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「ホストに1000万円、取られました」ホストクラブで“預かり金”と称した札束が…被害にあった26歳女性が語る、“資金調達”の日々と悪質ホストの手口

2024年05月13日 07時06分38秒 | ニュース

 歌舞伎町のホストクラブは、昨年まで、「売掛」(後払い)によって女性を騙し陥れ、結果的に多くの女性たちが性風俗産業で働かざるを得ない状況をつくってきた。しかし、昨年12月5日、歌舞伎町のホストクラブオーナーたちによる業界団体が売掛を自主規制で段階的に減らし、今年4月から売掛を全廃すると宣言した。

 その結果、今年に入ってからは、売掛に代わって「前入金」(先払い)システムが使われている。「売掛」と「前入金」の違いは、後で借金をさせるか、先に借金をさせるかだけだ。

「ホストに1000万円、取られました」

 昨年7月より、悪質ホストの被害に遭う親や女性の相談に乗っている一般社団法人「青母連」の代表・玄秀盛さんはこう指摘する。

「悪質ホスト産業は女性を食い物にしています。ホストクラブのオーナーたちがつくった歌舞伎町の業界団体は、4月から『売掛0(ゼロ)』にすると宣言しました。

 しかしホストは、虎視眈々と新たな女性を狙っています。全国にあるホストクラブはいまだ高額売掛しているし、今年に入ってからは個人間貸借や前入金、クレ・サラの多重債務を負わせる新たな被害相談が増えています。大学や行政に対して女性が“餌食”にならないように注意喚起をお願いしています」

 また最近では、「前入金」と女性に認知させずに、まずは個人間貸借を装い、女性からお金を巻き上げてからホストクラブの飲食代で相殺させる例が出ている。青母連の相談件数は、設立からの9か月で450件を超えている。青母連にも、その被害にあった相談者がいる。

「ホストに1000万円、取られました」

 茨城県在住の女性Kさん(26)は、か細い声で怒りをこめて言った。

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一般社団法人青母連代表の玄秀盛さん(4月 青母連事務所)© 文春オンライン

ホストからの被害に遭った女性

 「2年前、転職を機に実家を離れて一人暮らしを始めました。医療系の仕事に就きました。昨年10月ごろから、マッチングアプリで友達を探していたんです。11月下旬に男性Aから連絡が来て、最初はアプリ内でやりとりして、LINEを教えました。そのとき、『ホストだ』と一言も言われていません」(Kさん)

 Kさん自身、多少の警戒感もあったが、好奇心が勝って男性と会ってみることにしたという。12月初めには、AがKさんの住む茨城まで迎えにきてドライブへ行く仲になった。ドライブデートの後、一緒に夕食をとったお店で「Kちゃん 一生幸せにします」とデコレーションされたケーキが出され、告白されて付き合うことになった。

「後日、Aから、『500円ぐらいで個人情報見られるやつあるからやってよ』と言われました。CICのホームページでした。ゲーム感覚みたいな誘われ方だったし、CICのこともよく知りませんでした」(Kさん)

「今から思えば、これから起こる被害のはじまりでした」

 CICとは、割賦販売法および貸金業法に基づく指定信用情報機関で、CICホームページで本人の契約内容や支払い状況等の信用情報を確認できる。「今から思えば、これから起こる被害のはじまりでした」とKさんは言う。

 2日後、KさんがAの家へ遊びに行くとこう言ってきた。

「1月からホストをやることになった。友達がホストクラブを出すから、ある社長から1億円を出資してもらった。友達と売上を上げて返さなきゃいけない。Kを幸せにできないから別れてほしい」

 Kさんが「別れない方法はないの?」と問うと、Aはこう言った。

「お金を借りて店で使ってほしい。風俗はしてほしくないから、お金を用意してほしい。途中まで返してくれたら残りは自分が払う」

「彼と約束した将来を考えて、お金を借りることを決意しました」とKさんは振り返る。そして、Aは続けざまにこう言ってきた。

「お金の借り方を教えてくれる知り合いのBがいるから紹介するよ」

資金調達のためにBが電話で指示してきたこと

 そして翌日、AがKさんにLINEで個人情報を送るように連絡を入れてきた。

「『氏名』『住所』などの項目が箇条書きになっているテキストメッセージに、個人情報を入れて返信しました。親の情報も。身分証は画像で送りました。他に『用意したほうが良いものある?』とAに聞くと『源泉徴収票かな』との答えが返ってきました。

 その数時間後には、Bから、LINEで連絡が入りました。『資金調達の件でお繋ぎ頂きました、Bと申します! 宜しくお願い致します』と。次の連絡手段は、電話を要求してきたので、翌日にリスケしました」(Kさん)

 Bと電話することをAに伝えると、電話中は一緒にいてあげると話したという。

 

「『Bと電話するのは不安だと思うから、一緒にいるよ』とAは言ってきました。結局は来なかったですけど」(Kさん)

 Bが電話で指示してきたことは、

・Googleアカウントをつくり共有すること

・テレグラムのアプリをインストールして、今後の連絡はテレグラムですること

 の2つだった。

「600万から800万円調達できると言われた」

 KさんはBとテレグラムでやりとりを始める。

「このとき、はじめて借入できる金額を聞きました。600万から800万円調達できると言われました」(Kさん)

