こころの文庫(つねじいさんのエッ!日記)

家族を愛してやまぬ平凡な「おじいちゃん」が味わう日々の幸せライフを綴ってみました。

母と子をつなぐ雑誌広告

2015年01月19日 00時08分34秒 | 文芸
この頃の雑誌広告

「ウワァー、おいしそう!」
 6歳の長女が、雑誌をペラペラやっていたかと思うと、いきなり歓声を上げた。
「なにが?なにが?」
 私と5歳の長男が、野次馬になって飛んでいく。そして覗き込む。
 大盤の婦人雑誌だった。2ページ全部使ったオーブンレンジのカラフルな広告で、1ページ分にビーフシチューが、いかにもおいしいって感じで出来上がり、湯気を立てている。
「ほんとうだ、食べたいなあ」
 食い意地の張った長男が、喉をゴクリと鳴らして言った。
「アラ、きのう同じもの食べたでしょう」
「エー、嘘だァー!」
「全然違うよ。こんなにおいしくなかったよ」
 もう写真のシチューを食べたかのように、長男は疑いの視線を私に向けた。
「絶対に同じもの。同じシチューなんだから」
 なんかムキになって弁明する自分がおかしくなって、思わずクスッと噴き出した。
「ほら、やっぱり嘘ついてるんだ」
 長女が真面目な顔で糾弾だ。結局、今夜もビーフシチューを作らないと駄目みたい。
 最近の雑誌広告は、雑誌自体も大判が増えたし、カラーがもの凄く綺麗になった感じ。それに、例えばオーブンレンジの広告だからといって、直接商品そのものをアピールする広告は少なく、スマートなイメージでレイアウトされている。写真やイラストが効果的に使われている。
 まるで絵本……そう、私たち母親と子どもたちにとっては、絵本そのものなのだ。
 子どもたちにとって、母親の読んでいる雑誌は、とても興味があるらしい。別々に読んでいても、すぐ私の手元を覗き込んでくる子どもたち。
 そこで色鮮やかな広告のページを前に、母と子の楽しいスキンシップが展開する。
「お母さんよりきれいな女の人がいるよ!」
 人気女優がワインを持ってニコッと頬笑んでいるのを見つけた長男が、ズバリと言ってのける。さすが、男の子、早くも見る目が!なんて喜んでいられるほど、女心は甘くない。ガックリ!母親もやはりおんななのです。
「違うよ。この人はお化粧してるから、ちょっと綺麗に見えるだけなのよ。お母さんだって……」
 すぐに長女が、私にかわって抗議しました。やっぱり彼女は女の子。母親の味方なのだ。
「白い馬車が、カラカラと音を立てて、どんどん空へ上がって行きます。魔法の馬車に乗ったお姫さまは、もうすぐカッコいい王子さまと出会えるのです……って」
 幼くしてロマンチストぶりを発揮の長男が、結婚披露宴会場の広告で、今にも走り出すばかりの二頭の馬に引かれた白い馬車の写真を見て、どんどん物語をふくらませて呟いている。夢見ている長男の顔の可愛いこと。最高!
 最近、働きに出るようになって、ちょっぴり疎遠(?)になりがちだった母と子の関係が、雑誌広告への新しい発見から、再び取り戻せつつあるのだ。子どもたちの成長を見るように、雑誌広告は、まだまだ華麗な変身を遂げそうだ。次はどんな素敵な出会いが出来るかな?ワクワク!
(平成元年十一月・雑誌広告感想文掲載作)
 
コメント
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