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三菱自動車の燃費データを巡る問題について~5・日産自動車の責任

2016年04月26日 11時07分30秒 | 法関係
これまで、三菱自動車が提出した「走行抵抗」のデータの計測法が違っていた、ということが報道などで言われているが、日産自動車が何らの責任を生じないのだろうか?



まず、三菱自動車が改めて走行抵抗の測定結果を出して、それを基に燃費データの訂正を行う、ということが報道などから言われている。


ここで、最も単純な疑問が生じるのだ。
それは、日産自動車は「何故、自社が販売する自動車の”正しい”測定結果を提出しないのか?」ということである。


一般的な自動車製造事業者ならば、これをできないはずがないのである。しかも、問題発覚以前から、日産自動車はデータに疑問がある、と知っていたわけでしょう?
この問題を知った後においても、販売を停止してなかったのでしょう?


どうして?
仮に、製造品に不良品なり異物混入の疑いがある、という場合、その事実を知った段階で直ちに対応をするでしょう?
今になって、日産自動車が当該車種の販売を停止しているのだとすると、どうして問題発覚・知覚時点で、同様の販売停止措置をとらなかったのですか?


日産自動車は、当該車種の型式を自社で取得しているわけですよね?
その申請者は、誰なのですか?

行政手続において、型式指定を受けたのは、日産自動車ではなく三菱自動車の名義なのですか?

違う、というのであれば、型式指定を取得した事業者としての、相応の責任分担というのがあるのではありませんか?


たとえ、企業が不正会計を行ったとして、公認会計士なり税理士が、財務諸表等の検査をするはずなのですから、出された会計書類については、会計士なり税理士が自分の名前でハンコをつくわけですよね?

騙されただけなんだ、という被害者の立場は分かりますけれども、型式申請を出したのが日産自動車だとすると、当然に責任を生じるのではありませんか?


少なくとも、日産自動車は「三菱自動車の出した走行抵抗のデータはおかしいんじゃないか?」と判断するに足る根拠のデータを持っていた、ということでしょう?


ならば、型式申請をやり直すとかするのでは?
その際、何故三菱自動車が「走行抵抗」のデータを出して、日産自動車がこれを採用しなければならない義務があるのですか?

両社のOEMか共同開発の契約上、そうしなければならない、ということだとして、通常なら両社が協議して実施できるというような、弾力条項みたいなのは入っているのでは?


ならば、日産自動車が本当に消費者を重視し一刻も早く販売を再開したい、といった考えを持っているなら、「”正しい”走行抵抗のデータを独自に提出」して、正しい燃費データを出せばいいはずでは?


なのに、これをしない、ということになると、その思惑なり何らかの裏を感じるわけです。


監査人が、「これは下っ端が勝手に数字を改竄しただけだ、だから責任はない」とは、言うことができないのでは?
決算公告なり出してしまい、その監査人が何らの注意義務を負わない、ということは考え難いわけだが。


型式申請の事業者として、相応の責任を負うべきでは。しかも、当該事実を知った後でも、販売を継続していたことの責任は問われないのか?
これが米国での裁判とかだと、企業側が因果関係の有無に関わらず、事実があることを知っていたのに適切な対応をしなかったという理由で、損害賠償請求を食らうのでは?


せめて、日産自動車が「どうも燃費データは不備があるのでは」と思っただけの実測値を持っているはずなのだから、具体的にそれを公表するなりして、販売時との乖離がどの程度あるか、というのを説明するべきだろう。

道路運送車両法上の型式指定を受けた申請事業者は、完成検査終了証の発行義務を負っているはずでは?


つまり、日産自動車の責任はゼロではない、としか思えないのである。



それから、読売新聞や産経新聞が言うように、「燃費データの偽装だから、保安基準違反を構成し、型式指定取消もあるんだ」という言い分はどうなるんですかね?

散々報道されてたように、道路運送車両法違反だ、違法行為なんだ、ということが「真実」だとしますか?

