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「値上げ容認」発言に思う

2022-06-07 22:11:08 | アラカルト

先日、日銀の黒田総裁が「値上げ容認」と受け止められる発言をした、として野党から批判をされた。
野党だけではなく、Yahoo!等のネットでも相当な批判コメントが、殺到したようだ。
それを受け、今日になって黒田総裁が陳謝をすることになったようだ。
朝日新聞:黒田日銀総裁、「値上げ許容発言」で異例の陳謝 参院選前に火消し

日銀総裁を任命するのが、内閣なので黒田さんとしては今後の自分のコトを考えれば、内閣の言い分をのむ必要があるのだろう。
そして「言葉足らずだった」という趣旨の陳謝を今日した、ということのようだ。

ところで「値上げ=悪」と決めつけてよいのか?という、問題についてはあまり論じられていないような気がする。
バブル経済が崩壊して30年余り。
諸外国がリーマンショックのような金融機関の信用が失墜し、経済にも大打撃を与えるようなことがあっても、それなりの経済政策が功を奏し(?)経済状態が上向きになっていた。
ところが、日本はこの30年間経済が上向きになることなく、時間だけが過ぎていった、という状況だった。
当然のことだが、生活を支える為の「給与所得」が伸びるコトがなく、実質賃金そのものは減り続けていると実感している、というのが今の日本の生活者だと思う。

そのような経済状況の中で、日銀総裁という日本の金融政策の中心となる人物から「値上げ容認」のような発言が出れば、「生活者の置かれている現実を知らない」と、猛反発があるのは当然だろう。
事実、黒田さんは「自分が買い物に行かないわけではないが、ほとんどの買い物は妻がしている」という趣旨の発言をされている。
おそらく黒田さんの「買い物」は、生活に必要なものではなく、ご自身の趣味等が中心なのでは?と、想像している。
そもそも、日本の男性の多くの「買い物」は、そのようなことではないだろうか?
日々の生活に必要な買い物をしないので「値上げ」という言葉が、使いやすかったのでは?と、考えている。

しかし「値上げ」そのものが、悪いものなのか?と言えば、決して悪いわけではない。
原材料や製造をするための費用が値上がれば、当然価格に反映されるということになる。
このことに対して、今の生活者はとても寛容に受け止めているような気がしている。
問題なのは、値上げした商品を以前と同じように購入できる、経済的余裕がない、という現実なのだ。
それは、上述したようにこの30年間以上の日本経済の低迷、という理由が大きい。

多くの人たちがYahoo!等でコメントをしているのは「日本経済の低迷要因となった政策をつくったのは誰なのか?」、「その政策にかかわっている人物が安易に値上げ容認」という発言は、あまりにも無責任なのでは?ということなのだと思う。
「値上げ容認をするなら、実質賃金のアップを先にすべきだ!」ということを、言っているのだ。
話す順番の問題ではなく、「実態を知らない」ということに反発をしているのだ。

今日、岸田政権が「(経済財政運営と改革の基本方針)の骨太方針」を発表した。
このような発表がある度に使われる「骨太方針」という言葉だが、多くの生活者は「疲労骨折を起こしそうな方針(あるいは、国民のやせ我慢でしのいでいる方針)」と感じているのではないだろうか?
日本の経済を支えている中小企業と先細り傾向にある地方経済にフォーカスし、産業構造の転換をするために、日銀は経済政策を考え政府に言うべきなのでは?
そのような政策発表の後に「値上げ容認」と言って欲しかった。