日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)




 前回ナイキの件で言い足りなかったことを補足しておきます。

 実は同じ広告叩きとはいえ、以前のトヨタなどと今回のナイキCMには、異なる点があります。

 そのひとつは前回紹介した、日本企業のように抗議されるとすぐ謝罪モードに入ることなく、堂々としていたナイキの姿勢です。

 もうひとつ。テレビCMを管理する国家広電総局が、審査をパスし法的に問題ない筈のナイキのCMを一転して違法認定しましたよね。広電総局自身が抗議の声が余りに高まったことにビビった、というのもあるでしょうが、そのパワーが不測の事態に発展することを恐れた指導部の政治的判断もあったでしょう。

 ちなみに書き忘れましたが、広電総局の正式名称は「国家広播電視総局」、「広播」はラジオ、「電視」はテレビのことで、そこで放送される番組やCMの事前審査なり様々なチェックを入れたりする部門です。で、その広電総局のナイキCM違法認定に関する記事を改めて取り出し、適当に全訳してみると下記のようになります。

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広電総局がテレビCM審査基準の見直しに着手
2004/12/09/16:43:10(新華網)
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【新華網北京12月9日電(邱紅傑記者)】広電総局は先ごろテレビCMの審査基準制定に着手した。好ましくない内容、好ましくないニュアンスを含む広告がテレビ画面に登場することを根絶するのが狙いだ。

同局の任謙・社会管理司副司長が記者に語ったところによると、同局が制定する審査基準は他の部門が広告内容の真実性に関する審査を行うのとは異なり、広告の創意工夫、イメージ、格調、また異なる年齢層の視聴者に与える心理的影響などについて、具体的かつ明確な基準を示すものとなる。

現在、海外の広告会社が制作したCMが大量に国内のテレビ画面に登場しているが、かなりの数のCMが東洋文化とは異質な西洋文化を明らかに反映した内容を含んでおり、そのことがしばしば誤解を招く原因となっている。一方国内で制作されたCMには内容・形式とも粗雑また卑俗なものが多く、本来色情とは無縁な内容をわざわざ卑猥なものに仕立て上げたものさえある。それらが常々視聴者の反感を招き、未成年者の健康的な精神を毒することにもなっている。

先ごろ広電総局はナイキ社のスポーツシューズCM「恐怖の部屋」を放送禁止とする通達を発したが、これは「ラジオ・テレビCM放送管理暫定規則」の第6条「ラジオ・テレビCMは国家の尊厳と利益を擁護し、祖国の伝統文化を尊重しなければならない」、及び第7条「民族の習慣、風俗を冒涜する内容を含んではならない」にナイキ社のCMが違反していると同局が判断したため。同局はその一方で各地のテレビ局に対し、広告内容の健全さに関する審査制度を設けて好ましくない内容のCMを根絶し、一切放送されないようにすることを求めている。任謙副司長によれば、同局はこのために特に「17号令」を公布して、ラジオ・テレビCMの内容に関する原則的な基準を各局に提示。新たに制定される審査基準は、それををさらに細かく規定し、運用しやすいものになるという。

同局は近くこの基準に関する草案を作成し、社会各界の意見を参考にした上で新基準を制定、来年の第一四半期から施行したいとしている。この新基準、内外の広告会社にとってはテレビでの放送に適したCM制作のガイドラインとなる一方、「恐怖の部屋」のような事件の再発を未然に防ぐことにもなる。なおこの新基準が実施されることにより、現在流れているCMのうち、未成年者の多くがテレビを観る時間帯に放送できなくなるものが出てくる見通しだ。

http://news.xinhuanet.com/newscenter/2004-12/09/content_2313780.htm

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 この記事の主題、明らかにナイキのCMを云々するところにはありませんね。どうもこの広電総局はナイキ事件を奇禍として、放送部門の広告内容統制に乗り出した観があります。

