人生旅的途上Sentimental@Journey

Gonna make a Sentimental Journey,
To renew old memories.

Kopi Luwak

2021-01-17 | essay

 映画『かもめ食堂』、である。ところはフィンランドの首都ヘルシンキ、かもめ食堂という日本食の店を営む女性が主人公。その彼女、サチエが挽きたてのコーヒー豆をドリッパーに移すと、そこに人さし指を置いて「コピ・ルアク」と唱えてから湯をそそぐ。いまに忘れることのできないシーンであった。

 この「コピ・ルアク」という呪文のようなことば、映画にはコーヒーを美味しくするためのまじないとして登場するのだが、ここでは意味不明、いっさいの説明はない。

 コピ・ルアックとは、実はインドネシア語でKopiはコーヒーのこと、Luwakはジャコウネコ科の動物の現地での呼び名である。そしてこれがインドネシアが生産するコーヒーの銘柄 Kopi Luwakでもある。とてもレアで、それゆえ価格も超高い、

 1995年、コピ・ルアクは「ジャコウネコの排泄物から集めた世界一高価なコーヒー」としてイグノーベル賞を授与されている。なぜこのようなコーヒーが生まれたのか。時代はインドネシアがオランダの植民地だった17世紀末にまで遡る。

 1699年にオランダ人によってジャワ島にコーヒーの苗木が持ち込まれ、インドネシアではコーヒーのプランテーションが盛んになる。しかし、農園主たちは、重要な輸出品としてすべてを収奪。原住民には働かせるだけでコーヒーを飲むことを許さなかった。やがて農民たちは、コーヒー農園周辺の森に棲む野生のルアクのフンの中にコーヒー豆が残っているのを見つけた。ルアクはコーヒー園に侵入、赤く熟したコーヒーの実だけを好んで食べていたのである。果肉は消化されても、コーヒー豆になる種子の部分は消化されずに体外に排出される。これをひろい集めて洗浄、乾燥して飲用したのが始まりだった。

 のちに農園主のオランダ人たちが知るところとなり、これまでのコーヒーとはまったく違った香りをもっていることに驚く。ジャコウネコの腸内の消化酵素や腸内細菌による発酵作用によって、独特な香りと味わいを醸していたのである。こうして限られた量しか生産されない「コピ・ルアク」が貴重な商品として認識されるようになり、いまでは産地価格で500グラムにつき300から500 USドルと超高価。いまでは、ジャコウネコを飼育して生産しており、インドネシア以外にもフィリピンや南インドにも産地は拡大。このため、流通量は増え、世界中で飲める。わが国でも「ルアック・コーヒー」の名で知る人ぞ知る存在。独特の香りをもつ逸品とされる。ホテルのラウンジなどでは1杯2,000円、高いもので5,000円以上することもあるようなコーヒーだ。価格の差は、飼育のジャコウネコと野生のそれの差だという。この場合、野生のジャコウネコを介したものの方が味わいもよく、最高級品とされているのである。

 

 

【蛇足】ほかにもまだあった、ブラック・アイボリー(Black Ivory)という名のコーヒーである。こちらは35g(2杯分)で13,900円。それにしても、なぜこんなに高いのか、豆を収穫してからある手間を加えているからだという。その名の「アイボリー」からでも連想できる、象である。コーヒー豆を餌としてバナナなどに混ぜて象に与える。そして象が落としたモノから未消化のコーヒー豆を採取する。こうすればジャコウネコのような小型動物より、この地球上(地上)で最大の動物である象を使えば、この種のコーヒーが大量に生産できる。そう考えつく実業家がいてもおかしくないということか。

 


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