人生旅的途上Sentimental@Journey

Gonna make a Sentimental Journey,
To renew old memories.

ヘッドライト

2022-02-22 | essay

 映画『ヘッドライト』である。1955年の作品だというからリアルタイムに見たころの印象は薄れ、最近、DVDで見て改めて思い起している。

 初老のトラック運転手と若い女の恋。ジャン・ギャバン51歳、フランソワーズ・アルヌール24歳。ジャン・ギャバンは、デカ鼻と真一文字にむすんだ唇が男の哀愁を滲ませる。無口でほとんど無表情ゆえにちょっとした目の動きが感情をあらわす。アルヌールは小粋で可憐だが健気なヒロイン。


 これまでは、この映画のタイトルは単純に『ヘッドライト』だとばかり思っていた。ただ、headlightは英語だ、フランス映画というのになぜ「ヘッドライト」か。おかしいなとは思っていた。あらためてクレジットを見なおせば、原題はDes Gens Sans Importanceとあり、これは「重要でない人びと」を意味するらしい。こういう、市井の、ごく普通の人たちを描いた映画が作られなくなってどのくらい経つだろう。わが国でいえば、例えば小津安二郎の世界だ。原節子主演の『晩春』1949年、『麦秋』51年、『東京物語』55年など。日本人の多くがまだ畳の上に座り、ひとつの食卓を囲んでいた、そのような時代を背景に親子関係や家族の崩壊をテーマにした作品が多かった。

 時代が変わったといえばそれまでだが、やはりテレビというものが関係しているのだろう。そのテレビのドラマも、一部の作品を除いては、あまりに現実とかけ離れたものが多く、ほとんど見なくなって久しい。昔は良かったなどとはいいたくないが、事実、いいものが沢山あった。「ヘッドライト」も、この時代、まだモノクロで撮られている。しかし、考えてみると、モノクロのほうがときとしてストーリーに集中できるし、映像も美しく感じる。何事も、進歩や便利さばかりに重点をおいていると、大事なものを見失ってしまいそうな気がする。制約のある中で、何かを創りだすことも大切な気がする。

 

 

【蛇足】フランス語では、【headlight】は【phare】となる。

 

 

 


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