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“金持ちの国”日本人はなぜ海外旅行をしないのか=報道に韓国ネット「個人が貧しくなったから」

2023年04月24日 07時20分03秒 | 経営

2023年4月20日、韓国・韓国日報は「韓国をはじめとする海外からの観光客が日本に押し寄せているが、日本人の海外旅行規模は回復が進んでいない」と伝えた。

20日、韓国・韓国日報は「韓国をはじめとする海外からの観光客が日本に押し寄せているが、日本人の海外旅行規模は回復が進んでいない」と伝えた。
20日、韓国・韓国日報は「韓国をはじめとする海外からの観光客が日本に押し寄せているが、日本人の海外旅行規模は回復が進んでいない」と伝えた。© Record China

日本政府観光局(JNTO)の発表によると、先月の訪日外客数は181万7500人だった。コロナ前の2019年3月と比較すると65.8%水準に回復した。訪日外国人を国・地域別に見ると韓国が46万6800人で最も多く、台湾(27万8900人)、米国(20万3000人)と後に続く。19年3月と比較して2けたの訪日者数増加率を記録したのはシンガポール(20.6%)、米国(15.0%)、ベトナム(11.9%)となっている。

一方、先月の出国日本人数は69万4300人で、19年3月の36.0%水準にとどまった。1月、2月の出国者数も19年同月と比較すると30%台となっている。JTBが今年のGW(4月25日~5月5日)の1泊以上旅行者需要を調査した結果によると、国内旅行者はパンデミック前と同水準の2450万人に達したが、海外旅行者はパンデミック前(50万~60万人)より少ない20万人にとどまると推計された。

 

記事は「日本人が海外に行かないのは、パンデミック後も続く円安とインフレ、低賃金などの経済事情が原因」だと指摘している。日本旅行業協会(JATA)が実施したアンケート調査では、海外旅行をしない理由に対する答えで最も多かったのは「旅行費用の上昇」だったという。

また、朝日新聞の報道を引用し、「JATAが人口当たりの年間出国者比率を算出した結果、18年基準で米国28.4%、韓国52.1%、英国は107.9%に達したが、日本は15.3%にとどまった」「日本人は他の先進国に比べ海外旅行を好まない」と伝えている。日本の旅行業界は「沖縄から北海道まで国内旅行の選択肢が広いため」だと分析しているという。

この記事に、韓国のネットユーザーからは「日本は観光すべき場所が多いから」「日本は19世紀半ばまで封建社会が維持されていた特性から、各地方の地域色が強く、特産品や観光商品がよく開発されている。鉄道、航空、港湾インフラも極めて優秀。旅行するには最適だ」「日本人はもともとあまり海外に行かないでしょ」「日本人が海外に行かないのはなぜか?貧しいからだよ。理由なんかない。韓国人も貧しくなれば行かなくなる」「個人個人が稼げなくなったからというだけ。バブル時代は日本人もどんどん海外に行っていた」などのコメントが寄せられている。

また、「日本の回復が遅いんじゃなく、韓国人が身の程を考えず海外に遊びに行ってお金を使ってるだけじゃないの?」「韓国の国内旅行は海外旅行に比べると、費用面でも内容面でもメリットがないからな…」「韓国の国内旅行は高く付くから、そのお金で海外に行くほうがいい」「済州(チェジュ)島なんかに行くより日本に行くほうがずっといい」という声も多く見られた。(翻訳・編集/麻江)

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なぜ経営者たちはこぞってジムに通っているのか

2022年12月26日 10時02分25秒 | 経営

ランニングやウォーキング、ジム通いなど、身体を動かす習慣を持つ経営者は多いという。しかも、単に健康のためだけの理由ではないようだ。フリーのインタビュアーとして、経営者や起業家、メダリストなど各界のトップランナー3000人超に取材してきた上阪徹氏の新著『マインド・リセット』からの一部抜粋で、一流の経営者たちに学ぶ、運動などの効用について解説する。

