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続・タイトルに偽りありの記事~看板を降ろせと言ってあげたい

2011年08月23日 21時12分52秒 | 経済関連
前の記事も極めて卑怯な論じ方をしていたが、今回もやはり同じ傾向であった。
この論者は、日本の国家財政について、良くしたいとか再建したいとか、心の底ではどうでもいいと思っているようにしか見えない。ただ単に議論したいだけ。インフレにしろと言っている人たちに、反対意見を言いたいだけのようにしか思えない。本当は、財政再建なんかよりも、「反インフレ論」を主張したいだけ、白川総裁や与謝野大臣といった自分の意見の同調者の擁護をしたいだけ、ということなんじゃないの?(笑)

まあいい。本文を見てゆくことにする。
「インフレ実現で財政再建可能」のウソ:日経ビジネスオンライン

いくつか反論らしき「権威付け」を行ってみたようだが、あまり効果的とは言えないな。本質的な部分ではないから、である。
國枝氏は議論の組立が出来ていないように思う。その端的な例が、タイトルだ。
 「インフレ実現で財政再建可能」のウソ
某ノビーみたいな常識外れの如く、釣り効果を狙っているのだろうが、それとも産経新聞の見出しということかもしれないが、いずれにしても、誤解を植え付ける為のものだ。それは、まるで「インフレだけで財政再建する・できる」という主張をしているようにまとめているのである。極端な意見がないわけではないかもしれないが、「インフレだけ」ということに限定している論者なんて、そうそういるのかな?あんま、見たことないけど。確かに、戦後の猛烈なインフレ期みたいなことになれば、圧縮されるけどな。そんなことをやろう、と提案している人は、本当にいますかね?
そうじゃなくて、デフレよりもインフレの方が「財政再建は容易」「再建の可能性が高まる」ということを言っているのであって、インフレにするだけで問題が完全解決できる、とか、インフレにすると何の問題もないしデメリットも存在してない、なんて、一言も言ってないのではないですかね?
夢物語みたいに語っているのでなく、「かりにインフレにはデメリットも存在するとしても、デフレよりはマシ、デフレよりは再建可能性は高い」と言っているのだ。あくまで比較の問題を言っているのに、「インフレだけで全て問題解決、何の副作用も存在しませんよ」みたいな、胡散臭い健康食品勧誘みたいな話をしているわけじゃない。
根本問題として、「デフレは最悪、ディスインフレも非常に厳しい」、ということを言ってるのである。

それと、「よく聞かれる」というのなら、その主要な論者を名指ししてみろ、と思う。前の記事の時にも、そう指摘しておいたけど。
ああ、ウチのブログのことでしたか?(笑)

09年1月>異常な経済運営が続く国~ニッポン
09年8月>田原総一郎こそ、チェンジするべきだ(ちょっと追記)
10年3月>日本経済復興の処方箋~その3
10年4月>池尾教授の危惧に答える

結構前から言ってるけど。つーか、クルーグマンはもっと昔から言っていたんじゃないですか。

本題に入ろう。
こちらも、少しばかり権威を頼ることにします。

法專ら(財務総合政策研究所・2003?)のペーパーがある。
>http://www.mof.go.jp/pri/research/discussion_paper/ron055.pdf

(因みに、ペーパーには日付を入れるのが普通なのではないかと思うが、どこにも執筆時期か掲載時期が書かれていない。引用する際には、不便である。)
以下に、ペーパー中で紹介されていた命題を引用する。

◎命題1:税収の物価に関する弾力性は1より大きい。
◎命題2:財政支出の物価に関する弾力性は1より大きくはない。また、物価が下落した時の弾力性は、上昇したときの弾力性よりも小さい。
◎命題3:物価下落時にプライマリーバランスの改善を図るためには、物価上昇時と比べより多くの政策努力を必要とする。
◎命題4:公債の実質償還額は予期せざる物価下落(上昇)によって、その下落(上昇)率と同率だけ増大(減少)する。