 ここで思い出して頂きたいのは前々回(※1)の前座に使った『人民日報』(2004/12/08)の署名論評です。

 ●強力なネット世論の創造を――ネット上には政治があり、闘争がある
 http://www.people.com.cn/GB/shizheng/1026/3039882.html

 改めて繰り返しますと、ここでいう「ネット世論」は、トヨタの広告や珠海の集団売春事件などで盛り上がった反日信者(糞青)などいわゆる愛国者(自称)によるものではありません。

 政府の意に沿った、政府を裏切ることのない新たな「ネット世論」で、このインターネットという新媒体を掌握しよう、というものです。ええ、紙媒体(新聞・雑誌)が当局の統制下にあるのと同じように。そのために政治活動を展開し、闘争を展開するんだそうです。

 他にも、同じような内容の署名論評が上海の『文匯報』(2004/11/12)に登場し、後に『人民日報』がそれを転載しています(標題の訳はこれまた適当です)。

 ●ネットを悪魔化することなく、そこに正しい世論の拠点を築こう
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2004-12/06/content_2298816.htm

 これらがネットにおける言論統制の強化を示唆していることは、誰の目にも明らかでしょう。
 重要なのは、宣戦布告書は私たち国外の反動勢力(笑)だけでなく、国内の糞青や自称愛国者たちにも発せられたに等しいということです。

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 民間の先走りを許さない、というのは「強権政治&準戦時態勢」を志向する胡錦涛政権の重要な柱のひとつです(私見ですが)。すでにそのために反日サイトの総本山「愛国者同盟網」をはじめとする一部の非商業系反日サイトが潰され、尖閣諸島奪回を目指す民間組織の活動にも掣肘が加えられています。

 そして放送媒体に関しては、広電総局が「新基準」なるもので統制を強めるということになります。これは広告に限定されたものですが、ドラマやバラエティーなどの番組そのものも同局の管轄内にありますから、締め上げようと思えばいつでも自在にやることができます。

 12月に入ったあたりでこうした統制色が揃って出始めたということには、注意すべきかも知れません。あるいは重要な外交舞台を一通りこなし終えた胡錦涛が、ようやく手が空いて本格的な内政に着手し始めたことを示していると言えるかも……ええ、素人の出鱈目な解釈ですからアテにはなりませんけど。

 でも最近になって、ネットや放送媒体だけでなく、「民間」的なものを制限したり、中共の言いなりにできる組織に取り込もうという動きが他にも出てきているのは事実です。……ああ、また思わせぶりなコメントだと言われてしまいますね(笑)。でもこれはメディアとは全く異なる分野の話なので、別の機会に譲ることを諒として頂ければ幸いです。


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 【※1】当ブログ「チベット独立を謳う素敵なネットゲーム」(2004/12/11)。



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 台湾の選挙、緑陣営(独立志向派)が負けてしまいましたね。
 正直、ひどくガッカリしまして、それが未だに尾を引いている感じです。

「台湾立法委員(国会議員)選挙は、台湾派が配票の失敗で高票落選が相次いだため、議席を伸ばすことができず、野党の親中国派に敗北を喫した。」
 と、メルマガ『台湾の声』は選挙速報で総括しています。
 http://www.emaga.com/info/3407.html

 また配票の読み違いですか。9月に行われた香港の立法会選挙(一部議席だけ直接選挙)も、民主派が同じ理由で伸び悩み、思うような結果を得られなかったんですよね。あれにもグッタリきましたが、香港なんて所詮は中共の植民地。中国語でいう「死路一條」(後は落ちていく一方)の夢も希望もない場所ですから、どうでもいいんです(※1)。

 台湾は違いますよね。夢や希望があって親日的であることは措くとして、何より日本の国益にも関わってくる大事な国ですから。無念ですねえ。

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 という訳でモチベーションがかなり低いんですけど、書きたいことはあるので本題に入ります。「中国の主権と領土保全に危害を及ぼす内容」を含んだゲームが発禁になった、という話が前回ですから、今回はやっぱりこれしかないでしょう。

