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「通勤手当や生命保険控除など聖域なし」岸田政権が目論む〝サラリーマン増税〟の「やりたい放題」

2023年07月20日 07時25分38秒 | 税金
過去最高の税収になったが、岸田政権はまだまだ国民から税を〝絞り取る〟計画が……
過去最高の税収になったが、岸田政権はまだまだ国民から税を〝絞り取る〟計画が……© PHOTO:アフロ

もはや〝息をするだけ〟でも税金を取られる状態になりそうだ――。

6月末に岸田首相に提出された、政府税制調査会(首相の諮問機関)の中期答申の中身がネット上で炎上している。

これまで雇用の流動化などを促すためにも長期就労のメリットを減らす「退職金増税」は報じられていたが、答申では他にもまだまだ〝増税できる〟と考えているラインナップがあるのだ。

その検討されている内容は、給与所得の控除、配偶者控除、扶養控除、生命保険控除、通勤手当、社宅の貸与、食事の支給、従業員割引、退職金の課税制度の見直しなどだ。

サラリーマンから税金を取らない手はない

先送りが発表されたが’25年には防衛費増額のため、所得税、法人税、たばこ税の増税も〝待ち受けている〟。こちらに関しては骨太の方針として閣議決定されたので間違いなく上がるだろう。

「’22年の労働力調査では就業者数が6723万人で、自営業主・家族従業者数は648万人となっているため、就業者のうち89.9%は〝雇用されている〟ことになる。税調はここに目をつけたのでしょう。

 

就労者の9割がサラリーマンならばここから税金を取らない手はない。しかしサラリーマンというのはすでに、自営業者に比べると給料から税金などが天引きされるため、節税がほとんどできていない。日本の税収を支えているのは多くのサラリーマンなのですが、岸田政権はお構いなしに増税路線を貫いている」(全国紙記者)

サラリーマンの数少ない節税方法が年末に調整される「生命保険控除」だ。

やっている人も多いだろうが、これすらも〝控除などけしからん!〟といわんばかりだ。さらに通勤手当や食事の支給などという目を疑いたくなる項目まである。アルバイトの交通費や飲食店のまかないにも課税しようというのだろうか。

実業家の「青汁王子」こと三崎優太氏は16日ツイッターで

《「通勤手当を課税対象に」って、本気で言ってるのか?「サラリーマン増税」より「政治家増税」が先だろ。

月額100万円の文通費や政治資金への課税は勿論、居眠り税、失言税、まともに質問に答えない税…。真面目に働いて国を支えてくれる人達より、政治家こそ率先して多くの税金を納めるべきだ》

と批判した。

「政治家が自身の収入を減らす法案など出すはずがありません。旧文通費(調査研究広報滞在費)ですら当選後の〝日割支給〟が決まっただけで、給料と一緒の口座に毎月プラス100万円が振り込まれる。

領収書は不要のため、高級時計を買おうがキャバクラで使おうが一切国民に知られることはない。日本維新の会など文通費をすべて公開している党もありますが、ほとんどの議員は使途不明といってもいい」(ワイドショー関係者)

国民からは巻き上げるだけ巻き上げて、自分たちは甘い汁を吸い続ける構造だ。

「若者も生活がどんどん苦しくなっているのに少子化など歯止めがきくはずがないでしょう。岸田政権は裏テーマでは〝日本を滅ぼそうとしているのではないか〟と勘繰りたくなります」(同・ワイドショー関係者)

ここまでひどい仕打ちにあっても自民党は多くの組織票などに固く守られているため、長きにわたり政権を担っている。日本人は近い将来〝人口減〟で消滅するかもしれないが――。

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一目散に逃げ出した社長に怒り…帝国データバンク調査員が見た、衝撃の倒産現場

2023年07月13日 07時27分32秒 | 経営

2022年度の倒産件数は3年ぶりの増加となった。倒産企業は企業規模もさまざまだが、それぞれに「企業の最期」という非日常のドラマがある。倒産現場ではどのようなことが起きているのか。そのリアルな実態として、2つの事例を紹介する。(帝国データバンク情報部 藤坂 亘)

業界環境が悪化する中で

ゼロゼロ融資も断られたO社

 2022年度は全国で6799件の倒産が発生し、倒産件数は3年ぶりの増加となった。コロナ禍で落ち込んだ業績や、その間に抱えた債務、昨今のエネルギー価格高騰、物価高、円安など、企業を取り巻く環境はめまぐるしく変化しており、今までのビジネスモデルでは対応できない企業も数多く出てきている。