研究者なら研究者らしく、各命題について、結論を出してから論ずるべき。岩本東大教授なんかにしても、モデルも知らん素人が論ずるな、とか豪語しておったりしたが、國枝氏もモデルで証明でもやって、経済学界内で「決着をつける」なり確固たる結論を得てから言え、ってな話になりますわな。一般人には「どちらの権威が正しいのか」、ということは、簡単には見分けがつかないですから。統一的な見解を叩き出してみろ、と。まず、そういうこと。それを一般人に啓蒙しなさい。

上記4つの命題を念頭に、今度は國枝氏の記述を見ることにする。
まず、税収弾性値について、1より大、これは同意でいいですね?>國枝氏
これを肯定する時点で、名目成長率がプラスなら”税収増”効果になります。

『インフレにより資産の名目価額が増加するため、資産の実質価値が増加していなくても、キャピタルゲイン課税が課されてしまう。』
→早速の増税効果ですね、わかります。

『また、利子所得の場合も実質金利が不変でも名目金利が増加するため、実効税率が増加する。法人段階では、減価償却額がインフレで調整されないため、過少となるため、投資の限界税率が増加する。このため、個人段階・法人段階を通じてみた場合、資本所得に対する実効税率はインフレにより重くなる。』
→デフレ期間で企業貯蓄が大きく増加した中、すかさず税で是正措置ですね、わかります。

『実質所得が増加しなくても、インフレにより名目所得が増加すれば、実質的な税負担は重くなってしまう。』
→増税を選挙の争点とせずとも、増税効果が得られるわけですね、形を変えた「増税による財政再建」ということですね、わかります。

さて、これら増税効果の何がダメだと言うのでしょう?財政再建に大きく貢献じゃないですか。むしろ、増税しろ増税しろ、と言っていた方々にとっては、オーケーカモーンなことなんじゃないですか?
それとも、高所得層とか大企業の代弁者たる地位を守らんが為に、こうした資産増税効果や法人の持つキャッシュへの増税効果を拒否しようという魂胆ですか?

インフレには害がある、経済成長を阻害する、とか言うなら、ほぼ主要国全部がそうじゃないの。大体、デフレなら経済成長が阻害されない、とでも言うつもりか?
議論の仕方が、根本的におかしい。いや、病的と言ってもいい。インフレ=悪、デフレは悪くない、みたいな言い方なのだな。
本物の研究者なら、現状までのデフレのコストが、インフレのコストよりも大きいかどうかを比べるべきものなんじゃないのか?國枝氏の忌み嫌うインフレとか、名目成長率4%が、デフレを20年も継続した時のコストと比較して、どうなのか、という議論を聞いているのだよ。
もし、これに答えられないとすれば、経済学者の肩書きを外せ。研究者として失格である。”まっとうな理論”を掲げる資格などない。単なる客寄せ本を書く、ヒョーロンカ氏なんかと一緒だ。「~のウソ」という本なんて、よくあるタイトルだよな?國枝氏の記述というのは、素人相手に、騙してるようなものなのではないか?
例えば、「抗ガン剤にはこんな害がある、副作用がある」ということだけ話して、それでいいのか?何も知らない患者に、害だけ言えばそれでいいのか?それが正当化されると?

卑怯としか言いようがない。

『インフレで財政状況が大幅に改善するとの主張の一つは、インフレで名目GDPが増加すれば、公債残高の名目GDP比率は低下するとの主張である。しかし、インフレにより名目成長率が増加する際には、新発債の名目金利も期待インフレ率の上昇を受け、同様に増加する(フィッシャー効果)。』

これも、上記参考記事(池尾教授の危惧に答える)中で触れた話だが、期待インフレ率が上がれば名目利子率も上昇してしまうので、”実質利子率は変わらない”という話だけである。フィッシャー効果は、「過去債務残高の名目GDP比率を変えない」などという論理ではない。元本返済を全くせず、借換を継続した場合、借換債の金利負担は当然に生じる(低金利時代に比べて見掛け上金利は増加する=名目金利は増加)が、”実質金利は変わらない”んだよ。
実質金利負担は同じ、ということの意味を、國枝氏は分かっているのだろうか?借換によって増加した金利負担分は、そのまま払うことができる。収入が増えるから、である。実質収入が同じであろうとも、名目収入は増加しており、その増加分で借換に伴う金利負担増加分をまかなえるからである(上で見たように、弾性値が1.1なら、名目増に加えてもっと税収は増加しているはずだ)。
借換債の見掛け上の金利(名目金利)が増加したとしても、過去債務の名目GDP比は減少するであろう。更に、インフレによる増税増収効果によって、同じ額の政府支出を継続したとしても、財政収支は改善する。この同時効果によって、デフレ下での財政再建よりも、はるかに容易かつ効果的に財政収支が改善できる可能性は高くなるであろう、ということだ。政策決定を考える時、そういう選択を行うべきなのは当然なんじゃないのか?