 「国家の尊厳を傷つけ伝統文化を辱める内容」を含んだテレビCMの放映禁止。

 ええ、例のナイキのCMです。前にトヨタなどもやられていますが、「いかにも」な難癖をつけられて、謝罪するまで叩きに叩かれるというパターンに今回も相成りました。

 槍玉に上げられたCMは日本でも放映されているので、御覧になった方も多いかと思います。NBAの若手筆頭格であるレブロン・ジェームズ選手が、ブルース・リーの「死亡遊戯」を彷佛とさせる「恐怖の部屋」にて、バスケ勝負で難敵を退けつつ上の階へと進んでいく、あれです。

 細かい内容とかコンセプトといった詳細は公式HPでどうぞ。
 http://nike.jp/nikebiz/news/bsk_041029.html

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 で、何が問題かというと、強敵の中に中国人とおぼしき使い手や中国を象徴するドラゴンなど、要は中国風味のキャラクター(※2)が登場してきて、それがアメリカ人に次々と撃退させられるところが気に入らないようです。

 まあ、中国型「プロ市民」や自称愛国者の糞青(反日信者)に特有の妄想が発動したという訳ですが、そういう「専門職」の連中が騒ぐことで、

「言われてみれば……なるほど確かに不快だ。許せん」

 と思うようになる一般市民が出てきます。それら「素人」を次々と巻き込みつつ、狂躁の渦がどんどん拡大していくのです。ええ、同時に「悲壮」「屈辱」「憤激」「中華思想」といったお決まりの「支那属性」(だって当時は支那って呼ばれてたしぃ)を沸騰させながら、です。

 新華網の記事(下記URL)を参考に、例によって時系列であとづけてみます。
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2004-12/09/content_2313780.htm

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 ●11月下旬
 問題のCM「恐怖の部屋」が中央電視台のスポーツチャンネルや地方のテレビ局で流れ始める。

 ●11月26日
 『華裔晨報』が「中国人を侮辱するかの如き某CM 打ちのめされる『中国のイメージ』」と題した記事で、「恐怖の部屋」に妄想的解釈を施し(※3)、それを端緒に抗議の声が出始め、瞬く間にヒートアップ。

 ●11月30日
 ナイキが声明を発表。「恐怖の部屋」は、困難や恐怖に立ち向かう勇気を持って人生を歩んでほしい、というメッセージの発信がコンセプトであり、中国人や中国を侮辱するものでは全くなく、関連部門による様々な審査をパスした法的にも問題のない広告だと訴える。

 ●12月3日
 担当部門である国家広電総局が「CM『恐怖の部屋』を即刻放映禁止にすることに関する通知」を発令。同CMは中国国内で放映禁止となる。

 ●12月9日
 ナイキが「恐怖の部屋」について公式に謝罪。

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 ちなみにナイキの最初の声明(11月30日)から12月9日に謝罪声明を出すまでの間、「専門職」によるネット上での非難攻勢はお約束として、マスコミもこのテーマについて論じる記事が多数ありました。

「愛国者の言い分」
「テレビ局の見方」
「関連部門の見解」
「クリエイターの意見」

 と異なる立場からの声を紹介。中には「思い込みがすぎる」という冷静な意見もありましたが、トヨタなど過去の例をひきつつ、「作り手の配慮が足りない」「中国の事情を理解していない」と指摘する声がもちろん多数派で、

「だから外資系企業はもっと中国について学ぶ必要があるのだ」

 と、最後はやはり中華思想に行き着いてしまいます。それでもマスコミの報道が曲がりなりにも多角的な切り口であったのは、多分ナイキが日本の会社じゃないからに違いありません(笑)。

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 ナイキの対応も日本企業とは随分違ったものでした。抗議の声が多数寄せられてもすぐ謝罪モードに入ることなく、まず堂々とCMのコンセプトに関する主張を展開したあたりは見事なものでした。それゆえに、
「自説に固執して悔い改めないナイキ」
 などと叩くメディアもありましたが、自らもクリエイター(メーカー)であるナイキが、広告をひとつの作品として捉え、その内容に自信と思い入れを持っていたからこそ、非難の中でも胸を張っていられたのだと思います。

