東京都知事選終盤情勢、鳥越俊太郎が与党分裂選挙を生かしきれずに3位につけている諸問題について考える

2016-07-25 09:51:09 | 政治

 今回の都知事選で民進党代表岡田克也は、自ら立候補したいと申し出たジャーナリストの鳥越俊太郎(76)と会談、その擁立を決め、野党4党の統一候補とすることに成功した。

 主たる相手は自民党推薦の元総務相の増田寛也(64)、自民党所属でありながら、党の反対を押し切って立候補した元防衛相の小池百合子(64)で、与党分裂選挙となる。

 しかも鳥越はハンサム、長身、ジャーナリストとして常に反権力・正義の味方を演じ、人柄も高潔に見えて、断然有利な位置につけると最初は思われた。

 都知事選の告示日は7月14日。毎日新聞が7月16、17両日の都内有権者対象の「電話世論調査」が伝える序盤情勢は断然有利とはいかなかった。 

 4割以上が投票先を決めていない状況にあるものの、小池百合子と鳥越俊太郎が競り合い、増田寛也が追う展開となっていると伝えている。

 序盤から与党分裂に対して野党統一候補という有利な態勢を生かしきれていない。民進党も鳥越も与党分裂に賭けたはずだ。民進党の人気のなさも然ることながら、鳥後本人の人気も左程のことはないということの兆候なのだろうか。

 だとすると、与党分裂は左程の影響はないことになる。

 同記事が伝える最重視する投票基準を見てみる。

 「政策」37.0%・・・・・小池約3割、鳥越約2割、増田2割弱
 「行政経験」13.5%・・・・・6割弱が増田寛也
 「おカネに対するクリーンさ」13.4%
 「人柄」13.1%・・・・・5割弱が鳥越俊太郎
 「政治経験」9.9%・・・・・6割が小池百合子
 「支援する政党や団体」6.4%
 「五輪開催の知事に相応しいか」3.6%
 「友人・知人の依頼」0.3%
 「その他・無回答など」2.8%

 都民は猪瀬直樹と舛添要一の前任二者の不正行為を経験しているはずだが、人柄がそれ程重視されていないのは人柄の良さを予定調和とし、それを前提に各候補者を見ているからなのだろうか。

 何か不正行為が発覚して、その前提が崩れたとき、自らの予定調和を裏切った者として厳しいノーという態度を突きつけることになるということなのかもしれない。

 記事は、〈鳥越氏は60代女性や70代以上を中心として、高齢層に人気が高い。増田氏は30代で一定の支持を集めている。〉との記述があるから、同年齢層からの支持が高いことが窺えるが、逆に他の年代層、特に若い年代層は鳥越のハンサム、長身、反権力・正義の味方を然程重視していないことを示す。

 いずれにしても小池、増田と票が割れるはずの与党分裂は鳥越に有利な条件とはなっていない。小池とどうにか競り合う程度の効果しか現れていない。

 こういった情勢下で7月14日の告示日から1週間後の7月21日発売の「週刊文春」が鳥越俊太郎の過去の女性問題を報じた。

 対して鳥越俊太郎は同じ7月21日の午前中に民進党の会合に出席して、「一切、事実無根であり、心ない誹謗中傷だ。弁護士が法的手段に訴えるべく行動に出ている」(NHK NEWS WEB)と説明、その言葉通りに鳥越の弁護団は同7月21日、即座に東京地検察に刑事告訴している。

 鳥越俊太郎は「事実無根、誹謗中傷」と言う以外、何の説明もしていない。

 不祥事や不正行為を報道された政治家や企業経営者、学校関係者等の「事実無根」といった否定は素直に否定と受け取られることはない。最初の否定が覆されることが多いことを国民は学んでいるからだ。

 猪瀬直樹は最初の否定を最後には否定しきれなくなった。舛添要一にしても、最初の否定を自分の言葉で、それが否定通りであることを満足に説明することができなかった。

 当然、多くの国民は両者の否定を否定に反した事実と予想することになった。

 鳥越がジャーナリストなら、そのことを心得ていなければならない。

 マスコミ報道を見ていると、与党分裂の好機を生かすことができずに小池と競り合う程度の位置にどうにかつけていた鳥越俊太郎がこの問題で選挙終盤に差し掛かって増田寛也の後塵を拝するようになったようだ。

 もし与党分裂の好機を生かすことができて断然トップという状態で支持を集めていたなら、その落差は大きく映ったに違いない。生かしきれていなかったことがその傷口を小さく見せることに成功しているようだ。

 尤もどちらであったとしても、都民の多くは鳥越が当選した場合、当選後に前任二者と同じ二の舞いを目にするのではないかと予想したはずだ。

 当然、鳥越俊太郎は実際にも「事実無根、誹謗中傷」であるなら、そのように否定するだけでは素直に否定と受け取られないことを弁え、「当選したとしても、前任二者の二の舞を演じることはありません。事実無根、誹謗中傷だからです。もし二の舞いを演じたなら、ジャーナリとしてだけではなく、人間としての立場を失うことになります」と前任二者の二の舞を演じないことの確約を与えなければならなかった。

