朝の散歩で、ふわりと漂うあの香りに気付きました。
ええ?もうそんな時期?
辺りをキョロキョロ見渡すと、とあるお宅の庭先に
すっかり咲き揃った金木犀の花。
何故いつもこうなるまでわからないのか悔しく思います。
そしてよみがえる苦い思い出。
私は好きだった金木犀を前の家に残して来たのです。
前の家は猫の額ほどと言っても、多少の庭木は植えられました。
ムクゲ、エニシダ、もみじ、そして金木犀。
このうち、ムクゲとエニシダは雨風により倒れてしまったので引き抜きました。
もみじと金木犀はすくすく育ちました。
特にもみじは毎春可愛い若葉を見せてくれました。
金木犀は気まぐれ的に花をつけたりつけなかったりしました。
しかし、植物は人の手に負えないところがあります。
理由はそれだけではありませんが、
私は違う土地を求め始めました。
そして2年7ヶ月前に今の家に来ました。
もみじと金木犀を残して。
よそさまのお宅の金木犀を見かけると、
私は前の家に残してきた金木犀を思うのです。
今住んでいらっしゃる方は、
彼らを可愛がってくれているだろうか。
そして、勝手に植えて育てて勝手に捨てた私の事を、
さぞかし恨んでいることだろうと、心を痛めるのです。