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東洋経済オンライン 国民は人民の敵!「中国流民主主義」の危険性 独自の定義が人権弾圧や拘束の正当化根拠に

2021年03月25日 07時07分32秒 | 海外情報
 予想どおりとはいえ、アメリカのアンカレッジで行われた米中両国の外交トップの会談は、マスコミの前での激しい非難と攻撃の応酬で始まった。

 その後、2日間にわたって行われた協議は非公開であり、メディアの前でと同じような応酬が続いたかどうかは不明である。しかし、会談後の両国の出席者のコメントを見ても、関係改善の糸口が見えた印象は皆無だ。

 アメリカのブリンケン国務長官や中国の外交トップである楊潔篪・共産党政治局員の発言記録を読むと、ブリンケン長官は新疆ウイグル自治区や香港、台湾、アメリカへのサイバー攻撃と中国に対してバイデン政権が抱く懸念を淡々と列挙したうえで、「米中関係は問題によって競争的であったり、協力的であったり、ときには敵対的である」と静かなトーンで述べている。ことさら敵対的な雰囲気を強調したわけではなさそうだ。

アメリカ流の民主主義を批判
 ところが、これを受けた楊氏は延々と独自の主張を展開した。それは中国の内政から外交にわたってその政策の正当性を主張するとともに、アメリカは内政干渉をやめるべきで、アメリカこそ国内に数多くの人権問題などを抱えていると非難するなど、いつもながらの内容だった。

 聞く相手がうんざりするほど延々と自説を展開するのは、首脳会談や外相会談などで中国がよくやる手法だ。2019年12月、北京で行われた安倍晋三首相と習近平国家主席の会談でも、安倍首相が新疆ウイグル自治区での人権問題や香港問題に言及した途端、習近平氏が顔色を変えて延々と自説を唱えた。このため、日本側が辟易したことがある。

 ただ、今回の楊氏の発言で興味深かったのがアメリカ流民主主義に対する批判だった。楊氏は「アメリカや西側世界は国際世論を代表するものではない。世界の圧倒的多数の国々は、アメリカが提唱する普遍的な価値観やアメリカの意見が国際世論を代表するとは考えていない」などと述べ、民主主義の伝道者であるかのように振舞うアメリカを非難した。

 その大前提にあるのは、「アメリカにはアメリカ流の民主主義が、中国には中国流の民主主義がある」という理屈である。

 民主主義は普遍的価値を持っており、国によって定義が大きく異なるものではないというのが、民主主義国での常識だ。ところが中国の主張はまったく異なる。「民主主義のかたちは一つではなく、各国にそれぞれの民主主義のスタイルがある」というのだ。

 もちろん、これは中国に都合のいい勝手な理屈以外の何物でもない。中国は自分たちも自由や民主主義を大事な価値として独自のやり方で実践していると、臆することなく主張している。

 こうした中国流民主主義を「民主主義とは似て非なるもの」と一笑に付すことは簡単だが、それでは済まないのが現実である。中国の政治や法律など統治システムのすべてがこの理屈で成り立っており、それに基づいて外交や安全保障などの国家戦略が構築されている。それを踏まえたうえで西側諸国は対処しなければならないのだ。

「人民主権」の国・中国
 では先進民主主義国の民主主義と中国のいう民主主義の決定的な違いはどこにあるのだろうか。そのキーワードは「人民」という言葉にあるだろう。

 習近平主席をはじめ、中国の指導者はしばしば「人民」という言葉を使う。その一方、われわれになじみのある「国民」という言葉はほとんど使わない。中華人民共和国という国名をはじめとして、憲法や法律も、人民を使っても国民という言葉は使われていない。

 問題は人民という言葉の意味だ。中国憲法では第1条で、「中華人民共和国は、労働者階級が指導し、労働者、農民の同盟を基礎とする人民民主主義独裁の社会主義国である」と規定し、さらに第2条で「あらゆる権力は人民に属する」「人民が国家権力を行使する機関は、全国人民代表大会および地方各クラス人民代表大会である」などと定められている。

