安倍晋三の外国訪問国数・首脳会談数を以って自身を優秀な外交能力者と見做す底なしの単細胞

2017-11-14 09:47:48 | 政治

 安倍晋三が時折り記者会見や何かのスピーチで外国訪問回数や首脳会談数を自慢することがある。そのことを何度かブログに触れたり、メインのテーマとして取り上げたことがあるが、今回、調べることができる範囲で纏めてみた。



 安倍晋三が実際に喋っている動画を載せておいた。前半は「第190回国会における安晋三施政方針演説」、後半は「平成27年度防衛大学校卒業式内閣総理大臣訓示」、30秒程度の短さだが、参考のために。

 安倍晋三は自身に都合の良い景気統計を持ち出して、「数字がファクトを示している」とアベノミクス景気の成果を自慢するのことが慣例となっているが、好景気に反して振るわない個人消費はそれが平均値で示されている以上、格差が拡大していることの現れであって、中間層以下がアベノミクス景気に実感を感じることができていないことには目をつぶってファクトとは見做さない。

 取捨選択したファクトには意味がない。当然、外国訪問も訪問回数のみをファクトと見做すことも、首脳会談数のみをファクトとすることもできないのだから、そのファクトのみを以って全てのファクトを表しているかのように一大成果の如くに誇示するのは意味はないし、一国のリーダー、大の大人がそういった態度を取るのは単細胞としか言いようがない。

 では、安倍晋三の外国訪問国数、首脳会談数を次、自慢している発言を列記してみる。

 「内外情勢調査会2015年12月全国懇談会 安倍晋三スピーチ」首相官邸/2015年・平成27年12月14日)  

 安倍晋三「この3年間で、私が訪問した国は、すでに63の国と地域に及びます」

 

 「コロンビア大学訪問 安倍総理スピーチ首相官邸/平成26年9月22日)  

 安倍晋三「(父の安倍晋太郎は)秘書官になってからは、米国を含む各国を父と飛び回りました。外務大臣としての父は、外国の指導者との交流を重んじ、3年8ヶ月の間に46カ国を訪問しました。同じ信念の下、私も総理として世界を周り、今月初めの南アジア訪問で、就任からの訪問国数は先程47カ国と紹介がありましたが、バングラデシュとスリランカを加えて49カ国となり、父の記録を超えたところです」

 

 「読売国際経済懇話会(YIES) 講演会2015 安倍スピーチ首相官邸/2015年11月6日)

 安倍晋三「総理就任以来、訪問した国は、既に60か国を超えました。」

 

 「第190回国会における安晋三施政方針演説」首相官邸/2016年・平成28年1月22日 

 安倍晋三「 さて、この3年間で、63の国と地域を訪問し、首脳会談は400回を超えました」

 

 (拉致解決)「『もう我慢できない。今年こそ結果を!国民大集会」首相官邸/2014年〈平成26年〉9月13日)   

 安倍晋三「私も総理就任以来、49か国を訪問し、200回にわたる首脳会談を行いましたが、その度に必ず相手国に対して、この拉致問題を説明し、支持と協力を頂いております」

 拉致解決に向けた北朝鮮との交渉が何ら進展していない中にあって、そうであるどころか、北朝鮮からは「拉致は解決済み」とする突き放された状況に立たされている中にあって、外国訪問国数と首脳会談数を口にして、「支持と協力を頂いた」からと言って、一体どのような意味があるのだろうか。

 意味なしの最たる例であろう。

 意味が出るのは、「支持と協力を頂いた」外国訪問と首脳会談の中でいずれかの外国、いずれかの首脳会談が拉致交渉進展の役に立ったときであって、外国訪問国数と首脳会談数を口にしたとしても意味はない。しかもいずれも役に立っていないにも関わらず、口にする。

 「平成27年度防衛大学校卒業式 内閣総理大臣訓示」首相官邸/2016年)  

 安倍晋三「私は、これまで63の国と地域を訪問し、400回を超える首脳会談を行ってきました」

 日本の対外防衛は主として北朝鮮と中国を対象としている。いわば陸海空の自衛隊戦力は主に中国、あるいは北朝鮮に向けられている。中国との尖閣諸島の領有権問題や中国の海洋進出、北朝鮮のミサイル開発と核開発によって生じている両国との緊張関係に効果的な打つ手を見い出すことができていないにも関わらず、防衛大学校卒業式で「私は、これまで63の国と地域を訪問し、400回を超える首脳会談を行ってきました」と訓示することに何かの意味があるとでも思っているのだろうか。

 安倍晋三は2017年11月11日にベトナムで習近平中国国家主席と首脳会談をした際、習近平から関係改善のシグナルが発信されたが、中国が妥協の余地のない核心的利益としている尖閣諸島の領有権問題と南シナ海の領有権問題ついての対立を残したままのいびつな関係改善となるのは目に見えていて、当然、北朝鮮のみならず、中国にも自衛隊戦力が向けられる軍事的緊張状態に変わりはないことを考えると、やはり何カ国を訪問した、首脳会談を何回したと、その殆どが自衛隊員として巣立っていく防衛大学卒業式での訓示の中で触れる意味はない。

 「安倍晋三ロンドンでの内外記者会見」首相官邸/2016年5月5日)  

 安倍晋三「日露間では、戦後70年以上を経た今も、平和条約が締結されていないという異常な状態にあります。プーチン大統領との首脳会談は、今回で13回目となりますが、この問題は、首脳同士の直接のやりとりなくして、解決することはできません。北方四島の帰属の問題を解決し、平和条約を締結する。その共通の目標に向かって、胸襟を開いて、率直な会談を行いたいと考えています」

 安倍晋三は2016年5月5日、英ロンドンを訪れて、キャメロン英首相と首脳会談を開いている。翌5月6日、ロシアのソチを訪れてプーチンとの非公式首脳会談を予定していた。

 プーチンと何回首脳会談を開催しようと、首脳会談を通じてどれ程に信頼関係を構築しようと、北方四島の帰属問題も平和条約締結交渉も何ら進展を見ていない。安倍晋三は過去の北朝鮮との「対話の試みは時間稼ぎに利用された」と言って、北朝鮮に対しては対話の効果を排除しているが、プーチンの北方四島の帰属問題・平和条約締結交渉を臭わせるだけで態度は日本から経済的利益を獲得するための時間稼ぎ以外の何ものでもないだろう。

 少なくとも帰属問題交渉の取っ掛かりも、平和条約締結交渉の取っ掛かりも見出すことができていない。

 であるにも関わらず、「プーチン大統領との首脳会談は、今回で13回目となります」と意味のない回数を挙げる。

 第三者から見たら意味がないとしか見えないのに回数が自ずと外交課題が進展しているかのよう見えるところから、安倍晋三は自分が優秀な外交能力者であることの根拠を回数で見せているということなのだろう。

 あるいは優秀な外交能力者という強い自負があるから、進展しない外交課題を回数で進展しているかのように見せ掛けている。前者・後者であっても、自分が優秀な外交能力者と思わせている点は変わらない。

 懸案となっている深刻な外交問題は何一つ改善できていないファクトを回数で終わっているファクトで置き換えようとする意思を自ずと働かせること自体に底なしの単細胞しか見えてこない。


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