日々の恐怖 7月24日 音楽堂
建築系の友人から聞いた話です。。
もう20年くらい前の秋の出来事です。
横浜のあるお嬢様大学の音楽堂の改修工事の時、現場で仲良くなった監督と職人5人でいつもツルんでました。
音楽堂は2階建で、1Fはホール、2Fはグランドピアノが置いてある練習場です。
ある日、監督が2Fで測量するってんで、皆でゾロゾロついて行きました。
まあ、測量は一人でやれるんで、監督以外は後ろでくっちゃべってました。
測量を始めて10分くらいして、監督が、
「 あ、横切らないで・・・・。」
とか
「 そこに立たないで・・・・。」
とか言い始めました。
みんなは、
「 なんのこっちゃ?」
とポカンとしています。
そのうち、
「 あ~、もう・・・!」
と測量器から目を離してこちらを向いて、
「 邪魔しないでよ~。」
と、ご機嫌斜めになってしまいました。
僕ら「 みんな後ろにいたよ。」
監督「 嘘だぁ、何度も誰か横切ったよ。」
僕ら「 疲れてんだよ、毎日残業だもん。」
なんて会話をしてたら、学校に常駐してる警備員さんがやってきて開口一番、
「 困りますよ、監督さん!」
とお怒りモードです。
監督「 何かありました?」
警備「 夜間は職人さんに、やたら校内を歩かないように言ってあるじゃないですか!」
監督「 は、はぁ・・・・。」
警備「 噴水の方からこちらに白い服を着た職人みたいな人が歩いていたんで、追いかけてきたんですよ。」
監督「 は、はぁ・・・・。」
警備「 とにかく、頼みますよ!」
と、まくし立ててお帰りになりました。
学校の中を簡単に説明すると、敷地は長方形で、校門、噴水、音楽堂、校舎、こんな感じに並んでました。
時間は21時です。
しっかりしたゼネコンだから、変な作業員はいないし、噴水の方には行かないようにみんな注意してたし、残業届け出してたのは音楽堂にいる5人だけでした。
白い作業着なんて誰も着てません。
これはマズいなと感じ始め、誰ともなく帰ろうよと道具を片付けて、2Fから1Fへの階段の踊り場まで降りたとき、
“ ポロン・・・・。”
と、ピアノの音が誰の耳にも届く大きさで聞こえました。
因みにピアノの蓋には鍵がかかってます。
全員ビクッとしたのは言うまでもなし。
「 聞こえた?」
「 うん・・・。」
「 白い作業着?」
「 うん・・・。」
「 や・・、止めよう・・。」
「 後ろ見ちゃダメだよ。」
駐車場まで小走り、みな無言で車に乗り込み、逃げるように帰りました。
その次の日からは残業は避け、定時で上がるようにして、現場はほどなく完了しました。
あれは、今でも思い出す奇妙な出来事でした。
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