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日本が「豊かさ」ランキングで24位に後退、日本のネット民「現状を反映」―中国メディア

2024年03月17日 07時49分44秒 | 日本の衰退

中国メディアの環球時報は15日、「豊かさ」を示すランキングで日本の順位が後退したことに、日本のネットユーザーから納得する声が上がっていることを報じた。

 

国連開発計画(UNDP)が発表した国民の豊かさを測る「人間開発指数(HDI)」(2023~24年版)で、日本は前回の22位から2つ順位を下げ24位となった。同指数は1人当たりの国民総所得、教育水準、平均寿命を基に算出される。

 

記事は日本のネットユーザーから「日本は経済、教育、政治などの分野でいずれも後れを取っている。このランキングは日本の現状を反映している」「賃金水準は数十年間上がらず、実質賃金は下がり続け、貧富の差は拡大しているのに、政治家はやりたい放題。国の将来に希望はない」といった声が上がったことを紹介した。

 

なお、ランキングは1位がスイス、2位がノルウェー、3位がアイスランド。アジア最上位は香港の4位。このほか、韓国が19位、米国が20位、ロシアが56位で、中国は75位だった。(翻訳・編集/北田

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男女の賃金格差是正、婚姻率へ影響も 古い結婚観根強く

2024年01月30日 06時35分42秒 | 日本の衰退
日本の少子化が加速している。婚外子が少ない日本では、婚姻率が出生数に大きく影響する。人的資本開示が始まり、男女賃金格差の是正は待ったなし。しかし実は、それが婚姻率を下げる要因になりかねない。解決のカギは「下方婚」を認める社会的な意識の醸成だ。

厚生労働省の人口動態統計によると、2022年の出生数は前年より4万863人少ない77万759人となり、初めて80万人を下回った。23年上半期の出生数は約35万人で、22年をさらに下回って推移している。原因の1つとして挙げられるのは、20〜21年に婚姻数が減ったこと。婚外子が出生の2%ほどにとどまる日本では、婚姻数の減少が続けば、少子化のさらなる加速が懸念される。

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出生数は16年に100万人を下回り、22年には80万人を割った

婚姻率が上がらない理由の1つとして、経済力への不安が挙げられている。不安解消のためには賃金の全体的な底上げはもちろんだが、男女の賃金格差を是正することも重要だ。

23年3月期決算以降、大手企業4000社を対象に人的資本開示が義務化された。定められた開示項目の中には「男女賃金格差」が含まれるのは、情報を開示することで、格差是正への取り組みを各社に働きかける狙いがある。厚労省の賃金構造基本統計調査によると、22年の賃金の平均は男性が34万2000円、女性が25万8900円。男性を100とすると、女性は75.7となり、25ポイント近い差がある。

賃金格差是正に取り組んでいる資生堂は、男性の平均年間賃金を100とした場合、女性は75.3(22年度)。差異が生じている主要因として、女性管理職の割合が約3割にとどまっていることから、30年までにあらゆる階層で男女比率を50対50にすることを目指す。

メルカリは23年9月に初めて男女賃金格差を公表した。男性の平均年間賃金を100とすると、女性は62.5。中途採用が9割を占める同社では、入社前の給与を考慮して賃金を設定することが多かった。そのため、前職での賃金格差を引きずってしまう傾向がある。採用時の賃金の見直しなどを行いながら格差是正に取り組むという。

賃金格差是正で婚姻率は低下?

男女の賃金格差是正は待ったなしだ。しかし実は、それが逆に婚姻率の低下や、ひいては少子化の加速を招きかねない「不都合な真実」がある。『少子化問題の社会学』などの著書がある東京大学大学院人文社会系研究科の赤川学教授は「賃上げは、男性にとっては婚姻率が上がる恩恵があるかもしれないが、女性の婚姻率上昇には効果があまり見込めない」と話す。なぜか。

実は女性の所得が高いほど、婚姻率は下がる傾向にあるからだ。総務省統計局の「令和4年就業構造基本調査」を分析すると、女性は年間所得が上がるにつれて、配偶者がいる割合が低くなる傾向がある。年収が上がると配偶者がいる割合が高まる男性とは逆の傾向だ。

なぜ未婚女性の方が所得が高い傾向にあるのか。未婚女性は自分で生計を立てなければならないことが多く、必然的に所得は高くなる傾向がある。一方の既婚女性は、結婚や出産を機に仕事を辞めたり、パート・アルバイトなどの非正規雇用になったりする人も多い。