 先進民主主義国で当たり前のように言われる国民主権という言葉はなく、中国は人民主権の国なのである。では、国民と人民は同じなのか。

 中国近現代史が専門の小野寺史郎・埼玉大学准教授の『中国のナショナリズム』(中公新書)によると、建国初期のころ、毛沢東主席は「抗日戦争期は抗日戦争に参加した階級、階層はみんな人民であり、日本帝国主義者、漢奸、親日派は人民の敵である」「解放戦争期(国共内戦)は、米帝国主義とその走狗、官僚資産階級、地主階級、国民党反動は人民の敵である」と述べている。そして、「社会主義建設期は建設事業に賛成し、擁護し、参加する階級、社会集団は人民であり、社会主義革命に反抗し、敵視し、破壊する社会勢力は人民の敵」としている。

 周恩来首相はよりクリアに定義している。「人民と国民には区別がある。人民は労働者階級、農民階級、反動階級から目覚めた一部の愛国民主分子である」としている。そして、人民に含まれない人たちについては「中国の一国民ではあるので当面、彼らには人民の権利を享受させないが、国民の義務は遵守させなければならない」と説明している。

 つまり、国民と人民は異なるものであり、国籍を持つ国民全員が人民であるというわけではない。人民は中国共産党の掲げる思想や政策を支持する国民の一部の人たちであり、それを支持しないで批判や反対する国民は人民ではないのである。

 そればかりか人民に属さない国民は、人民の敵であり、人民が持つ権利は行使できないが、法律を守るなどの義務を負うというのだ。

 半世紀以上も前のこうした毛沢東や周恩来の考えが、まさか今日も生きていることはなかろうと思いたいところだが、残念ながら現行憲法を見る限り、国民と人民を区別する考え方は明らかに継承されている。さらに中国の憲法には「いかなる組織ないし個人も社会主義体制を破壊することを禁止する」とも記されている。つまり人民ではない国民に対するさまざまな弾圧や抑圧が法律上、正当化されているのだ。

毛沢東の言葉は今も生きている
 中国の論理からすると、中国共産党が一党支配する現在の中国政治を批判する人は、中国の国籍を持っていても主権を行使できる人民ではなくなるばかりか、人民の敵となってしまう。中国のさまざまな法律に基づいてさまざまな権利を奪われてしまううえ、言動が規制されてしまう。

 新疆ウイグルにおける大規模な人権弾圧も、中央政府に批判的な活動をする人権派弁護士や作家、ジャーナリストらの拘束も、彼らを人民の敵であると規定することですべて正当化される。そして習近平体制の下でこうした弾圧がますます強化されていることは、毛沢東や周恩来の唱えた国民と人民の区別が今日も厳然と生きていることを証明している。

 先日閉会した全国人民代表大会で認められた香港の選挙制度改正は、この理屈をついに香港にも徹底させることを意味している。香港の場合、人民と愛国者が同じ意味で使われており、新たな選挙制度では香港の政府や議会など統治システムには愛国者しか参加できなくなる。

 立法会選挙に立候補しようとする者が愛国者であるかをチェックするのは、人民主権を守るために当然の合法的な手続きであるということになる。その結果、香港の民主化や独立を主張する人々は愛国者ではない、人民の敵となるのだ。

 米中高官会議における楊氏の発言にみられるように、中国が独自の民主主義論を今後もますます前面に出していくだろうことは明らかだ。そして、中国の論理は世界中の独裁者や権威主義的国家にとっては実に都合のいいものであり、感染症のようにあっという間に世界中に蔓延しかねない。そうした国々が中国を中心に手前勝手な民主主義論を掲げて結束したときに国際社会はどうなるのか。

 これは民主主義と権威主義のいずれが優れているかという次元の話ではなく、民主主義が直面している危機だろう。先進民主主義国を中心に国際社会が連携してその価値を高める努力をしなければ、手前勝手な民主主義が国際社会に広がりかねない。世界は今、そんな状況にある。
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平野啓一郎氏、日本の平均賃金が「韓国以下」報道で指摘「日本はスゴくないが一般化」

