安倍晋三の5月31日アフガニスタンテロへのメッセージ発出はそれが欧米諸国偏向への非難を恐れたからか

2017-06-03 11:42:12 | 政治

 昨日2017年6月2日の「ブログ」で、安倍晋三が欧米諸国で発生したテロ事件に関してのみ発生国の首脳と電話会談をするか、メッセージを送ってテロへの怒りと非難、犠牲者への哀悼の意、そして連帯等を表明するが、欧米諸国以外の中東諸国、その他の国のテロ事件に対しては発生国の首脳と電話会談もせず、メッセージも送らず、それらの表明は外務報道官談話で済ませていたことを差別ではないかと指摘し、2017年4月20日夜、フランスのパリ中心部にあるシャンゼリゼ通りで発生した過激派組織「イスラム国」による警察官襲撃テロ(1名死亡)の際にフランスのオランド大統領に送ったメッセージの文言、「文明世界全体に対する攻撃」だとする、欧米諸国のみがさも文明世界であるかのような表現から窺うことができる安倍晋三の認識を差別ではないかと指摘した。 

 ところが昨日2017年6月2日 13時45分付けの「NHK NEWS WEB」記事が、安倍晋三が先月5月31日にアフガニスタンの首都カブールで発生したテロ事件に対してアフガニスタンのガニ大統領にテロへの怒りと非難、犠牲者への哀悼の意、そして連帯等を表明するメッセージを送ったことを伝えていた。

 アフガニスタンは欧米諸国の一国ではない。だとすると、上記差別ではないかとする、少なくとも前段の指摘は誤っていることになる。

 具体的にどういう文言となっているのか外務省のサイトにアクセスしてみた。年号の平成を西暦に変えた。

 カブールにおける爆発事案を受けた安倍内閣総理大臣及び岸田外務大臣の弔意メッセージの発出(外務省/2017年6月2日)      

 1 本2日,5月31日(現地時間同日)にアフガニスタンのカブールにて大規模な爆発を伴う攻撃が発生し,多数の死傷者が出たほか,我が国大使館関係者も負傷し,我が国大使館にも物的被害が生じたことを受け,安倍晋三内閣総理大臣からモハンマド・アシュラフ・ガーニ・アフガニスタン大統領 (H.E. Dr. Mohammad Ashraf Ghani, President of the Islamic Republic of Afghanistan)に対して,テロへの強い非難,犠牲者の方々に対する哀悼と負傷者へのお見舞い,アフガニスタンへ連帯を表明する旨のメッセージを発出しました。

 2 また,岸田文雄外務大臣からサラフッディーン・ラバニ外務大臣(H. E. Mr. Salahuddin Rabbani, Minister of Foreign Affairs of the Islamic Republic of Afghanistan)に対しても同様のメッセージを発出しました。

 2017年5月31日のアフガニスタンのテロは具体的な時間は午前8時半頃(日本時間午後1時頃)で、具体的な事件内容はアフガニスタンの首都カブールの各国大使館が集中する地区で飲料水の運搬車を装って爆発物を積み込んだ大型車が爆発、少なくとも90人が死亡、400人以上が負傷したとマスコミは報じていた。

 安倍晋三と岸田文雄のメッセージの発出時間は正確には知り得ないが、少なくとも1日半以上は置いている。

 一般的には安倍晋三が欧米諸国のテロに対して電話会談を行う場合もメッセージを発する場合もテロ発生当日か翌日となっているが、ロンドン中心部の英国会議事堂周辺で発生したテロ事件のときは発生日時が2017年3月22日現地時間午後2時40分(日本時間午後11時40分)頃に対してイギリスのメイ首相と電話会談したのは3月24日と間に1日を置いているから、アフガニスタンの大統領に発出したメッセージが遅過ぎるということはあり得ないことになる。

 だが、外務省は既にテロ発生日時と同じ2017年5月31日に「外務報道官談話」を発している。昨日のブログにでも紹介したが、再度紹介することにする。

 カブールにおける攻撃について(外務報道官談話/2017年5月31日)  

