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大麻の解禁問題について(の続きです)

2008年11月18日 03時07分40秒 | 社会全般
遅くなりましたが、前の続きです。



いくつかの論点を考えてみる。


1)健康への影響

①精神疾患の問題

マリファナと精神障害との関係、英医学誌に掲載 国際ニュース AFPBB News

【7月29日 AFP】マリファナ(大麻)を吸引する人はそうでない人に比べて精神障害をわずらう割合が40%も高い。医学専門誌「ランセット(The Lancet)」が28日、このような調査結果を報じた。
 この調査結果は、マリファナ使用者の統合失調症や妄想、幻覚症状などの精神障害の発生率に関する35の調査に基づくもので、ヘビーユーザーの場合には非吸飲者の2倍の発症率に上るという。同調査結果は他にも、うつ病や不安感などの心理的障害の危険性も指摘しているが、マリファナとの直接的な関連性は不明確であるとしている。一方で、調査結果には交絡因子が含まれている可能性は否定しきれず、最大の問題は、マリファナが精神的な病を引き起こすのか、あるいはマリファナを吸う人々がすでにそのような傾向にあるのか、という点であるとしている。(c)AFP

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ランセットですから、信頼性はまずまずと思っていいでしょう。交絡因子の可能性は排除できないが、それでも「統合失調症」「妄想」「幻覚症状」などの精神障害のリスクは高まりそう、ということです。これまでにも、因果関係が証明できないとか、確たる証拠がない、ということは言われてきましたので、何か目新しい証拠が出たということは言えないとしても、危険性はあるかもしれないということが補強された、ということでしょう。

他には、ラットの実験でTHCの作用として「muricide」が報告されています。若年(学生)での常用者において、攻撃的行動が顕れることがオランダの疫学研究で報告されています。


②肺疾患や発ガンのリスク

長期使用者において、bullaの形成例が報告されています。また、肺ガンの発生リスクはタバコよりも危険であることが示唆されています。
バイキン博士のつぶやき マリファナは肺ガンの危険因子

他の資料など(あくまで例示です)
>Epidemiologic review of marijuana use and cancer risk.Alcohol. 2005 Apr;35(3):265-75. Review
>Marijuana smoking and head and neck cancer.J Clin Pharmacol. 2002 Nov;42(11 Suppl):103S-107S. Review

一般的には、通常使用の大麻程度では重大な障害をもたらさないとする可能性はあるかもしれませんが、長期使用例や他剤併用例などの要因によっては、発ガンリスクや免疫抑制(=易感染性)などが問題になってくる可能性はあるかもしれません。


③使用法や濃度の問題

米国内のマリファナ濃度急増、25年前の2倍に 国際ニュース AFPBB News

ONDCPによると、押収されたマリファナのうち調査のために抽出されたサンプルで、マリファナに含まれる向精神成分を示すTHCの平均値は9.6%。1983年にはわずか4%以下だった。ミシシッピ大学(University of Mississippi)のPotency Monitoring Project(効力監視プロジェクト)によると、最近数か月に測定されたマリファナで最もTHCの濃度が高かったものは37.2%と驚異的な数値だったという。

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近年THC濃度は高くなっている、ということかと思います。素材の要因だけではなく、他の常用薬や喫煙・飲酒習慣の有無によっては、新たな問題が顕在化する可能性はあるかもしれません。


④医薬品としての有用性

この可能性はあるかもしれません。現在は研究段階ということで、医師が正しく用いることで治療薬として期待できうる、ということは言えると思います。しかし、これはあくまで専門家である医師が処方するということであるので、一般人の自由な使用を認めるというものではないでしょう。これは制限のある他の薬剤と何ら変わりません。薬事法で規制を受けるか、大麻取締法かの違いだけのようにも思えます。


2)若年者の問題

上の横浜衛生研の資料にもありましたが、米国では10代の若者の使用経験は約半分と大変多いです(オランダでさえ18歳以下は禁止されている)。因みに、05年に米国で押収された大麻草は約24t以上でした(全世界では約7.2t)。

www.customs.go.jp/mizugiwa/mitsuyu/report2006/18haku04.pdf
世界における密輸動向等-28-

オランダや米国では若年者の常用者が見られることから、入手の容易さが問題となりそうです。日本においても摘発者の低年齢化が見られ、危惧されます。


3)国際的な犯罪

アフガンが世界最大のアヘン栽培地として問題とされてきたように(2000年時点で4000t以上)、世界生産の約9割近くを占めているとされています。ロシア、トルコなどに経由したり、オランダ、ベルギーを中継して西欧へ密輸されているようです。オランダは薬物規制が緩いということがあるせいなのか、世界各国への密輸基地となっているようです。日本への密輸もオランダやドイツなどから行われているようです。

要するに、「麻薬がテロの資金源になっている」とか非難している欧米諸国は、まず自国の薬物取締と摘発を徹底強化するとか、完全解禁する(笑)とか、薬物汚染の啓蒙などを行うべきでしょう。たとえば英国では、大麻使用経験者の割合はオランダよりも高く、不正に購入していることによって「テロへの資金供給源」となっているようなものです。

大麻生産地はインド、タイ、パキスタン、バングラディッシュ、カザフスタンなどのようです。テロと関係があるのかどうかは判りませんが、こちらはアフガンのように攻め込まれてはいないようです。

需要家の多くが欧州か北米であるので、そうした国々にこそ責任があるものと思います。日本も密輸国になっているでしょうが、今のところ緩い規制に傾いてはいないのではないかと思います。


4)規制をどうするか?

一応、国際条約があるので、原則的には今と同じ「規制」という方向性でよいと思います。
仮に、もっと自由化したり解禁したりした時、長期常用者などの問題が発生してくることになるのではないかと思います。サラ金で破産者とか多重債務者が増えて問題となったのと似たようなものです。人口の2%が使用者となるとして、200万人程度ということになるでしょうか。そのうち、統合失調症の人が1%増えるとなれば(残り99%は「問題などない」という解禁派の理屈だ)、新たに2万人の精神疾患患者を生み出すことになってしまいます。タミフル問題では数万人というオーダーではなく、もっと少ない数であってでも「大問題」とされたのに、こうした「1%」という人数を社会が許容できるのでしょうか?

「重箱の隅をつつくようなことを気にする」のが医療、みたいなことを以前に書きましたが、そうした水準を問題としてきたのに、今後に「いや、99%に問題は発生しない」みたいな理屈で片付けられるのかというと、それは難しいのではないかと思えます。マリファナビジネスが盛んになってよかったね、なんてことは、私には到底考えられませんね。

なんというか、解禁するメリットみたいなものが想像できない。


米国が完全解禁とするまでは様子を見ていいのでは(笑)。





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1 コメント

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米国は (舶匝(@online_checker))
2020-09-13 19:58:14
州と連邦との権限配分の都合上、全米で一斉に、という流れにはならないでしょう。

「薬事法で規制を受けるか、大麻取締法かの違いだけ」について。
薬機法(旧・薬事法)に+αで、大麻取締法の規制が上乗せされるという構図です。
この構図は、
覚せい剤(薬機法+覚醒剤取締法)

麻薬及び向精神薬(薬機法+麻薬及び向精神薬取締法)
と同じ構図。
法文ではなく、運用の問題です。

それらか、大麻がゲートウェイ薬物であることもご留意を。

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