野田首相リップサービスの「拉致、解決するならいつでも北朝鮮にいく」は富士山丸船長釈放方式で

2011-10-12 10:30:13 | Weblog

 野田佳彦首相が10月8日、拉致被害者家族15人と首相官邸で面会した。《拉致解決へ訪朝意欲 首相、被害者家族と面会 具体策は示さず》MSN産経/2011.10.8 22:55)

 野田首相「震災で家族と連絡がとれず、つらい思いをした人が私を含め日本中にいる。長い歳月そういう不安を持つご家族の思いを共有できる状況で、今まで以上に拉致問題の解決に全力を尽くす」

 〈家族からは北朝鮮に行って交渉するよう求める声が上がった。〉

 野田首相「私が行くことで拉致問題を含めた諸懸案が解決するならいつでも行く。拉致は時間との闘い」

 但し、記事題名にもあるように、〈交渉に持ち込むための具体策は示さなかった。〉という。

 飯塚繁雄氏(73)拉致家族会代表(田口八重子さん=拉致当時22歳=の兄)「意気込みは感じた。われわれは期待するしかなく、注視していきたい」

 野田首相に「意気込みは感じた」が、交渉に持ち込むための具体策構築の確約と構築早々に自ら北朝鮮に乗り込んでいくとする強い意思表明を示すまでの「意気込みは感じ」なかったと言うことか。

 HP《救う会:★☆救う会全国協議会ニュース》に野田首相の発言の概要が記載されている。箇条書きの記載だったが、発言形式に変えた。

 〈野田総理と家族会との面会〉(2011/10/08)

 総理の発言の概要は以下の通り。

 野田首相拉致問題は主権の侵害であるとともに重大な人権侵害だ。国が責任を持て解決しなければならないことが基本だ。どの内閣でだれが総理でも同じだ。

 わが国としての全力で取り組むとともに、国際社会に重大性を認識していただき理解と協力を求めることも必要だ。国連総会での演説では、通常は核とミサイルと並行して取り上げてきたが、拉致問題を特に取り上げた。オバマ大統領、李明博大統領、潘基文事務総長との会談などでも取り上げた。これからもあらゆる機会をとらえて理解と協力を求めていきたい。

 要は実効性のある協議をかの国とどう持つか、そのためにあらゆる手立てをとりたい。

 (家族会メンバーから)北朝鮮に行けと言われたが、行って解決できるならいつでも行く。まずは環境整備だ。

 (家族会メンバーから)話しがあった帰国者への更なる支援について検討を指示する。

 自分の子どもだったらと考えよと言われた。家族の高齢化について言われた。まさに時間との勝負であると認識している。緊迫感を持って内閣としてやっていく。

 (救出のための)青写真について問われたが、交渉ごとであり、ある程度ベールに包まなくてはならない。言えることと言えないことがあるが、全力を尽くす。

 (家族会・救う会の)決議にもあったが、国際社会への取り組みはありとあらゆることを行う。

 (制裁について)わが国として実効性ある協議をするためにあらゆる方策、実効性ある方策を政府一丸で実行に移したい。

 朝鮮学校の高校無償化の扱いについては、前の内閣で決めたが、文部科学省に厳正に審査するように指示した」・・・・・

 北朝鮮に率先して自ら乗り込まない理由に前以ての「環境整備」の必要性を挙げているが、拉致解決は国家責任であると言い、当然のこととして「どの内閣でだれが総理でも同じだ」としている以上、小泉内閣が2002年9月17日に訪朝、日本人拉致被害者5人の帰国を約束させる成果を上げ(同年10月15日、5人帰国)、このことを以って拉致問題の幕引きを謀ろうとしたが、国内世論が5人のみの帰国に激しく反発、全員帰国を求めたことから、小泉内閣は2002年9月26日に第1回「日朝国交正常化交渉に関する関係閣僚会議」を開催して「拉致問題を最優先課題としてその解決に全力を尽くす」ことを政府の基本方針とすることになった。

