日々の恐怖 8月25日 オッサンの家(3)
そんな状況でもなんとか第二志望の高校に合格できて、中学最後の春休みになった。
たまたま自分一人が家にいた時に兄が帰ってきた。
「 探し物しにきただけだから。」
と言う兄に、半年ほど起こってる異音と泣き声について話してみた。
兄はまじめに聞いてくれて、
「 ちょっと待ってろ。」
と言って居間の棚から知らない鍵を持ってきた。
そして、
「 誰にも言うなよ。」
と言って、2階の入ってはいけない部屋の前に連れてきてくれた。
そして鍵を開けて入った。
俺はてっきり御札だらけとかの怖い部屋を想像してたんだが、いたって普通の和室だった。
ただ、襖の後ろに張られた1枚ずつの御札と、仏壇と異様なほどに供えられた人形を除いては。
人形の数は30~50ぐらいだったと思う。
兄に、
「 誰の仏壇?」
と聞くと、
「 俺の姉らしい。」
と答えた。
「 らしい?」
って聞くと、
「 生後数ヶ月で死んだ。」
と答えた。
それからの兄の話を要約すると、オッサンの最初の子供で早々に亡くなった事について最初の奥さん(兄の母)は、さんざん責められイジメられたらしい。
そして2年後に兄が生まれたのだが、娘が欲しかったオッサンは奥さんをさらにイジメたそうだ。
イジメの内容は端折るが、奥さんは次第に仏壇のある部屋に篭るようになった。
普通に家事はするが和室に篭る時間が増えていく奥さんを、オッサンはさらに暴力と言葉でさんざん嬲り、それはヒドイ状況だったそうだ。
兄は自分に構ってくれず修羅場を続ける2人を、他人事のように眺めてたそうだ。
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