老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

介護とは⑬{ヒトから人へ「自立」}

2020-06-22 06:21:58 | 介護の深淵


1574 介護とは⑬{ヒトから人へ「自立」}

上の図 運動発達の順序 を見ると
赤ちゃんが「おぎゃあ」と産声をあげ
1年後には、「立ち」「歩く」というように
生まれてから1年間の人間の発達は
新幹線以上に速いスピードに驚く。

赤ちゃんの運動発達の順序を逆に進んでいくのが
老人である。
すべての老人がそうなるわけではないが、ひとりで歩けなくなる。
杖や人の手を借り、心もとなく歩く。
テーブルに手を乗せ立ち上がりを行うようになると、老いの始まり。

老人は死に向かい 衰えていく。
老いを嵩ねても 人間はなかなか「老い」て往く自分を受け入れがたい存在。
典型的な言葉は、「人間、おむつをするようになったらお終いだ」、という言葉をとく耳にする。
それは、おむつになったら自分は一人前の人間ではなくなる。

その言葉の意味は、ヒトから人になった「赤ちゃん」のことと関係してくる。

赤ちゃんが産まれたときは
なにもできない無能の状態にあり
雛鳥とまったく同じである。
母親(親鳥)が母乳またはミルク(餌ー虫)をあげなければ
赤ちゃん(雛鳥)は生きていくことができない。

這えば立て 立てば歩めの親心

赤ちゃんがはいはいするようになったら
今度は立ってくれ

立つようになったら
今度は歩いてくれ

「初めてうちの子、立った」
「今日二本の足で歩いたの」
と、大騒ぎをしたのは、昨日のように思い出す。


我が身に積もる老いも忘れて
孫の成長を喜ぶ。

赤ちゃんから幼児前期になったとき
わが子が「ひとり立ち」できたとき
そして数歩ではあっても「ひとり歩き」できたとき
満面の笑顔は自信に溢れ、ヒトから人へになった「自立」の第一歩である。

宇宙飛行士のニール・アームストロングは月面に降り立った時
「これは人間にとっては小さな一歩だが, 人類にとっては大きな飛躍である」
という素晴しい言葉を発した。


ニール・アームストロングの月での第一歩とわが子の第一歩は
同じくらい偉大な出来事なのである。

学校では学んだ 人間が他の哺乳類動物と違うのは直立歩行ができたこと
学校では直立歩行ができたことの偉大な意味を掘り下げては教えてはくれなかった。
ここはたっぷり時間をかけ教えてもらいたかった。

直立歩行ができたことで、両手が自由に使え、もの(道具)を作りだしてきたこと。

高齢者施設や介護サービス事業所(デイサービスやショートステイ)などで
老人がふらふらして歩いていると
転倒しては困る、と気持ちが先に行き、車いすに乗せ移動をさせてしまう。
ふらふらしながらも歩いていたのに、安全名のもとに「歩けなくなった」老人。
他人の手を借りなければ移動ができなくなった。

ふらつきながら歩いている
確かに危ないが
どうしたら危なく歩けるか
杖や歩行器の使用やリハビリによる基本動作訓練(両下肢や臀部などの筋力アップ訓練)を行うことで
歩行が維持できる。
人間が長い歴史の過程のなかで獲得してきた自立歩行を
簡単にあきらめてはいけないのに・・・・。

ひとりで歩けることは、自由に好きなところへ行ける 誰の手も借りないで
そのことをプロである介護員 看護師は忘れてはならない。

興味のある方
エンゲルス『猿から人間になるにつれての労働の役割』国民文庫、大月文庫
ポルトマン『人間はどこまで動物か』岩波新書

上記の2冊は介護や保育を学ぶ人にとり、大きな衝撃を受ける