 企業倒産の増減は、景気を表す一つの経済指標として捉えられることが多い。そのこと自体は経済全体を見通すために必要なことだろう。しかし、倒産したそれぞれの企業には多くの人が関わり、多くの人生が詰まっていることも忘れてはならない事実だ。

 帝国データバンクの情報記者は、企業倒産を取材する過程で、その人間模様を目の当たりにすることがある。1年に6799件発生する倒産のうちの一つでしかなく、負債も決して大きくない企業であっても、そこには「企業の最期」という非日常のドラマがある。

 これが倒産現場のリアルだ。

 以下、一つ目として紹介するのが、新聞の折り込みチラシを扱っていたO社の事例である。

 大阪メトロ中央線の長田駅の改札を抜けると、既に午後7時を回っていた。駅前のショッピングセンターの横を通り過ぎると広がる紙文具団地。人けもなく、だだっ広い上に、トラックの往来でひどくひずんだ道路が続く。「関係先に倒産の通知が届いているようだ」という問い合わせがあったその会社は、そんな企業団地を抜けた先にあった。

 受任通知が出ているなら張り紙があるはずと考えていたが、会社に到着するとシャッターが開いていた。前には1台のハイエースが止まっている。予想外の展開に、一度会社の前を通り過ぎ、念のため、問い合わせ元に社名と状況を再確認する。万が一にも間違いは許されない。間違いのないことを確認し、意を決して会社へ向かった。

 ガランとした倉庫内には、パイプ椅子に腰掛け、携帯を見つめる男性が一人。取材に来た経緯を説明すると、取締役を名乗るその男性は小さくうなずき、倒産の事実を認めた。そして、倒産に至った経緯を訥々(とつとつ)と話し始めた。

「新聞の発行部数も減ったし、ネット広告が普及したし、折り込みチラシが少なくなったからなぁ。そんなときにコロナ。うちはパチンコ店や不動産関係のチラシが多かったから。コロナの感染が拡大した当初、『パチンコ店などが感染源』って相当たたかれたましたよね? だからチラシ広告を出すパチンコ店なんてどこもありませんよ」

 新聞折り込みチラシを扱っていた同社は、業界環境の悪化とコロナ禍での急激な受注減に苦しめられていた。

「ゼロゼロ融資は受けたんですか?」

「二度、申し込みました。そして二度、断られました。『融資を受けられなければ、うちは倒産します』と言っても駄目でした」

 取締役は口惜しそうな様子で続ける。

「でも、政治家による違法な融資仲介がニュースになってましたよね。不正をした企業は生き残っていいんですか。うちだってそうすれば良かったんですかね」

 私は言葉に詰まった。「ゾンビ企業を救った」「甘い審査」「金融モラルハザードを生んだ」といった、ゼロゼロ融資に対する世間の追及。だが、どんな企業でも融資を受けられたかのような前提に立った批判も、融資を受けられなかった企業を目の前にすると、あっけなく崩れ落ちるだろう。

「実は弁護士には『絶対にシャッターを開けないように』と念を押されてたんです……。でも、最後の片付けですから(シャッターを開けていました)。これも何かの偶然ですね。世間に現実を伝えてください」

 

 取締役との立ち話は30分以上に及んだ。O社を出たときは既に午後8時を回っていた。

 一層寂しさが増した企業団地。開かれたシャッターは、救いの手から零れ落ちてしまったこの企業の「生きた証を遺したい」という取締役の思いを表しているようだった。

 

債権者が事務所に来るや

社長が逃げ出したM社

 私は倒産の問い合わせのあった運送会社のM社へ向かった。県道を曲がると異様な光景が目に入った。稼働せず、敷地内に停められたままの多数のトラックと、会社を囲うように停められた多数の乗用車だ。

 会社の敷地には背の高い男性が一人。声をかけたが、彼は無言でプレハブの2階を指さした。私は事務所1階の自己破産を告げる張り紙を確認し、急な階段を静かに上った。

「はい」

 香水とタバコのにおいが混じった事務所に入るなり、書類一式を渡された。解雇通知書だ。

「従業員じゃないです。帝国データバンクです。社長はいらっしゃいますか?」

 10人ほどの視線が一気に集まり、事務所は静まり返る。

「自分ですけど、なんですか?」。奥でしゃがむ男性が答えた。

「張り紙を見ました。少しお話……」

「帝国さんに話すことなんかありません」

 社長は私の言葉を遮り、吐き捨てるようにそう言った。

 現場で取材を拒否されることはよくあることだ。ただ、会社の前にいるトラックドライバーたちの不満げな表情と、ある一台のトラック(詳しくは後述)に違和感を覚え、現場に残って取材を続けることにした。