だが、こうした事情を差し引いたとしても、所得の高い女性に未婚者が多い理由がある。それは、多くの女性は自分よりも学歴や収入がある男性と結婚する、いわゆる「上方婚」を望んできたからだ。女性がキャリアを持てず、収入が少なかった頃には、結婚の「経済的メリット」があった。しかし、女性活躍が進むと、金銭的な魅力は減る。男女の賃金格差が縮まる中で上方婚を求め続けると、収入が低い男性は見向きもされなくなる。結婚への意識を変え、上方婚と逆の「下方婚」を増やすことが、婚姻率を上げるカギと言える。

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男女平等社会で女性の上方婚志向が残ると、どうしても結婚できない人が出てくる(赤川教授作成の図をもとに日経ビジネス作成)

男性も同様に結婚への意識を変える必要がある。マーケティング支援のナイル(東京・品川)が運営する恋愛・婚活メディア「出会いコンパス」が23年9月に実施した、20〜40代の男女を対象にした調査では、交際相手に望む年収は「自分よりも高い」と答えた女性は51.7%、男性は8%だった。交際相手に望む年収は「自分よりも低い」と答えた男性は34.7%、「自分と同等くらい」は56.3%。3人に1人の男性が自分より稼ぎの低い相手を求めており、「男性が女性を養う」という考えはいまだ根強く残っている。

結婚相談所では年収以外の条件に誘導

ある大手結婚相談所は「相手の理想の条件を聞けば、誰もが年収は高いに越したことはないと思っている。現実には、どこまでその条件を緩められるかだ」と話す。女性の下方婚を増やすには、年収以外の条件をいかに引き出すかが重要だ。

リクルートが運営する結婚相談所サービス「ゼクシィ縁結び」では、相手に求める条件をヒアリングする際、年収の条件が高い人には、年収以外にも目を向けるように意識して提案している。初回の面談では過去の交際相手についても聞くため、これまでの傾向と照らし合わせながら、本当に譲れない条件は何かを探す。担当者は「『以前お付き合いしていた人は理想の年収より低かったけど、金銭で困ることはなかったな』と気づいてもらえると、年収以上に何を重要視したいかが見えやすくなる」と言う。

高い年収を望む人は、「今の生活水準を落としたくない」「結婚すると生活費が2倍になる」といった生活費の心配をする人も少なくないという。そういう人に対しては、「家賃は単純に倍増するわけではない」など安心材料を提供しているという。担当者は「年収は重視しなくていいかもと条件を緩める人は、意外といる」と話す。

東京大学の赤川教授は「女性が下方婚を敬遠するのは、家族や友人、職場の人などの影響も大きい」と指摘する。社会制度にも「男性が女性を養う」という考えが色濃く残る。例えば遺族厚生年金の受給要件。女性は夫の死亡時に30歳以上であれば子どもの有無にかかわらず受給できるが、男性は妻の死亡時に55歳以上でなければ受給できず、支給は原則60歳からだ。

そもそも結婚願望がない人もおり、単一の結婚観を強要することはできない。しかし、日本の人口減少と労働力不足を少しでも緩やかにするためには、結婚したいと思える環境整備は不可欠だ。「男性が女性を養う」「上方婚」といった既成概念を変えるためには、まず古い制度の改革から手をつけるべきだろう。

(日経ビジネス 藤原明穂)

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「ヤバい日本救うために、世界に出てマクドナルドを見ろ」世界を飛び回る投資家が断言する理由

2023年11月30日 06時20分03秒 | 日本の衰退
「ヤバい日本救うために、世界に出てマクドナルドを見ろ」世界を飛び回る投資家が断言する理由
「ヤバい日本救うために、世界に出てマクドナルドを見ろ」世界を飛び回る投資家が断言する理由© AERA dot. 提供

 物価も税金も上がり生活はカツカツ……。こんな日本にいて大丈夫だろうか?と不安を抱かずにはいられない。そんな中、投資家・シンガポール大教授として世界中を飛び回る田村耕太郎氏は、「とにかく世界を見てきてほしいう」と語る。海外に行ったら、ファストフードに行くだけでも十分だという。その衝撃的な理由とは。著書累計90万部を突破した同氏による『君は、こんなワクワクする世界を見ずに死ねるか!?』から、一部を抜粋・改編して紹介する。

*  *  *

 10年ひと昔というが、この10年で世界も日本も大きく変わった。私自身も東京からシンガポールに住まいを移している。シンガポールに住むきっかけになったのは、議員時代に国父・故リー・クワンユー氏の名前のついた大学から招聘を受けたことに始まる。

 アジアのリーダーとして、シンガポール建国の父として、世界に名をはせる故リー・クワンユー氏に個人的にお目にかかる機会を、私は三度もいただいた。率直な物言いで有名な氏から多くの印象的な直言をいただいた。

