安倍晋三には特に安全保障関連法案審議・成立に関して「議会制民主主義の王道」を言う資格はない

2015-06-25 08:27:41 | 政治


 安倍晋三が今国会の会期を通常国会としては過去最長となる異例とも言える95日間も延長したが、このことは安倍晋三がどう奇麗事を並べて言い繕おうとも目的は唯一つ、安保法制を通して自衛隊の後方支援と集団的自衛権行使を実現させるためであろう。
 
 この会期延長について安倍晋三は6月22日、国会内で記者たちに発言している。

 安倍晋三「この国会は、農業や医療、雇用、エネルギー、『平和安全法制』といった、戦後以来の大改革を断行する改革断行国会だ。当然、そう簡単な課題ではない。われわれの使命はしっかりと議論を重ねながら議会の中において議論を深めていくことだ。

 (安全保障関連法案の審議について)今回は95日という最大の延長幅を取って、そして十分な審議時間を取って徹底的に議論をしていきたい。そして最終的には『決める時には決める』、この議会制民主主義の王道を進んでいくべきだと判断した」(NHK NEWS WEB

 「農業や医療、雇用、エネルギー」問題を先に持ってきて、外交・軍事の面で日本の今後の方向を新たに決定づけることになるから何よりも問題となっているゆえに第一番に持ってくるべき安保法制を最後に持ってくるところはなかなか巧妙だ。

 「議会制民主主義の王道」を進んでいくために95日という最大の延長幅を取った。一見尤もらしく聞こえるが、安保法制に関してこれまで王道を歩んできたわけではない。

 昨年2014年12月14日の総選挙で自民党は絶対安定多数の国会議席を獲得した。開票翌日の2014年12月15日に自民党本部で記者会見して、冒頭でいきなり次のように述べている。

 安倍晋三「今回の総選挙は、アベノミクスを成功させるため、来年の消費税2%さらなる引き上げを1年半延期するという税制上の大きな変更について国民に信を問う解散でありました。いわば『アベノミクス解散』であったと思います」(首相官邸HP)   

 アベノミクスを成功させるために消費税の1年半延期の是非を問う「アベノミクス解散」であった。

 つまりアベノミクスの成功自体を問うたことになり、国民はその問いに応えた。景気回復への願いが強かったからなのは断るまでもない。

 特に株高の恩恵から取り残され、円安による物価高に苦しめられている中低所得層はその願いは強かったはずである。そしてそういったことの結果が自民党291議席獲得ということであろう。

 総選挙がアベノミクスを成功させるべきか否かを問う選挙だとしていたからこそだろう、安倍晋三は冒頭発言の中で「経済最優先で取り組み、景気回復の暖かい風を全国津々浦々にお届けしていく決意です」と述べはしたが、安保法制については一言も触れていない。

 だが、冒頭発言後の記者との質疑で安保法制について問われたために触れている。 

 記者「今回の選挙ではアベノミクスのほか、集団的自衛権の行使容認や憲法改正、原発再稼働も争点になりました。選挙結果を受け、来年の通常国会に提出する安全保障法制整備の関連法案はどのように審議を進める考えですか。憲法改正にどう取り組むか、原発再稼働についてのお考えは」

 安倍晋三「先ず安全保障法制についてですが、今回の選挙はアベノミクス解散でもありましたが、7月1日の閣議決定を踏まえた選挙でもありました。そのことも我々、しっかりと公約に明記しています。

 また街頭演説においても、あるいは数多くのテレビの討論会でもその必要性、日本の国土、そして領空、領海を守っていく、国民の命と安全な国民の幸せな暮らしを守っていくための法整備の必要性、閣議決定をもとにした法整備の必要性ですね、集団的自衛権の一部容認を含めた閣議決定に基づく法整備、これを来年の通常国会で行っていく、これを訴えて来たわけです。

 このことにおいてもご支持を頂いた。当然、約束したことを実行していく。これは当然、政党、政権としての使命だと思う。来年の通常国会のしかるべき時に法案を提出していきたい。そして成立を果たしていきたいと考えています」(産経ニュース)――

 冒頭発言ではアベノミクスを成功させるべきか否かを問う「アベノミクス解散」だと言って、安保法制には一言も触れていなかったにも関わらず、質疑では安全保障法制についてもその信を同時に問う選挙であり、自民党291議席獲得を以って「ご支持を頂いた」――国民の信任を得たとしている。

 支持を得た以上、来年の通常国会で法案を提出、成立を図りたいと言っている。

 言っていることが正しく、国民の多くもそのように受け止めているなら、通常国会で安保法制法案を提出、今国会の会期を通常国会としては過去最長となる95日間も延長して法案の成立を図ることも国民の期待に応える目的からであって、まさに議会制民主主義の王道を歩んでいることになる。

 つまり2014年12月14日総選挙はアベノミクスの是非ばかりか、安保法制の是非をも争点とした選挙であり、国民はその両方にイエスのサインを提示した。安倍晋三の側から言うと、両方共に「ご支持を頂いた」

 もし安倍晋三の言っていることが事実であるなら、国民のイエスの判断はマスコミ各社の安保法制に関わる世論調査にもそのままに反映されて然るべきだし、反映されなければならないが、どの世論調査を見ても、安倍晋三の「ご支持を頂いた」という言葉に反する傾向を見せている。

 朝日新聞社の6月20、21日実施の最新の世論調査を一例として挙げておく。

 「今の国会に提出された安全保障関連法案についてうかがいます。集団的自衛権を使えるようにしたり、自衛隊の海外活動を広げたりする安全保障関連法案に、賛成ですか。反対ですか」

 賛成29%
 反対53%

 「安全保障関連法案について、国会に呼ばれた3人の憲法学者が『憲法に違反している』と主張しました。これに対して安倍政権は『憲法に違反していない』と反論しています。3人の憲法学者と安倍政権の、どちらの主張を支持しますか」

 3人の憲法学者50%
 安倍政権17%

 「安全保障関連法案で自衛隊の活動範囲が広がると、自衛隊が戦闘に巻き込まれるリスクが高まると思いますか。高まらないと思いますか」

 高まる81%
 高まらない9%

 「安全保障関連法案が成立すると、外国が日本を攻撃しにくくする抑止力が高まると思いますか。高まらないと思いますか」

 高まる33%
 高まらない40%

 「安倍首相の安全保障関連法案についての国民への説明は、丁寧だと思いますか。丁寧ではないと思いますか」

 丁寧だ12%
 丁寧ではない69

 「安倍政権は安全保障関連法案を、今開かれている国会で成立させる方針です。この法案を、今の国会で成立させる必要があると思いますか。今の国会で成立させる必要はないと思いますか」

 今の国会で成立させる必要がある17%

 今の国会で成立させる必要はない65%(以上)

 少なくとも安保法制に関して「ご支持を頂いた」という国民世論の状況とはなっていない。

 このことは国会での安保法制の質疑の進行に連れて安倍内閣が支持率を下げている点にも現れている。

 国民は2014年12月14日総選挙をアベノミクスを問う総選挙だと見ていても、安保法制の是非を問う総選挙だとは見ていなかったということである。

 少なくとも総選挙でアベノミクスに支持を与えたが、安保法制には支持を与えなかった。

 にも関わらず、安保法制に関しても総選挙で「ご支持を頂いた」と事実に反する言いくるめを行って、国会会期を延長してまでして国民世論が反対する安保法制の成立を図る。

 これを以て果して「議会制民主主義の王道を進んでいく」と言うことができるだろうか。

 安倍晋三が「王道」という言葉を使うこと自体、図々しいばかりの言いくるめに過ぎない。使う資格などない。


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