1 本31日(現地時間同日),アフガニスタンの首都カブールの中心部において,大規模な爆発を伴う攻撃が発生し,多数の死者及び負傷者が出たことに,強い衝撃と憤りを覚えます。我が国は,亡くなられた方々及びご遺族に対し心から哀悼の意を表します。また,同攻撃により,我が国の在アフガニスタン日本国大使館関係者が軽傷を負うとともに,大使館施設にも物的損害が生じています。

2 このようなテロ行為は決して許されるものではなく,我が国は,これを断固として非難します。我が国は,あらゆる形態,目的のテロを非難し,いかなるテロ行為も正当化し得ないことを改めて強調します。

3 我が国は,アフガニスタンが同国の安定に向けて引き続き全力をあげることを期待します。我が国は,今後とも,関係者の安全対策に最大限配慮しつつ,アフガニスタンの安定に向けて支援を継続していく考えです。

(参考)
 5月31日(水曜日),アフガニスタンのカブールにおける我が国を含む各国大使館が集中する地区で,大規模爆発を伴う攻撃が発生。少なくとも80人が死亡し,350人以上が負傷した模様。この事案で,我が国大使館の窓ガラスが割れる等の損傷が発生。

 外務報道官とは外務大臣官房に置かれている外務省の内部部局の一つである外務報道官組織の長(局長級の総括整理職)だと「Wikipedia」が紹介していて、現在は丸山則夫なる人物が務めているようだ。

 テロ発生当日に局長級の外務報道官が欧米のテロ発生国に対して安倍晋三が普段行っている電話会談やメッセージとほぼ同じ趣旨のテロへの怒りと非難、犠牲者への哀悼の意、そして連帯(「アフガニスタンの安定に向けて支援を継続していく考えです」)を表明したあとに、しかも2日後に一国の首相と外務大臣が同趣旨のメッセージを発する順序に正当な一貫性を見い出すことができるだろうか。

 しかもこれまでは安倍晋三が欧米のテロ発生国に対して電話会談を行ったり、メッセージを発出した場合は「外務報道官談話」を発出していないし、テロ発生国に対して「外務報道官談話」を発出した場合は安倍晋三は電話会談も行ってもいないし、メッセージを発出してもいない慣例から見て、欧米諸国以外のテロ発生国に日本人が人質となったり、犠牲となった場合は除いて安倍晋三がメッセージを発出したのは今回のアフガニスタンが初めてという異例さから一貫性の欠如だけではなく、やはり欧米諸国と欧米諸国以外の中東諸国その他の国に対する差別を見ないわけにはいかない。

 昨日のブログにに記載したが、平成29年1月1日のトルコでの銃乱射テロ事件からから5月31日の上記アフガニスタン・カブール大規模テロ事件までの各国テロ事件に関する外務省サイトの「外務報道官談話」の一覧を再度記載してみる。

 談話の一覧はテロ関係以外の談話も載せてあるが、昨日のブログ同様にテロ関係のみを抜き出した。但し2017年1月10日アフガニスタン発生のテロに対する談話は忘れたのか、省いたのか漏れている。

 では、2017年1月10日アフガニスタン発生のこのテロに関して安倍晋三が電話会談かメッセージでテロへの怒り等を伝えたのかというと、外務省サイトの安倍晋三の「電話会談」の一覧にも、「メッセージ」の一覧にも記載されていないし、今回の安倍晋三と岸田文雄のアフガニスタン5月31日テロ以外には欧米諸国以外の国のテロに対する電話会談もメッセージも一覧には記載されていない。

 この一事を以てしても、アフガニスタン5月31日テロに関わる安倍晋三のメッセージは異例中の異例だということが分かるし、例えアフガニスタンのこのテロを加えたとしても欧米諸国に対する扱いとそれ以外の国に対する扱いに差別を見ないわけにはいかない。