 それ以来、いわゆるのちに「拉致解決なくして国交正常化なし」と表現することになり、現在ではすっかりスローガン化してはいるが、その政府方針を歴代内閣が継続しているのだから、「環境整備」は2002年9月26日以降、2011年10月の現在に至るまで小泉内閣も含めて「どの内閣でだれが総理でも同じ」ように歴代内閣が取り組み、それ相応に固まってきてもいい訪朝の「環境」のはずだが、「まずは環境整備だ」と今以て整っていない、整うのはまだ先のことだと、これまでの取り組みが何ら成果を上げていないことを暴露している。

 要するに順次見てきているように北朝鮮側の「拉致問題は解決済み」の態度をクリアできるアイデアを築き得ていないということなのだろう。いわば訪朝の「環境整備」は北朝鮮側の「拉致問題は解決済み」の態度を日本側が如何にクリアできるかどうかにかかっている。

 クリアできていないために結果として解決に向かうことのない現状放棄の状態が続いていた。

 クリアできるかどうかが一番の問題となる「環境整備」と見た場合、クリアできていない以上、「北朝鮮に行けと言われたが、行って解決できるならいつでも行く」はほぼリップサービスに等しい。

 また、北朝鮮側の「拉致問題は解決済み」の障壁をクリアできていない以上、救出のための青写真について、「交渉ごとであり、ある程度ベールに包まなくてはならない。言えることと言えないことがある」と言っていることについても、殆んど意味を失う。言えるとか言えないとかの問題であるよりも、「ベールに包まなくてはならない」秘密事を秘密事のままに如何に救出に生かすかがより重要な問題となるだからだ。

 外交交渉で20年、30年先に初めて明らかにされる、いわゆる新事実と言われる取引情報がいくらでもあるということは外交交渉時にはベールに包んで言えないことの存在の証明以外の何ものでもなく、秘密事よりも交渉の成立を優先させていたことの証明でもあろう。

 勿論、秘密事が交渉成立のための常に正しい取り計らいとは限らない。不平等取引きや不正取引きであったりするために密約として意図的に隠す場合も存在する。

 交渉を成立させることを第一意義としなければならない以上、救出のための「青写真について問われたが、交渉ごとであり、ある程度ベールに包まなくてはならない。言えることと言えないことがある」は北朝鮮側の「拉致問題は解決済み」の障壁をクリアできるアイデアを見つけ得ず、訪朝の「環境整備」を整えることができていないために訪朝できないことを正当化する口実に過ぎないと見るべきだろう。

 北朝鮮側の「拉致問題は解決済み」の態度を取らざるを得ないのは拉致首謀者が北朝鮮の最高権力者である金正日本人だからだろう。

 このことはブログやHPに書いてきたが、一例を挙げると、2007年6月8日記載の当ブログ記事――《安倍首相の脱北者対応に見るお粗末な政治創造性 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》に次のように書いた。

 〈北朝鮮にとっては例え韓国向けと同様の経済援助方式であろうと日本からの戦争賠償と日本との経済関係の確立が北朝鮮経済建て直しに喉から手が出るほどに欲しい最重要な宝の山のはずだが、そのような宝の山を手に入れることよりも拉致問題は解決済みの無視を優先させている。

 普通の感覚なら、宝の山を手に入れることが拉致問題よりも優先事項のはずで、拉致解決に早々に取り掛かるはずだが、その逆で、宝の山を自ら遠くに追いやることとなっている拉致解決の引き延ばし、あるいは解決済みとして無視する態度はそれが宝の山に代えてもそうすべき国家的重要事項となっているからだろう。つまり両者を天秤にかけて、宝の山は秤から外せても、拉致問題は秤に乗っけたままにしておかなければならない状況にあるということを意味している。

 別の言葉で言い換えるなら、宝の山はキム・ジョンイル体制の強化につながる重要事項の一つでありながら、それを無視すると言うことは、拉致解決抜きをスケジュールに乗せて初めて体制強化の保証となるということだろう。拉致解決への取り組みはキム・ジョンイル体制維持・強化を相殺しかねない、あるいはそれ以上の障害物だということを裏返しに証明している。