 しばらくすると、乗用車が二台、目の前に止まった。降りてきたのは、いかにもベテランドライバーという感じのいかつい男性2人。しかし、こういう人たちこそ話が通じるというのが世の常。予想通り、世間話をしているうちに心を開いてくれた。

「社長と何人かの役員待遇の社員は良い生活しているのに、おれらは給料すら払われてないんだよ」

「いつからですか……。トラブルとかありました?」

 給与未払いの情報は、既に数カ月前からつかんでいたが、あえて聞かずにはいられなかった。

「最初は、(取材時の約5カ月前となる)6月に集められて、『数%カット』と言われた。確かあのとき、トラックの事故があった後かな。幹線道路をふさいで大変だった。あそこにあるぐちゃぐちゃの、それ」

 そう言って指さす先には、窓ガラスが割れ、左フロントから荷台側面がひしゃげたトラックが、痛々しい姿のまま放置されていた。私が違和感を覚えたトラックだ。

「でも、ずっと前からひどかった。社長が代わってから。大口のお客さんもあきれてた。社長に意見できた唯一のベテラン社員も辞めてしまったしな」

 帰り際、社長と役員であろう男性が事務所から出てきたので、しばらく様子をうかがっていた。そこに、白色の営業車に乗ったスーツ姿の男性が訪ねてきた。おそらく債権者だ。彼が事務所へ向かうのを見るや、社長らは急いで車に乗り込み、逃げるように会社を去っていった。

 その瞬間、私は怒りが込み上げた。

 これまで、数多くの倒産現場で経営者を見てきた。全ての取引先に謝罪して回っていた社長、私財をなげうって従業員を守った社長、そこには最後まで責任を全うしようとした経営者の姿があった。その人たちに比べて……。

 その後も何人かの従業員が訪ねてきたが、社長がいないことに皆困った様子で会社を後にした。その中には、3カ月前に入社したばかりという20代の男性もいた。

 M社の事務所から最寄り駅までの約1.5キロメートル。帰り道、取材に応じてくれた従業員らの顔が浮かぶ。従業員の人生を背負う覚悟のない経営者の下で働くのは不幸だ。そんなことを考えているうちに、大通りに出た。突然解雇通知書を受け取ったドライバーたちは、どんな思いで家路に就くのだろうか。

 こうした一つ一つの倒産が積み上がり、年間の倒産件数が算出される。景気動向、技術革新、業界環境の変化、法律の規制といった外部環境と照らし合わせて分析される倒産件数の増減。しかし、倒産する全ての企業が、そんな一般論で語られるようなことだけが原因で倒産するわけではない。

 関係者もしくは現場でしかわからないそれぞれの企業の内部環境こそが、本当の倒産要因といっても過言ではないだろう。今まで見届けてきた数々の企業と従業員のためにも、それぞれの倒産を机上の空論で片付けるべきではない。倒産は現場で起きているのだから。

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森永卓郎氏 財務省は“カルト教団”痛烈批判「貯金してるのに増税させてと、わけの分からない理論を」

2023年07月11日 06時51分03秒 | 日本の衰退

 独協大教授で経済アナリストの森永卓郎氏(65)が10日、TOKYO MX「バラいろダンディ」(月~金曜後9・00)に生出演し、税収増と増税のからくりを解説した。

 昨年度の税収は71兆1374億円で、3年連続で過去最高額を更新。ところが、政府は減税はおろか、退職金の課税強化などを念頭に掲げており、今後も大増税の波はとどまりそうもない。

 税収増の理由について、森永氏は「円安による物価高」を挙げた。「物価が高くなれば、消費が増えますから、自動的に消費税が増えるという構造。最近、大手企業を中心にコスト増の分を値上げするだけじゃなく、もうけを増やすために値上げするというのが広がっている。もうけが増えると、法人税は増える。物価が上がると賃金が上がりますよね。賃金が上がった分だけ累進課税になっているから、もっと所得税が増える。基幹税がみんな増えているという構造」と解説した。

 森永氏は、国民負担率の現状にも言及した。「私が社会に出た1980年は30%だったんですけど、昨年度48%。3割課税が5割課税に上がっている」。現状の税収はまさに、江戸時代の年貢率“五公五民”状態だが、今後の増税は続く見通しといい、「かつての政権はそこで減税をしてきたんですけど、岸田さん、まったく減税する気ない」と言い切った。