「君はタムラって名字か。確か政治家に何人かいるね。世襲かい?」

「いえ。(胸を張って)政治家は家族に一人もいません」

「(やや残念そうな表情になり)そうか。じゃあ君は絶対首相にはなれないな。日本じゃそうだろ」

 かなりムッとしたが完全な正解だった。

「日本人は優秀だ。多くを日本から学ばせてもらった。ただ、僕が若い日本人で英語を話せたら日本から出て行くよ」

 ムッとして、なぜですか?と聞くと、

「日本は引っ越せないんだよ。中国の隣で小さく、貧しく、老いていたらまずいよ。世界の多くの国は、自国の課題を認識できず窮地に陥る。だが日本は違う。優秀だから政府も国民も課題も解決策も全部わかっている。なのに誰も行動を起こさない。それがとても残念だ」

 今になってとても腑に落ちている。

 小さく、貧しく、老いていく。

 日本の人口はこの10年間で400万人近い減少となっている(国連統計)。高齢者の人口比率は24%から29%と上昇し、平均年齢は45.2歳から47.7歳と3歳近く年老いてきている。

 今から思うと信じられないが、2012年には年平均で約80円だったアメリカドル。それから10年以上経つ2023年10月の段階で、150円まで下落している。8割以上の下落である。アメリカのGDPは2012年当時米ドルで日本のGDPの2.6倍だったが、今や5倍以上の開きがある。一人当たりで比較しても日米の差は2.25倍となっている。個人としての日本人の豊かさはアメリカの半分以下なのだ。

 2010年に日本のGDPを追い抜いたお隣中国。2012年には徐々に差を広げ、日本より36%大きかったが、10年経って中国のGDPは日本の4倍以上と急拡大して大差をつけている。

 長らく「世界第2位の経済大国」が日本の枕詞だったが、このところ「世界第3位」。それどころか、実質でインドに抜かれる日も近く、その後インドネシアやブラジルが日本を抜いていくだろう

 私の住むシンガポールは一人当たりGDPではアメリカよりさらに豊かで、日本と比較すると日本の2.45倍の豊かさだ。経済だけではない。2012年当時の世界の軍事力はアメリカが圧倒的に1位で、アメリカは世界の警察官と言われ、国家単位の戦争はもはや起こらないとみられていた。ところが、2022年2月にはロシアがウクライナに戦争を仕掛け、これを書いている2023年10月時点ウクライナ戦争は出口が見えない状況に見える。国家同士の領土をめぐる総力戦が21世紀でも消えていないのだ。

 それどころか日本のそばの東アジアでは台湾有事が危惧されている。米軍基地が集中する沖縄のすぐそばの台湾で武力衝突が起こることは、われわれ日本人にとってまったく他人事ではない。台湾をめぐって米中が衝突すれば米軍基地のある沖縄は戦地となり、日本への物流のチョークポイント(地政学的に重要な海上水路)である台湾海峡、バシー海峡が封鎖されてしまえば、食糧の62%やエネルギー輸入の88%をブロックされ干上がってしまう。食料自給率132%、エネルギー自給率104%のアメリカとは立場が違う。

 
「ヤバい日本救うために、世界に出てマクドナルドを見ろ」世界を飛び回る投資家が断言する理由
「ヤバい日本救うために、世界に出てマクドナルドを見ろ」世界を飛び回る投資家が断言する理由© AERA dot. 提供

 日本を取り巻く世界の経済や国際関係が激変する中で、シンガポールからたまに日本を訪れる私の目には、残念ながら日本はますます鎖国的になっている感じがする。コロナ禍で物理的にも国を閉じ、外国人をウイルス扱いするような水際対策を長らく取り続けた我が国は、どこかで「国を閉じて皆で貧しくなれば大丈夫」との暗黙の了解を社会で交わしているようにも見える。私の想いが間違っていてほしいものだ。

 江戸時代はほぼ国を閉じても存続できた日本だが、当時とは人口数も経済力も格段に違う。一見鎖国してもやっていけそうに思えるかもしれないが、実は日本は食料もエネルギーも自給できず、自国を自力で防衛する能力も持たない(持てない)。世界との関係がなければ存続できない国なのだ。

 

 このまま、人口を減らし、年老いて貧しくなってはいけない。日本は西欧の端っこや北米にあれば、今の経済力でもまだのんきにできるだろう。しかし、われわれの置かれた環境ではこれ以上国力を落とすことは許されないと思う。

 これからの日本で生き抜いていくからこそ、ぜひとも世界を見てきてほしい。よく「海外で何を見たらいいですか?」という質問を受けるが、スーパーに行ったり、外食に行ったり、マクドナルドやスターバックスに行くだけでいい。とにかく海外に行けば、今の日本人の購買力の低さがわかり、これはやばいなと実感できる。

