エピローグ

終楽日に向かう日々を、新鮮な感動と限りない憧憬をもって綴る
四季それぞれの徒然の記。

我が山河賞

2013年10月06日 | ポエム
昨年度は、次席を頂いた。
今年度は、佳作となった。

主宰から表彰状を手渡された時……「野人さん去年は?」
と、問われた。
痛い一撃である。
その後、主宰はこう続けられた。
「まあ常連になるのもね!」
これまた、痛い一撃であった。

「取る気にならなければ、駄目だ!」
その通りである。
応募したり、投句する場合は真剣にすべきと合点したのであった。

下記が、今年度の応募作である。

忌日・・・心象風景に像を結びつつ
             本田 野人

現世の愛の犇めく凍鶴忌
円位忌の屈む子恋し花はまだ
安吾忌や桜の森の怖ろしく
檸檬忌の記憶の底の花万朶
若き日の傷み苦かり啄木忌
竹林の青猫の影朔太郎忌
太宰忌の風恥じらえり小気味良し
父母の記憶は何処終戦日
河童忌の食して減らぬ芋の粥
海光る冨山の城の立秋忌
市井にあり難波の品格西鶴忌
落柿舎を過れば知れる去来の忌
振返る明治の気風糸瓜の忌
山峡の露新たなり蛇笏の忌
汲めどなお言葉零れる山頭火
時雨忌や新たなる日々詠み継げる
亜浪忌の人の営み面白き
軽々と万物詠める一茶の忌
三島忌や潮騒の音遥か聞く
風呂の湯気途切れるもなく漱石忌

忌日の文人一覧

現世の   日野草城
円位忌の  西行法師
安吾忌の  坂口安吾
檸檬忌の  梶井基次郎
若き日の  石川啄木
竹林の   萩原朔太郎
太宰忌の  太宰治
父母の   終戦記念日
河童忌の  芥川龍之介
海光る   前田普羅
市井にあり 井原西鶴
落柿舎を  向井去来
振返る   正岡子規
山峡の   飯田蛇笏
汲めどなお 種田山頭火
時雨忌や  松尾芭蕉
亜浪忌の  臼田亜浪
軽々と   小林一茶
三島忌の  三島由紀夫
風呂の湯気 夏目漱石



昨年は、表彰状一枚に木苺さんが御作りになったケーキ一切れ(美味かった!)であった。
表彰状は、封筒入り出会ったものが、今年度は額装となった。
かてて加えて、副賞としてパイロットのボールペンが添えられた。

山河賞、次席、三席の方は万年筆であった。
しかも、金文字で年度と山河賞の文字が光っている。

予算化するのが大変だっただろうと思う時、選考委員会を担った秦野の「秦樹句会」の御苦労が偲ばれるのであった。
とりわけ、幸雄さん、和子さん、和哉さん、英三さんたちの顔が浮かんでくる。
さて・・・来年は山河賞獲りで行きましょうか!

参考までに、もう一度昨年の応募作品を掲載する。

   土の慟哭
         野 人

  風花や遮るもの無く海に落つ
 朝寒の跡形もなき被災の地
 佇める爽籟の街影も無く
 塩害の土に咲きたる秋桜
 紫苑咲く決壊の堤日暮れたり
 業を負い罪を呑みこむ秋の海
 波涛寄す渺茫の街末枯るる
 曳航の音途絶えたり浦の秋
 身に沁みる海の息吹の記憶かな
 焼玉の音も消え去り虫絶ゆる
 海は今嫋やかに秋抱きすくむ
 秋の風月の光を洗いけり
 被災地の土の慟哭捨案山子
 ただひたすら手を合わせ居る藁の塚
 はじかみを噛み奪われし人偲ぶ
 みちのくは深い眠りや星流る
 拾いたる山栗集め仏供とす
 光堂捧げる祈り蓮破れぬ
 痛哭の穏やかな海秋終わる
 冬隣たった一人となりにけり

俳句を始めて、2ヶ月目の句である。
いま読むと、少し恥ずかしい。


         荒 野人