安倍政権は野田政権福島原発事故収束宣言に対して暗黙の事故収束宣言をしていた?

2013-08-28 06:24:35 | 政治



 今年の4月、福島第1原発の放射能汚染水を貯め込んでおく地下の貯水槽から高濃度の放射性物質を含む汚染水の水漏れが見つかり、5月になって、2号機海側の放射能濃度観測用井戸地下水から同じく高濃度の放射性物質を検出、連動するように港の海水でも放射性物質の濃度が上昇したが、東電は汚染水の海への流出を認めなかった。

 ところが7月22日、東京電力は汚染水の海への流出が続いていたことを初めて認めた。

 経産省は8月7日、流出量の概算を公表している。

 第1原発の地下には毎日約1000トンの地下水が山側から流れ込み、このうち約300トン程度が高濃度放射性物質が検出された井戸の周辺を通り、汚染水となって海に流出していると推測。

 残りの700トンのうち、400トンは1号機から4号機の建屋地下に滞留、300トンは汚染されずに海に流出。

 経産省流出量概算公表と同じ8月7日、政府は安倍晋三を本部長とする原子力災害対策本部会合を開催。

 安倍晋三、「汚染水問題は、国民の関心も高く対応すべき喫緊の課題だ。東京電力に任せるのではなく、国としてしっかりと対策を講じていく。

 スピード感を持って東京電力をしっかりと指導し、迅速かつ確実に重層的な対策を講じてほしい」b>NHK NEWS WEB)――

 歴代政府は国策として原子力政策を進め、その政策のもと、東電等の電力事業者を各種規制してきたのだから、東電の福島原発事故は国にも重大な責任がある。

 当然、国は海への流出はあってはならないこととして東電の汚染水対策を監視していなければならない責任を負っていたはずである。

 ところが政府は東電が汚染水の海への流出を認めた7月22日から16日も経過した8月7日になって原子力災害対策本部会合を開催、安倍晋三は「東京電力に任せるのではなく、国としてしっかりと対策を講じていく」と、政府としての責任遂行を言ったつもりだろうが、逆に東電任せにしていたことが露見させている。

 政府のこういった不作為・無責任は8月8日(2013年)の当ブログ記事――《安倍晋三の東電汚染水問題「東電に任せるのではなく、国としてしっかりと対策を講じていく」の言行不一致 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》に書いた。

 そして8月7日の原子力災害対策本部会合開催から19日も経過した8月26日になって、菅官房長官が記者会見しているが、安倍晋三が「汚染水問題は、国民の関心も高く対応すべき喫緊の課題だ」と言ったことに反して国としての責任遂行の指示と実施との間にズレを見せている。

 《汚染水「財政措置も含め対策」》NHK NEWS WEB/2013年8月26日 13時12分)

 菅官房長官「タンクからの汚染水の漏えいは極めて遺憾だ。これまでの地下水の汚染の構造的な問題とは異なり、タンクの管理をしっかり行ってこなかったことに大きな問題があったと考えている。

 政府が一歩前に出て、取り組む必要がある。茂木経済産業大臣に対して、抜本的な対策を早急に進めるため、予備費の活用を含めた財政措置についても、できる限りのことを行うよう2週間前に指示した。一日も早い解決に向けて、出来ることはすべてやるというのが現在の政府の方針だ。

 (2020年夏季オリンピック・パラリンピック東京招致活動への影響について)外務省経由で情報提供を適切に行っているので、言われているような影響はないと考えている」――

 「2週間前に指示した」、だが、実施はこれからだということだから、「一日も早い解決に向けて、出来ることはすべてやるというのが現在の政府の方針だ」という自らの言葉を裏切っていることになるのだが、本人は気づいていない。

 いわば政府の対応は後手、後手に回っている。

 汚染水対策を東電任せにしたことと、責任遂行の実施がこれからであることは菅官房長官が記者会見したのと同じ8月26日に現場を視察した茂木経産相が自ら暴露している。《汚染水対策で予備費活用を検討》NHK NEWS WEB/2013年8月26日 19時33分)