それとも、國枝氏は、フィッシャー効果によって、「過去債務残高の名目GDP比率は変わらない」と命題を証明しようとでも言うのかな?
國枝氏の文だと、『インフレで名目GDPが増加すれば、公債残高の名目GDP比率は低下するとの主張』という部分をフィッシャー効果で否定できているかのように書いているよね?
だったら、例題を出してみますか?
元本100万円の借金について、借換継続し利払いだけ行うとどうなるか?利息は払うわけだから、借金全体は増えない。元本は100万円のままだ。30年後でも100万円の借金が残っているはずだ。さて、名目GDPをいま100万円とすると、比率は100%である。
これが30年後にはどうなっているか、ということ。年率4%の名目成長率であれば、名目GDPは約324万円になっている。すると、借金100万円の名目GDP比率は
 100/324*100=30.8%
となっているであろう。
金利負担は、勿論1%で発行できた場合と4%の場合では、1万円と4万円という違いがある。けれども、収入が増加してゆく(名目GDPが増大するので名目所得も増大する)ので、次第に利払い負担は軽減される。30年後の利息4万円は、名目GDP比率で1.23%でしかない。


もっと酷い話が、実質債務負担減を「デフォルト」と決めつける態度だ。
どこの世界に、インフレ下での債券が「実質的な部分的デフォルト」なんていうことを言う学者がいるのかね?
世界中のインフレ下で社債を発行している企業(や国債でもいい)があるけど、そういうのは全部「デフォルトと同義」と定義しているということだね?
それは、國枝式独自経済理論の発明か何かですか?(笑)
ああ、世界中の債券発行体は、インチキをやって実質デフォルトを繰り返しているという批判でも展開中ですか?

それと、金利上昇で国債価格下落があっても、満期保有ならば自己資本は減額されないのではなかったか?
金融機関が大幅に損失を蒙る、なんてことはないだろうよ。それに、金利上昇が急激過ぎて、自己資本毀損で信用システムに大きなダメージが出そうというのなら、そういう時にこそ日銀の存在意義があるのだろ。何の為の中央銀行なんだよ。国債価格が極端な下落をするなら、買えばいいだけだろ。損失を出したくないなら、国債を買うな、と銀行に言ってやれ。資本主義経済の基本だろう。国債を売る人が増えれば、金利は上がるんだろ。それが名目金利がプラス、名目成長率もプラス、という普通の世界での話なんだよ。
銀行が国債を売って、他に金を回さない限り、銀行は預金者に利息を払えんだろうよ。国債を売った金は何処に消えてなくなるんですか?国債金利よりも投資効率のよい部分に資金が向かう、というだけ。それの何が問題だと?
売りたきゃ、売ればいい。借換債が発行困難になるとか、金利条件が厳しくなって高くなるとか、そうなれば「財政収支改善」のインセンティブが政府にできるわけで、それの何がダメなの?(笑)


國枝氏には、忠告しても無駄でしたね。
研究者として、議論の手法とか、論の立て方とか、そういうのがオカシイということが、本人は分からないのだろうか。いや、判っているはずだろう。学者さまともあろう者が、気付かないわけがない。
自覚してやっているのだとすると、更に悪質ではある。経済というものをよく知らない素人衆を騙そうとするのと一緒だからだ。ウソを言ってはいなくとも、実質的にウソで何も知らない人たちを言いくるめるのと何の違いがあるのだろうか。
日本の経済学界がこの体たらくなのは何故なのか、と言えば、東大教授をはじめとする専門家面した学者たちというのが、まともな議論ができないからである。


要するに、専門家と呼ばれる権威の人間たちにこそ、ダメな原因が存在しているのである。昔も今も、何も変わってはいないのだ。




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