昨日(07年10月29日)の衆院テロ特別対策委守屋武昌証人喚問の冒頭部分をNHK中継から。委員長深谷隆司自民党衆議員。
先ずは誰が国会で証人喚問を受けてもいいように(身のまわりにはそのような大層な人物はタダの一人としていないが)、その備えに委員長による証人への注意事項から。
深谷委員長「証人に証人を求める前に証人に申し上げておきます。昭和22年法律第22号議員に於ける証人の宣誓及び証言等に関する法律によって、証人に証言を求める場合にはその前に宣誓をさせなけれならないことになっております。宣誓方が証言を拒むことのできるのは先ず証人、証人配偶者、三親等内の血族、もしくは二親等内の姻族、またはこれらの親族関係がある者、および証人の後継人、後見監督人、または補佐人とする者が刑事訴追を受け、または有罪判決と受ける恐れのあるときであります。証人が宣誓または証言を拒むときはその事由を示さなければならないことになっております。証人が正当な理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは1年以下の禁固または10万円以下の罰金に処せられ、また宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは3月以上10年以下の懲役に処せられることになっております。以上のことをご承知置きいただきたいと思います」
次に宣誓書の読み上げ。
深谷委員長「では守屋クン、宣誓書を朗読してください」
守屋クン「宣誓書、良心に従って真実を述べ、何事も隠さず、また何事も付け加えないことを誓います。平成19年10月29日守屋武昌」
「良心に従って述べ」る資格ある者は良心を持っている者に限るのはごく当然のことなのだから、精神分析医とかの多くの識者に先ず良心を持っているかどうか判定させ、持っていると確認できた場合に限って宣誓を行わせ、良心を持っていないと判定されたなら、宣誓なしで証言台に立たせるべきであろう。良心に従って真実を述べないと最初から分かっていて手間が省けると思うが。
深谷「宣誓書に署名・捺印してください」
次に深谷委員長による総括質問と守屋証人の答弁。質問によって証人喚問を受けるに至ったかの経緯が明らかとなり、答弁の進行に応じてそれぞれの問題に証人がどう対応しようと策を練っていたか、そのシナリオを予め用意していたことが明らかとなる。判明している事実に関して罰則問題でより差し障りの少ない事柄――いわばゴルフ接待や飲食接待に関しては可能な範囲で明確に答え、便宜供与や口利き、記録改竄といった罰則がより重くなるか、あるいは自身の名誉や評判をより著しく傷つけることとなる事案に関しては否定する。それ以降の各党の議員の質問はそのような姿勢を崩せるかどうかにかかっているが、部分的に新たな疑惑を浮き立たせることはできはしたが、今日の『朝日』朝刊でも伝えているように、「装備品調達での便宜一切ない」、CXエンジンに関しては「随意契約で、との発言していない」と喚問時間内に証人が予定していたガードを崩せたとは言い難い。
深谷「それではこれより証人に対して証言を求めます。まず委員長より委員会を代表いたしまして、総括的にお尋ねをして、その後(NHKの解説のアナウンサーの声とダブって聞き取り不能)・・・・・。
それでは私からお尋ねいたします。現在当委員会では日本の国際貢献という最重大な、重要な審議を行っている最中でございます。日本の国益に関わる最も大事な審議の際にこのような喚問で時間を浪費したくない、というのが委員長の正直な気持であります。あなたの過去の行動を過去の行動を問うために、こうして時間を割かなければならないということに対して、あなたはどのような責任を感じておられるのか、先ず伺いたいと思います――」
「委員長より委員会を代表」してと言いながら、「このような喚問で時間を浪費したくない」と委員長個人の感情を述べる矛盾を平気で犯すことができるのは日本人だからだろうか。ゴマカシの上に日本の政治・政策が成り立っているとしたら、それを無視して国際貢献が先だとは言えない。逆説するなら、「国際貢献」や「国民のため」を名目としたなら、どのようなゴマカシの政治・政策も許されることになる。試合に勝ちさえすれば、亀田式のボクシングも許されることになる。
深谷「その前にもう一つ、あなたは守屋武昌クンですか?」
日本的儀式の始まり。証人喚問の中継を見るたびに、この儀式はどうにかならないと思っているが、個人的感情に過ぎないのだろうか。
守屋「委員長」と挙手。
深谷「どうぞ」
守屋「守屋武昌でございます」
深谷「生年月日、住所、職業をお述べください」
守屋(挙手してから答える)「えー、昭和19年9月23日生まれでございます。住所は新宿区・・・・・でございます。えー、誕生日は昭和19年9月23日でございます」と言い着席。