 

 また、財務省による細かな増税も地味に国民生活を圧迫していることも理由という。「財務省は行政機関だと思われてるけど、実はカルト教団なんです。“財務真理教”って。ここの最大の教義は、“税率は上げ続けるものだ”と」と、強烈な言い回しをまじえながら解説。「100%まで国民負担率が行ったら止まるだろうなと思ったんですけど、そんなことはないんです。カルト教団、考えてみて下さい。預貯金解約させて、家まで売り飛ばして、献金しなさいって言うじゃないですか?それと同じことを財務省はやってる」と過激に言い放った。

 森永氏の指摘に、科学者の苫米地英人氏は、「100%を超えるというのはその通りで、(森永氏の話は)一般会計の話じゃないですか?特別会計もあるわけで、300%だってありえるわけですから」とおおむね同意した。

 森永氏は、財務省が発表している政府の貸借対照表を示した。これによると、1661兆円の負債とは対照的に、資産も1121兆円とあり、森永氏は「1600兆円の借金がありますよと言いながら、こっそり1100兆円も預金している状況。借金だらけとは言えない。540兆円というのが本当の(借金の)額」とからくりを指摘した。

 さらに、返済や利払いの必要がない日銀保有の国債などを換算すると、日本の借金は差し引きでわずか8兆円という。数字は2020年度のものだが、ここ数年の記録的税収もあり、「現時点で言うとプラスになっている」と森永氏。「貯金してるのに“借金で首が回らないので増税させて下さい”と、わけの分からない理論を言っている。それをみんなだまされちゃっている」と、森永節は止まらなかった。

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史上最高の71兆円税収も庶民の税負担増加 余剰金は防衛費に回す理不尽な現実に気づくべき 古賀茂明

2023年07月04日 07時46分54秒 | 行政
古賀茂明氏
古賀茂明氏© AERA dot. 提供

 2022年度の税収が史上最高を更新し、71兆円台に達した。このニュースを誰よりも喜んでいるのは、自民党の保守派議員だ。

 税収が増えることは、日本の財政にとって好ましい。しかし、仮に税収が71兆円に達したとしても、一般会計の予算額は139兆円。大赤字であることに変わりはない。

 ところが、自民党の中には、税収が予想以上に増えた分は余り金だと勘違いしている愚かな議員がかなりいるようだ。ふざけるなという気持ちになる。

 本来は、税収が増えたら、将来に備えて少しでも借金を減らそうと考えるのが普通だ。しかし、この国の権力者たちは、これを自分たちの好きなことに使ってしまおうと考える。ここでいう「好きなこと」とは、戦争の準備だ。そのために、財政上の剰余金が出たら、どれだけ赤字が嵩んでいようとも、何よりも優先して軍拡予算に充当できるという法律を先の国会で通した。

 一方、税収がなぜ増えたのかを見ると理不尽なことが起きていることに気づく。

 まず、私たち労働者が汗水垂らして受け取る給料などにかかる所得税が21年度の21兆円台から22兆円台に増えるというが、我々がよく目にする報道では、実質賃金はずっとマイナス傾向で、昨年度は1.8%減ったのではなかったのか。資源高とアベノミクスがもたらした異常な円安による物価高のせいで生活は確実に苦しくなっている。それなのに、所得税は増えているのだ。

 これは、賃金が名目で増えているためだが、ここにはからくりがある。それは所得が増えた以上に所得税が増えるという仕組みだ。所得税の税率は一律ではない。所得が増えると税率が上がる累進性をとっている。そこで、名目賃金が上がると所得別の税率の区分が上がって、全体として今まで以上の高い税率で税金を取られるのだ。これを「インフレ税」と呼ぶこともある。昔はそういう議論がよくなされていたが、デフレが長く続いたため、忘れられていた。

 実質賃金が下がっているのに税率が上がるのはどう考えてもおかしい。本来は、物価上昇したのに合わせて、税率区分の境界となる金額をその分引き上げて、実質賃金が増えない限り税率が増えないようにすべきなのだが、そういう議論にならない。

 

 ちなみに、富裕層が得る配当などの金融所得の税率は分離課税にすれば一律なので、配当が増えても税率は上がらないように手当されている。富裕層に有利な仕組みなのだ。

 

 次に消費要因である。

 ここで問題になるのは、庶民ほど消費に占める割合が高い食品やエネルギー価格が急激に上がったことで、やはり庶民直撃の消費増税の効果が生じていることだ。ここでも「インフレ税」がかかっているのだ。