 記事は茂木経産相が周辺のパトロールの強化や溶接型のタンクを増設することなど東京電力側に5つの指示したと書いている。

 この指示自体が既にこれまで東電任せであったことの証明でしかない。視察後、記者団に。

 茂木経産相「汚染水の対策は東電任せで、もぐらたたきのような状況が続いてきたが今後は国が前面に出る。

 新たに経済産業省の幹部を汚染水対策に充て、対応していく。

 緊急性が高く技術的に困難な凍土壁などの対策については、予備費の活用を含めて財務当局と協議する」(下線個所は解説文を会話体に直した)――

 「汚染水の対策は東電任せ」であった。「緊急性が高く技術的に困難な凍土壁などの対策については、予備費の活用を含めて財務当局と協議する」と、今後の実施であることを自ら証言することとなっている。

 先ず、「汚染水の対策は東電任せ」であったことを何とも思わない、いわば無責任さを何も感じない物言いを平然と行う感覚には驚かされる。

 予備費活用等の財務当局との協議は、汚染水対策自体の工事等は政府の監視と指導で進められていくのだから、工事費の支払いは後回しでも可能で、後で決まってもいい予備費活用ではあるが、過去4回漏出を起こした地上設置の汚染水貯蔵タンクは溶接して組み立てたものではなく、ボルト接合の簡易な「フランジ式」だと「MSN産経」は伝えているし、汚染水300トンが漏れた貯蔵タンク(容量1000とン)は地盤沈下で傾いたために解体したタンクを組み立て直して再利用したものだったと東電が8月24日発表したと「YOMIURI ONLINE」が伝えているように、要するにカネの手抜きが対策の手抜きを招いた、あるいはコストカットが対策カットの原因となった放射能汚染水の漏出だと考えると、政府が当初から東電任せではない、監視と指導の責任遂行のもと早くに予備費活用を決めていたなら、東電としても安心して人員とカネをかけたしっかりとした工事ができていた可能性は否定できない。

 ところが全然そうはなっていなかった。

 東電が貯蔵タンク設置にカネをかけなかったことは次の記事が何よりも証明している。《汚染水漏れ:「タンク、金かけず作った」協力会社会長証言》毎日jp/2013年08月25日 09時24分)

 記事――〈地盤沈下が原因で移設されていたことが明らかになった東京電力福島第1原発の汚染水タンク。高濃度の放射性物質を含んだ汚染水約300トンの漏出は、この移設が原因なのか――。〉・・・・・

 東電協力会社(福島県いわき市)会長(72)「タンクは工期が短く、金もなるべくかけずに作った。長期間耐えられる構造ではない」――

 〈同社は事故前から原発プラントの設計・保守などを東電から請け負い、同原発事故の復旧作業では汚染水を浄化して放射性物質を取り除く業務に携わっている。このため汚染水を貯留しているタンクを設置したゼネコンともやり取りがあり、内部事情に詳しい。〉

 東電協力会社(福島県いわき市)会長東電幹部やゼネコン関係者から聞いた話では、今回水漏れを起こしたタンクは、設置工事の期間が短かった上、東電の財務事情から安上がりにすることが求められていた。タンクは組み立て式で、猛暑によってボルトや水漏れを防ぐパッキンの劣化が、通常より早まる可能性も指摘されていた。

 野ざらしで太陽光線が当たり、中の汚染水の温度は気温より高いはず。構造を考えれば水漏れは驚くことではなく、現場の感覚では織り込み済みの事態だ。現場の東電の技術スタッフも心配はしていた」(下線個所は解説文を会話体に直した。)
 
