8月19日
天気の良い朝だった。
朝食が終わりホテルを出ると観光バスが止まっていた。
一日乗り放題の切符を買い、市内観光をすることにした。
ダブルデッカーの二階に乗ると、風に吹かれて寒さを感じる。
次の停車場でショートパンツに半袖の男が乗って私の隣に座った。
寒い国から来た人は薄着をし、暖かい国からの人はその逆だ。
隣の男が「貴方は日本人ですか?」日本語で質問され驚いた。
「そうです」と答えると「私はオーストラリアから来ました。
筑波大学でスポーツ医学を2年間勉強しました。
言葉を忘れたので今日は日本語で話したい」珍しいことがあるものだ。
「では貴方は日本語で、私は英語で話します」何を話したか覚えていない。
グラスゴーの街は重厚な古い建築物と近代的な建築物が調和して建っていた。
市庁舎、グラスゴー大学、大聖堂、美術館&博物館
(Kelvingrove Art Gallery & Museum)
の前を通り、クイーン・ストリート駅前で降りた。
グラスゴー大学で竹鶴正孝・マッサンがここで学んでいたことを知らなかった。
ここの広場で大道芸人や音楽家達のグループがパフォーマンスを行っていた。
グラスゴーの市内は十分見物したが、次の目標地は決まっていなかった。
今夜もパブでビールを飲みながら、次に行く所を考えた。
ロンドンには未だ戻りたくない。
ホテルに帰ってガイドブックを調べるとアイルランドが意外に近い。
そうだ、ベルファーストだ! ベルファーストへ行こう。
8月20日
7時30分、朝食開始時間に食堂へ行った。
一番最初と思ったが、もう食事をしている人が何人もいた。
私はトーストにバターを付けて、ベーコン・エッグとサラダを食べた。
中年のアジア系の男が前の椅子に掛け「お早うございます。
久しぶりに日本語で話が出来る」とにこにこしながら話しかけた。
私はそんなに日本的だったのか?
しかし、英語でからかうほどの語学力はなかった。
「お早うございます」と答えると彼は
「私はアイスランドからアイルランドに渡り、昨日
エディンバラに行きました。
宿がないのでグラスゴーに来てこのホテルに泊まりました」
凄く行動力のある人だ。本当に日本語で話したかったのだろう。
「私は中学校の教師で、夏休みの海外旅行中です」
アイルランドのことを聞くと、
彼は「アイルランドは良い所ですよ、今日は日曜だから
案内所はお休みです。宿を探すのは大変ですよ」
彼の答えにアイルランド行きの計画はもろくも壊れ、
急遽計画の練り直しになった。
これまでの旅の栞
イギリス列車の旅 1 キングクロス駅にて
イギリス列車の旅 2 キングクロス駅から ハッダースフィールド へ
イギリス列車の旅 3 ヨークシャー州の古城を訪ねて
イギリス列車の旅 4 ハッダースフィールドさようなら グラスゴーへ