 日本は、例えば“ラグビー日本代表チーム”をイメージしたものをつくれば、最強になれる。今のラグビー日本代表は、チームの半分以上が日本で生まれていない選手で出来上がっている。日本で生まれていなくても、日本のために体を張れば強い。そんな代表を日本国民の多くが応援している状況は希望が持てる。

 世界最強国家アメリカの強さはまさにそこにある。アメリカで生まれた人ばかりでやっていたらアメリカは強くなれない、と彼らはわかっている。大谷翔平選手のように、アメリカで生まれていない選手を受け入れて、世界最高のリーグを作り盛り上げていく。

 シリコンバレーの成功者も大半はアメリカで生まれていない。日本の「1億総活躍」は選挙向け政治スローガンとして理解できるが、本当にやるべきは世界80億人を日本のために活用することだ。そのためにも多くの日本人が世界を見て世界を感じて世界に日本を開いてほしい。

 逆説的だが、日本の良さを再発見するためにも海外に出てほしい。日本にいては「日本の素晴らしさ」は当たり前になっていて実感できない。日本を離れている身の方が、日本の素晴らしさを再認識できる。

 いい例が私の娘である。私の娘は2歳でシンガポールに引っ越し、今はシンガポールのインターナショナルスクールに通っている。シンガポールに暮らす子供たちの間では日本は大人気だ。

 まず、日本は、あらゆる国籍・文化の子供たちに大人気の“ポケモン”に代表されるアニメの発祥の地としてリスペクトされている。とんカツ、カレー、焼き鳥、寿司、うどんなどの和食も大人気で、娘の通う学校の学食でも巻き寿司が売られている。日本のスーパーも大人気。

 常にクラスメイトから母国を絶賛される娘は鼻高々だ。私が食卓で日本の批判をしようものなら、「パパはいつも自分の国を悪く言って何がうれしいの?」とたしなめられる。

 これからの日本は世界に開いて学んでいかないと生きてはいけない。同時に、日本の素晴らしさも世界にもっと売り込む必要がある。そういう意味でもこれからの日本を担う若い人たちを中心に世界に出て、世界を知り、日本を再発見してほしい。これから健康寿命も延びるので、もちろん中高年の方々にも継続して世界を見てきてほしい。

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家賃が払えない!保証会社の督促員が見た「滞納の現場」ミイラ化した遺体を発見したことも/女子アナ日下千帆の「私にだけ聞かせて」

2023年09月18日 10時28分40秒 | 日本の衰退
 

 

最近、コロナ後に仕事が戻らないなどの理由で、家賃の支払いが厳しくなっている方もいらっしゃるようです。家賃を滞納するとどうなるのか、立ち退きの現場に立ち会ってきた森本治子さんにお話を伺いました。

佐賀県出身。これまでホテルスタッフや弁護士事務所の事務など、さまざまな仕事を経験してきた森本さんは、2018年から2022年まで、家賃保証会社で督促の業務を担当しました。家賃滞納が発生したと電話で報告を受けると、その家に出向き、住人の安否確認や生活保護申請の手伝いをすることもあるそうです。

――督促するのは、大変なお仕事だと思います。これまでも、立ち退きに至るまでのさまざまなケースを見てこられたのでしょうか?

「はい。高齢者の一人暮らしや風俗に勤務する女性が年齢を重ねて収入が下がってしまったケース、上場企業に勤務しているのに滞納された方などがいらっしゃいました。

すでに賃借人が亡くなっているケースもあり、その場合、不思議と電話をかけた途端に嫌な予感がして、実際に訪問すると孤独死をしているなど、いろいろな経験をしました。

これまでさまざまなケースを担当し、浪費などで家賃が払えなくなる家には、共通点があることを発見しました。

・玄関に居住している人数以上の靴が散乱している

・玄関先が整理整頓されていない

・ペットを飼っている

以上の3点です」

――物を減らして、玄関を片づけないといけませんね。これまで森本さんが立ち会ったなかで、印象に残っている現場を教えていただけますか?

●元公務員40代の独身男性の場合

「ご本人と連絡がつかない状況で家賃滞納が続き、警察立ち会いのもと安否確認を実施しました。ところが、警察が玄関を開けたらご本人が出てきて、『オレは無敵の人間だ。払うお金はないから、どうにでもしろ!』と叫ばれたのです。滞納理由は派遣切りにあって、次の仕事が決まらないというものでした」

●土建業で働く日雇い男性の場合

「『まったく部屋に帰ってないのでは』と連絡があったので、出入りを確認するため、ドアの蝶つがいにテープを張りました。1週間後に再び行ってみると、テープが外れていなかったので、警察官立ち会いのもと玄関を開けると、腰の高さまでゴミで埋まっていて、奥に入れない状況でした。

