エバ夫婦の山紀行ログ

道産子60代、四季を通じて主に夫婦で登った北海道の山を中心に紀行文を載せています。アウトドア大好き夫婦。

十勝連峰の未踏消化登山「美瑛富士(1888m)」

2019年09月12日 | 山紀行 (十勝・大雪)
十勝連峰の未踏消化登山へ・・・
十勝岳~▲美瑛岳~美瑛富士(1888m) 周回ルート
■ 山 行 日    2019年9月12日(木) 白銀荘Pで車中前泊 日帰り
■ ル ー ト    望岳台~十勝岳~平ヶ岳~鋸岳~▲美瑛岳~美瑛富士~望岳台
■ メ ン バ ー     夫婦登山 №27
■ 登 山 形 態     登山道
■ 地 形 図    1/25000地形図  「白金温泉」「十勝岳」
■ 三角点・点名    美瑛富士 三角点無し 標高点のみ
           美瑛岳  二等三角点 点名「帯経てしけ オビタテシケ」
           鋸 岳  三角点無し 標高点のみ 地形図に山名無し
           平ヶ岳  三角点無し 標高点のみ 地形図に山名無し
           十勝岳  三角点無し 標高点のみ 日本百名山

■ コースタイム   登り 7時間  下り 3時間13分
<登り>
05:55      望岳台(930m)P出発
06:25      白銀荘分岐(1104m)
06:55      雲ノ平分岐(1260m)
07:05~20   十勝岳避難小屋 休憩
08:25~30   昭和火口(1724m) 休憩
09:30      十勝岳(2077m)頂上  3時間35分

09:45      十勝岳下山開始
10:00      平ヶ岳(2008m)頂上
10:15~20   鋸岳(約1980m)頂上
11:50      美瑛岳分岐(2010m)・・・美瑛岳の登頂は回避(悪天と時短)
12:18      美瑛富士分岐(1716m)
12:55      美瑛富士(1888m)頂上 7時間

<下り>
13:02      美瑛富士下山開始
13:20      美瑛富士分岐(1716m)
14:15      美瑛岳分岐(1630m)
14:45      ポンピ沢渡渉
15:00      ハシゴ
15:35      雲ノ平分岐(1260m)
15:50      白銀荘分岐(1104m)
16:15      望岳台P     3時間13分



GPSログを元に地形図に移したルート図です・・・

★ カウントの是非・・・
今回の大きな目的は、チーヤンがまだ未踏だった「美瑛富士」に登る事だった。
ただ、どうせ登るなら十勝岳からぐるっと周回するルートも視野に入れ計画を組む事
にした。
改めて地形図を広げルート上の山々を見て見ると幾つかの疑問が浮上して来た。
それは、平ヶ岳と鋸岳の存在である。文献によって標高や山名も違ったり、読み方も
違ったりでどれが本当なのかと迷ってしまう。

いずれの二座も十勝岳~美瑛岳までの登山道ルート上に点在する山で地形図には山名
が載っていない。しかし、文献によっては山名の記載があり読み名が載っているもの
もあった。北海道地図株式会社で制作した地形図「十勝連峰・トムラウシ山」には、
二座の山名が明記され鋸岳は、標高点の記載も無い約1980m付近を示していた。
山の教本にしている八谷和彦氏の著書「ガイドブックに載っていない北海道の山々」
では、鋸岳は約1980mの位置を示すも関連の注釈欄には、1824m標高点を鋸
岳とすることもあると補足されていた。呼び名は「のこだけ」と「のこぎりだけ」の
二つが混在しどちらで呼ぶべきかご教授願いたいものだ。

また、平ヶ岳も平岳と呼んでいる文献があったり故・児玉保則氏の著書「ついにやっ
た!前人未到の1594山・北海道 ko玉の全山登頂記」に掲載されている北海道
全山一覧表には「平ヶ岳」も「平岳」も載っていなかったのが不思議だった・・。
鋸岳の標高は1980mと記載されていたので、私もこちらを優先したいが別の文献
で白山書房「日本山名総覧」には、平ヶ岳も鋸岳も記載は無く、山としてのカウント
をすべきかどうかその選択に迷っているところだ。