 一方、法人税も13兆円台から14兆円台に増加する。企業の経常利益は製造業も非製造業も史上最高だった。物価高で苦しむ企業も多いが、資源高でボロ儲けした商社やエネルギー関連企業、円安でウハウハだったトヨタなどの輸出企業は、何もしないのに利益が出た。生活苦に喘ぐ庶民とは好対照である。

 海外では、こうした棚ぼた的利益を上げた企業に対して臨時の課税(「棚ぼた税」「ウィンドフォール課税」などと呼ばれる)を実施し、弱者対策の財源に充てることが普通に行われるが、日本では、そうした議論はほとんど出ない。

 アメリカで大富豪たちが、富裕層に増税をと自ら提言を出したことが話題になったが、地位の高いものにはそれに応じた社会的責任があるという「ノブレス・オブリージュ」の考え方があるからだろう。日本にも昔はそうした考え方はあったと思うが、安倍政権以降は、それとは正反対に、権力者は「自分のために」何でもできるという文化が定着し、経済人もそれに倣うようになってしまったようだ。

 ところで、そんな議論を嘲笑うかのように、岸田政権は、あれだけ儲かっているトヨタ向けに、1200億円もの巨額補助金を支払うことを発表した。しかも、その目的が、車載用電池の開発だというのだから2度驚いた。

 トヨタが水素自動車に固執して、それに媚びた経産省と自民党が電気自動車(EV)の普及を遅らせたのは周知の事実。世界中でEV化競争が激化し、各国では車載用電池への投資が進んだが、日本ではほとんどEV生産がされていないので、電池産業には需要がない。ダントツのシェアを誇ったパナソニックは、あっという間に中国と韓国勢に抜かれて、今やシェア一桁という惨状だが、トヨタはその責任を問われてもおかしくない。ましてや、円安でボロ儲けし、毎年2兆円を超える利益を出しているのだから、責任を感じて、補助金をくれると言われても辞退するのが筋だろう。

 政府も、トヨタにそんな金を出すくらいなら、その分を貧困対策に充てたらどうかと思うのだが、やはり、岸田政権には、そういうマインドは一切ないようだ。

 大赤字を垂れ流しながら、少し税収が上振れしたからといって、それを戦争準備に使おうとする自民党。その間も政府の借金は増え続け、泥沼の異次元金融緩和からの出口が見つけられず、ジリジリと進む円安を止めることもできない政府・日銀。

 前財務次官の矢野康治氏は、月刊「文藝春秋」(21年11月号)への寄稿の中で、今の日本の状況を喩えて、「タイタニック号が氷山に向かって突進しているようなものです」「日本は債務の山の存在にはずいぶん前から気づいています。ただ、霧に包まれているせいで、いつ目の前に現れるかがわからない。そのため衝突を回避しようとする緊張感が緩んでいるのです」と書いた。

 ここでいう「霧」とは、日本総研の河村小百合氏が言うとおり「黒田日銀が展開してきた異次元緩和のこと」(『日本銀行 我が国に迫る危機』講談社現代新書)かもしれないが、史上最高の税収は、さらにその霧を濃くしているようだ。不都合な真実がますます霞み、その先に待つのは……。

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国民の年金積立金17兆円が失われた…「過去最大」巨額赤字の原因

2023年07月03日 08時02分21秒 | 年金対策
国民の年金積立金17兆円が失われた…「過去最大」巨額赤字の原因
国民の年金積立金17兆円が失われた…「過去最大」巨額赤字の原因© Finasee

・たった1人に国家が負ける? 先進国も敗北した「市場」の恐ろしさ

年金として支給に回らなかったお金を「年金積立金」といい、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)によって運用されています。残高は2022年末時点でおよそ190兆円、運用収益は98.1兆円にも上りました。

おおむね順調な運用ですが、四半期ベースでは損失となることも多く、メディアでセンセーショナルに報道される傾向にあります。特に2020年7月3日に発表された過去最大の赤字は大きな話題を集めました。

コロナショックで17.7兆円の損失を計上

GPIFは2020年1~3月期に10%以上のマイナスに陥り、17兆7072億円もの損失となりました。これは過去最悪の損失で、第3四半期までに稼いだ収益も全て吹き飛び、通期でも8兆円を超えるマイナスとなっています。

【GPIFの期間収益(2019年度)】

・2019年4~6月:+2569億円(+0.16%)

