安倍晋三の幼児教育無償化・高等教育無償化は掲げた条件内の無償化に非ず、選挙の票稼ぎの誇大公約・詐欺

2017-11-09 12:23:14 | 政治

 安倍晋三は2017年9月25日の「解散記者会見」で少子高齢化と北朝鮮の脅威を「国難」と位置づけて、少子高齢化対策として生産性革命、と人づくり革命を掲げた。

 生産性革命で少子高齢化による人手不足を補って生産の維持・向上を目指し、人づくり革命で生産労働に適合し得る能力の開発・育成を教育を通して行い、目指すということなのだろう。

 そして 人づくり革命の柱として教育の無償化を掲げた。

 安倍晋三「もう1つの最大の柱は人づくり革命です。子供たちには無限の可能性が眠っています。どんなに貧しい家庭に育っても、意欲さえあれば専修学校、大学に進学できる社会へと改革する。所得が低い家庭の子供たち、真に必要な子供たちに限って高等教育の無償化を必ず実現する決意です。授業料の減免措置の拡充と併せ、必要な生活費を全て賄えるよう、今月から始まった給付型奨学金の支給額を大幅に増やします。

     ・・・・・・・・・・

 幼児教育の無償化も一気に進めます。2020年度までに3~5歳まで、全ての子供たちの幼稚園や保育園の費用を無償化します。0~2歳児も、所得の低い世帯では全面的に無償化します」

 その財源として2019年10月に消費税率を8%から10%に引き上げた場合の2%の5兆円強の税収のうち5分の1の1兆円を充てることになっている社会保障の充実にそのまま回して、残り5分の4の約4兆円は国の借金の返済に充当する決まりとなっているが、借金の返済に半分の2兆円、残りの2兆円を充てるとしている。

 安倍晋三「子育て、介護。現役世代が直面するこの2つの大きな不安の解消に大胆に政策資源を投入することで、我が国の社会保障制度を全世代型へと大きく転換します。急速に少子高齢化が進む中、国民の皆様の支持を得て、今、実行しなければならない、そう決意しました。2兆円規模の新たな政策を実施することで、この大改革を成し遂げてまいります

 しかし、そのつけを未来の世代に回すようなことがあってはならない。人づくり革命を力強く進めていくためには、その安定財源として、再来年10月に予定される消費税率10%への引上げによる財源を活用しなければならないと、私は判断いたしました。2%の引上げにより5兆円強の税収となります。現在の予定では、この税収の5分の1だけを社会保障の充実に使い、残りの5分の4である4兆円余りは借金の返済に使うこととなっています。この考え方は、消費税を5%から10%へと引き上げる際の前提であり、国民の皆様にお約束していたことであります。

 この消費税の使い道を私は思い切って変えたい。子育て世代への投資と社会保障の安定化とにバランスよく充当し、あわせて財政再建も確実に実現する。そうした道を追求してまいります。増税分を借金の返済ばかりでなく、少子化対策などの歳出により多く回すことで、3年前の8%に引き上げたときのような景気への悪影響も軽減できます」

 要するにそれぞれに条件がつくが、0~2歳児以上の保育費用から高校・大学生とこれに準ずる学校の授業料の無償化、子育て、介護を担う現役世代の負担軽減の新たな政策に2兆円規模の財源を必要とするが、消費税率2%引上げ時の税収約5兆円のうちの5分の4の2兆円を国の借金の返済に回して、残りの約2兆円を上記人づくり革命に回すとした。

 安倍晋三はこのことを主たる公約の一つとして今回の衆議院選挙を戦い、特に教育の無償化が票を惹きつけることになったのだろう、選挙に圧勝することになった。

 改めて2020年度までに実現する無償化の対象を挙げてみる。

 ●所得の低い世帯の0~2歳児は全面的無償化。
 ●3~5歳までの全ての子供たちの幼稚園や保育園の費用を無償化。
 ●所得が低い家庭の子供たち、真に必要な子供たちに限った高校、大学、これに準ずる高等教育の無償化。

 安倍晋三の教育費無償化の大盤振舞いに一見見えるが、断っておかなければならない点が二つある。一つはアベノミクスで格差を拡大しておきながら、「所得の低い世帯」を教育費の救済対象とする矛盾である。矛盾でありながら、ここに恩着せがましさがないだろうか。

 もう一つは2017年9月12日付「日経電子版」によると、経済協力開発機構(OECD)調査の2014年加盟各国国内総生産(GDP)に占める小学校から大学までに相当する教育機関への公的支出の割合が日本は3.2%で、比較可能な34カ国中、最低であり、対幼児教育公的支出割合はOECD平均の82%を下回る46%という低い水準にあるという点である。