その可能性があることを、日産自動車は知っていながら、販売を継続してきた、ということになりますよ?
保安基準に適合しなくなる可能性、というのを日産自動車が知っていたなが、完成検査終了証を発行し続け、なおかつ、保安基準に適合しなくなるかもしれないと思っていたのに、消費者には何ら説明することもなく、こっそり販売してきたのではありませんか?


どうして、このことを、読売新聞も産経新聞も、NHKも、その他報道機関も、誰も問い詰めないのですか?

へんですねえ?



三菱自動車の燃費データを巡る問題について~4

2016年04月25日 11時25分13秒 | 法関係
昨日の続きです。

道路運送車両法の違反を報じる記事が目につくので、その真偽が気になるところです。風評被害に匹敵するかもしれず、証明がない場合には重大な販売妨害になる可能性があるので、損害賠償請求をすることも検討すべきではないかと思えます。



4月24日付 読売新聞朝刊
(伊戸田崇志、小沢妃)


(一部引用)

■処分検討

これまでに①燃費測定の基になるデータについて、意図的に低い値を検査機関に提出②マイナーチェンジなどの際に必要な走行実験を行わなかった③新型車の開発にあたり、国の規定とは異なる方法で走行実験を実施―と、主に三つの不正を重ねていた。

特に、①は悪質で、虚偽の申請にあたるため、道路運送車両法に基づき、三菱自の車(ママ)の「型式指定」が取り消される可能性もある。仮に指定が取り消されれば、量産ができなくなり、販売は極めて難しくなる。

三菱自は正しい方法で測定をやり直し、データを国土交通省に提出する。実際の燃費が悪化し、有害物質の量が増えれば排ガスの保安基準に適合しなくなる可能性がある。その場合はリコール(回収・無償修理)が必要になる。
これまで、燃費などの検査は、自動車メーカーが提出したデータに誤りがないという「性善説」で行われてきた。実際、これまでに型式指定が取り消された前例はなく、国交省にとっても三菱自のような不正行為は想定外とも言える。

(以下略)

=======


この記事で目を引くのは、やはり『虚偽の申請にあたるため、道路運送車両法に基づき、三菱自の車(ママ)の「型式指定」が取り消される可能性』という部分である。そう判断した理由や根拠を知りたいわけである。それと、これを言ったのは誰なのでしょう?


『実際の燃費が悪化し、有害物質の量が増えれば排ガスの保安基準に適合しなくなる可能性』というのも、既に昨日の記事に書いたが、そんな程度で保安基準違反となるようなら、登坂道路とか走行禁止にするか大型車両は販売禁止措置がとられるだろうね。
だいたい軽の燃費が仮に20%悪化したって、環境負荷は格段に小さいに決まってるでしょうが。レクサスLS600シリーズの後部座席で踏ん反り返ってる政治家や大使や高級官僚や財界大物たちは、全員軽自動車に換えろ、となるのは必定(笑)。


道路運送車両法の第何条の条文に違反し、その結果、どういう行政責任が生じたか、というのを、何故報道しないのか?何処の誰が言ったか知らないけれども、「取消の可能性」ってどういう真実性の担保があるのでしょう?虚偽報道の可能性では?



別の記事もあったので、そちらも。

>http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160425-00000054-san-bus_all

三菱自動車の燃費データ不正問題で、国土交通省が同社の燃費試験用データの測定方法を「社内評価用の方法」と判定したことが24日、分かった。測定方法は道路運送車両法に基づいて定められているが、同社は米国の法令で定める方法を自社用にアレンジしたものを使っていた。国交省は同法違反の疑いがあるとみて、実施方法などを詳しく調べている。

 新車を発売する前に受ける燃費試験は、自動車が走行する際のタイヤや空気の抵抗値を入力して行われる。自動車メーカーが同法で定められた「惰行法」と呼ばれる方法で測定して審査機関に提出するが、三菱自動車は米国の法令で定められた方法を基に、速度や算出の仕方を若干変えて測定していた。

