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納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 758 週間リポート ロッテオリオンズ

2022年09月21日 | 1977 年 



やはり金髪は女性にかぎる?
西垣球団代表は5月23日、新宿の球団事務所でスティーブ・マクナルティ投手(24歳)に解雇を通告した。僅か4カ月前にスティーブ投手は期待に胸を躍らせて羽田空港に降り立った。190cm・97kg で金髪の青年はロッテの入団テストを受ける為に遠い異国にやって来たのだ。自主トレ・キャンプを通じ投手としての評判は日増しに増していった。持ち前の重い速球に縦に大きく割れるカーブはまだ調整途中の他の投手の中では抜きん出た存在だった。「即戦力にはならんが先が楽しみな投手や」とカネやんもその素質に惚れ込み、3月4日に先ずは二軍からスタートすることで正式に採用が決まった。

純真な性格はチーム内でもアイドル的な存在で陽気さを振りまいていた。先輩ナインからのアドバイスにも「イエス」と答え黙々と練習に取り組む姿勢は好評だった。そのせいもあってかドジャースの2Aから来た若者は開幕一軍のベンチ入りが決まり、4月2日には早くも初登板を果たした。エース・村田投手の後を継いでの登板だったがブルペンとは異なり実戦では本来の持ち味は出せなかった。重くて速い自慢のストレートは打ちごろの球に変わり、走者を出せば二塁盗塁はタダ同然のマウンドさばき。加えて制球力も見る影がなく前評判はどこかへ吹き飛んでしまった。

カネやんがこんなスティーブ投手に解雇の段を下したのは投手としての体裁の無さが原因だった。特にノミの心臓とまで酷評された精神面の弱さが一番の理由だった。「技術が未熟というのはまだしも、度胸の無さはどうしようもない。いくら時間をかけても直しようがないで」とカネやん。7試合・0勝1敗・防御率 6.30 では仕方ない。開幕から2カ月足らずでロッテのユニフォームを脱ぐこととなった。「日本が好きだ。それに日本でもっと野球の勉強がしたい。ロッテがダメなら他のチームでも…」とスティーブ本人は日本でのプレーを希望しているが周りの情勢は厳しい。


観衆4万5000人にテレビ放映
カネやんが今季初めてコーチスボックスに立ち、陣頭指揮を執ったのは5月29日のこと。この日はロッテが前期で後楽園球場の主催試合で唯一の日曜日でのダブルヘッダー戦だった。球団総出で観客動員アップを図り4万5000人の大入り大盛況でカネやんも黙ってベンチに座っていられなくなったというわけだ。それにしてもカネやんがコーチスボックスに立つと観客だけでなく選手も威勢がよくなるから不思議だ。ロッテは初回から白選手の本塁打で先制すると2回裏には山崎選手の本塁打や2長打で3得点。4回裏にも3長短打で3得点して早々に試合を決定づけ勝利した。

続く第2試合は4対5とリードされた9回裏にリー選手がバックスクリーン直撃の同点本塁打を放って引き分けに持ち込んだ。ロッテナインは試合前に松井球団社長からハッパをかけられていた。「たくさんのファンの前で無様な試合をしないでほしい。今日は何が何でも勝って前期Aクラスを確保してほしい。それが後期に良い影響を与え、リーグ優勝という念願達成の近道なのです」と球団の今季スローガンである " ソウルフルベースボール " を前面に押し立てたかなり厳しい叱咤激励だった。快勝した第1試合は日本テレビ系で全国放送されて観客動員に奔走した球団関係者も「勝てて良かった」ホッと一息ついた。


生ビールはオレの季節
剛速球と天下一品のフォークボールで並みいる強打者を封じる村田投手も今度ばかりはショックを受けた。今季四度目のリリーフ登板した対日ハム戦、9回裏一死満塁の場面で加藤選手に押し出し死球でサヨナラ負けを喫した。「胸元を狙った球が…(村田)」コントロールが乱れて加藤選手の側頭部を直撃した。敗戦のショックより昏倒する加藤選手を心配するのがやっとだった。今季の村田投手は開幕から一度も本来の投球が出来ていない。勝ち星は6月17日現在、7勝とまずまずだが村田本人は「全然ダメ。チームが優勝争いできないのは自分の責任」と自分の不甲斐なさを嘆く。その原因は右ヒジの状態が今ひとつで本調子とは程遠い。

「自分に勝ち星が付く付かないは運が左右する。だが防御率は個人の力を反映する。自分としては勝利数より防御率を重要視している」と常々村田投手は話していた。その重要視している防御率がなかなか2点台にならない。今季最悪の5.14 (4月24日) から徐々に改善してきているが、あと一歩のところで足踏みしている。「何としてもオールスター戦までには2点台前半にしなければ自分の気持ちが収まらない(村田)」と現在のところは意気込みばかりが先行しているが、村田投手にはキッカケとして期待しているモノがある。それは汗がたっぷり出る生ビールの季節に入ったことだ。

思い起こせば2年連続最優秀防御率賞(1.82) の好成績を残した昨季もそうだった。今季同様に前期は7勝5敗と今ひとつだったが盛夏を迎えると徐々に調子を上げた。並みの投手なら防御率3点台は及第点だがエースを自負する投手には物足りない数字なのである。いくら連投を命じられても決して弱音を吐かず黙々と投げ込む頼りがいのあるエースなのだ。そんなエースが受けたショック。コントロールの良さに絶対の自信を持っているだけに、何ともいたたまれなかったのであろう。「加藤選手には申し訳ことをしてしまった。でもこれを機に本来の自分の姿に戻ってみせます(村田)」と。生ビールが旨い暑い夏がエース・村田の心を開くであろうと期待している。

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