日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)




 長い間更新が滞りまして申し訳ありませんでした。

 家人の入院、手術などにより身辺が急に慌ただしくなったのですが、それも退院とともに平時に復しつつあります。

 ここ10日ばかりブログ更新はもちろん資料収集をする時間すらありませんでしたが(※1)、その間、皆さんから優しいお言葉を頂き本当に有り難うございました。お蔭様で何もできない時期もブログへのモチベーションを喪失せずに乗り切ることができました。

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 しかし10日間も中国情報に接しないともう浦島太郎ですね。改めて感じましたが、反政府系を含む中文媒体のもたらす情報は、日本のマスコミが伝える関連報道に比べると質・量・分野のどれをとっても天と地の開きがあります。

 当然といえば当然なんですが、見逃しちゃいけないニュースを取りこぼされるのはやっぱり困ります。スポンサーとか対中配慮とか色々なシガラミがあるんでしょうけど。日本の場合、そこら辺は某巨大掲示板やメルマガ、それにHPやブログ等で補っていくしかないのでしょうか。

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 さて当ブログはラオスでの日中首脳会談(小泉首相vs温家宝)の手前で更新が滞ってしまっているので、そこら辺りからおさらいしていく必要があるのですが……あれは一体、何だったんでしょうか。

 とりあえず会談前後から現在までの中国国内メディアの関連記事を漁ってみました。それだけを読むと、この会談は靖国問題に終始していて、東シナ海資源紛争など本来旬であるべき話題はトンカツ定食に添えられるパセリぐらいにしか扱われていません。

 日本側が「だって胡錦涛に会ったばかりだし」と元々この会談に乗り気でなかったことは以前書いた通りです(※2)が、会談後、中国側にもそれに言及した記事があります。
 http://news.sina.com.cn/w/2004-12-03/14385114895.shtml

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 私は外交なんてまるでわからないのですが、今回の会談、素人目にみても、日本側に会談セッティングを説きまくった中国側にとって心地よいものではなかったように思います。

 APECの対胡錦涛会談では、袋小路状態の日中関係を打開するために、
「とにかく一発やってみよう」
 ぐらいの意義はあったと思います。でもラオス会談にはそういう意義が見出せない。だから日本側はヤル気がなかった訳ですが、中国側はなぜ執拗に会談を実現しようと頑張ったのでしょう?

 目的は温家宝が小泉首相に改めて「説教」するため?でも胡錦涛との会談で中国側の靖国問題に対する姿勢は明白になっているのですから、同じことを繰り返してもあまり意味がありませんし、かえって反発を招くことになるでしょうに。

 頑張って実現にこぎつけてはみたものの、何か藪蛇という結果に終わったような印象です。――あ、中国側にとって、です。

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 まず「靖国参拝」について、胡錦涛に引き続き温家宝とも小泉首相から「やめる」との言質をとれなかった。これは中共内部や現指導部による人民解放軍掌握の点でマイナスにこそなれプラスにはなりません。

 言質が取れなかったことによる国内世論に対する影響は……これはもう、どうでもいいように思えます。靖国だ反日だと騒ぐ以前に「身に迫る生活苦」+「党官僚の汚職」で暴動やらデモやら座り込みやらが起きている状況ですから。もはや反日では国民の怒りの鉾先を逸らすことはできないということです。

 鉾先を逸らすには、台湾と一戦交えるぐらいのインパクトがないとダメでしょう。現今の社会状況からいえば、もし来年小泉首相が靖国神社を参拝すれば、中国国民の怒りはむしろ参拝を阻めなかった現執行部に向くと思います。

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 報道によると会談において温家宝が色々言いまくったようですが、いくら口角泡を飛ばしても目的が果たされなければ無駄口ですからねえ。だいたいその「目的」なるものが何だったのか、私には全くわかりません。誰か詳しい方に解説して頂きたいところです。

 そもそも目的を達するどころか、逆に会談前に小泉首相から、
「中国もODAはそろそろ卒業だね」(11月28日)
 なんてジャブ飛ばされて、その対応に執行部内であたふたする始末。ええ、ここが藪蛇の部分です。中国側の反応を時系列でみていきましょう。

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 ●李肇星外相(11月27日、町村外相の11月26日の発言に対応したもの)
 「我々は自らの知恵と意志、そして自信を以て経済を発展させていける」
 http://news.xinhuanet.com/world/2004-11/30/content_2276107.htm

 ●温家宝に帯同した武大偉外務次官(11月29日?)
 「日本の援助はわが国の経済発展に大きな役割を果たした。中国政府と中国人民はとても感謝している。中国経済がかくも発展した現在、日本側にODA廃止を求める声が出ていることについては、我々は自然な成りゆきに任せたいと考えている」
 http://www.cdsb.com/GB/2004/11/30/283321.html

 ●温家宝首相その1(11月30日)
 「現在は返済が供与を相当上回っている。国家建設から言うと、円借款の重要性が減少しているのは事実だ」
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041203-00000105-yom-pol