警察官がゴミをどけながら進むと、業界用語で “爆弾” と呼ばれる、ペットボトルや紙パックに排泄物をため込んたものが、壁ぞいに並んでいました。これは燃えるゴミでは処分できないので、後に請求する残置物撤去費用や原状回復費用が高くなります。ご注意ください。このケースも、派遣切りにあい、収入が途絶えたため家賃の滞納につながったそうです」

●ゴミ屋敷に住む24歳女性の場合

「家賃を6カ月滞納している若い女性と連絡が取れないため、田舎から出てきていただいたお父さま立ち会いのもと、管理会社と一緒に部屋に入りました。

部屋のなかは、ゴミと段ボール箱とフィギュアの山でした。入口にカビだらけの真っ黒なせんべい布団がありましたが、本人がどこにも見つかりません。

トイレには使用済みの生理用品が積み重なった状態で、お父さまも絶句されていました。お父さまが居場所に心当たりがあると言うので、バイト先と思われるカフェに行ってみました。そこで働いている彼女を発見して話をしたところ、『実家に帰りたい』と泣き出してしまいました。

 

このときは、滞納ぶんをお父さまが支払って、実家に帰るという話でまとまったのですが、彼女はその後も半年間この生活を続けていたため、再度、管理会社とともに訪問し、面談しました。

お父さまが電話越しに『すぐ実家に戻るように』と説得しても、彼女はうなずくだけで動きません、そこでお父さまと話をして彼女に『もうここには住めない』と伝え、『貴重品や要るものをまとめて出て行くように』と伝えました。

しかし、彼女は田舎に帰る切符も買えなかったのです。手元に5000円くらいしかないと言うので、品川駅まで一緒に行って切符の手配をして、新幹線に乗せました」

●年金暮らしの88歳のおじいさん

「部屋のオーナーから『本人と連絡がつかない。年齢も年齢なので、倒れていないか心配だ』という連絡をうけて、現地に向かいました。

インターホンを押すと、なかからやせ細ったおじいさんが出てきました。救急車を呼ぶことを嫌がったので、市の福祉課から保健師さんを派遣してもらいました。

玄関はゴミがあふれ、部屋の様子が確認できないので、外から駐車場側の部屋の雨戸を開けると、その部屋も天井までゴミ袋が積み上がっていました。アリの巣の観察キットのような、ゴキブリの巣もできていました。

年金はちゃんと出ているのに、なぜ滞納したのか話を聞くと、働いて生活したいとポスティングのアルバイトをしたものの、移動でバスに乗るため、交通費がかさんで赤字になっていたのです。

収支がマイナスなので、その仕事をやめて年金だけで生活しませんか、と言っても、おじいさんにとっての生き甲斐だったらしく、首を縦に振りません。

結局、この方は体調を崩して1人で生活することが困難になり、施設に入ることになりました」

●54歳の元風俗嬢

「最初のうちは、訪問しても門前払いを受けました。『追い出しに来たんでしょう?』と言われたので、『いいえ、話を伺いに来ました』と答えるうち、次第に状況を話してくれるようになりました。

風俗嬢という職業柄、年齢を重ねて仕事が減ってしまい、メンタルを病んでしまっていました。生活保護を申請してくださいとアドバイスしたのですが、1人で役所に行ったら、話も聞いてもらえず、相談すらできなかったそうです。

日を改めて、彼女に付き添って役所に行き、『以前、弁護士事務所にいました』と言ったら、申請が通りました。

そのときに思ったのは、生活保護は、本当に必要な人のところに届いていないのではないかということです。

日本人は、生活保護を受けるのは恥ずかしいと考える方も多く、また、親族に迷惑をかけられないと、なかなか申請に行けない方もいます。うまく自身の状況を説明できず、受け付けてもらえないケースもあるようです。

逆に、外国人のなかには、ブランドバックを持ちながら受給する人もいますし、役所で騒いで生活保護をもらおうとする人もいるようです。そういうときは警察に通報するなど、役所は毅然と対処するべきだと思います」

――怖い話もあるそうですね。

「はい。あるとき、賃借人が死亡していると連絡を受けて、現場に行きました。通行人が、窓から人の手が出ているのを不審に思い、第一発見者になったケースです。賃借人はタバコを吸いながら亡くなっていたようです。

管理会社の方と一緒に物件の確認をしていると、玄関横の風呂場でおじいさんが湯船につかっているような姿が見えたので、『この部屋、前にも誰か亡くなっていませんか?』と聞いたところ、『これで3人めです』という答えが返ってきました。