北海道には他にもルート上の通過点に山や岳を付けた山名はあるが、だからと言って
その山だけを目指す愛好家なんて居ないと思う。なので自分の登頂した山の記録から
その山名を敢えて外している山友は何名か知っている。

ko玉氏の北海道全山1594座もそうであるが、この数が絶対なのではなく、彼な
りの選び方でそうなっただけで、山座の定義など決まってはいない。基本は、地形図
(国土地理院発行1/25000図)に山名が載っている山としたり、山名辞典や色々
な文献の記載だったり三角点の点名を山名とした角界がメジャーとする山を加える事
等でよりその基準がリアリティーとなり誰もが認める山座数となっていくのだと思う。

私的には、カウントの必要がない二座だと思うが、参考資料として登った事は記録に
残して置こうと思う。



チーヤンが未踏だった「美瑛富士」にようやく初登頂・・

★ カウントする十勝連峰の1000m超峰・・・
北海道の山域を表す上で大雪山系とか十勝山系、日高山系などと言う表現で区分けする
事が多いが、ここからここまでが大雪、ここまでが十勝という正確な区切りは難しい。
例えば私なりの整理だと十勝連峰とは、北は「扇沼山」から始まり南は「旭岳」で終了
する。それらの裾野に点在する「境山」「下ホロカメットク山」「トウヤウスベ山」
「大麓山」や北の「丸山1237m」、北東に位置する「コスマヌプリ」「ツリガネ山」
「トノカリシベツ山」と「三股山」辺りまでは十勝山系と位置付けその区域に整理して
いる。

ブログ上の山域整理では、十勝と大雪は同じ山域の中に取り込んでいるので説明は要ら
ないが、東大雪と道東、道北の境目付近に存在する山はどちらに入れるべきか迷う時も
多々ある。



9/12 雨上がりの早朝はガスに覆われた望岳台も次第に晴れる兆しを感じ出発する・・

★ 山紀行・・・
寄りによって三連休(夫婦の・・)の初日(9/11)が雨予報とはついていなかった。
大雪の紅葉も始まったよ・・と言う情報もチラホラあり、チーヤンの未踏峰狙いも兼ね
て高原温泉から緑岳(松浦岳)でも行こうか・・とか、愛山渓温泉から未踏の愛別岳も良
いね・・とか、日高のチロロ西峰も候補には上がっていた。
そんな中で、「美瑛富士」を選んだのは自宅から比較的近い白銀荘のP帯で車中泊する
なら雨の出発も我慢出来る事だった。より近いチロロ西峰は、登山口となるチロロ林道
の二岐沢出合まで雨のドライブは気が乗らずパス。翌日も一応沢登りなので増水も懸念
して取り止めた。他は皆遠い・・・。そんなところだ。

【9/11】
ドシャ降りの中、白銀荘に着いたのは17時だった。気温は14℃。
早々、温泉で温まり車に戻って安着と山行の成功を願って乾杯する。BGMは、ラジオ
の野球中継。わがファイターズVS楽天戦だったが、残念ながら2:10の大敗に終わ
ってしまった。
屋根を打つ雨音が子守唄で酔いも回って野球の結果を聞かずに就寝となったが、願うは
ファイターズの勝利より明日の晴れ予報だけでよく寝れてしまった・・。

【9/12】
3:30 起床。
雨は、霧雨に変わるも周りが見えないほどの濃霧だった。
当初は5:00にここを出発点に望岳台ルートに合流する予定だったが、5:00の地
点でまだ暗く霧雨も止んでいなかったので出発を見合わせた。最初から雨具も覚悟した
が、道の良い望岳台登山口に移動し、ルートを変更、天候の回復を待つ事にした。

望岳台の駐車場に着くと車が10台ほど駐車していて、その中の3台ほどが出発の準備
をしていた。気温は9℃、とうとう一桁で寒い。少しずつ明るくはなって来たが、ガス
は取れずに視界はあまり良くなかった。

5:30位に一番手と思われる男女二人組が出発していった。
悪天の中、気は進まないが決行と決め、5:55に三番手で歩き始めた・・・。
二番手は、女子三人パーティーだったが、登山口の石碑で写真を取っている間に抜かし
てしまった。