生年月日と誕生日は違うと思ったのだろうか。
深谷「職業は?」
守屋「無職でございます」
深谷「引き続いてただ今私が申し上げた、このような時間を浪費することになった結果になったことについて、あなたの責任をどういうふうに感じておられるか、お伺いしたと思います」
悪印象を与えないよう、しおらしさを装った答弁に決まっているのに、聞くバカ。
守屋、挙手。深谷「守屋証人」
守屋「ええ、私の不祥事に関しましては、ええ、国民のみなさまと私がおりました防衛省の職員に対して大変申し訳なく思っております。それから、テロ対策特措法という大変重要な法律を継続するか否かという審議を進める上でですね、私のこの不祥事問題が大きな障害となっておりますことを、防衛省の事務次官のポストにあったものとして、痛切に責任を感じております。この委員会で私の接待疑惑に対しまして誠実にお答えしましてですね、エー、ことで委員会の審理が円滑に進むよう、願うばかりでございます」
政治家・官僚の「国民のみなさま」言葉が如何に当てにならないか前々から言っていることだが、「国民のみなさま」をウソ偽りない心底からの言葉とさせるためには「国民のみなさま」と同様に政治方便となっている政治家・官僚の「国民のために」を彼らの言葉に頼るのではなく、国民自身が闘い取るべき利益とすることだろう。闘い取ったとき、政治家・官僚は「国民のために」と同様に「国民のみなさま」を口先だけの言葉とすることができなくなる。
守屋武昌は「良心に従って」と宣誓したとおりに、良心に従って正直にゴルフ・飲食の「接待疑惑」に関してのみ「誠実にお答えしましてですね」と約束したとおりに「良心に従って」「誠実に」果たすことになる。可能な限りという限定つきではあるが。
ゴルフ接待問題
深谷「防衛省と巨額取引のある商社・山田洋行の元専務から、あなたは5年で実に100数十回というゴルフの接待を受けた、あるいは飲食の接待を受けたと言われてます。過日の防衛省の事情聴取であなたは、そのような記憶があるとおっしゃったようでありますけれども、そのような記憶があるといった程度の、回数でないと思うんですね。一体、5年間で何回ぐらいゴルフを行ったのか。飲食の接待は何回か、その場所、支払い方法はどうなっているのか、明確にお答えいただきたいと思います。
守屋、挙手。
深谷「守屋証人」
守屋「ええ、ゴルフにつきましては週末の土曜日曜に行くことが多かったわけでございまして、えー、双方の都合のいい日ということでありますと、多い月で月4回、双方の都合がつかないときは月1回、ということもございました。それで、まあ、喧嘩して半年ぐらいやらなかったこともございましてですね、そういうことで、トータルいたしますとですね、やはり、年20回以上、30回というようなところでございますけれども、5年間ということに限ってみれば、私は100回は超えていたのではないかと思っているところでございます」
「5年間ということに限ってみれば」、非常に記憶がいい。各質問者はここでそのことを押さえておかなければならない。「5年間」以内のことで記憶にない、あるいは記憶が曖昧だと答弁したなら、ゴルフでは覚えている記憶の賞味期間がこの場合は通用しないのはなぜなのか追及すべきだろう。
「双方の都合がつかないときは月1回、ということもございました。それで、まあ、喧嘩して半年ぐらいやらなかったこともございましてですね」という答弁から窺うことのできる事実はどんなものだろう。
守屋側は防衛省の天皇と言われていたことが証明するように防衛省の権力者として取引先業者に対して「喧嘩」ができる立場に位置しているが、山田洋行側はゴルフに関してだけではなく、如何なる喧嘩も商取引に響く危険性を考慮すると、「喧嘩」できない、じっと我慢して従う立場に立たされていたはずである。元専務が都合がつかなければ、いくらでも代理人を立てて、接待要求に応じることができる。相手が夫人同伴でなければ、美人の若い女性ゴルフ経験者を代理人に仕立てれば、守屋にしても鼻の下を伸ばして喜んだことだろう。常識的には先ず考えれらない「双方の都合がつかないときは月1回」であり、「喧嘩して半年ぐらいやらなかった」である。追及価値のある発言であろう。
深谷「回数、5年間で100何十回、と言うんですか。もう一回その点お答えください」
守屋「あの、100何十回とか、あの、かということでございますけれども、まあ、具体的には何回行ったかってことにつきましては、あのー、まあ5年間に亘ることでございますんで、正確に、あの、その数を私としては申し上げることはできないのは残念でございますけれども、100回を越えていたと、そういうふうに考えております」
深谷「半分は夫婦で一緒に行かれたということですが、本当しょうか?」
