フィクション『同族会社を辞め、一から出直しオババが生き延びる方法』

同族会社の情けから脱出し、我が信ずる道を歩む決心をしたオババ。情報の洪水をうまく泳ぎ抜く方法を雑多な人々から教えを乞う。

人生を金で買う

2022-03-30 17:04:24 | ショートショート

美奈子は1日有給休暇を取った。

正社員として働いているが、持ち帰り仕事が多く、睡眠時間を削って終わらせる毎日だ。

なんだか疲れるな。上司にもそう何回も伝えた。

『美奈子さんは私の顔を見るとすぐ疲れてます疲れてますっていうから…』と言われてしまう。

確かに疲れているんだけど、そうなのかな、と思った。そんなに体力無かったっけ?

仕事中も視野が狭くなり同僚の言動が癇にさわる事が多くなった。

私はもしかしたら鬱なのかもしれない。そんな気もしてきた矢先、ああ、そういえば最近まともな時間に寝ていないことに気づいた。

夜に根を詰めての作業を続けているが、もう無理が出来なくなっているのではないだろうか。

休もう。有給休暇を取った。

いつも出勤の準備をしている時間にまだベッドにいた。二度寝をした。

体はだるいがさすがに起きて朝食を食べなきゃと、起きた。

いつもは見ない振りをしている家の中の片付けを少しした。

睡眠が取れたせいかいくらかすっきりしたような気がする。

銀行に行く用があったので外に出た。歩きながら『私は今日お金で時間を買ったの』と心の中でつぶやいた。

有給休暇で旅行に行くことは良くある事だろう。私もバカンスだ、ただし家で過ごすバカンスだけど。

私のこの1日は時給に換算したら○○円だ。それを払って私は自由な1日を手にしたのだ。

そう考えると、私の人生は会社にまるごと買われてお金を貰い、仕事をしない日にはその日の分を支払わなければならない。と言うことになる。

いや、違う。有給休暇はポイントだ。何年か働いたからポイントがたまり、1日休むときには何ポイントかを使うのだ。

例えば会社で働いていないとしたら?

家にいて何もしていない人は、誰にも買われていないから1日休んでもお金を払う必要が無い。

専業主婦は、家事をしている。それも金で買われているのだろうか。

1日休むときにはお金を払うのだろうか。

と、そこまで考えたときに、美奈子は『あ、私元気になった』と感じた。

こんなとりとめの無い変なことを考える余裕が出来たと言うことだ。

美奈子の有給休暇は元気回復のために役に立ったようだ。

コメント
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