 《「外務報道官談話」の一覧》

 ・カブールにおける攻撃について(外務報道官談話)(平成29年5月31日)
 ・エジプトのタンタ及びアレキサンドリアの教会におけるテロ事件(外務報道官談話)(平成29年4月10日)
 ・シリアにおける化学兵器使用報道について(外務報道官談話)(平成29年4月6日)
 ・ソマリアにおけるテロ事件について(外務報道官談話)(平成29年2月21日)
 ・パキスタンにおけるテロ事件について(外務報道官談話)(平成29年2月17日)
 ・カナダ・ケベック市における銃乱射事件について(外務報道官談話)(平成29年1月31日)
 ・エルサレムにおける車両テロ事件について(外務報道官談話)(平成29年1月10日)
 ・トルコ共和国イスタンブール市における銃乱射テロ事件(外務報道官談話)(平成29年1月1日)(外務省

 カナダのケベック市銃乱射テロ事件以外はすべて欧米諸国以外の中東等の国々となっている。

 カナダが欧米諸国の一員でありながら、ケベック市の銃乱射テロ事件が「外務報道官談話」の一覧に載っている理由は分からない。但しカナダのトルドー首相はこのテロ事件に関して安倍晋三から電話会談も受けていないし、メッセージを送られていないことは上記「電話会談」と「メッセージ」一覧に記載されていないことによって証明できる。

 このテロが電話会談やメッセージ発出から漏れた理由を昨日のブログで、〈テロの犠牲者がモスクで礼拝中のイスラム系カナダ人であり、さらに穿った見方をすると、トルドー首相がゲイに寛容で、イスラム系難民のカナダ入国に歓迎姿勢を見せているからなのだろうか。〉と書いた。

 いずれにしてもテロ発生に関わる「外務報道官談話」の発出対象国は殆ど欧米以外の国々で、安倍晋三の電話会談とメッセージ発出の対象国は今回の3月31日アフガニスタンテロに対してメッセージを発出するまでは全て欧米諸国であることが慣例となっていた。

 安倍晋三が実際に日本を含めた欧米諸国のみを「文明世界」だと見ていて、日本人優越意識に染まっている(日本政府の難民認定にも現れている)ことを併せ考えると、これまでテロ発生国に対する電話会談やメッセージ発出に欧米諸国以外は含まなかった差別扱いは十分に頷くことができる。

 では、「外務報道官談話」で済ませた場合は安倍晋三は電話会談もメッセージの発出を行わないことが慣例としていたにも関わらず、なおかつ局長級の談話の後に一国の首相がメッセージを発出するという順番が狂うことになるにも関わらず、その慣例を破ってまでしてアフガニスタン5月31日のテロに関しては安倍晋三はなぜメッセージを発出することになったのだろう。

 ほんの僅かだが、今まで差別扱いしていたことに対する是正となることから、差別から方向転換を図ったということであるはずだ。

 この方向転換のキッカケは何だったのだろう。昨日2017年6月2日午前11時28分エントリーの当ブログに「差別」と書いたばかりである。もしメッセージが午前11時28分以前の発出なら、安倍晋三自身か外務省の役人か誰かが電話会談やメッセージ発出が欧米諸国に偏向した差別となっていることに気づいて安倍晋三にご注進に及んで急いでメッセージを発出することになったのか、午前11時28分以降の発出なら、この記事の指摘に気づいた誰かが安倍晋三にご注進に及んで、差別隠しのために急いでメッセージを発出したということも考えられる。

 前者・後者いずれであったとしても、安倍晋三が欧米の一員であるフランスで発生したテロを「文明世界全体に対する攻撃」だと認識することはテロをつくり出す側を「文明世界」に反する野蛮な国と見做していることを意味して、そのような国々に欧米諸国以外の中東諸国等を置いている以上、どう差別隠しを謀ろうとも、表面的な隠蔽で終わるはずだ。

 安倍晋三の本心は変わらないということである。


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