 そうすることによって最初の否定を否定のままに保つことができる。

 後ろ暗いところがあって、そう言った確約を与えることができなかったのか、あるいはジャーナリストでありながら、都民の危惧を的確に汲み取ることができなかったのか、そういった説明の経緯を取らなかった。

 結果、小池百合子を先頭に増田寛也と競り合い、鳥越俊太郎が追う展開へと様変わりした。

 7月24日付産経新聞の「世論調査」が鳥越俊太郎に対する女性の支持離れを伝えている。   

 〈産経新聞社が23、24両日に実施した東京都知事選に関する世論調査で、鳥越俊太郎氏への女性の支持離れが浮き彫りとなった。前回調査(16、17両日実施)と比べて6ポイント以上減少し、2割を切った。民進党幹部は週刊文春の「女性問題」をめぐる記事が「響いている」とみている。〉

 〈6ポイント以上減少し、2割を切った〉と言うことは、その6ポイントを足しても20%台半ばの女性の支持しかなかったことになる。

 この程度であることも幸いした6ポイント程度の支持離れということでもあるはずだ。

 記事は逆に増田寛也が相対的に女性の支持を集めていることを伝えている。対して小池百合子は男性・女性共に3割以上の支持を集めているという。

 女性の支持が鳥越から益田に移った。

 鳥越のジャーナリストとしての資質を疑う点が他にもある。

 7月24日の最後の日曜日の該当演説の様子を「NHK NEWS WEB」記事が伝えている。  

 鳥越俊太郎「東京都は、核のない世界、『非核都市宣言』をしたい。太陽光や風力、地熱、バイオマスなどさまざまなエネルギーがあり、それをぜひ活用して、一刻も早くできるだけ原発に依存しない社会、『原発ゼロの社会』を作ろう」――

 最近の国政選挙は福島第1原発事故の記憶が遠のいたせいか、原発問題はさしたる争点となっていない。当然、票に結びつかないことになる。

 7月の自民党勝利の参院選後の安倍晋三に対する力を入れて欲しい政策順位選択について、「朝日新聞世論調査」(7月11、12日)を見てみる。  

 「社会保障」32%
 「景気・雇用」29%
 「教育」13%
 「外交・安全保障」11%
 「憲法改正」6%
 「原発・エネルギー」5%

 「原発・エネルギー」はたったの5%を占めるに過ぎない。人間は生活を最大の利害とする生きものであって、「社会保障」も「景気・雇用」も生活に関わる最大の利害問題である。

 但し福島原発事故当時は最大の生活の利害であったはずだが、現在ではそうではなくなった。

 ジャーナリストであるなら、こういったことも弁えていなければならない。もし脱原発を訴えるなら、「再び原発事故が起きない保証はどこにもない。福島原発も事故は起きないものとして『原発安全神話』を前提としていたが、物の見事に裏切られた。もし再び原発事故が起きたなら、みなさんの生活が福島のときのように破壊されないとも限らない。景気が良くても、その足を引っ張って不景気を招かない保証はない」と人間が最大の利害としている生活と絡めて、それがどうなるか、そのことに訴えかけなければならないはずだが、単にエネルギー転換論を述べるだけで終わっている点はジャーナリストでありながら、説得力に欠ける演説で終わっている。

 もう一点、鳥越俊太郎がジャーナリストなのか、疑わしさを掻き立てる記述がネットに出回っている。

 2015年7月に放送したとかのNHKの人気ドキュメンタリー番組「ファミリーヒストリー」に鳥越が出演し、鳥越の親戚筋が提供した鳥越家の家系図に基づいて、戦国大名・大友宗麟の家臣、鳥越興膳を出自としていることを明らかにしたという。

 だが、鳥越興膳の実際の子孫が鳥越俊太郎の家系は単に鳥越という苗字だけが同じの別の家系だとNHKに抗議し、鳥越も最終的にはそれを認めたという。

 問題は別の家系だったという事実誤認ではない。

 ジャーナリストを名乗っているからには権威に対して自由人でなければならない。私は私だ、自身の生き方・考え方、その個人性を権威とすると。

 だが、家系も出自も一つの権威であって、個人性を離れて家系・出自という権威に拘った。家系と出自という権威を個人性の重要な要素に付け加えようとした。

 果して真のジャーナリストと言えるだろうか。

 例え「週刊文春」を読まなくても、内容はネットにタレ流しにされる。家系・出自問題もネットに跋扈し続けることになる。

 後者も影響した序盤情勢の与党分裂を生かしきれなかった小池百合子との競り合いであり、さらに前者の影響が加わった終盤情勢での3位後退といったところであるはずだ。

 ジャーナリストを名乗って立候補する資格はなかったのかもしれない。


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