同社はこの方法を「高速惰行法」と呼び、平成14年から、軽乗用車や乗用車など計27車種の抵抗値の測定方法として採用。燃費試験用データの不正操作が行われた軽自動車4車種も、同じ方法で測定されていた。

 高速惰行法は、惰行法の半分の時間で測定できるが、燃費に与える影響は不明。国交省は、高速惰行法を単なる「(同社の)社内評価用の測定方法」と判定。同法が定める手続きに違反する疑いがあるとみている。


========


これも同じレベルである。

『国土交通省が同社の燃費試験用データの測定方法を「社内評価用の方法」と判定したことが24日、分かった。測定方法は道路運送車両法に基づいて定められているが』と記述されているが、燃費試験用データの測定方法とやらが、道路運送車両法のどの条文に定められ、どのような違反なのか、記載してないですよね。どうして、正確に、第何条に書いてある、これに違反する、と言えないのですか?


説明できるなら、それをしてごらんよ。何の為の報道機関なのだね?


ここまで検討してきたように、保安基準の細目を定める告示と別添というのは、排気ガス規制の為の方法が書かれているのであって、「燃費」の計測方法について法的根拠を与えるものではない。

別添42も、検討済みだよ>http://www.mlit.go.jp/jidosha/kijyun/saimokubetten/saibet_042_00.pdf


これのどこに、「燃費」の計測が書かれているのですか?
走行抵抗はp14~18に書かれており、「惰行法」か「ホイールトルク法」が示されている。この「走行抵抗」値を用いて燃費を算出するのは、排ガス測定の際に用いた数値を、いうなれば流用しているだけ、ということではないですか、と昨日の記事に書いたのですわ。



産経新聞は、道路車両運送法のどの条文に燃費計測の為の計測方法が規定されているにか、これを明らかにせよ。できないなら、上記記事は虚偽ではないか?


それから、燃費値の算定方法が条文中に規定されている法令はこちら。
で、どの条文に違反してて、どう違法なの?説明してみなさい。


○自動車のエネルギー消費効率の算定等に関する省令
>http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S54/S54F03802001003.html

○自動車のエネルギー消費効率の算定等に関する省令に規定する国土交通大臣が告示で定める方法
>https://www.eccj.or.jp/law06/pdf/01_20.pdf


違法だ違法だ、と言い募る側が、まずその論拠を示してみよ、と言っているのです。できないなら、報道機関がいい加減なことを言うんじゃない。
拙ブログみたいな、素人ブログ記事とは違うんじゃないですか?




三菱自動車の燃費データを巡る問題について~3

2016年04月24日 14時13分08秒 | 法関係
4)型式指定に際し、違法となるのか?


前項に関連するが、走行条件値というものの実態がよく分からない(笑)。自動車型式指定規則の3条を示したように、

『申請に係る自動車であつて運行の用に供していないもの及び国土交通大臣が定めるところにより走行を行つたもの』が、どの項目について範囲が及ぶのかが、分かり難いのである。まるで4項規定の数値の場合のみ、走行を行ったもの、みたいに言うわけだが、条文を普通に読めば、どの項目についても、「運行の用に供してないもの」か「走行を行ったもの」かのいずれかを選択してもいいかのように思えるわけである。

走行して、計測しました、という数字を出すのがダメということなのでしょうか?
この辺りの実務上の決まりというのは、自動車企業の人じゃないと分からないでしょう。


けれども、条文からすると、必ずしも排ガス測定関連の4項以外であっても、普通に1項に記載があって、4項条文中では「走行車」との文言を用いるというのが示されているだけに過ぎないように見えるのですが。



5)自動車の運行管理・使用者責任はどうなのか?

走行条件値を変えて出したことにより、排ガスの有害成分値が悪化するんだ、というような新聞記事があったのだが、走行条件値の違いが環境負荷への影響が大きく出てしまうから、型式指定取消なんだ、というなら、自動車を運転している人なり管理者に、本来的には相応の責任を負わせるべきなのでは?

