大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 10月3日 ゴーヤの牛

2017-10-03 19:06:13 | B,日々の恐怖





  日々の恐怖 10月3日 ゴーヤの牛





 田舎の叔母が病で亡くなり、私は通夜と葬式の手伝いで4日ほど叔母宅に泊まり込んだ。
余命宣告があったので、家族は皆覚悟は出来ていて、しんみりとしながらも冷静だった。
 葬式の仕度もひと段落した3日目の昼、私は庭に面した小部屋に寝転がって休憩していた。
ウトウトする私の耳に、庭から叔父と従弟妹の声が聞こえてくる。
家庭菜園の話をしているようだ。

叔父「 コレがキュウリ、コレはトマト。」
従妹「 ゴーヤは?ここに植えようって言ったじゃない。」
従弟「 肥料どうする?また取り寄せる?」
叔父「 いや今年は、○○さんちで買うことにした。」
従弟「 ○○さんって、あの、ナスいっぱい植えてる○○さん?」
従妹「 窓にゴーヤのカーテンするの流行ってるのよ、緑のカーテン。」
叔父「 そうそう、去年でっけえナスくれた○○さん。」
従妹「 ここ西陽が強くていられないって、お父さん言ってたでしょ。」
従弟「 あ〜、あれデカかったな、洋ナスかと思った。」
従妹「 ゴーヤ植えれば電気代の節約にもなるって、○○さんも言ってたよ。」
叔父「 さて、今何時だ?1時に△△の叔母さんたちが来るんだ。」
従妹「 ゴーヤ植えようよ。○○○センターにまだ苗あるよ。」
従弟「 え、聞いてないよ!もう1時になるよ!」

もっと色々長々話してたが、まあ記憶にある限りではこんな感じだった。
 私はウトウトしながらも、従妹の言葉が妙にハブられてるのが気になっていた。
と、その時、玄関ドアの音がした。
次いでドタドタと足音がする。
ドスンと荷物を下ろす音が聞こえた。

「 ただいま〜、いないの?お父さーん?」

従妹の声だ。

“ あれ・・・・?”

足音が近寄ってきて言った。

「 あ、私ちゃん、寝てたの?お父さんたちは?」

私は完全に目が覚めて上体を起こしたが、何と言っていいか混乱していた。
 叔父が窓から顔を出し、

叔父「 おう、ここだ。今トマト見てた。」
従弟「 昼飯買ってきた?もうすぐ叔母さんたち来るって。」
従妹「 え?お昼食べて来るかなあ?」

従妹は、叔母と声が良く似ていることを思い出した。
 私は従妹が庭にいると思い込んでいた。
昼食の席で、ゴーヤは植えないのかと叔父に話を振ってみた。

叔父「 あっ!そうだゴーヤ忘れてた!お母さんが植えたがってたな、しまったなあ!」
私「 ○ナントカセンターってとこに、まだ苗あるって。」
叔父「 ○○○センター?ああ、あそこならまだあるかもな、行ってみよう。
良く知ってるなあ、私ちゃん、誰に聞いたの?」

 ○○○センターは叔父宅からはちょっと離れた所にある大規模な苗専門園芸店だそうで、地元じゃない私がそんな情報を持ってるのが意外だったようだ。
従妹も不思議そうに私を見ていた。
その年の新盆、祭壇にはキュウリの馬と太ったゴーヤの牛がいた。











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