2021年03月07日 08時43分30秒 | アジア経済
 芥川賞作家の平野啓一郎氏が4日、ツイッターに新規投稿。日本の平均賃金は諸外国と比べて大幅に低くなっており、米国やドイツといった経済大国だけでなく、アジアでも近隣の韓国より下回っているなどと報じた文春オンラインの記事を引用し、「コロナで日本の現状が『スゴくない』という認識が一般化した」と指摘した。

 OECD(経済協力開発機構)の調査によると、2019年における日本人の平均賃金(年収)は3万8617ドルで、米国は6万5836ドル、ドイツは5万3638ドルと大差が付いており、韓国の4万2285ドルより下回っている。

 平野氏は「この単純な事実を隠蔽するために、この間、『日本スゴイ』を喧伝して回った人たち、メディアは亡国的だろう」と苦言を呈した。同氏は「コロナでやっと、日本の現状が悲しいほど『スゴくない』という認識が一般化したが。ただ…」と指摘しつつ、楽観視できない厳しい現実に含みを持たせた。

 ツイッターでは、この記事が大きな反響となり、「韓国以下」や「平均賃金」がトレンドになった。
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「日本人は貧乏になった」その残酷な事実に気付かない人が多すぎる

2021年03月01日 07時16分36秒 | 経済
いまや日本社会は外国人労働者なしには成り立たない。それは健全なのか。作家・相場英雄氏は最新刊『アンダークラス』(小学館)で、外国人技能実習生の問題を取り上げた。相場氏は「日本人は貧乏になった。だから労働力を外国人に頼らざるを得ない。その事実に気付いていない人が多すぎる」という――。(前編/全2回)
■ニューヨークでは「ラーメン一杯2000円」が当たり前
--『アンダークラス』で技能実習生の問題に着目したいきさつを教えてください。

僕の仕事場は新宿・歌舞伎町の近くにあるのですが、この数年、人の流れが目に見えて変わってきました。


朝方、24時間営業のハンバーガーチェーンで、大きなバックパックを背負った配達員が眠りこけている。その隣には、たくさんの荷物が入った手提げ袋を抱えた若いホームレスが力尽きたように休んでいる。外には店内に入れずに一晩中、歩いている人がいる。しかも、ハンバーガーチェーンやコンビニで深夜から早朝に働いている店員は、ほとんどが外国人。いびつな風景だと感じました。


日本は、いったい、どんな国なのか。なにかがおかしい。そんな違和感が、外国人労働者や、技能実習生に注目したきっかけでした。

もう一つが、海外での体験です。

数年前、ニューヨークに行く機会があり、ラーメンを食べました。日本では通用しないマズいラーメンが一杯2000円。小皿料理を注文し、ビールを飲んだら5000円を超えました。これはアメリカの経済が成長を続け、物価も給与水準も上がっているからです。一方、日本は経済が低迷し、物価が下がり続けています。日本はもはや先進国ではない、と感じたのです。

■「日本人はとっくにお金持ちじゃなくなった」
--作中に登場するベトナム人技能実習生の「日本人はとっくにお金持ちじゃなくなった」というセリフが印象的でした。

それが外国人の実感だと思いますよ。

4年前、取材旅行で訪ねた香港で、紹介制の高級レストランに行きました。店の前にはリムジンがずらりと並び、店内にいるさまざまな国の人たちは一目で裕福だとわかりました。日本人のわれわれが、明らかにもっとも金がない存在でした。

活気にあふれた香港から東京に戻ると、日本全体が寂れたシャッター街のように見えました。にもかかわらず、ほとんどの人が日本が転落した現実に気づいていません。

2000年代に入り、タイやベトナムなどの東南アジアの国々も一気に経済成長しました。日本が1950年代から70年代に約20年もかけて達成した高度経済成長を、わずか5年から10年程度で成し遂げつつある。少し前まで、アジアの国々に対して、日本が面倒を見ている発展途上国というイメージで捉えていた人が多かったのではないかと思いますが、いまその国々が日本を上回りつつある。