 それから10日間ほどの“資金調達”の日々が始まる。

「まずは、Bが4つの銀行のホームページにある融資申し込みページから申し込みをはじめました。Bから『もし融資目的確認の電話がかかってきたら、車の売買目的と言うように』と指示がありました。

 申請された内、1社は窓口に呼ばれてダメだったけど3社は通りました。各200万ずつでした。申請は、Bがすべて一人で申し込みました。私は、ただただ審査進捗確認メールを見ているという感じでした。一通り申請が終わるとBからテレグラムで『今回借りたのに使ったのはこちらです』と偽造された源泉徴収票が送られてきたんです」(Kさん)

1月のホストクラブオープンの日

「1月に入るとBから、『追加で500万円調達できます』と言われました。Aに相談すると『いくらだった?』と言われ、私が金額を言うとAは『考えておくわ』と。

 さすがに額が額なので、不安でしたが、彼の『途中まで返してくれたら、残りは自分が払うよ』という言葉を信じていました。でも『もう借りるのは限界だから、あなたが好きでいてくれるなら追加はなしでいい?』とLINEすると『追加で500万ならお願いしたい。300万なら借りなくていい。借りてくれたら助かる』という返事でした」(Kさん)

 結局Kさんは、Bに追加の借り入れをお願いする。するとBから、消費者金融とカードローン会社の一覧表が送られてきた。Kさんは、Aに「Bさんに借り入れをお願いしたよ」とLINE報告すると「ありがとう」と返信がきた。

 消費者金融にも銀行と同じように3社にBが申請をした。カードローン3社はKさん自身が申請した。即日、消費者金融で400万円とカードローンで150万円の借り入れが可能になった。

「指名が被っている太客がいると思わせたい」

 消費金融の申請が終わった翌々日、自宅の最寄駅前にあるC銀行の窓口で200万円、D銀行のATMで200万円をおろす。

「C銀行とD銀行の時は、Aも一緒に来ました。入口の外で待っていました。その場ですべての現金を受け取るとAは『仕事があるから』とすぐ帰りました。カードローンの150万円は『毎日少しずつおろしておいて』と言われました。

 翌日、Aから電話がきました。

「俺を指名している客に対して、指名が被っている太客がいると思わせたい。来週25日に店に来て“預かり金”を使ってほしいと言ってきました」(Kさん)

 そして、KさんはAのためにまた消費者金融でお金を借り入れした。

「25日までの数日間は追加で借り入れした消費者金融ATMを回るはめになりました。新宿・歌舞伎町のATMで、500万円を引き出しました。Aも一緒でした。Bからは1日ですべてを引き出すように指示がありました。引き出してはAに渡すことを繰り返しました」(Kさん)

ホストクラブで“預かり金”と称した札束が…

「そして、約束通り25日にホストクラブへ行きました。何も注文していないのに、ホストがスタッフに『持ってきて』と言って出てきたのが、“預かり金”と称した札束が入ったインペリアルでした。意味がわかりませんでした。インペリアルの値段もわかりません。ただし、その日、クレカで53万円を切られました」(Kさん)

 個人間貸借を装って、“預かり金”と称してホストに回収され、ホストクラブでの飲食代やボトル代に充てられる。Kさんも約1000万円を飲食代で相殺された被害者である。これが最近の悪質ホストの手口だ。

 その日を境にAの態度は急変したという。Kさんが連絡してもはぐらかされ、返信が遅くなった。Kさんは、後日、直接店へいって問い詰めた。

 

「『スカウト紹介するよ。お金ないなら、風俗どうかな?』と言ってきました」(Kさん)

 Kさんは、LINEでも問い詰め続けた。

「『人生の責任とるとか言って逃げるようなことしないよね、人として』と言っても、何度電話しても出てくれませんでした。LINEが乗っ取られたとか言って、テレグラムに連絡してほしいなど、逃げ続けられました」(Kさん)

ホストのマインドコントールから抜けたきっかけ

 Kさんは、「性風俗に行くことが、どうしても踏みきれなかった」と言う。しかし、この拒否が、ホストのマインドコントロールから抜ける早道でもあった。Kさんは、返済を考えると昼間の仕事では追いつかず、コンカフェで働いた。毎日届く支払い督促状や催促の電話でメンタルを壊した。

 ホストクラブに通っている間は、ずっと連絡を絶っていた母親に連絡した。全てを打ち明けて2日後に母と会った。母親がメディアに出ていた青母連へその日に連れていった。今、Kさんは、青母連の弁護士に相談している。現状では、彼女自身も法律に抵触している。しかし今回の件を「告発したいから」と被害届を出すことを視野にいれている。

 青母連の事務局長の田中さんは、

「Kさんの被害は、悪質ホストとスカウトの組織的な詐欺とみています。Kさんが特殊なケースに遭ったのではなく、最近ではホストに貢ぐために出し子になったというケースも聞きます。女性からお金を取れるだけ取ろうとしているだけにしかみえません。犯罪に加担させられるので、いざホスト通いから抜けたとき、共犯ということで罪になってしまう。女性が声を上げづらい状況です」

 と言う。

 青母連の事務所には、行方不明になった娘を探してほしいという親が全国から来るという。この状況を生み出しているホスト産業とは接客業としていかがなものか。

 

(田中 七郎太)

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