エバ夫婦の山紀行ログ

道産子60代、四季を通じて主に夫婦で登った北海道の山を中心に紀行文を載せています。アウトドア大好き夫婦。

南日高 中ノ岳(1519m)

2019年09月27日 | 山紀行 (日高山系)
巨峰に挟まれた目立たぬ山も・・・
南日高
  中 ノ 岳 (1519m)
■ 山 行 日    2019年9月27日(金)  前泊日帰り
■ ル ー ト    神威山荘~ニシュオマナイ川C430左股沢
                ~南尾根1372~中ノ岳ルート往復

■ メ ン バ ー     夫婦登山 №29
■ 登 山 形 態     沢登り&藪漕ぎ
■ 地 形 図    1/25000地形図  「神威岳」
■ 三角点・点名   三角点無し 標高点のみ
           別名 ルートルオマップ岳「道が分かれる所にある川」

■ コースタイム   登り 5時間45分  下り 4時間10分
<登り>
05:15    神威山荘P出発
05:45    二シュオマナイ川C430左股沢出合
07:00    594二股
07:30    690二股
10:10    1372峰北コル
11:00    中ノ岳頂上

<下り>
11:20    下山開始
11:50    1372峰北コル
13:35    690二股
14:00    594二股
15:00    登山道出合
15:30    神威山荘P到着



いつものようにGPSログを元に地形図に移したルート図です・・・

★ 日高コツコツ・・・
中ノ岳は、南部日高主稜線上のぺテカリ岳(1736m)と神威岳(1600m)の巨峰に挟まれて
いる中間の山でその南にあるニシュオマナイ岳(1493m)と共にあまり目立たないが、
ピラミダルな美しい山容は両サイドの巨峰に劣る事の無い登行意欲に沸く山である。
ただ、これらの山には、登山道は無く登頂の手段は沢登りか積雪期しかない。それは
日高側も十勝側からもそう簡単ではなく、計画がずっと置き去りになっていた山だっ
た。私たちにとって日高に於ける簡単な山など無いに等しいが、計画を立てるにはそ
れなりの覚悟と決心が必要・・・とは、私の逃げ口上である。

日高山系の1000m超峰は全107座を数えるもこれまで夫婦で踏破したのは8月
に登った日高大山(1361m)で71座目。残り36座を一つ一つ確認しながらいつ、
どこから、どのように登るかを早々に決めながら挑戦して行かなければならない。
そんな中で浮上した「中ノ岳」。神威山荘~ニシュオマナイ川を経て登頂した記録を
最近知り、徐々に登行意欲に駆られて来た・・。ただ心配なのが神威山荘までの元浦
川林道の状態が悪く車で行けるのか?であったが、通行止めでない以上現地判断で先
ずは「行く」事から始めようと決意する。
地形図を広げ、改めて登行記録と照らし合わせて見ると、どう登るかでその難易度が
違う事が分かり、私たちは分相応の選択をさせて頂く事にした。

稜線上の南側にはニシュオマナイ岳(1493m)があり、同じニシュオマナイ川からの登
行が可能かも知れないと別の意欲も湧いて現地調査出来れば次の参考にしようと思っ
た。

「中ノ岳」の山名は、十勝側の歴舟中ノ川支流中ノ岳ノ沢のアイヌ語からルートルオ
マップ岳「道が分かれる所にある川」という別名がある事も分かった。この沢のルー
トはより上級者向きらしく及ぶところではなさそうだ。


★ 元浦川林道・・・
国道荻伏から道道に入り上野深地区を目指す事約17㎞、そこからようやく元浦川林
道となりダート道が続く。この道に訪れるのは2012年以来7年ぶりだ。道悪の噂
を聞き心配だったが、まずは現地調査のつもりで車を走らせた。

結論から言うと、なんの問題もなく神威山荘に着くことが出来た。ただ強いて付け加
えるなら路肩部分が崩れ落ち道幅が狭くなっている個所があったり、斜面からの落石
などで大きな石が道に転がっている場面はあったが、普通乗用車でも問題なく走る事
が出来る状況だった。林道入口から約20㎞50分から1時間ほどを要するが、無事
神威山荘について安堵したところだった。


★ 神威山荘健在・・・
無人の神威山荘だった。車も無く私たちの貸切状態である。最初から車中泊する予定
なので山荘には泊まらない。二人だけで泊まるには広過ぎるし、荷物を車から移動す
るのも面倒である。小屋はきれいに掃除されているが、独特の匂いと寂しい雰囲気が
好きになれずやはりホテルハイエースの居心地は最高であった・・・。ただトイレだ
けは拝借させて頂きありがたかった。

終始貸切、手に届くほどに近く感じた素晴らしい満天の星を見ながら早い就寝で明日
に備える事にした。



9/26 誰も居ない貸切の神威山荘とマイカー


9/26 神威山荘


山荘から望む夕日に染まったニシュオマナイ岳

★ どんより雲・・・
【9/27】
3時の目覚ましで起きて先ずは外に出て見ると、昨夜の満天の星が消えていた。
どんよりとした雲に覆われ星は疎らに見えるだけだった・・。予報は快晴だったはず
だが、山の天気だからこれから晴れるだろうと車に戻った。