■インバウンドが増えていたのは、日本の物価が安いから
--この数年、「日本食がおいしい」とか「日本の伝統文化がスゴい」というテレビ番組が人気ですが、経済が後退した反動なのかもしれませんね。


コロナ以前は、インバウンドが増えていました。もちろん日本への憧れをもって来日する人もいたとは思います。しかし、もっと違う理由があるのではないかという気がしていました。

一昨年まで高校時代から北米に留学した息子の友だちが、よく日本に遊びにきていました。当初、気を遣って「狭いけど、うちに泊まるか?」と聞いていた。でも「大丈夫。日本は物価が安いから。インペリアルのスイートに泊まれる」と言うんです。確かに、帝国ホテルの値段では、アメリカの中堅ホテルにも泊まれない。日本の物価が安いからインバウンドが増えた。そう考えると日本をめぐる現状が腑に落ちてきます。

雇用状況を見てもそうでしょう。物価が下がり続けるから、もっと安い労働力が必要になる。そこで、格差が激しく、いまも貧しい生活を強いられているベトナムやミャンマーなどの農村から来日する技能実習生という名の労働者に頼るしかなくなった。

■「派遣切りのときよりもずっと残酷」
--2019年4月から改正入管法が施行され、受け入れがさらに拡大されました。

2010年以降、団塊世代が大量に離職し、日本の労働人口が一気に減りました。とくに低賃金で、仕事がきついというイメージがついた職種は人手不足に悩まされています。それにデフレのなか、下請け、孫請けの企業は、日本人の派遣労働者を使っていては高コストで収益をあげられない。だからより賃金が安い技能実習生が必要とされている。そこまで日本は追い詰められているんです。

--登場人物のひとりが「万が一、リーマン・ショックのような事態に直面した際、大量に受け入れた海外の人材をいきなり切り捨て、母国に帰れ、と命じるのですか。派遣切りのときよりもずっと残酷で、外交問題になりますよ」と発言しています。コロナ禍のなか、技能実習生はリーマン・ショック時以上の苦境にあります。

『アンダークラス』の連載は、2018年から19年でした。当時はまさか、新型コロナウイルスが流行するなんて、思いもしていなかった。

■「悪徳ブローカー」に国はなんの対策も打たなかった
実際、コロナ禍の影響で、働く場を失い、国にも帰れない外国人労働者がいる。豚や果物を盗んで逮捕された不良外国人について報道されましたが、ぼくには起こるべくして、起こった事件と感じました。

本来なら受け入れを拡大する前に、技能実習生の働き方や生活をサポートする体制や、悪徳ブローカーを取り締まる仕組みをつくるべきでした。しかし実際には、国はなんの対策も打たなかった。だから奴隷のような環境で働かされる技能実習生や、働き口をなくして犯罪に走らざるをえない人が出てしまっている。

--そうした技能実習生の状況に対して、世間の関心が薄いように感じます。


それは技能実習生や外国人労働者の問題が、自分とは無縁だと考えているからです。かつて中間層と言われていた人たちは、いまだに自分たちは安泰だと思っている。不都合な現実を直視したくない気持ちはわかりますが、長引く不況に加え、コロナ禍で勤務する会社がいつまで持つかもわからない。現に「洋服の青山」が160店舗を閉店し、400人の希望退職者を募るとニュースになりました。

ずっと会社に守られ、企業の看板を背負って仕事をしてきたサラリーマンが、社会に放り出されたとき、なにができるのか。

近い将来、これまで技能実習生にまかせていたような仕事をせざるをえない人も出てくるはずです。日本の貧困は、そこまで行き着いてしまった。

日本はもはや先進国ではない。まずは、その現実を直視するところから考えていかなければならないのではないでしょうか。(後編に続く)

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相場 英雄(あいば・ひでお)
小説家
1967年、新潟県生まれ。1989年に時事通信社に入社。2005年『デフォルト 債務不履行』で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞しデビュー。2012年BSE問題を題材にした『震える牛』が話題となりドラマ化され、ベストセラーに。
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