日々の恐怖 12月6日 太陽は沈まない(3)
それと同時に、釣り人がバケツに入れていた魚を鳥に向かって投げた。
魚に群がる鳥。
釣り人は、方角を指差すと、
「 急げ!」
と叫んだ。
その方向に全力で駆け抜けた。
途中一度だけ振り返ると、太陽が近づいて来ていた。
釣り人や鳥、景色も蒸発していった。
そこで私は目を覚ました。
気付いたら病院のベッドの上だった。
近くにいた看護師さんに話しかけるとすぐに医者を呼んでくれた。
話によると私は本を読みながら突然倒れ、一週間ほど病院で寝ていたそうだ。
枕元にはクラスメイトが製作してくれた寄せ書きがあった。
間も無く両親が到着して、二人とも号泣してしまい、宥めるのが大変だった。
その後、精密検査等を受けつつ療養し、二週間ほどで退院した。
退院した後、気付いたことが3つある。
1つ目。
夢の世界で助けてくれた釣り人は私が小さい頃に亡くなった叔父だった。
叔父と言っても遠くに住んでおり二度三度しか会ったことが無いそうだ。
昔のアルバムに一緒に写っている写真があった。
それからは毎年必ず墓参りに向かい、墓前で近況報告を欠かさず行っている。
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