大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 4月14日 井戸の底(2)

2021-04-14 10:38:41 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 4月14日 井戸の底(2)





 そこはおかしな空間で、半径1.5mほどの茶筒の底のようで、1mくらい水が溜まった中に私は立っています。
回りの壁は平らでつるつるしていて、しかも真珠のような色と光沢で内部から光っているのです。
 一番不思議なのは、真上10mくらいのところに手水鉢と思われる穴があり、水がゆらるらとゆらいで見えることです。
しかし私自身の顔は空気中にあり、下半身は水の中にいるのです。
 私が浸かっている水はまったく濁りがなく透明で、さして冷たくはありません。
底の方を見ていると、足元に20cmばかりのイモリがいるのに気づきました。
それだけではありません。
イモリは一匹の小さな青蛙を足の方から半分ほどくわえ込んでいます。
蛙はまだ生きていて、逃れようと手をばたつかせますがどうにもなりません。
その状態が長い時間続いているようです。
 私はふと、その蛙の姿が工場の資金繰りに行き詰まってもがいている自分のようで、かがんで手を伸ばし助けてやろうとしました、
その時、頭の中に声が聞こえたのです。

「 そうだ、その蛙はお前だ。
ただし今のお前ではなく、自死したのち罰を受けているお前の姿だ。」

私は、

” あっ・・・・!”

と思いました。
 次に、

” がつん、ばしゃっ!”

という衝撃があり、気がつくと手水鉢の縁に頭をぶつけていました。
 少し血が出ました。
血は神社の境内では不浄と思ったので、ハンカチで押さえながら急いで鳥居の外に出ました。
体は少しも濡れたりはしていません。
そしてその時には、あれほど頭の中を占めていた自殺という考えはすっかりなくなっていたのです。
 郷里から帰った私は奮闘し、工場の経営を立て直しました。
そして毎年その神社へのお参りはかかしていません。










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