安倍晋三の金銭・口利き疑惑を抱え、身の潔白を証明できていない甘利明をTPP署名式出席を先に決める感覚

2016-01-24 10:36:21 | 政治

 安倍晋三の腰巾着官房副長官の世耕弘成(ひろしげ)が1月23日、長野市で講演、甘利明が千葉県の建設会社からカネを受け取った週刊文春で報道された「政治とカネ」、金銭疑惑と口利き疑惑について発言した、その内容を「NHK NEWS WEB」記事が伝えている。 

 世耕弘成「甘利大臣は『1週間後に自分のことは調べて説明責任を果たしたい』と言っており、きちんと説明責任を果たして頂けると思う。安倍総理大臣は、甘利大臣にはきちんと事実関係を調べて貰いながらでも、やるべき仕事をやってもらうという立場だ」

 記事解説によると、来月2月4日にニュージーランドで行われるTPP=環太平洋パートナーシップ協定の署名式に甘利大臣を派遣する方針を示したものだという。

 TPPの署名式だけではない、スイスで開かれている世界経済フォーラム年次総会「ダボス会議」に出席のため、金銭疑惑と口利き疑惑を抱えたまま1月23日未明、政府専用機で羽田空港を出発している。

 甘利明は1月21日午前の参院決算委員会で2013年11月に建設会社の総務担当者から大臣室で甘利明自らが50万円入りの封筒を受け取ったと報じられている金銭疑惑を追及されたとき、大臣室での面会を認めた上で、「記憶が曖昧なところがあるので、きちんと整理をして説明したい」と答弁、1周間の猶予を求めた。

 「カネを受け取った記憶はございません」、あるいは「そのような事実はありません」と即座に否定したわけではない。即座に否定できるだけの事実を記憶していなかったことを意味する。

 記憶が曖昧なら、曖昧であることの正当性を提示しなければならない。

 大臣室で初めての人物との初めての面会ということは年に数え切れないくらいにたくさんあるだろう。初めての面会からその後何回か面会を繰返していく人物、あるいは初めての人物であっても甘利明にとってその面会が重要となる人物以外は記憶に残らなくても無理はない。

 だが、封筒に入った50万円を受け取ったかどうかは、差出した人間が別の意味で重要人物となるから、記憶に残るはずだ。報道通りなら、その50万円を受け取った場合、そのカネは不正授受の性格を持つことになるから、いやでも記憶することになる。

 いわば大臣室でカネを差出したのが総務担当者であったとしても、大臣の甘利明と建設会社は贈収賄の関係を結んだことになる。「記憶が曖昧」とすることは事実隠蔽以外に許されない。

 当然、封筒に入った50万円のカネを受け取ったことがあるのか、受け取ったことはなかったのか、その事実の記憶は差出した相手が誰であったかは忘れたとしても、事実隠蔽を図る場合であっても、あるいはウソ偽りのない事実を述べる意思からの発言であっても、前者後者、いずれかでハッキリしていなければ、記憶についての当面の正当性を与えることはできない。

 それを「記憶が曖昧なところがある」と、いずれかをハッキリとさせることができなかった。

 尤も大臣室で50万円や100万円程度の不正なカネの遣り取りはよくあることだとしたら、「記憶が曖昧」を理由とすることはできる。どの50万円だったのか、あるいはその建設会社からも受け取ったのだろうかと、記憶が曖昧ということもあるだろうからである。

 だが、このことを裏返すと、甘利明は「政治とカネ」まみれの大臣という不都合な疑惑を新たに浮上させなければならないことになる。

 「記憶が曖昧なところがある」と答弁して、即座に否定できるだけの事実――その記憶を提示できなかった時点で釈明の正当性を相当程度失ったと見なければならない。

 このようにも金銭疑惑を抱え、業者の便宜を図ろうとした口利きの疑惑もある甘利明を身の潔白が証明できてから派遣を決めるならまだしも、証明できていない金銭疑惑の渦中にある状況で国際会議ともなるTPP協定の署名式への出席を先決させる。

 もし身の潔白を証明できずに金銭疑惑を抱えたまま署名式に出席したなら、同席の他国の閣僚から金銭疑惑の渦中にある大臣だなといった目で見られない保証はないし、各国のマスコミから、日本国内ではこれこれの「政治とカネ」の疑惑が報じられていて、身の潔白を証明できないでいる大臣だと報道されない保証もない。

 出席後、疑惑報道が事実とされたなら、疑惑の渦中にあるままの大臣を会議に出席させたことを、それを決めた安倍晋三の失態と糾弾されるだろうし、汚いカネを受け取った大臣が署名した日本のTPPという事実が記録されることにもなって、日本の恥として記憶されかねない。

 勿論、報道が事実ではなく、身の潔白を証明できるかもしれない。例えそうであったとしても、事実が判明する前の証明できていない状況で出席を先に決める安倍晋三の感覚は、金銭疑惑が事実とされた場合の以上触れたあるかもしれない危険性を考えると、政権運営の危機管理に妥当な策だと言うことはできない。

 金銭疑惑、さらには口利き疑惑(利益供与疑惑)に関しての政権運営上の危機管理の非妥当性は安倍晋三の「政治とカネ」の問題に対する潔癖感の程度に相互対応しているはずだ。「政治とカネ」の問題に強い潔癖感を持っていたなら、例え安倍内閣を形成するの重要な一員であったとしても、身の潔白がハッキリしない時点で国際会議への出席を決めることはできない。

 身の潔白を証明できない万が一の場合を想定して、内々に代理を用意しておいて、誰を派遣するかはギリギリまで決めておかないのが政権運営の危機管理というものであろう。

 だが、シロともクロともつかない早い時点で甘利明の出席を決めてしまった。任命責任者である安倍晋三も担わなければならない説明責任という点でも、政権運営の危機管理という点でも、「政治とカネ」に対する潔癖感の程度という点でも、安倍晋三の感覚には信用できない疑わしいものがある。


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