ちいチャン物語

きまぐれブログ。
絵のない絵本のような、小さい物語です。

ちいチャン物語(37)『ちいチャンの川超え』

2023年10月05日 20時18分31秒 | 日記
海に流れ込む川は、海岸を2つに分けるようにして、真ん中を流れています。
流れる川と、おしよせる波とがぶつかりあう場所は、毎日、川幅が違います。
ちいチャンは、家の近くの防波堤の階段から砂浜に降り、川をはさんだ向こう
側の砂浜まで、砂浜を探索するのが日課です。
砂浜は、波が描く足跡が波打ち際まで続いています。
海藻や流木が流れ着いて落ちています。
ツルツルの貝殻やピンクの小さな貝殻、波で削られたガラスの石が落ちていま
す。
ちいチャンには宝箱のような場所です。
ちいチャンは、落ちている棒を手に持って、砂浜に流れ着いた物たちを、ツン
ツンとつつきながら歩きます。
落ちている貝殻を引っくり返して中を見てみたり、海藻を棒の先でヒョイと持
上げて海めがけて投げ入れたり。
そうして川まで来た時に、いつもはジャんプをして渡る川が、その日は少し雰
囲気が違います。
いつもより荒い波で、川幅が広くなっていました。
(今日はジャンプできないな....。)
そこで、ちいチャンは持っていた棒で、棒高跳びのようにジャンプして渡ろう
と思いました。
棒高跳びは、棒を持って走って来てジャンプをしますが、ちいチャンはそんな
事は考えずに、エイッ!と棒を川底に刺して、ジャンプをしました。
棒は、まっすぐに川底に突き刺さり、うねってはくれません。
ちいチャンの身体は、弧を描く様には川を飛び越えられず、ちいチャンは、そ
のまま川にドブン!と落ちてしまいました。
川の中でしりもちをついたまま、ちいチャンは、
(あ~あ、しっぱいだぁ。)
立ち上がると、服はびっしょりで、ずっしりでした。
スカートを、雑巾の様に絞りながら、ちいチャンは家に帰ります。
髪には、白い砂が模様のように付いていました。
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ちいチャン物語(36)『ちいチャンの声が大きいわけ』

2023年10月03日 20時11分34秒 | 日記
ひろ~い田んぼの真ん中に、ポツンと1軒家が建っています。 
その家は、お友達のスーちゃんの家です。
スーちゃんの家は、田んぼの真ん中なので、道路からずっと離れています。 
ちいチャンは、スーちゃんと遊ぶ時に、道路からスーチャンの家に向かって、
大きな声でスーちゃんを呼び ます。 
両手を口の横にあてて、
「スーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
大きな声で呼びます。
そして、大きく深呼吸をして、もう一度、
「スーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
すると、スーちゃんが玄関から出て来て、手を振ります。
(聞こえたよー!)
の合図です。
ちいチャンは、呼ぶのをやめてスーちゃんの家を見ています。
道路から、豆粒みたいに見えるスーちゃんが、田んぼのの1本道をトコトコと
歩いて来ます。
スーちゃんが玄関から出て来ない時は、ちいチャンは、何度も何度も大きな声
で、スーちゃんの名前を呼びます。
「スーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
田んぼ一面に、ちいチャンの声が響き渡ります。
時々、ちいチャンは、おばあちゃんに、
「ちいチャンは、声が大きいね。」
と、言われます。
ちいチャンは、おばあちゃんに電話がかかって来た時など、受話器を持ったまま、
「おばあちゃーーーーーーーん!!電話だよーーーーーー!!」
と、おばあちゃんを呼びます。
おばあちゃんは何処にいても、ちいチャンの声が聞こえます。
スーちゃんを呼ぶ声が、ちいチャンの発声練習になっていたようです。
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ちいチャン物語(35)『バカの3杯汁』

2023年10月02日 20時39分20秒 | 日記
お祝い事や、ご先祖様の命日になると、おばあちゃんは「くずかけ汁」を
作ります。
里芋、人参、糸こんにゃく、タケノコ、油揚げ、椎茸、豆麩、豆腐などが
入った醤油味のあんかけ汁です。
たいていは、このくずかけ汁の時には、お赤飯や炊き込みご飯が付きます。
そして、仏壇には、小さなお膳が供えられます。
ちいチャンは、このくずかけ汁が大好きです。
ちいちゃんは、毎朝、台所のトントントンというまな板の音で目を覚ましま
す。
台所から、くずかけ汁の匂いがすると、
(今日は、くずかけ汁だ!)
と、布団の中で嬉しくなります。
元気に飛び起きて、台所をのぞきに行きます。
おばあちゃんは、いつもより大きな鍋で、くずかけ汁を作っています。
そして、
「今日は、ご先祖様の当たり日だからね。」
と、言いました。
朝ご飯を食べながら、ちいチャンは、くずかけ汁をおかわりします。
そして、また、
「おかわり!」
と、お椀を出すと、おばあちゃんが、
「ちいチャン、汁を3杯食べるのは、“バカの3杯汁”って昔から言うんだ
よ。」
と、言いました。
ちいチャンは、しょんぼりとお椀をもとに戻すと、
「いいから、いいから、食べたい時は食べなさい。」
と、おばあちゃんは笑いながら、3杯目のくずかけ汁をお椀によそってくれ
ました。
でも、ちいチャンは、少し恥ずかしかったので、その後は3杯目のおかわり
はしない事にしよう、と心の中で決めました。
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