また、連絡が取れない賃借人のケースで、警察官立ち会いのもと、玄関を開けたとき、なかから『オウ!』という声が聞こえました。ところが、『◯◯さん、いらっしゃるなら出てきてください。連絡が取れないので、警察と一緒に安否確認に来ました』と言っても、反応はありません。そこで、チェーンを壊して入ると、ミイラ化したご遺体が発見されました。現場にいた全員が声を聞いていて、不思議だと感じました」

いろいろな現場に立ち会う大変なお仕事ですね。本当に必要な方が生活保護を受けられる状況になればと思います。

■家賃が払えなくなったとき、気をつけるべき3カ条

(1)保証会社からの連絡を無視しない

(2)親族か保証会社に相談する

(3)バレる嘘はつかない

追い出されると思ってケンカを売ったら損します。相談して味方になってもらいましょう。家賃の支払いを後回しにしたら、生活する場がなくなる可能性があります。

保証会社は追い出すために存在するのではなく、弱者救済をする立ち位置にあります。家賃の支払いに窮することがあったら、早めに保証会社に相談してください。

取材協力/カラオケ館上野本店

日下千帆

1968年、東京都生まれ。1991年、テレビ朝日に入社。アナウンサーとして『ANNニュース』『OH!エルくらぶ』『邦子がタッチ』など報道からバラエティまで全ジャンルの番組を担当。1997年退社し、フリーアナウンサーのほか、企業・大学の研修講師として活躍。東京タクシーセンターで外国人旅客英語接遇研修を担当するほか、supercareer.jpで個人向け講座も

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経産省が出てきた時点でアウト…日立の元技術者が「日本の半導体の凋落原因」として国会で陳述したこと【2023上半期BEST5】

2023年08月18日 08時29分40秒 | 日本の衰退
※写真はイメージです
※写真はイメージです© PRESIDENT Online

2023年上半期(1月~6月)、プレジデントオンラインで反響の大きかった記事ベスト5をお届けします。国際・政治経済部門の第3位は――。(初公開日:2023年5月15日)なぜ日本の半導体産業は凋落してしまったのか。半導体産業コンサルタントの湯之上隆さんは「『技術で勝って、ビジネスで負けた』と理解されることがあるが、それは間違っている。端的に技術で敗北したのだ」という――。

※本稿は、湯之上隆『半導体有事』(文春新書)の一部を再編集したものです。

日本の半導体メモリは韓国企業に駆逐された

2021年6月1日午前9時、筆者は、衆議院の分館4階第18委員室の参考人席に着席していた。衆議院の「科学技術・イノベーション推進特別委員会」から、半導体の専門家として参考人招致を受け、「日本半導体産業の過去を振り返り、分析、反省し、その上で将来どうしたらいいか?」について、意見陳述を行うよう要請されたからだ。

 

筆者は20分強の意見陳述で、主として次の3点を論じた。

①日本のDRAM産業は、安く大量生産する韓国の破壊的技術に駆逐された

②日本半導体産業の政策については、経済産業省、産業革新機構、日本政策投資銀行が出てきた時点でアウトとなった

③日本は、競争力の高い製造装置や材料を、より強くする政策を掲げるべきである

以下では、これらの要点について説明する。この意見陳述は、衆議院が作成した動画をYouTubeにアップしている。

筆者は、意見陳述のタイトルを、『日本半導体産業をどうするべきか? ――希望は製造装置(と部品)&材料――』として、自己紹介から話を始めた(図表1)。

筆者は、日本がDRAMで約80%の世界シェアを独占していた頃の1987年に、日立製作所に入社して半導体技術者となった。その後、DRAMのシェアの低下とともに技術者人生を送ってしまい、日本がDRAMから撤退すると同時に、早期退職勧告を受けて、本当に辞めざるを得ない事態に至った。

しかし、転職先探しに時間がかかってしまい、辞表を出しに行ったときには早期退職制度が終わって1週間ほど経っていた頃で、部長から「撤回はなしだよ」と辞表をもぎ取られ、自己都合退職となってしまい、早期退職金3000万円はもらえず、退職金はたったの100万円になった。

1980年には世界シェアの80%を独占したが…

日立を辞めた後、紆余(うよ)曲折の末、辿り着いたところは、経営学研究センターが新設された同志社大学だった。今でいうところの特任教授(当時は専任フェローと呼んだ)のポストに就き、約5年間の任期で、「なぜ、日本のDRAM産業が凋落したのか?」を研究した。その分析結果を要約すると、次のようになる。

日本が強かった1980年代半ば頃、そのDRAMはメインフレーム(汎用(はんよう)の大型コンピュータ)用に使われていた。その時、メインフレームメーカーは、「壊れないDRAM」として25年の長期保証を要求した。驚くことに、日本のDRAMメーカー各社は、本当に25年壊れない超高品質DRAMをつくってしまったのである。それで、世界を席巻し、1980年の中期には世界シェアの80%を独占した。これは、技術の勝利だった。