せめてチーヤンが未踏の「美瑛富士」だけでも登頂したいと雲ノ平コース~美瑛富士往
復にしてスタートしたが、歩きながら色々な思いを巡らせ迷い始めていた。
それは、ピークハントの美瑛富士往復だけでも7時間は掛かる行程で、ポンピ沢からの
標高差約150mの急登に余り良い印象が無く、縦走でもしない限り登りでは使いたく
なかったコースだったと昔を思い出してしまったのだ・・。
ならば周回ルートにすれば、10時間以上掛かるも最初の十勝岳の登りを辛抱すれば、
あとはキツイ登りは無く、昼から晴れる予報を信ずれば十勝の絶景も望めるだろうと計
画の変更を提案した。チーヤンも迷っていたが、私よりも「晴れる」予報を信じて渋々
周回ルートに承諾してくれた。

実は、もう一つ気になるピークが二つあり、過去5回も登頂したと記録している平ヶ岳
と鋸岳だが、一度も写真を撮った事が無くその位置も記憶に薄く、もう一度位置確認と
登頂写真が撮りたかったのだ。今回地形図以外にGPSも活用しながら現在地が確認出
来るのでこの二座とはどんなところだったのか検証もしたかったと言うのが本音にあっ
たのだ。



標高1320mのルート上に建つ「十勝岳避難小屋」
2008年(H20)に再建され20人ほど収容出来るがトイレは無い



雲海の向こうに浮かぶ芦別連山の山々を望む・・・

★ 4年ぶり8回目の十勝岳・・・
途中で休んだのは十勝岳避難小屋だけで、ちんたらモクモクと歩くだけの登行だった。
晴れそうで晴れないガスは、何度か一瞬切れて山頂付近の稜線を望んだがほとんどが視
界の無い登山道を歩いている印象だった。1500mを越えると次第に風も強くなり始
め、グラウンド火口の1800m付近の登りでは一時的も雨となって頬を打ち付けた。

他の登山者と抜きつ抜かれつもマイペースは変わらないし、登りではチーヤンに敵わな
いのもいつも通りだった。

最後の急登を登り詰め、ガスの中に建つ標識を見つけてホッと安堵した。
ここまで3時間35分なら一応標準タイムかな?とマイペースながら満足の登頂を果た
した感じだ。先行していた単独の男性は帯広から、後から登って来た男女は高知から来
たと言う72歳パーティー。夫婦かと思ったら違うと知り「へぇ~」って感じだった。

先ずは、本日の初登頂を喜び握手するもこの濃いガスと強風そして視界不良に次の判断
が求められた。



4年ぶり8回目の登頂は何も見えないガスの中でした・・。(チーヤンは、16年ぶり2回目)

★ 十勝岳から15分で平ヶ岳・・・
時間はまだ9:30だから晴れないのも仕方ないさ。
と、晴れる事に賭けて周回縦走を決行した。分かりにくい標識と黄色いペンキを頼りに
美瑛岳方向に岩場を降りた。目指すは「美瑛岳」なのだが、今回は確認登山でもあって
平ヶ岳と鋸岳を無視して歩く事は出来ないと思った。

一定の距離に付けられたペンキと踏み跡を見逃さないよう注視し、GPSで平ヶ岳の位
置を確かめた。周りがほとんど見えない中だが、地形図的にもほぼ平らなコルの広い稜
線上にそれはあった。
ルートが少し左に折れる場所から10mほど離れた場所に斜めになった石柱を見付け、
GPSで確認するとまさに平ヶ岳の2008m標高点に居た。
十勝岳から僅か15分での登頂と言っていいのだろうか?
ここに名前を付ける意味が分からないが、一応位置確認と写真(チーヤンのみ)が取れた
ので通過する。
強風・視界不良の中、ここらはほぼ同レベルでルートを辿るがもし晴れていたら北西側
は断崖上の狭い尾根上を辿っている事は地形図からも想像出来るが、まったく恐怖心も
高度感も無いのが残念だった。(幸いとも言えるが・・)
「鋸岳」はその名の通りノコギリ状の地形でその名の意味は見えなくても分かるが、標
識らしきなにものも無く登山道から20~30mほど登らなければ登頂したとは言えな
い場所にあった。
いままで5回も登頂したとカウントして来たが、それはルート上に「頂き」があると思
い込み通過していたと勘違いしてのカウントだったと今に知る。なので事実上今回が初
登頂なのかも。



強風の「平ヶ岳2008m」頂上・・この石柱が平ヶ岳の頂上標識かは不明だ・・


ここも強風の「鋸岳 約1980m」頂上として初めての登頂写真である。

八谷和彦氏の著書の中で注釈していた1824標高点を鋸岳とすることもあるという補
足があったが、その場所はルート上のコルに当たる場所でポンピ沢の源頭部を越えた
先でもあった。少なくとも鋸の形を想像するものは一切無くコルに岳と付く山は他に
は無いと思うので、私なりにこの説は却下することにしよう。



背景が鋸岳頂上で一瞬の切れ間に撮った写真だ・・・


稜線で一番目立っていた花「ミヤマリンドウ」は元気だった!


