西尾治子 のブログ Blog Haruko Nishio:ジョルジュ・サンド George Sand

日本G・サンド研究会・仏文学/女性文学/ジェンダー研究
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クレオールの定義/『アンディアナ』

2016年01月11日 | 手帳・覚え書き

共訳書の注や本文の見直しをしていて
一日が飛ぶように過ぎていくこの頃です。
明日からは授業が始まるので、時計の針を日常に戻さなくては。

クレオールとは:
「ラテンアメリカでは、本国スペイン・ポルトガルから派遣された
植民地役人のもとに、クリオーリョと呼ばれた現地生まれの白人が
いて、その下にメスティソと呼ばれた白人と先住民の混血、ムラー
トと呼ばれた白人と黒人の混血、そして先住民、黒人といった人々
が階層をなしていた。・・・・・クリオーリョ(クレオール)とは、
南北アメリカ史のキーワードの一つであり、元来はスペイン語や
フランス語で植民地生まれの白人、大農場主のことをいう。」
放送大学テキスト『地域文化研究Ⅰ、近現代ヨーロッパ史』P.111
著者 近藤和彦

「今日では、『クレオール』といえば、カリブ海域の混血人種や
混成言語やハイブリッドな文化を思い起こすのが定石だろうけれど、
・・・・・ベルナルダンがフランス島に滞在した時期の一般的な
用法は、「植民地生まれの白人」という意味なのだが、・・・・
ときには黒人奴隷まで含め、「現地生まれ」と「外来者」を区別
するために使われることもあったという。」
工藤康子著『ヨーロッパ文明批判序説』
「クレオール幻想の誕生」という節において、p.80

松田先生、貴重な資料とご教示、ありがとうございました。

「スペイン語のクリオーリョ(原義は「育てられた人」に由来し
フランス語やスペイン語では「植民地生まれの」を意味する形容詞
として用いられる(人と物の両方につく)。現在は非常に多義的だが
フランス語圏においては、もともと、カリブ海やインド洋などの仏領
植民地で生まれた人々を指していた。それが次第にアフリカから奴隷
として植民地につれて来られた黒人の子孫(植民地生まれの人)を
アフリカ生まれの黒人と区別してクレオールと呼ぶようになり、
やがてかれらによって培われた言葉や文化全体を意味するように
なった。日本ではスペイン語圏のクリオーリョ(中南米やカリブ海の
植民地で生まれたヨーロッパ人入植hさの子孫、とりわけスペイン人)
や、クレオール語(異なる言語の話者の間で自然に作り上げられる
言語が時代を経て、その子孫によって母語として話されるようになった
もの)と同義で用いられることもある。
   「用語解説」p18
   『200年目のジョルジュ・サンド』新評論 2012
    日本ジョルジュ・サンド学会編 

3行以内におさめる注:
「créoleとは植民地生まれの」を意味し、人、物などにつく形容詞。
元来は植民地生まれの白人や大農場主をクレオールと呼んだが、とき
には黒人奴隷まで含め「現地生まれ」と「外来者」を区別するために
使われた。現在では、おもにカリブ海域の混血人種、混成言語、ハイ
ブリッドな文化を指す。 」

こんな感じでいいのでしょうか。
クレオールは名詞では使われないのだろうか?

クレオールの大農場主の例については、昔、ルイジアナ州のニュー
オーリンズで開催されたG.サンド国際学会で発表したときに知った話
を思い出しました。
クレオールの女性奴隷クワンクワンが高級売春婦のような仕事をして
大金持ちになり教会を建てたが、そこでは黒人が前列に座り白人が
後部席に座ったという。
彼女はまさに黒人奴隷も雇う大農場主でした。

参考文献といったものはなく、地元の英語版の新聞に書かれていた
記事だったように思うけれど、どこかに入り込んでしまって、見つ
からないかもしれず、残念な気持ちが募ります。

サンドの小説『アンディアナ』には、二人のクレオールの女性が登場
します。ヒロインと混血の女中です。
二人とも若い金髪のマザコン男のレーモンに騙されるのですが、
ヒロインの方は白人で、女中さんの方は肌が褐色で髪の縮れた美人
でした。この二人、アンディアナとヌンは同じ乳母の母乳で育てられた
幼なじみで姉妹のように仲が良い。ところが、男の気持ちが最愛の
女主人アンディアナに移ったことを知ると、男の子どもを身ごもって
いたヌンは入水自殺をしてしまいます。まるで『ハムレット』の
オフェリアのように。
人妻アンディアナは、夫に内緒で自分が自由にできる唯一の財産で
あった宝石類を手に、レーモンの後を追ってレユニオン島を船で
脱出。主人を追って懸命に泳ぐアンディアナの愛犬オフェリアが
荒くれ男の船長にオールで撲殺される場面は、二人の女性の悲運を
象徴しています。

物語はまだまだ続きますが、

アンディアナの夫がベルギーで砂糖産業を営むフランス人である
こと、主要舞台はレユニオン島とパリやボルドー、時代は七月
革命の1830年を挟んでいることなど、サンドはフィクションの
背景に植民地時代のフランスを設定し、クレオールの女性たちの
運命を描いたのでした。
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