 但し約300トン漏出の汚染水は、原子炉を冷却した汚染水から放射性セシウムを除去した汚染水だそうだ。

 なぜ安倍政権は原発事故と事故終結に国の責任があるにも関わらず、汚染水対策は無責任にも東電任せにしたのだろうか。

 菅無能は2011年3月11日の福島第1原発事故後の3月15日、東電本社内に政府と東電本社と第1原発現場と情報共有を図るための「政府・東京電力統合対策室」を設置している。

 この設置を以後の情報共有をスムーズに測ることができたと菅無能の手柄のように喧伝しているが、緊急事態応急対策拠点施設(オフサイトセンター)を中継基地として首相官邸と東電本社、福島第一原発、福島県町とを結ぶテレビ会議システムを一度も利用していなかったから、思いつかなかったのだろう、オフサイトセンターが放射能汚染で使えない間に首相官邸のテレビ会議システムを東電と直接つなげる措置を取っていたなら、東電本社に置いた「政府・東京電力統合対策室」から重要な情報を首相官邸に上げるという手間を省いて、より直接的に現場の情報を首相官邸はタッチできたはずだが、オフサイトセンターが放射能汚染から復旧後も、オフサイトセンターを中継基地としたテレビ会議システムを利用することはなかったし、首相官邸と東電本社と直接つなげるテレビ会議システムを設置することもなかった。

 「政府・東京電力統合対策室」は菅無能政権を引き継いだ野田政権が2011年12月16日、「原子炉は冷温停止状態に達し、事故そのものは収束に至った」と事故収束宣言を行い、事故収束に伴って同日付で廃止されることとなった。

 そして「政府・東京電力統合対策室」の後継組織として、「東京電力福島第一原子力発電所1~4号機の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」の決定及びその進捗管理並びに発電所の安全維持を、政府と東京電力株式会社が共同で実施していく体制として、新たに「政府・東京電力中長期対策会議」を設置している。

 ところが安倍政権となった2013年2月8日、野田政権設置の1~4号機廃炉に向けた「政府・東京電力中長期対策会議」を廃止し、代わりに野田政権の「政府・東京電力中長期対策会議」が掲げた計画テーマと同じく、「東京電力(株)福島第一原子力発電所1~4号機の廃止措置に向けた中長期ロードマップ」の進捗管理を行うとともに、重要事項を審議、決定する体制を構築する、政府及び東京電力に加え、研究開発に携わる主要な関係機関の長を構成員とする「東京電力福島第一原子力発電所廃炉対策推進会議」を新たに設置している。

 野田政権が「政府・東京電力統合対策室」を廃止して、「東京電力福島第一原子力発電所1~4号機の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」を計画テーマとした「政府・東京電力中長期対策会議」を設置したことは事故収束宣言をした以上、その措置が正しいか否かに関わらず、矛盾しないことになる。

 だが、安倍政権が野田政権と同じ廃炉を計画テーマとした「東京電力福島第一原子力発電所廃炉対策推進会議」の設置のみでは、野田政権の事故収束宣言に異議を唱え、まだ事故は収束と言える状況ではないとしていたのだから、片手落ちの矛盾を犯すことになる。

 この矛盾をクリアするためには、廃炉に向けた会議と共に何らかの事故対策会議をも設置していなければならなかったはずだ。

 安倍政権が「東京電力福島第一原子力発電所廃炉対策推進会議」を設置した同じ2013年2月8日の衆院予算委で安倍晋三は野田政権の収束宣言について次のように答弁している。

 安倍晋三「前政権において、一昨年の12月に原子炉の状態を定量的に評価した上で冷温停止状態の達成を確認したものである。その確認において、収束という表現を使ったんだろうと思います。

 私は、総理就任後、福島県に参りました。今、笠井委員が御指摘をされたような、そういう住民の方々は受けとめをしておられた。いまだに帰還できずに不自由な生活を強いられている皆さんとも私はお目にかかってお話をいたしました。その中において、原発事故が収束しているということは簡単に申し上げられない状態であるというふうに私は認識をしております」――