・2019年7~9月:+1兆8058億円(+1.14%)

・2019年10~12月:+7兆3613億円(+4.61%)

・2020年1~3月:-17兆7072億円(-10.71%)

・通期:-8兆2831億円(-5.20%)

出所:GPIF 2019年度業務概況書

原因はコロナショックでした。原因不明の肺炎が2019年末に中国の武漢市で報告され、のちに新型コロナウイルスによる感染症であることが判明します。WHOは2020年1月に緊急事態を宣言するに至りました。

株式市場の反応はやや遅く、しかし強烈に起こりました。世界の株式市場は2月中ごろから示し合わせたように一斉に下落し、同時株安の様相を呈します。高値からの下落率は、TOPIX(東証株価指数)やS&P500では約30%にも達しました。

【2020年度のTOPIXとS&P500の推移(日足終値、2019年3月末=100)】

 
 
国民の年金積立金17兆円が失われた…「過去最大」巨額赤字の原因
国民の年金積立金17兆円が失われた…「過去最大」巨額赤字の原因© Finasee

Investing.comより著者作成

GPIFは国内外の株式と債券におおむね4分の1ずつ投資するポートフォリオであり、運用資産のおよそ半分は株式で構成されることになります。このためコロナショックの影響を受け、大きな損失となってしまいました。

 

新しい分散投資「リスク・パリティ戦略」とは

GPIFのように複数の資産に分けて投資する方法を分散投資といい、基本的にリスクを低減させる効果が期待できます。では、なぜ分散投資でリスクが小さくなっていたはずのGPIFはコロナショックで巨額の損失を計上したのでしょうか。

ポイントは、値動きの大きさの違いです。一般に債券よりも株式の方が大きな値動きが生じるため、均等に投資しただけではどうしても株式の影響が強く生じます。コロナショック時もGPIFは株式と債券におよそ半分ずつ投資していましたが、全体の損益が株式に引っ張られている様子が確認できます。

【GPIFのポートフォリオと期間収益】

 
 
国民の年金積立金17兆円が失われた…「過去最大」巨額赤字の原因
国民の年金積立金17兆円が失われた…「過去最大」巨額赤字の原因© Finasee

※為替ヘッジなし:18.1%、為替ヘッジあり:1.11%

出所:GPIF 2019年度業務概況書

そこで、値動きの大きさを均等にするために考えられたのが「リスク・パリティ戦略」です。世界最大級のヘッジファンド「ブリッジウォーター」が採用することで有名なこの戦略は、単に投資額を均等にして分散投資するのではなく、値動きの大きさが均等になるよう投資額を逆算して分散投資します。

つまり、リスク・パリティ戦略では値動きが小さい債券の割合が高く、反対に値動きが大きい株式の割合が低く設定される傾向にあります。こうすることで、株式がポートフォリオ全体に与えるインパクトが均等になることが期待できます。

最近はリスク・パリティ戦略を採用する投資信託も増えてきました。自身で同様の戦略を行うことは難しいので、安定的に運用したい人はリスク・パリティ型の投資信託を選んでみてはいかがでしょうか。

 

年金収支はどれくらい赤字なの?

話を年金に戻しましょう。公的年金は赤字が問題になっており、将来は年金がなくなると言う人もいます。年金はどれくらいの赤字なのでしょうか。

保険料収入と給付費だけのシンプルな収支で考えると、公的年金は毎年14兆円前後の赤字になっていることが分かります。約190兆円もの年金積立金を取り崩したとしても、約13年半で枯渇してしまう計算です。赤字は主に国庫の負担で埋められており、年金制度単体では維持することができていません。

【公的年金の収支状況】

 
 
国民の年金積立金17兆円が失われた…「過去最大」巨額赤字の原因
国民の年金積立金17兆円が失われた…「過去最大」巨額赤字の原因© Finasee

出所:厚生労働省 公的年金各制度の財政収支状況

この収支から考えると、確かに年金制度の持続性には疑問符が付きます。少子高齢化で現役世代が減りリタイア世代が増えれば、収支はさらに逼迫するでしょう。

年金制度だけで収支を均衡させるためには、保険料収入を引き上げるか、年金給付を引き下げるかのどちらかが必要です。国庫からの補填でカバーする場合は増税も視野に入ります。あるいは現行の賦課方式から積立方式への転換といった抜本的な改革もあり得るでしょう。

いずれの方法もデメリットが強く、国民の反発を招くことが予想されます。それが現在まで年金問題が放置された原因なのかもしれません。

執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。

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