守屋「まあ、あのー、記憶が曖昧、はっきりしませんけれども、まあ夫婦で行くことが、宮崎さんとやる場合は多かったわけでございますが、半分以上は夫婦で行っていたと思っております」
「記憶が曖昧」と言いつつ、「半分以上は夫婦で行っていた」としっかりした記憶を示している。「5年間ということに限ってみれば」、記憶がしっかりしていることを証明している。また「夫婦で行くことが、宮崎さんとやる場合は多かった」と言うことは、単独で行った場合は必ずしも相手が元専務とは限らないと言うことで、女性の当て馬もいた可能性が生じる。ボクシングの亀田家の対戦相手ではないが、プレーにわざと負けて守屋に花を持たせる相手だったなら、当て馬という表現から女性の「かませ犬」と表現変更も可能となる。
深谷「そのときに佐浦丈政、松本明子といったような、本名を使わないで偽名を使ったというふうに言われておりますが、それは事実でしょうか」
守屋「事実でございます」
深谷「偽名を使ったということは法律に反するとか、あるいは防衛省の倫理規定法に反するとか、そういう認識があったと受け止めていいんでしょうか、守屋証人」
守屋「これはあの、私が官房長になったときにですね、あるとき、宮崎さんの方からタグを、タグって言うのはゴルフのバッグにつける名前でございますが、渡されまして、これからご夫婦、この名前でやっていただきませんかと、いうことで、えー、始めたものでございまして、私の方から、そういう名前でやったというわけではございません。タダ、あの、まあ、利益関係者とゴルフをやるっていうのは、あの、そういうタグをつけるとかつけないとかって以前の問題でございまして、私としましては、大変不適切な行為だったと、顧み返して不適切な行為だったと考えているところでございます」
ここには明らかにウソがある。偽名を使うには使うについての目的がある。なぜ偽名を使わなければならないのかとその目的に疑問を示さずに言われるままに従ったとしたら、ゴルフ接待を行うことも受けることも不正行為であるという事実を認識していて、その不正を露見させない目的の名前の偽装だと承知しつつ阿吽の呼吸で従ったということだろう。
いわばその時点で既に「不適切な行為」だと認識していたわけで、当時を「顧み返して」気づいた事柄だとするのはウソ以外の何ものでもない。
備品調達での便宜
深谷「偽名を使ったということは事実だということですが。これだけの数の招待を受けるということ、言い換えれば、先方の思惑というのは誰が見ても明らかだろうと私共は思うんですね。そこであなたと山田洋行に対して装備品の調達なんかに関わる契約などで具体的に便宜を図ったことがあるかどうかお答えいただきたいと思います」
守屋「一切ございません」
接待は一種の投資である。投資は見返りとして短期的、中期的、長期的、いずれかの利益回収を目的としている。「便宜供与」が何も見込めなかったなら、誰が接待などの投資を行うだろうか。
CXエンジン随意契約問題
深谷「あなたが事務次官であった本年7月に次期輸送機CXのエンジン調達をめぐって部下は一般入札手続きについて説明したニュースがあるが、あなたは株式会社ミライズと随意契約をすればいいと発言したと言われていますが、それは事実でしょうか?」
守屋「そういう発言はいたしておりません」
深谷「防衛省幹部の天下り先として、山田洋行は積極的に対応していると聞いております。あなたは防衛省在任中、OBの天下りに関与したことはありますか?」
守屋「一度もありません」
備品調達疑惑に関してもCXエンジンに関してもゴルフ接待で使った口数から比べたら、何とも素っ気のない言葉数である。否定のシナリオに従った否定だからなのだろう。
口利き疑惑
深谷「オーナー側と対立した元専務は新しい防衛商社日本ミライズを創立いたしました。しかし資金繰りに困って、本年6月、大手企業系列会社の経営者への陳情に際して、何とそのとき現職次官のあなたが同席して口添えしたと言われておりますが、もしそうだとしたら、許しがたい行為だと思いますが、事実は如何でしょうか?」
守屋「その席に同席した事実はございません。そのような話し合いが行われたときに同席した事実はございません」
深谷「そのような話し合いが行われたときに同席したことはないという意味はどういう意味でしょうか?」
守屋「あのー、その方と会ったのは私の記憶では本年の6月中旬でございまして、夕方、あの、6時過ぎだったと思います。けれども、電話がありましてですね、いま、その人と飲んでいるから、飲みに来ないかというお誘いを受けました。その人は私もその店でよく知っている経済人でございまして、なかなか私どもに得られないお話をしていただくということで、大変ウマがあっていたわけでわけですが、暫く会っておりませんでしたので、その方とお話できると、いうことで、お会いしたことがございます。そのことは申し上げております。その席で、あの、私共は、その報道で言われているような融資の話をしたと言うことは一切ございません。そういうことです」