 それではなぜ最後に謝罪したのかといえば、国家広電総局が同CMに違法認定を下し、放映禁止にされたからです。
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2004-12/08/content_2310135.htm

 えーと、その根拠は「ラジオ・テレビCM放送管理暫定規則」の第6条、
「ラジオ・テレビCMは国家の尊厳と利益を擁護し、祖国の伝統文化を尊重しなければならない」
 さらに第7条、
「民族の習慣、風俗を冒涜する内容を含んではならない」
 に違反した、とのことです。

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 審査をパスしたからこそ放映できたCMに、コロリと態度を変えて違法認定する当局はカコワルイとしかいいようがありませんが、そうせざるを得ないほど、抗議の声が渦巻いていたということなのでしょう。

 現今の社会状況に照らせば、こうした不満が何らかの弾みで「反政府」ひいては「反中共」に転じる可能性もありますから、まずそれを未然に防がなければなりません。そういう政治的判断が、国家広電総局よりもずっとずっと高いところで下されたのではないかと思います。

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 それにしても、妄想と支那属性を混ぜ合わせつつ集団で虚構に酔ってしまうあの悪癖、まさに民度のなせる業(香港や台湾ではああならないでしょう)としか言い様がありませんが、何とかならないものでしょうか。赤い手帳を片手に馬鹿踊りに狂っていたころから進歩していないじゃないですか。

 そのくせ道具は大幅に進化を遂げていますから始末が悪い。情報にせよ狂躁にせよ、30余年前なら村単位からせいぜい県単位ぐらいでしか共有されなかったものが、いまならネットがありますから一瞬で全国的なムーブメントになるかも知れないのです。

 民度が向上しない一方で道具だけ進化することによる弊害は、例えば犯罪記事などを漁ればいくらでも出てきます(※4)。まあその話は別の機会にするとして、実は今回の事件で感じたことがもうひとつあるのです。前回の前座に出た署名論評と同じ流れの中での事象だと思うのですが、気になる動きです。まだ小ネタ(情報が少ない)なんですけど、機会をみて取り組みたいと思います。

 台湾の選挙結果を引きずりながら結局またダラダラと長く書いてしまい申し訳ありません。寝ます。


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 【※1】香港にはたくさん友人がいますけど、他国(例えば豪州、カナダ、台湾など)のパスポートを持っている奴らばかりですから。みんな親の代で香港へ密入境していて、香港に生まれ故郷としての強い愛着(というか香港を「中華」とするような妙なプライド)を持っているのは確かですが、機を見るに敏な連中なので、いざというときの逃げ足は速そうです。

 【※2】中国人にはそう見えるんだそうです。でも、それはあくまでも中共統治下に生まれ育った「素の中国人」であって、英国と日本からそれぞれ薫陶(植民地の肯定すべき部分)を受けた香港人と台湾人にとっては、全く気にならないようです。「何それ?」「そりゃ基地外だよ」というのが「素の中国人」の反応に対する私の友人たちの感想です。現地のBBSをのぞいてもそういう反応が主流になっています。

 【※3】http://news.xinhuanet.com/sports/2004-11/30/content_2276652.htm。記事を書いた記者は多分江沢民チルドレン(亡国の世代)でしょう。こういうネタをやりたくてウズウズしていたのに違いありません(笑)。

 【※4】犯罪ではありませんが、以前紹介した海南島の観光業者によるデモ(「働く時事通信」2004/12/09)も、ネットで檄を飛ばして参加を募ったら500人も集まったのです(まるで大規模突発OFF)。より顕著な例として西安の日本人留学生をめぐる騒動や珠海の集団売春に関する騒ぎがありますし、「反日」が絡まないうえ良性のベクトルとなったケースには、地方の高級幹部夫人が農婦をBMWで轢き殺した「宝馬事件」の真相究明活動などがあります。


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