 笠井共産党議員は福島住民の不安と不信は続いている、収束宣言できる状況ではないと収束宣言の撤回を求めたが、安倍晋三は応じなかったものの、収束したと言うことができる状況ではないと答弁している。

 2013年2月12日の予算委員会。

 小泉進次郎自民党議員「安倍政権というのは、原発事故以来、また東日本大震災以来、初めての自民党政権であります。そのスタートに、改めて、かつての自民党政権時代、間違った安全神話のもとに原発を推進してきたその責任を、私は免れることはできないと考えています。おわびと反省から改めて始めるべきじゃないでしょうか。総理、いかがですか」

 安倍晋三「昨年十二月の十六日、総選挙によって、我が党、公明党が過半数を得たわけでありますが、ちょうどこの日が、収束宣言をしてからの一年目に当たる日でございました。

 私も、総理に就任して直ちに、最初の訪問地として迷うことなく福島を選びました。そして、そこでお目にかかった人々、ずっとふるさとから離れて困難な生活を強いられ、そしてなかなか帰れるめどが立っていない、そういう不安の中で生活をしている方々から、いろいろなお話を伺いました。

 その中で、改めて我々は、政権与党として原子力政策を推進してきた、そして、それはやはり安全神話の中においての、安全神話に陥った原子力推進政策であった、このことは深刻に反省しなければならないと思います。改めて、このことによって深刻な事故が起こって、多くの方々に大変な被害を与えている、おわびを申し上げたいと思います。

 そして、この事実は、私たちは今後もずっと背負っていかなければいけない事実であります。そのためにも、そこから生まれる責任感によって、一日も早く廃炉、除染、そして、多くの方々がふるさとに帰れるように政策を進めていくことが私たちの使命だろう、改めてそう思っているところでございます」――

 国の責任を言い、少しあとで次のように収束宣言について答弁している。

 安倍晋三「就任後、福島県を訪問いたしまして、ふるさとから離れて困難な生活を強いられている方々からお話を伺う中においては、前政権時代に出された収束宣言、いわば収束したという状況ではない、こういう認識を私は持っております」――

 もう一つついでに。2013年2月19日の参院予算委。

 森ゆうこ生活の党議員「事故収束宣言が間違った認識を与えているということで、安倍内閣として撤回されるということでいいですね。

 総理、総理。内閣ですから。今おっしゃったでしょう」

 茂木経産相「収束という言葉は適切ではないと、そのように考えております。我々は使いません。撤回は前の政権に対しておっしゃってください」

 森ゆうこ生活の党議員「総理が」

 石井委員長「それじゃ、総理、どうぞ」

 安倍晋三「もう既に私も何回か答弁をしておりますが、収束ということで前政権がそう判断をしたわけでありますが、とても収束と言える状況ではないというのが我々安倍政権の認識であります」――

 消滅した政権が収束宣言の撤回を宣言したとしても効力を持つものではないから、茂木経産相は無理なことを言っている。

 安倍政権は事故収束宣言撤回に応じなかったものの、「とても収束と言える状況ではない」、いわば事故は未だ継続しているとした。 

 事故は国にも責任があり、事故は収束せずに未だ継続していると見るなら、東電の汚染水対策にも何らかの監視体制を設けて、常に関わっていなければならなかったはずだ。

 だが、東電任せにしてきた。これでは事故収束宣言をしたのと同じ状態の行動を取っていたことになる。

 だからこそ、東電任せという状況に立ち至ることとなった。

 だとすると、野田政権が公式に福島原発事故収束宣言を行なったのに対して安倍政権は暗黙の事故収束宣言を行っていたのと同じ構造の行動を取っていたことになる。

 さらにだとすると、安倍晋三の野田政権原発事故収束宣言に対する「とても収束と言える状況ではないというのが我々安倍政権の認識であります」の言葉は根拠のない失点稼ぎの揚げ足取りの疑いが出てくる。

 安倍晋三のやりそうなことではある。


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