稜線上から美瑛岳の登りに入る頃に見せてくれた東側の景色


美瑛岳の登りに入ると再びガスで視界不良となる・・・


一瞬の映像でした。美瑛岳頂上部の岩場が見えたのは・・・





★ 美瑛岳を回避・・・
コースタイム的には順調だった。しかし、休憩も取れず歩くしかない環境の中で気温も
最低5℃まで下がると風があるので体感的には0℃と言っても過言ではない状況だった。
折角の縦走ではあったが、美瑛岳には二人とも登頂していたのでこの状況でどうしても
登頂する必要がなく、分岐から往復30~40分掛かる事を加味する事を考えると、止
めて時短する選択が最善と考え美瑛富士を目指す事を優先した。

分岐標識は約2000m付近にあるが、一気に北斜面を標高差300m近く下って十字
路の分岐標識に着く。1716コルである。北斜面は迷い易い岩場であるが、黄色いペ
ンキを見逃さなければ視界不良でも分岐に辿り着けると思う。この下りを休まず30分
も掛からずに降りたのは必至だったからだろうか。そろそろ足が悲鳴を上げはじめた頃
である。



1716の十字路分岐標識・・・


ガスが切れた時に現れた「美瑛富士」の頂上部・・・

★ チーヤンの初登頂は、夫婦登山で・・・
正直、晴れ予報が外れて天候の回復が遅れていると諦めかけていた頃、美瑛岳の北斜面
を必死に降りて、十文字の分岐標識を見た時は、ホッとした。時間はまだ12時過ぎだ
ったし、もう迷うようなルートも無いと自分的には緊張から解かれた思いだったかも知
れない。分岐から美瑛富士までは登り50分、下り30分とあったが実際には登り37
分、下りは17分だった。

初登頂の感動を味わう余裕も無く、写真だけ撮ってすぐの下山だったし、いつも用意し
ているコーラで乾杯なぞ出来る環境ではなかったのだ。それでもずっと気になっていた
十勝連峰の未踏の一座を夫婦で踏む事が出来て、後からジワジワと喜びが込み上げて来
たのは夫婦共々である。

今回の周回ルートをもし逆回りしていたら、きっと美瑛富士~美瑛岳に登った後は再び
ポンピ沢から望岳台に降りただろうと想像する。あの天候でとても美瑛岳~十勝岳まで
縦走する気にはなれないと思うし、時間的余裕も無くなっていたかも知れない。



2019.9.12 「美瑛富士 1888m」チーヤン初登頂を再び・・・


C1640の美瑛岳分岐・・・ポンピ沢への下りはもうすぐだ


雲ノ平入口となる北向沢のハシゴ場


10時間を超える山行が終えようとする頃、ようやく青空が見え始めた・・・

★ 最後まで休み無く・・・
無事念願の登頂を果たし、あとは登山路を辿って下山するだけ・・。
しかし、天候は回復ではなく増々悪化し、ポンピ沢への下りから本降りの雨にさらされ
て散々だった。雨は、雲ノ平を過ぎても続き結局望岳台の手前でようやく青空が戻って
来た。だから最後まで休む事も無くひたすら歩き続けての下山だった。

8月の日高大山でも10時間を超える山行があったばかりだが、明らかにそれとは違う
安心の10時間越えであるが、歩いた距離は20㎞にも達していた。
二人とも60歳を越えての10時間越えは決して楽ではなく、足は悲鳴を上げる寸前だ
った。今後こうした山行に何回耐えうるのか考えると計画自体が暗くなりそうで心配だ。

下山後、富良野市島の下にある温泉「ハイランド富良野」で汗を流し帰路の途に就いた。
身体は疲れていたが、車中夫婦の白熱した会話がありほとんど眠くなる事なく家に着い
てしまった・・・。


※ 9/16 一応、アップ終了・・・