モーニングコーヒーを落としながら朝食の準備もするが、このまったりと流れる時間
は泊まり山行の中で一番好きな時間だ!
しかし、コーヒーを飲み終えると朝食タイムだがいつも物が喉を通らず、相方チーヤ
ンの倍の時間を掛けてようやく終わるのが常で一番嫌いな時間かも知れない・・。

準備を終えて予定より早い5:15に出発出来た。
まだ太陽さんは出ていないが、歩くには問題の無い明るさで静かな山奥に緊張感が漂
う。夫婦でも出発時は「よろしくお願いします」と握手して歩き始めるのが礼儀で、
少しは緊張感がほぐれて足取りが軽くなるのだ。

山荘前の小沢を一跨ぎして登山道を歩き5分ほどでニシュオマナイ川を渡渉する。
対岸からも登山道は続き所々にピンテが付いているので迷う事はないだろう。
登山道はニシュオマナイ川右岸沿いだが、川からの高度差はそれなりにある。30分
ほど歩いて沢に出合うがここで注意が必要だった。

出合う沢は、ニシュオマナイ川本流ではなく、すでにC430左股沢支流なのである。
神威岳へ登るには、この支流を渡渉して本流に戻らなければならないが私たちはその
まま支流を詰めるルートとなる。それを本流に降りたと勘違いしてC430左股沢の
出合を探してしまった。すぐに間違いに気が付いたが、20分ほどロスをしてしまっ
た。「大丈夫なのか・・?」と自分に喝を入れたところだ!



C430左股沢に出合い少し歩いたゴルジュ帯
・・・右岸の上に高巻きルートがあった(下山時に判明)


★ ゴーロ帯の左股沢・・・
しっかりとルートを確認しながらゴーロ帯の沢を詰めて行くが沢登りとしては、決して
楽しい沢ではなかった。興奮するような滝の連続は無く、癒される滑も無い。日高側の
沢の特長と言えば語弊があるかも知れないが、少なくとも私には時間が長く感じた沢登
りだった。ただどんどん斜度は増して行くし、流木のガレキを越えて一歩一歩上を目指
して行くと次第に壮大な日高の険しさが否応なしに伝わって来た。それはC690二股
の先を見て感じる。

ルートは右だが、直進すれば半端ない斜度となり一直線上の流れに変わって稜線近くま
で延びていた。その途中にはきっと私たちのレベルでは突破出来ない滝が現れ、高巻き
もままならない難関に遭遇するだろうと直感し背筋が寒くなった。これが選ぶルートに
よって難易度が違う意味である・・・。



C470二股上流の広いゴーロ帯・・・


C700付近・・・沢幅が狭くなり斜度も増してくる


C800付近・・・僅かな流れはあるがガレの登りは緊張する


9:46 沢を登り詰めいよいよ1372峰のある稜線手前の斜面まで来た


9:47 目の前に迫った1372峰の岩峰群・・・首が痛くなるほど見上げる

★ 稜線まで5時間・・・
C1100で突然沢形は壁となり直登すれば落石を伴う危険なものだった。近そうに見
えた1300mの稜線がこれほど遠いのかと思い知らされる場面である。
落石に気を付けながら沢形から笹と灌木の斜面に逃れ高度を稼ぐ事にした。しかし、笹
は細くも次第に背丈ほど高くなり鬱蒼とし始めたので、薄い場所は無いかと斜面を見渡
した。すると先ほど登って来た沢の延長上に微かな窪みを見付けトラバース気味に笹藪
を漕いだ。あの壁の上には更に沢形が続いていて真っすぐに1372峰を示しているよ
うに見えた。沢形は笹のトンネルになっているが、容易に登れることが出来、どんどん
高度を稼ぐことが出来た。そして、C1250付近で沢形から斜面に上がり見上げる稜
線と1372峰の岩峰群を目の当りにする。沢を詰めれば稜線では無かったのだ。

岩峰群も良く見れば登れない訳ではなかったが、1300m基部付近の笹原には幾つも
の鹿道があってそれが岩峰群北側のコルに延びているように見えた。直登するよりは容
易なので鹿道を辿り基部をトラバースした。鹿道は稜線コルまで続きラッキーなルート
を発見したと安堵する。

10:10稜線コル着。登山開始からすでに5時間が経とうとしていた。
途中、パラパラも雨に当たり稜線にはガスが掛かっていたので、登行自体の中止も思案
したが、本降りの雨にならない限り登ろうと決めて続けた。ここまで来れば何とか登頂
も見えてくる場所で幸いにもガスが途切れて視界が広がって来た。

目指す「中ノ岳」を目の前にしていよいよ登行意欲に湧き、周りの山々を見渡す余裕す
ら出て来るから不思議なものだ。多少風は強いが寒くは無く、少しずつ近づく中ノ岳を
見ながら歩を進めた。