写真はイメージです Photo:PIXTA
写真はイメージです Photo:PIXTA© ダイヤモンド・オンライン

経営者が身体を動かすのは

健康のためだけではなかった

 2022年の夏から、私は雑誌『週刊現代』(講談社)で、大企業の経営トップが登場するインタビュー連載を担当しています。タイトルは「社長めし」。総合週刊誌ですから、経済誌とは違う切り口で経営者のパーソナリティを伝えよう、との狙いで「食」というテーマで話を聞く企画です。

 毎回、錚々たる顔ぶれの経営トップに取材をするのですが、改めて感じるのは、運動を意識している人の多さです。朝ご飯の話にからめて、多くの経営者がウォーキングをしたり、ランニングをしたりしている話をしてくれます。

 身体を動かすことは肉体的な健康につながることは想像できるわけですが、経営者たちはそれだけを期待しているわけではないようです。身体を動かすことで、脳も活性化することがわかっているのだと思うのです。

 
本コラム著者・上阪徹氏の新著
本コラム著者・上阪徹氏の新著© ダイヤモンド・オンライン

 ウォーキングやランニングだけでなく、トレーニングジムに通っている経営者も少なくありません。どうしてジムに通うのか、という私の質問に対して、ストレートに「アイデアや戦術が浮かぶから」と答えてくれた経営者もいました。先に、企画やアイデアは脳が油断しているときに出る、と述べましたが、身体を激しく動かすことで脳を空っぽにし、油断させてアイデアを出させよう、と考えているのでしょう。

 実は私も、20年ほど前から週末にランニングをしています。運動不足から何かやろうと思ったときに、自宅マンションの前に、川沿いに延びる絶好のランニングコースがあり、走ってみることにしたのでした。やってみると、これが何とも心地よかった。走っている間はもちろん苦しさもあるのですが、たっぷり汗をかき、たくさん酸素を吸い込み、予定通りに走り切ったあとは、何とも言えない充実感があります。

 ランニングをするのは、だいたい週末ですが、天候や予定が入ったりして走れないと、どうにも翌週、仕事の調子が上がらないような気になります。脳が気持ちよく働かない気がしてしまう。それくらい、ランニングの効能を意識するようになりました。

 最近は、ときどき平日の夜にウォーキングも取り入れています。これまで、ウォーキングはしてこなかったのですが、経営者の方々があまりに気持ちよさそうにウォーキングの話をするので、自分でもやってみようと思ったのです。

 すると、ランニングとはまた違う気持ちよさがありました。最初は暗くて見えなかった周囲の光景に、目がだんだん慣れてきて、見えてくるようになり、同じコースでも昼間とはまるで違う世界が広がっていることに気がついたのです。多くの経営者が実感している通り、判断力や集中力のアップという点でもお勧めです。

 

グローバル企業トップの

3分間瞑想習慣

 身体を動かすことと同時に、呼吸の大切さについて語ってくれた外資系企業のトップがいました。実はグローバル企業のリーダー層には、瞑想や座禅、ヨガをやっている人が少なくないそうです。ご本人も毎朝3分間瞑想をしている、と語っていました。

 彼によると、身体を動かしていないのに、急に呼吸が速くなるのは、何らかの異変が心身に起きているシグナルなのだそうです。そこで、気持ちを落ち着かせるために、深呼吸をする。普段はほとんど意識することがありませんが、呼吸の持つ効能は、実はとても大きいのです。自律神経を整え、リラックスできる。気持ちを落ち着かせられる。だから、あえて呼吸を意識してみるといい、と彼は言っていました。

 たしかに、呼吸をきちんと意識している人は、あまりいないのではないでしょうか。深い呼吸をすることで、脳や身体、心にもプラスを与えられる可能性が高いとすれば、やってみる価値は大いにあると思います。

 瞑想にもいろいろな方法があるようですが、前述の経営トップが語っていたのは、呼吸に意識を巡らせること、でした。ゆっくり呼吸をして、その呼吸に意識を集中させる。そうすることで、頭の中にあるいろいろなことをリセットしていく。呼吸に意識を集中させることで、脳を空っぽにしていく、ということです。