 ここに拉致がキム・ジョンイルの直接指令による国家犯罪だと主張する根拠がある。〉――

 そして生存者を全員日本に帰国させた場合、その中に金正日が首謀者だと知っている者が存在するから、「拉致問題は解決済み」の障壁を設けなければならなかった。

 金正日自身は拉致は「特殊機関の一部の妄動主義者による犯行」だとしていたが、絶対的独裁国家に於ける独裁者たる最高権力者金正日と工作機関・諜報機関の類いとは独裁体制維持装置として一心同体の密接なつながりを持ち、独裁体制維持装置としての存在意義を担わされている以上、独裁者の意向に反する「妄動主義」は決して許されない否定要素であるはずである。

 いわば絶対的忠実を常にモットーとしていなければならない。

 それが忠実に反して30年、40年と金正日の知らないところで妄動主義者が横行していたということはあり得ない事実としなければならない。

 金正日を限りなく拉致首謀者に確定している記事が存在する。全文参考引用。 

 《拉致工作機関、金総書記が直接指揮 日本政府調査で判明》asahi.com/2009年11月2日3時2分)

 北朝鮮による日本人拉致事件を計画・実行した朝鮮労働党対外情報調査部(現35号室)が、金正日・朝鮮労働党書記(現在は総書記)から直接指揮を受ける形で活動していたことが、日本政府の関係当局の調べで明らかになった。金総書記からの指示を受ける際には「伝達式」が行われていた。日本政府内では、金総書記が日本人拉致を指示したか、少なくとも知りうる立場にあったとの見方が強まっている。
 金総書記は02年9月の日朝首脳会談で、当時の小泉純一郎首相に「特殊機関の一部が妄動主義、英雄主義に走ってこういうことを行ってきたと考えている」と述べて謝罪。責任者をすでに処罰したとも説明した。自身の関与を否定するこうした主張の根拠が揺らげば、拉致、核、ミサイル問題を包括的に解決して日朝国交正常化を目指す方針を掲げる鳩山内閣の取り組みは困難なものになりかねない。

 政府関係当局の調べでは、日本人が拉致された70年代から80年代初め、対外情報調査部は、金日成国家主席(故人)の後継者の地位を固めつつあった金正日総書記直属の工作機関と位置づけられていた。部長、副部長、課長、指導員、工作員という構成。副部長は3人おり、課は1課から7課まであった。課ごとに日本、韓国、中国などを国別に担当していたほか、工作員養成を担当する課もあった。

 金総書記からの命令を受ける際には、朝鮮労働党の本部に部長、副部長、課長が集められ、「伝達式」が開かれていた。命令は「親愛なる将軍様、金正日同志が次のように指摘されました」という言い回しで始まり、それに続く形で具体的な内容が文書や口頭で伝えられた。命令はその後、課長から指導員、指導員から工作員の順に必要事項が文書や口頭で伝えられた。命令は絶対で、背いた場合には職務更迭や処刑などの厳しい処分があったという。

 日本人拉致事件をめぐっては、すでに警察当局は金総書記に近い対外情報調査部の李完基(リ・ワンギ)・元部長と姜海竜(カン・ヘリョン)・元副部長が、地村保志さん、富貴恵さん夫妻、蓮池薫さん、祐木子さん夫妻の拉致を計画、指示したと判断している。政府関係者によると、福田政権時代に逮捕状を請求することも検討されたが、官邸側の意向で見送られたという。

 日韓外交筋によると、この幹部2人の関与を裏づける過程で、08年2月中旬に日本政府関係者が、78年に北朝鮮に拉致されてその後脱出した韓国の女優、崔銀姫(チェ・ウニ)さんに事情聴取した。崔さんは著書にこの幹部2人と金総書記が写った写真を掲載している。崔さんは事情聴取に対し、金正日総書記が70年代に金日成国家主席から政権運営を譲り受けていたと説明し、日本人拉致については金総書記の指示が「あったと思われる」と証言した。