ところが、1990年代にコンピュータ業界にパラダイムシフトが起き、メインフレームの時代は終焉(しゅうえん)を迎え、パーソナル・コンピュータ(PC)の時代がやってきた。そのPCの出荷額の増大とともに、韓国のサムスンがDRAMのシェアで急成長してきた。

この時、サムスンは、「PC用に25年保証は必要ない。5年も持てばいい。それよりも、PC用DRAMは安価でなければならない。その上、PCの出荷台数が桁違いに多いから、そのDRAMは安価に大量生産しなければならない」という方針でDRAMを製造し、日本を抜き去ってシェア1位に躍り出た。

ビジネスだけでなく、技術面でも負けてしまった

この時、筆者は日立の半導体工場でDRAMの生産技術に関わっていたが、筆者も、日立も、日本の他のDRAMメーカーも、誰もがPCの出荷額が増大していること、サムスンのDRAMのシェアが急成長していることを知っていた。

しかし、そうであるにもかかわらず、相変わらず日本のDRAMメーカーは25年壊れない超高品質をつくり続けてしまっていた。その結果、サムスンの安く大量生産する破壊的技術に駆逐されたのである。

日本のDRAM敗戦について、「技術で勝って、ビジネスで負けた」という人がいるが、それは間違っている。日本は、韓国に、技術でもビジネスでも負けたのである。もっと言うと、技術で負けた要因が大きい。

それは、日本が撤退する直前の64メガDRAMのマスク枚数を見てみれば、一目瞭然である。おおむね微細加工の回数を表しているマスク枚数を比較すると、日立29枚、東芝28枚、NEC26枚だったのに対して、韓国勢は20枚くらい、米マイクロンに至っては約半分の15枚でPC用DRAMをつくってしまった。

当然マスク枚数が多いほど、工程数も多くなり、高額な微細加工装置の台数も多くなる。それ故、製造装置の原価がかさみ利益が出ない。その結果、日本のDRAMメーカー各社は大赤字を計上し、撤退に追い込まれていったのである。これは、明らかに、技術の敗北である。

 

意味なく「超高品質」を目指してしまった

日本の半導体産業は、1980年代に、メインフレーム用に超高品質DRAMを製造して世界シェアの80%を独占した。この時、DRAMメーカー各社の開発センターや工場に、極限技術を追求し、極限品質をつくる技術文化が定着した。1980年代には、それが正義だったため、日本は世界を制覇できたわけだ。

ところが、1990年代になると、コンピュータ業界が、メインフレームからPCへパラダイムシフトした。DRAMの競争力は、「超高品質」から「安価」であることに変わった。しかし、ここで日本は、DRAMのつくり方を変えることができなかった。結果として、過剰技術で過剰品質をつくることになり、大赤字を計上し、撤退するに至った(図表2)。

さらに、1社残った日立とNECの合弁会社のエルピーダは、この高品質病がもっとひどくなり(2005年頃には、マスク枚数は50枚を超えていた)、2012年にあっけなく倒産してしまった。

一方、サムスンはPC用に、適正品質のDRAMを安価に大量生産することに成功し、シェア1位となった。これは、ハーバード・ビジネススクール教授だったクリステンセンが言うところの「イノベーションのジレンマ」の典型例である。超高品質で世界一になった日本が、そこから自らを変えることができなかったため、それより信頼性が劣るサムスンのDRAMに駆逐されていったからだ。

なぜ日本の半導体産業は凋落したのか

問題は、日本がDRAMから撤退し、大規模なロジック半導体(SOC)へ舵を切っても、この高品質病は治らず、より悪化し、重篤化していったことにある(図表3)。DRAMを含む日本のすべての半導体のシェアは、1980年代半ばに約50%でピークアウトして、凋落の一途を辿った。

そのシェアの低下を食い止めようと、主として経産省が主導し、国家プロジェクト、コンソーシアム(共同企業体)、エルピーダやルネサスなどの合弁会社を設立したが、全て失敗した。何一つ、シェアの低下を食い止めることはできなかった。

それはなぜか? その主たる原因は、診断が間違っていたことにある。人は、「咳が出る、熱がある、身体がだるい」という症状が出たら、病院に行って医師の診察を受ける。昨今なら、コロナなのか、インフルエンザか、単なる風邪か、という診断を受け、それをもとに処方箋を出してもらう。

日本の半導体産業も、各社のトップ、産業界、経産省、政府などが、病気の診断を行い、それに基づいて処方箋を作成し、実際に処方した。しかし、全て失敗した。その理由は、診断が間違っていたからである。そのため、その処方箋も的を射ていなかったわけだ。