深谷委員長が突っ込んで聞くから、多くなった言葉数ということなのだろう。
給油量隠蔽疑惑
深谷「次に、海上自衛隊の補給艦が「ときわ」からアメリカ補給艦ベガスへの給油量を誤ったという件について伺いたいと思います。平成15年2月25日に行われ給油量について、海上幕僚監部防衛部運用課はパソコン入力の際、別の艦と取り違えて実際は80万ガロンでありますのに、20万ガロンと入力し、これを5月8日、石川統合幕僚会議議長がそのまま記者会見で述べたのであります。さらに、担当部局である防衛局防衛政策課がその会見内容によって、応答要領を作って、結果に於いて、担当大臣が誤った報告を行うという大きな問題を引き起こしてしまったんであります。当時の担当防衛局長が守屋さん、あなたであります。あなたの、オー、今振返ってですね、応答要領内容は当時、確認したのか、そしてあなたが了解して大臣に回したのか、その事実を聞かせてください」
ここからが重要。今の若い女性の話し言葉のように、それ程ひどくはないが、単語の語尾を伸ばす言い方となる。元々日本語は単語の語尾が母音で終わるから、それが余韻として残る場合があるが、最初の方の答弁と比べて聞いてはっきりと分かる程に語尾を伸ばして母音化させている。
守屋「当時イあのーオ、統幕長のオ記者会見でエアメリカのオ補給艦にイ20万トン給油したと、いうことをオ記者会見でエ統幕――、統合幕僚長がア報告した、という、ことをオ、私は、あの国会がア、あー、帰ってきてからア部下ア、あー、からその話をオ聞いていて、承知したと言う経緯がございます。でエ、えー、その件につきましてはア、あのー、そのように20万トン、いう、あのー、給油、いや、20万ガロン、が、給油された、と、いうことで、あのー、海幕の報告を、あの、そのように、あの、受け取って、あの、以後、業務に対応したと、いうことがございます。」
深谷「あのー、この記者会見の前の5月6日、2日前です。(深谷委員長が最初に「あのー」と言い出したとき、守屋クンの語尾跳ね上がりが伝染してしまったのかと咄嗟に心配したが、そうでなくて一安心)アメリカ空軍のキティホーク率いるモヒット司令官がアメリカのアメリカ補給艦を経由して間接的に80万ガロンの燃料を受けた、ということを述べて、報道されてるんですね。そのことを知らなかったんでしょうか?」
守屋「ええ、あのオ・・・・、統合幕僚長のオ記者会見がアその発言を受けてエ、あのオ、行われたというのは、承知しております」
深谷「そのときに即座に対応していればよかったのに、そのときはどのような対応だったのか、調査したり、何らかの対応を指示したとか、そういう事実はありますか?」
守屋、暫く考えてから立ち上がる)
深谷「守屋証人」
守屋「あのオ、私がア対応しましたのはアキティホークがア、あー、イラクでの作戦を終えてエ帰ってきたときにイ、あの、館長が、あー、インタビュうーでエ日本の給油はア大変、あの、オー、役に立ったと、いうことで、あたかもオそのイラク戦争にイ使われたというふうなア、あー趣旨に取られる発言をしたア、あー、ことがございました。それでエ、えー、私はア当時のオ日本大使館の、あの公使にですね、これはア、あのー、テロ対策特措法に基づくウ油の使用に疑惑を及ぼす可能性があるんで、そういうことをないっていうことをアメリカ政府として、きちっと言って欲しいと、いうことをオ担当公使に、あの、申し上げましてエ担当公使は早速動いてエアメリカ側としてエ、えー、日本から、貰ったア油をオ目的外使用することはないという、あの言葉をオ私共にイ送ってきたということを承知しております。で、その後オ、このオー、えー、80万ガロンと、いう数字がアあの出てきた、ということを承知しておりましてエ、そのときにイええ、その日本のオ補給艦から、あのオ・・・、アメリカ補給艦がに対してエ渡した、あの補給量はア20万ガロンだと、いうことをオ、お、統合幕僚議長がア会議でエ申し上げた、ということを承知しているわけであります」
15分の時間が経過して、総括質問は終了う。各議員の質問に移る。
文字で書くとたどたどしい言い方に見えるが、実際はもう少しスムーズな言い方で、語尾が伸びていること自体は全般部分にはない言い方である。
声紋の研究者に聞かせて鑑定させたなら、面白い結果が出てくるのではないだろうか。限りなく胡散臭い総括質問に対する守屋答弁であったが、防衛省で天皇の地位にまで上り詰めた大物である。一筋縄でいかないことを証明した証人喚問ではなかったろうか。バケの皮を剥ぐには真相を徹底的に突き止めようとするのかどうかの検察の態度如何にかかっている。政治家・官僚を庇う気持を少しでも持ったなら、あるいは何らかの圧力に屈するといったことがあったなら、適当なところで捜査打ち切りとなるに違いない。