前々回(※1)にふれた四川省の国有企業における暴動、賃金支給遅延で怒った従業員数千人が警官隊と衝突した事件にふれたいと思います。賃金未払いは国有企業の従業員か「民工」(出稼ぎ労働者、多くは農民)かを問わず深刻な問題になっており、テーマとしてはすでに「旬」ではあります。が、これから年の瀬気分が出てくる時期(旧正月前)に本格的シーズンの到来となる訳ですから、ここでおさらいしておくのも悪くないのではないかと。
今回は国有企業のケースを拾ってみました。以下は香港紙『明報』の記事です。
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●国有企業の給与支給遅延に抗議、数千人が警官隊と衝突――四川省
2004/12/20/02:05(明報)
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四川省瀘州市でこのほど、国有化学製品工場の従業員数千人が道路を封鎖、また経営者を軟禁するという抗議行動が発生した。地元政府は1000名近い防暴警察(機動隊)を出動させ鎮圧に当たらせたが、従業員と防暴警察がにらみ合う中で衝突が発生。事件は昨日(19日)になっても終息せず、多数の逮捕者を出す騒ぎとなっている。抗議行動の発端は、工場の制度改革と経営陣の汚職によって、工員5000名余り・資産数十億元を擁していた国有企業が倒産寸前の状態に追い込まれ、従業員の給与が数カ月前から未払いになっているためとみられる。
事件が起きたのは瀘州市の火炬化工グループで、前身は軍需企業。抗議行動は先週水曜日(15日)の夜に始まり、工員多数が工場経営者を「工場倶楽部」に軟禁したものの、経営者は翌日(16日)午前4時ごろ、スキを見て脱出に成功。その後数日にわたって、3000名余りの工員が火炬グループ新工場区の正門前でデモを実施、未払い賃金の全額支給と経営陣の汚職行為についての真相究明を会社側に求めた。だが瀘州市当局がこれに対しすぐ手を打たなかったために、一部の工員が道路を封鎖するなどの行動に及び、数時間にわたって工場地区と市街地との交通を遮断した。事件が3日目に入ったところで、地元当局は秩序維持の名目で1000名近い防暴警察を出動させたが、にらみ合いから小競り合い、衝突へと事態が発展した。
http://hk.news.yahoo.com/041219/12/17riw.html
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四川省瀘州市って私は初めて耳にする地名ですが、運悪く香港紙に嗅ぎ付けられてしまいました(笑)。『明報』がどうやってこのニュースを手に入れたのかはわかりません。個人の情報提供なのか、地元の心ある網民(ネットユーザー)がネット上に情報を流したか、あるいは反体制地下組織みたいなものがあるのか……。
それよりもこの事件、この記事の段階では収まっていないんですよね。そこで続報となりますが、反政府系ラジオ局「自由亜洲電台」(RFA)の記事を反政府系ニュースサイト「大紀元」が転載しました。
http://www.epochtimes.com/gb/4/12/21/n754875.htm
記事を訳そうかと思ったのですが『明報』の報道と重複する部分が多く、わずかに、
「12月20日に至っても事件は解決をみていない」
という部分がニュースではあります。今日もまだ続いているのかも知れません。続報待ちです。
それにしても今年の四川省は事が多いですね。「天下はまず四川より乱れる」の古語通りの展開となるのでしょうか?期待しましょう。
次に南京市でのケースを。今度は「大紀元」です。
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南京で労働争議爆発 「民主の発揚を!カネ返せ!」
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【大紀元12月3日電】南京でまたまた労働争議だ。大地建設グループの従業員が12月2日午前、強制的なリストラ断行と会社側が黒社会(ヤクザ)を使って労働者側の指導者に重傷を負わせたことに対し、大規模な抗議活動に出た。工員たちは「制度改革を守れ、腐敗は撲滅しろ、民主を発揚しろ、俺たちのカネを返せ」などの要求を掲げ、投票によって企業の制度改革案を決議した。
12月2日午前、南京市虎踞路の大地建設グループの正門前で多数の従業員による大規模なデモが発生、付近の幹線道路はこのために大渋滞となった。
博訊網が12月3日報じたところによると、今回の大地建設グループ従業員による示威活動は、労働者側の指導者が自宅にいるところを黒社会の構成員に教われ、殴打されるなどして重傷を負ったことが引き金になっている。大地グループは南京市における大型国有企業のひとつ。数カ月前に35歳以上の工員を強制的に自宅待機(生活費として毎月200元を支給、毎年1000元の支給と引き換えに勤続年数の加算を停止)としたために従業員多数が反発、これまでにも何度かにわたって抗議行動を行ってきたが、南京市当局は事態収拾に動く気配がない。
これに対し、会社側は黒社会を使う手に出た。12月1日深夜、黒社会構成員が従業員側のリーダー宅に押し入り、殴打するなどして重傷を負わせたうえ、家族には手榴弾をちらつかせて「殺すぞ」などと脅したという。
抗議活動の現場には「制度改革を守れ、腐敗は撲滅しろ、民主を発揚しろ、俺たちのカネを返せ」と大書された横断幕が出現。工員たちは南京市政府が大地グループに巣食う汚職の虫を詳しく調査した上で退治するよう求め、また従業員代表大会を開いて企業制度改革案について討議し、投票によってこれを決議した。
http://www.epochtimes.com/gb/4/12/3/n735995.htm
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すみません、訳してみたら労働争議ではありますが、賃金未払いとはちょっと関係なさそうです。でもヤクザを使うとは凄いようでもあり、「ありがち」なようでもあり。だって土地の強制収用で役所がチンピラ動員するぐらいですから。
しかし南京は労働争議の頻発に加え、再開発の名の下に強制収用をやって官民衝突が起きたりとか、ここも事件が絶えないですね。
たぶん、歴史を改竄してのぼせ上がっているから天罰が下ったのでしょう。そういえば重慶も今年は色々ありました。嘘をついてはいけないというお手本ですね。
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閑話休題、以上は報道された例ですが、その背後に私たちの耳目に入ることのない、無数の労働争議なり賃金未払いに端を発した労働者たちの抗議行動が存在していることに思いを馳せて下さい。
今回紹介した事件はいずれも現在進行形のようなので、続報が入り次第お伝えします。
それにしても必ず汚職が出てきますね。
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【※1】当ブログ「李登輝氏訪日(3):『日本』じゃなくて『日中関係』ですか(笑)」2004/12/20。
【追記】前に知識人の言論統制(「ネトゲとナイキの次は知識人だそうです」2004/12/19)にふれた際、「次にやるとすれば、紙媒体への統制強化でしょう」と書きましたが、本当にそうなってしまったようです。
●中国宣伝部長会議、開明的な編集者にメス?
http://www.atchinese.com/2004/12/1221rep3.htm
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