 但し鳩山内閣自体の日本政府はこの報道を否定している。 
《「金総書記が拉致指揮」報道を否定=官房長官》時事ドットコム/2009/11/02-11:56)

 平野博文官房長官は2日午前の記者会見で、北朝鮮の金正日総書記が日本人拉致事件を実行した機関を指揮していたことを政府が確認したとの朝日新聞の報道について「この事実関係を政府としては把握していない」と否定した。

 日本政府としては誰の内閣であっても、拉致首謀者は金正日だと正式に認めることはできないだろう。拉致解決のすべての扉が閉ざされるばかりか、秘密を葬り去るために拉致生存者の命を抹殺する暴挙を誘導する危険性を犯すことになりかねない。

 野田首相が言っていた「交渉ごとであり、ある程度ベールに包まなくてはならない。言えることと言えないことがある」の秘密事項の内に“金正日拉致首謀者”も入っている可能性がある。
 
 金正日が拉致首謀者であるを前提とした北朝鮮側の「拉致問題は解決済み」の障害をクリアするためにはアメリカその他の国で行われている司法取引に倣い、倣いながら、司法取引の規定以上に免罪のみならず、金正日の犯行という事実自体を隠蔽する必要があり、その必要性を満たすために帰国した拉致被害者の内、秘密を知る者の口から事実が洩れないようにしなければならない。

 第18富士山丸事件は「Wikipedia」記事を参考にする。

 1983年11月、日本の冷凍貨物船「第十八富士山丸」は北朝鮮の港を出港後、密航者となっていた朝鮮人民軍兵士を発見、法律上、密航者は元の国に送り届ける義務に反して、海上保安庁の指示で北九州市門司で身柄を引き渡し、取調べることになったが、本人から亡命の申請があり、身柄の送還ができなくなった。

 約10日後、第18富士山丸が北朝鮮の港に入港すると、乗組員5人が抑留され、内船長と機関長が密航幇助及び継続的スパイ行為の容疑で拘留を受ける。

 約7年後の1990年、金丸信を中心とした日本国会議員による訪朝団の釈放交渉の結果、訪朝団と共に日本に帰国。釈放の条件は「日朝の友好を乱さぬように」とする政治的事由から朝鮮民主主義人民共和国に於ける体験については公言せず沈黙を守ることであり、そう宣誓させられたという。

 だが、2人は金丸信が失脚後、沈黙を破って、拷問に近い取調べを受けたこと、証拠を作っておくためにだろう、罪を認めれば日本に帰国させるというウソをまともに受け止めて罪を認めるとする調書にサインし、投獄されることになったことなどをマスコミに対して話すこととなった。

 もし2人が一切口を噤んでいたなら、第18富士山丸船長釈放方式が生きるのだが、先ず最初に2名が釈放の交換条件とされた沈黙を破った前例を如何にクリアするかにかかってくる。
 
 これをクリアして、「拉致問題は解決済み」の障害のクリアにつなげなければならない。

 もし拉致被害者釈放を最優先させるなら、金正日が拉致首謀者であることは我々は知っている、証拠も挙がっているという態度を阿吽の呼吸で相手に知らしめた上で、全員釈放が実現できた場合、日本政府は北朝鮮に対して誰が首謀者であるか真相解明を求めないし、当然、処罰も求めない、日本政府自身も帰国者に取調べをして拉致の実態を明らかにすることはしない、帰国者自身にも生涯に亘って沈黙を守らせる、交換条件としての日朝国交正常化後の日本からの戦争賠償と経済援助が北朝鮮に如何にメリットとなるかということと、北朝鮮の経済の崩壊が国の崩壊に向かわない保証はなく、その場合、金正恩への権力の父子継承もうまくいかないだろうし、経済的立ち直りが権力の継承を保証する唯一の手立てであり、そのためにも日本の戦争賠償と経済援助は欠かせないはずだと説得する。

 他にいい方法があるだろうか。

 尤もこの方法でも、ミサイル問題をどう扱うか、クリアしなければならない。日本だけの問題でないから、なお難しい対応が求められることになる。

コメント (1)
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