 ●温家宝首相その2(11月30日)
 「理解しがたい。ODAを中止すれば両国関係は、はじける」(※3)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041204-00000113-yom-pol

 ●章啓月外交部報道官その1(11月30日)
 「円借款を主とする対中援助は中日経済協力の迅速な発展を促進した。この経済協力においては日本企業にもメリットをもたらしている。だからこれは一方的な施しではない。対中援助は中日関係におけるプラス要因であり、我々は今後も引き続き(対中援助が)中日関係を前向きに発展させる要素であることを望んでいる」
 http://news.xinhuanet.com/zhengfu/2004-12/01/content_2279902.htm

 ●章啓月外交部報道官その2(12月02日)
 「御存知のように、対中円借款は特殊な政治的及び歴史的背景を持った互いにメリットをもたらす資金協力です」
 http://news.xinhuanet.com/zhengfu/2004-12/03/content_2290115.htm

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 外相及び外務次官のコメントからは、中国指導部内でODA問題について完全な意思統一が図られていないことが感じられます。章啓月報道官「その1」も同様で、時間的には首脳会談より後に開かれた記者会見ですが、詳細までは煮詰めていなかったのでしょう、それゆえ当たり障りのない回答を記者に与えています。

 それが章啓月報道官の「その2」になってODAは戦争賠償的な意味合いも持つという認識になります。『産経新聞』(2004/12/04)によると、温家宝は首脳会談の席上、

「日本の中国に対する政府開発援助(ODA)は不要だとした上で『日中戦争で中国人が何人死んだか知っているか。しかも中国は日本に損害賠償請求はしていない。』と主張」

 ――したそうですから、章啓月報道官の「その2」はこれを反映したものなのでしょう。

 いえることは、中国側の姿勢がかなり変化したということです。

 日本側が初めて明確に「ODA」カードを切ってきたことに狼狽しつつ、意思統一を行って反撃したのが「章啓月その2」なのです。

 それまではどうだったかというと、

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 ●対中ODAは賠償金の代わりではないと国民を諭す
 http://news.sohu.com/20041008/n222367618.shtml
 http://news.sohu.com/20041008/n222373214.shtml
 「対日新思考」の馬立誠などを別にすれば、これは四中全会以前にはなかった論調。「中国の指導者は代々この援助に感謝してきた」との文言も。糞青の常套句である「経済援助は賠償金の代わりだから貰って当然。感謝する必要もなし」を真っ向から斬って捨てるものです。しかも同じ日に異なる媒体から1本ずつ。念が入っています。(※4)

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 というのが胡錦涛政権の当初のスタンスでしたから、「対中ODA」に対する解釈が変化したことがわかると思います。いや解釈の変更を迫られたというべきでしょうか?

 まあ、例によって「歴史問題」風味にまぶしただけなんですけど。

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 ただ、これによって新たな「反日」ないし「反小泉」キャンペーンが展開されるかといえばそうでもなく、中国政府としては「章啓月その2」を最後に、今回の首脳会談やODA問題、靖国問題を蒸し返してはいません。国内をまとめるので手一杯なようでもあります。

 逆に日本側の動きに注目すべきものがあります。故意か偶然かはともかく、『読売新聞』や『産経新聞』が、
「実は温家宝がこう言っていた」
「温家宝の発言、本当はこうだった」
 という内容の記事を政府筋の情報としてポロリポロリと流していますね。それによって今回の首脳会談が忘れられることなく、ニュースとしての寿命を引き延ばしている。

 それらの記事をひとつひとつ読んでいくと、「小泉サン大人しすぎじゃないの?」という感想もありますが、より強く印象づけられるのが「温家宝の無体ぶり」、つまり「中国の横暴」です。

 これ、対中ネガティブキャンペーンとして政府が故意にやっているんだったら、大したものだと思いませんか?

 最近の中国、対日外交がダメすぎだと思っていたのですが、どうも違うのかも知れませんね。2回の首脳会談を眺めて得た感想は、実はカードは日本の方が多く持っていて、これまでは日本がそれを使わないでいただけじゃないか、ということです。

 理由は色々挙げられるでしょうが、風向きが変わりつつあるのを実感しています。


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 【※1】資料がないと書くことができないのが当ブログの欠点です。いや書けば面白いと思われる中国に関する個人的体験なら私にだって多少はあるのですが、個人を特定された場合私はともかく、あちこちに累が及んだら困りますので。

 【※2】「『なんちゃって反日』?」(当ブログ2004/11/26)

 【※3】この「ODAを中止すれば両国関係は、はじける」と「今の話を忍耐をもって聞いた」は流行語になり得るポテンシャルを秘めていますね(笑)。中国語でどう言ったのか、私もぜひ使ってみたい(笑)。

 【※4】「『日本叩き』に当局が圧力、メディアに加え反日サイトにも(下)」(当ブログ2004/10/16)。



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