「過剰技術・過剰品質」にこだわり過ぎてしまった

日本の病気の本質は「過剰技術で過剰品質をつくってしまう」ことにあった。しかも、時代が変わっているにもかかわらず、過去の成功体験を引きずり、「今でも自分たちの技術が世界一」と己惚(うぬぼ)れていた。

誰もこの病気に気がつかなかったばかりか、より過剰技術で過剰品質をつくることに、各社、産業界、経産省、政府が注力した。その結果、病気は治らずより悪化し、エルピーダなど死者もでた。そして、SOCビジネスも壊滅的になってしまった。

日本の半導体産業は挽回不能である。特に、TSMCが世界を席巻しているロジック半導体については、日本のメーカーは2010年頃の40nmあたりで止まり、脱落してしまった。いったん、微細化競争から脱落すると、インテルの例でわかるように、先頭に追い付くのはほとんど不可能である。

したがって、日本がいまさら、最先端の7~5nmを製造することなど(まして2nmなど)、逆立ちしたって無理である。ここに税金を注ぎ込むのは無駄である。歴史的に見ても、経産省、産業革新機構、政策銀行が乗り出してきた時点でアウトなのだ。

半導体材料や製造装置には希望がある

では、日本に希望の光はないのかというと、まだ、ある。それは次の3点である。

①ウエハ、レジスト、スラリ(研磨剤)、薬液など、半導体材料は、日本が相当に強力である

②前工程で十数種類ある製造装置のうち、5~7種類において、日本がトップシェアである

③欧米製の製造装置であっても、数千~十万点の部品のうち、6~8割が日本製である

つまり、半導体デバイスそのものには期待できないが、各種の半導体材料、前工程の5~7種類の製造装置、そして、装置が欧米製であっても各装置を構成する数千点の部品の内の6~8割が日本製であり、ここに日本は高い競争力を持っている。

アジアを俯瞰(ふかん)すると、明確な役割分担が見えてくる(図表4)。

「強いものをより強くすること」が重要

サムスンとSKハイニックスを擁する韓国は、メモリ大国となった。台湾には言うまでもなくTSMCがある。ファウンドリーで世界シェア1位、微細化でもぶっちぎりのトップを独走する、世界の半導体のインフラだ。中国には、ホンハイの大工場群があり、世界の半導体の35%以上を吸収し、各種電子機器を組み立てる世界の工場となった。

これに対して、日本は、韓国にも、台湾にも、そして欧米にも、半導体製造装置(およびその部品)と半導体材料を供給している。装置、部品、材料、その中の一つでも供給が止まれば、韓国も、台湾も、欧米も、半導体を製造できない。そのような重要な役割を日本は担っている。

世界中のファブレスが殺到するTSMCが注目されている。しかし、そのTSMCといえども、日本製の装置(とその部品)や材料なくして、最先端プロセスで半導体を製造することはできない。その装置の半分弱が日本製であり(部品レベルでは6~8割が日本製)、材料の7~8割が日本製なのだ。

したがって「強いものをより強くすること」を第1の政策に掲げるべきである。これが、日本半導体産業に対する筆者の提言である。

意見陳述は政策にまったく生かされなかった

意見陳述の時間は15分だったが、筆者は5分以上超過してしまった。しかし、筆者の意見陳述を止めるものは誰もいなかった。衆議院議員からは、大ブーイングが来ることを覚悟していた。これまでの政府および経産省の政策を全否定したからである。

ところが、意外なことに拍手喝采を受けてしまった。そのため、意見陳述の後に、不思議な気持ちになるとともに、もしかしたら、筆者の主張が議員の胸に届いたのかもしれないという実感も湧いた。

しかし、残念なことに、筆者のこの意見陳述が、その後の半導体政策に生かされることは、全くなかったのである。それどころか、日本半導体産業は問題だらけで、無謀かつ無意味な方向へと突き進み始めていった。

---------- 湯之上 隆(ゆのがみ・たかし) 半導体産業コンサルタント、ジャーナリスト 1961年生まれ。静岡県出身。1987年に京大原子核工学修士課程を卒業後、日立製作所、エルピーダメモリ、半導体先端テクノロジーズにて16年半、半導体の微細加工技術開発に従事。日立を退職後、長岡技術科学大学客員教授を兼任しながら同志社大学の専任フェローとして、日本半導体産業が凋落した原因について研究した。現在は、微細加工研究所の所長として、コンサルタントおよび新聞・雑誌記事の執筆を行っている。工学博士。著書に『日本「半導体」敗戦』(光文社)、『電機半導体大崩壊の教訓』(日本文芸社)、『日本型モノづくりの敗北』『半導体有事』(ともに文春新書)がある。 ----------

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