 朝、家を出る前に短い時間でも瞑想をすることで、頭がスッキリして、心が落ち着くのだ、と語っていました。

 教えられた通りに、私も実際にやってみたのですが、たしかにゆっくり呼吸をして、そこにしっかり意識を向けるだけで、頭の中が空っぽになる感覚がありました。

 余計なことが何も浮かばない。まさに、心が鎮まるという状態です。

 

「急がない時間」をつくって

意識的に脳を休ませる

 考えてみれば、あえてそうした時間を持とうとしなければ、日常は急いで進んでいきます。予定を組んでいたとしても、どうしても「あれをやらなきゃ」「これをやらなきゃ」に意識が向かう。そんな中で、呼吸を整えることに時間を使い「急がない時間」をつくり出すのです。そして、脳を休ませる。

 脳は眠っている間も、働いていると言われています。だから、夢も見るのです。

 そんな中で、意識的に脳を休ませることができたら、これは脳にとっても大いにプラスになるはずです。

 朝、会社に向かう前の時間でも、夜寝る前でもいい。呼吸を整え、呼吸に意識を集中させて数分間の瞑想をするのは、とてもいい習慣です。海外のエグゼクティブたちが、取り入れるわけだと思いました。

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【ワークマン仕掛け人が教える】 一瞬にしてダントツ社員が消え去るNGワードとは?

2022年12月21日 06時24分58秒 | 経営

今、最も注目を集める急成長企業ワークマン。4000億円の空白市場を開拓し、“頑張らない経営”で10期連続最高益。「#ワークマン女子」も大人気。テレビでも大きく特集され続けている。

さらに急成長の仕掛け人・ワークマンの土屋専務白熱の処女作『ワークマン式「しない経営」――4000億円の空白市場を切り拓いた秘密』も増刷を重ねている。

「めちゃめちゃ面白い! 頑張らないワークマンは驚異の脱力系企業だ」(早大・入山章栄教授)

「ワークマンの戦略は世紀の傑作。これほどしびれる戦略はない」(一橋大・楠木建教授)

なぜ、今「しない経営」が最強なのか?

スタープレーヤーを不要とする「100年の競争優位を築く経営」とは何か?

ワークマン急成長の仕掛け人が「ダイヤモンド経営塾」会員だけに語った「最新・限定特別講義」を特別にお届けする。

 
Photo: Adobe Stock
Photo: Adobe Stock© ダイヤモンド・オンライン
土屋哲雄(つちや・てつお) 株式会社ワークマン専務取締役 1952年生まれ。東京大学経済学部卒。三井物産入社後、海外留学を経て、三井物産デジタル社長に就任。企業内ベンチャーとして電子機器製品を開発し大ヒット。本社経営企画室次長、エレクトロニクス製品開発部長、上海広電三井物貿有限公司総経理、三井情報取締役など30年以上の商社勤務を経て2012年、ワークマンに入社。プロ顧客をターゲットとする作業服専門店に「エクセル経営」を持ち込んで社内改革。一般客向けに企画したアウトドアウェア新業態店「ワークマンプラス(WORKMAN Plus)」が大ヒットし、「マーケター・オブ・ザ・イヤー2019」大賞、会社として「2019年度ポーター賞」を受賞。2012年、ワークマン常務取締役。2019年6月、専務取締役経営企画部・開発本部・情報システム部・ロジスティクス部担当(現任)に就任。「ダイヤモンド経営塾」第八期講師。これまで明かされてこなかった「しない経営」と「エクセル経営」の両輪によりブルーオーシャン市場を頑張らずに切り拓く秘密を 『ワークマン式「しない経営」』 で初めて公開。本書が初の著書。2022年7月より東北大学特任教授も務める
土屋哲雄(つちや・てつお) 株式会社ワークマン専務取締役 1952年生まれ。東京大学経済学部卒。三井物産入社後、海外留学を経て、三井物産デジタル社長に就任。企業内ベンチャーとして電子機器製品を開発し大ヒット。本社経営企画室次長、エレクトロニクス製品開発部長、上海広電三井物貿有限公司総経理、三井情報取締役など30年以上の商社勤務を経て2012年、ワークマンに入社。プロ顧客をターゲットとする作業服専門店に「エクセル経営」を持ち込んで社内改革。一般客向けに企画したアウトドアウェア新業態店「ワークマンプラス(WORKMAN Plus)」が大ヒットし、「マーケター・オブ・ザ・イヤー2019」大賞、会社として「2019年度ポーター賞」を受賞。2012年、ワークマン常務取締役。2019年6月、専務取締役経営企画部・開発本部・情報システム部・ロジスティクス部担当(現任)に就任。「ダイヤモンド経営塾」第八期講師。これまで明かされてこなかった「しない経営」と「エクセル経営」の両輪によりブルーオーシャン市場を頑張らずに切り拓く秘密を 『ワークマン式「しない経営」』 で初めて公開。本書が初の著書。2022年7月より東北大学特任教授も務める© ダイヤモンド・オンライン