1372峰、北側のコルから望む


コルから望むルート上の1400ポコ


コルから望む中ノ岳への稜線ルート


1400ポコへの登り・・・


1400ポコと背景はニシュオマナイ岳(1493m)の鋭鋒その奥に神威岳がガスの中に聳える


中ノ岳の肩(1450)を目指す登り。背景に1372峰を始めニシュオマナイ岳や神威岳も少しずつ見え始めた・・


肩から頂上稜線はハイ松帯に悩まされる・・・


中ノ岳を背にたまには被写体の私・・・


ハイ松帯から望む1372峰・・・


想定外のハイ松漕ぎも踏み跡は明瞭でピンテにも助けられた、背景のピークは1445峰

中ノ岳(1519m)初登頂・・・

意外な天候に一度は登頂を諦め掛けたが、頑張って続けたら登頂と天気にも恵まれラッキーだった


双耳峰のピークは手前だった。ピークは狭いが恐怖感は無く一等三角点並みの景色を望む


低いハイ松の中に隠れるように付けられた頂上標識・・・ある事自体驚いた


頂上から望む早大尾根の「留取岳(1350m)」が懐かしい


頂上東尾根上の1449峰・・・


頂上から右下が1372峰、その後ろにニシュオマナイ岳と名峰神威岳が全容を現した


山頂部のガスが取れなかった北の「ペテガリ岳(1736m)」

★ スッキリな下山・・・
一度は登行を諦めて下山も思案したが、登り続けて良かったと初登頂の喜びを噛み締め
た。予定より45分ほど遅れての登頂だったので写真を撮ってすぐ下山と思っていたが、
周りの景色が見え始めると足が自然に止まっていた。もう二度と訪れる事はないだろう
と思うと写真を撮って下山は忍びなかった・・・。

北に望むペテガリ岳は残念ながらガスに覆われていたが、次第に見え始めて来たので後
5分待ってみる事にした。その間再び山座同定出来る山を一つ一つ確かめながら、4年
前に故・児玉さんと登った「1483峰」や師匠と登った隣の「留取岳1350m」の
早大尾根が意外と近くで驚いた。「いゃ~日高は奥深く険しい・・・」素直に出て来た
感想だった・・・。

そうこう思っている内にペテガリのガスが頂上部まで上がってなんとか全容を見る事が
出来た。8年前に登ったベッピリガイ岳やまだ未踏のウチイチ山とピリガイ山も遠く南
西の眼下に見る事が出来、次への意欲も無きにしも非ずである・・・。

とにかく気持ちはスッキリとなり、下山する事にした。11:20下山開始である。



中ノ岳を背にあっと言う間の下山で濃厚なハイ松帯を突破


前方に1372峰、ニシュオマナイ岳そして神威岳を眺めながらコルを目指す・・


1450肩から降りた稜線で再び記念写真である・・


中ノ岳の雄姿に別れを告げ沢への帰路となる・・・


1372峰基部の鹿道トラバース路を再び利用・・・


C1150付近の沢形に戻る・・・


C1100付近・・一際は鮮やかに見えた「キオン」にホッとした一瞬である

★ 登頂後の下山は短い・・・
登り5時間45分、下り4時間10分の登行は無事終了した・・。
足はすでに筋肉痛で限界ギリギリだったが、苦労して登り詰めた頂上を踏み満足感に浸
りながらの下山は、終わって見ればあっと言う間に感じるものだ。石がゴロゴロ積み重
なった歩き難い沢だったが、付けて来たテープや付けてくれたテープに安心感もあって
疲れていても登山口までの気力はしっかり維持しているから素晴らしい・・。
まぁ~そうでないと無事の下山はあり得ないが・・・。

15:30無事、山荘前のP帯に到着。金曜の夕方だから誰か来てるだろうと予想して
いたが、停まっていた車はわがハイエースだけだった。

着替えた時にダニが3匹見つかったが、幸い噛まれた所は無く車に乗り込んだ。

林道でもすれ違う車は一台も無かったが、鹿と熊に遭遇し熊とは300mほど一緒に駆
けっこした末に山に消えて行った。車に乗っていたから恐怖感は無かったが生熊と駆け
っこしたのは初めてである。日高の熊はふさふさと肥えていて大きく意外に走るのが速
いなぁ~と変に感心した次第だ。熊さん、ビックリさせてゴメンナサイ・・でした。

ニシュオマナイ岳への調査もなんとなくだが、掴んだ。
後はまたその沢や尾根に立ち入って本チャンで試すしかないかも知れない。
いずれにしても難しい山である事に違いはないなぁ~と実感である。

蔵三で汗を流し、軽く夕食も取って20:30頃無事帰宅した。
これで日高の1000m超峰は72座目、残り35座となった・・・。



17:10 無事、下山して三石温泉「蔵三」の手前で夕日に癒される・・・

※ 10/2 ようやく、アップを終了・・・