人生旅的途上Sentimental@Journey

Gonna make a Sentimental Journey,
To renew old memories.

教科書

2012-12-20 | essay

 小学校、当時は国民学校といった。国民学校初等科1年生、そこで学んだ国語読本の最初は「サイタ サイタ サクラガサイタ」であった。桜は日本の国花というよりは、戦時下にあっていわば軍国の花であった。

  小学唱歌、これも文部省唱歌といい、はじまりは「君が代」、つづいては例の「シロジニアカク」であった。白地に赤く日の丸染めて、嗚呼美しい日本の旗は。しかし、その美しい旗に「武運長久」の寄書きを集めて、多くの男たちが戦場へとかり出される日々でもあった。おかしかったのはドレミである。これも敵性用語というわけか、ドレミはハニホヘトイロハであった。だから「シロジニアカク」はドドレレミミレではなく、ハハニニホホニホホトトイイトと歌わされた。

 校庭の一隅には奉安殿があった。小さな社のような造りで、そのなかには御真影を祀っているのだと教えられた。特別な日には、教師も生徒もこの前に集められ、最敬礼をさせられる。その頭の上を教育勅語を奉読する校長の声が流れていた。

 そんなことをしているうちに日本は戦争に負けた。いまだに「終戦」というが、これは「敗戦」である。完膚なきまでに叩かれ、打ちのめされたあげくの無条件降伏であった。連合軍による日本占領、そしてその支配下で教科書の大部分を墨で黒く塗りつぶす作業が始まった。

 いま教科書の復刻版がよく売れているという。教科書には人それぞれにいろいろな思い出があるのだろう。小学校1年生のときの教科書はいまでも覚えているのに、それ以降の教科書についてはなぜか思い出すこともない。


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