優秀な社員が消え去るNGワードとは?

 ワークマンは他社からヘッドハンティングせず、完全オーガニック、完全自社教育で普通の社員を優秀な社員に育てる会社です。

 ゆっくり成長しながら100年の競争優位を築くため、ヘッドハンティングに頼るようになると会社自体が弱くなります。

 ここは気をつけないといけません。

 基本は自前主義で人材は自社で育てる。

 また、私は極力社員の前で話さないようにしています。

 社長は今期のことや3ヵ月先のことを話しますが、ほぼ間違えません。

 私が5~10年先のことを話すと半分間違うので、訂正して回るのが大変です(笑)。

 企業を変えたいというとすぐ「変革だ!」と声高に叫ぶ社長がいますが、この言葉を使ってはダメです。

 変革という言葉自体が社員に不安やストレスを与えます。

 改革は意図するようにはなかなか進みません。

 できないことや不要なプレッシャーになることを経営者はあまり言わないほうがよいでしょう。

 経営者が「改革」と言うだけで、社員の意欲が低下します。

 ステルス作戦のように、みんなに気づかれないで進むのが理想です。

 

ワークマンの競争力は無形資産

 ワークマンプラスをつくって4年経ちますが、今まで十数社が同じ市場に参入してきました。

 ライバル店ができた当初はどんな店をつくったのか見て回ったのですが、最近は見に行かないことにしました。

 社員も行きません。

 そもそも本当の競合ではないし、あまり行きすぎると、自分たちのクリエイティビティが下がってしまうように感じるからです。

 競合他社が何をやったのかというと、当社の製品をマネただけです。

 でも、製品をマネされても怖くないのです。一過性なので。

 企業文化をマネされると手強いのですが、これは一朝一夕にはいきません。

 私もワークマンにきて、10年かけて企業文化をつくってきていますから。

 以前は超トップダウン型だったのが、今は超ボトムアップ型と180度違う会社になりました。

 衆知を集める仕組みをつくりました。

 昔は信念を持つのがよい上司でしたが、今は部下の提案を聞いて意見を変えるのがよい上司です。

 でも「高機能・低価格」という核は失ってはいけません。

 経営者や上司に忖度せずに、徐々に自分の頭で考え、データで実証し続ける社員が多くなってきました。

 これで現場の改善が進みます。

 多くの場合は、この改善の積み重ねが自然に「改革」になっていきます。

 改革は上から切迫して押しつけるのではなく、社員の自主的な改善から生まれています。

『ワークマン式「しない経営」』では、

 

◎社員のストレスになることはしない

◎ワークマンらしくないことはしない

◎価値を生まない無駄なことはしない

 ことで4000億円の空白市場を切り拓いた秘密を一挙公開しました。

 私の初の著書です。気持ちを込めて書き尽くしました。

(本原稿は、『ワークマン式「しない経営」』著者・土屋哲雄氏の特別投稿です)

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