 日本は1968年に当時の西ドイツを抜いて米国に次ぐ世界第2位の経済大国に躍り出て、中国が2010年に日本に取って代わって世界第2位の経済大国を獲得するまでの42年間経済大国第2位の地位にありながら、そして現在第3位の経済大国に踏みとどまりながら、教育機関への公的支出貧国の地位に甘んじていた。

 そしてこのような貧国状況をつくり出し、放置してきたのは歴代自民党政権であって、2009年に政権を獲得した民主党政権が初めて公立・私立併せた高校授業料の無償化を打ち出し、2010年度に開始した点を考えると、自民党安倍政権の高等教育無償化政策は遅過ぎる感があるし、公的支出上位国のデンマークやノルウェー、アイスランドなどの国から見たら、2周遅れ、3周遅れとなっている。

 公的支出が少ないから、収入格差に連鎖して教育格差が起こる原因ともなっているはずだ。

 ところが、自民党教育再生実行本部が政府に対して全額貸与なのか、大部分貸与なのか分からないが、出世払いの貸与いう形を求めていることを2017年11月7日付「NHK NEWS WEB」記事が伝えている。   

 出世払いの貸与となったら、安倍晋三公約高等教育無償化は掲げた条件内の無償化に非ずの性格を取ることになる。

 自民党教育再生実行本部は大学などに在学中は国が授業料を給付するが、卒業後に一定の年収を超えた場合、所得に応じて国に納付する新制度の導入を検討しているという。

 納付年収は「250万円以上」や「300万円以上」など複数の案があるという。

 納付額は正規雇用の標準的な収入で約20年で支払いが完了できる程度。

 要するに「無償」という言葉の「無料」、「タダ」という意味に矛盾する“無償化”という体裁を取ることになって、「所得が低い家庭の子供たち、真に必要な子供たち」に対する高等教育の無償化というわけではない。このこと自体が既に詐欺である。

 無償化が無償化に非ずは高等教育の無償化だけではない。所得の低い世帯の0~2歳児の全面的無償化と3~5歳までの全ての子供たちの幼稚園や保育園の無償化から政府が認可外保育施設の一部は対象外とする制度設計を検討していると、2017年11月7日付の「時事ドットコム」記事が伝えている。      

 理由は財源確保の困難、保育士の配置基準などが緩い認可外施設を国が推奨しているとみられかねないとの懸念としている。

 しかし保育士の配置基準を緩めた認可外保育園を保育園に準じる施設として政府が認めているのは政府の保育の受け皿整備が追いつかないからだろう。

 安倍晋三は2015年12月14日、「内外情勢調査会全国懇談会」首相官邸)で次のようにスピーチしている。  

 安倍晋三「「『希望出生率1.8』の実現を目指し、待機児童ゼロを確実に実施する。そのために、2017年度末までに50万人分の保育の受け皿を用意します。さらに、『介護離職ゼロ』を目指し、2020年代初頭までに50万人分の介護施設を整備していきます」

 だが、2013年度から2015年度までの3年間で約31.4万人分の保育の受け皿を確保し、2017年度末までに2013年度からの5年間で約48.3万人分とする予定を立てていたの対して安倍晋三は「2017年度末までに50万人分の保育の受け皿」としていて、1.7万人分の余裕が出る計算になるが、「待機児童の解消」内閣府)によると、2016(平成28)年4月の保育所等の定員が263万4,510人、保育所等待機児童数については、2 万3,553人(対前年比386人増)となっている。   

 但し認可保育所への入所を希望しながら、入所できなかったために自治体が補助する認可外施設に止むを得ず入っものの、厚労省の定義で待機児童の対象外となる、いわゆる認可保育所への入所を希望する隠れ待機児童が厚労省2016年9月2日発表、2016年4月1日時点で6万7000人、合計で9万人超となって、2016年4月1日時点から2017年11月の時点にまで整備が進んでいたとしても、9万人-1.7万人=7.7万人、少なくとも7万人前後は追いつかない計算になる

 しかも待機児童数は年々増えている。当然、隠れ待機児童数もそれ相応に増えるはずだ。

 要するに待機児童に対して保育の受け皿整備が追いつかないイタチごっこの状況にある。だから、「第4次安倍内閣発足記者会見」首相官邸/2017年11月1日)で、「待ったなしの課題である待機児童解消に向け、32万人分の保育の受皿整備を進めていく」と追いつかない数字を追いかけて、改めて整備に必要な数字を挙げることになるのだろう。     
  
 かくかように政府の教育機関への公的支出が不足していることからの教育無償化の各提示であって、しかもしっかりと煮詰めないうちに適用対象条件に応じて全面無償化であるかのように選挙の公約として大々的に掲げて票を大量に稼いだ。

 これは公約詐欺に当たる。詐欺で票を大量に釣った点、誇大公約と言うことにもなる。

 安倍晋三のやりそうなことである。

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