自動車整備が不行き届きのせいで、排ガス中の除去機能低下とかが発生することはあるのに、これは放置されているわけである。製造責任だけ厳しく追及されるのに、使用者責任は問われないというのは本末転倒ではないか?

そんなに環境負荷を問題視するなら、一定年数を経過した車両については、車検時に除去機能試験でも実施して、部品装置交換なりを義務化してなければおかしいのでは?

それとも、軽自動車に比べ圧倒的に環境負荷の大きい大型車やSUVを厳しく制限するべきでは?


そういう話になると思うのですよ。
燃費データを誤魔化すことは、消費者への背信行為に等しく、決してよいことではないですよ。しかし、燃費は法的に規定された重要な保安基準でもなければ、型式指定に影響する事項でもないのではないですか?


もしも、欠かすことのできない重要項目である、ということなら、全カタログに記載義務化だの、販売時に必ず説明義務を課すような事項としておくべきなのではないですか?
不動産取引時の重要事項説明書だの金銭消費貸借時の金利だの、金融商品販売時の重要事項だのといったものは、法的根拠をもって説明義務があるでしょう?燃費はそれに該当するような重要事項ですかね?車検証に記載されねばならない重要事項なら、何故法的根拠を持たせてないのですか?


そんなに重要じゃない、ということで、単に消費者の選好に影響を与える一因子に過ぎないなら、過剰な社会的経済的責任を負わせるような事柄なのでしょうか?

利益、不利益のバランスが、あまりに公平性を欠いていませんかね?
勿論、企業としては、社会的責任、道義的責任を負うでしょう。信用失墜という、商売の基本中の基本に大きなヒビが入り、屋台骨を揺るがすことになるかもしれません。失うのは一瞬ですから。


だからこそ、誠実を旨とすべき、なのです。
三菱自動車が、本来あるべき企業として、不誠実であった、とは思います。残念ですがね。

けれども、まずは法的評価をきちんとすべきなのではないかと思います。



※※追加

報道などから、データ偽装の疑惑というのが、「走行抵抗」の算出について、ということらしい。

これまで、法律の条文を見てきたわけだが、どこにもそういう数値の算出の法的根拠のある指定というのは、見つからない。細目の告示でもないわけである。


で、惰行法と高速惰行法みたいな違いがある、ということらしいが、これは、法律ではないでしょう。

これは、業界団体が定めた、自主規制規格みたいなものです。


日本工業規格 JIS D 1012


の測定方法には合致しない、というだけでは?
仲間内からみれば、それは、ドーピング選手みたいなものだけれども、違法薬物に指定されていないなら、法的責任を負わせることができない、というような状況に似ているのでは。


自動車業界の定めた試験方法に違反したから、ということで、行政処分を食らうというのは違うんじゃないですかね。

>http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160423/k10010494981000.html


JIS規格を準用する、という条文は、道路運送車両法には規定がありませんけど?




残る論点は、不正競争防止法、地方税法及び租税特措法、の2つでは?
消費者を誤認させたか、ですかね。


参考までに、あなたがゴルファーで、ハンディキャップを計算する場合を考えてみてください。
練習初期の、スコアが悪い時期とか、全部通算しませんでしょう?15年前の成績を反映するわけではないんじゃ?

きちんと数えられてなかった回の誤ったスコアも除外したりするのでは?
打数を数え間違ってたスコアなのに、これをハンディの計算に算入しますかね?


そういう不備のあったデータを除外したりすると、それは捏造なのですか?
測定方法がマズいとか要領を得ない時期は外して、うまく測定できるようになってからのデータを入れたら、それは悪ですか?




よくまとまっている記事を発見。

こちら>http://160sx.cocolog-nifty.com/blog/2016/04/post-67e5.html#_ga=1.221252952.1166273368.1460868551



三菱自動車の燃費データを巡る問題について~2

2016年04月24日 13時46分35秒 | 法関係
3)型式指定違反はあるのか

自動車が販売される前提として、まずその自動車が販売されてよいかどうかをクリアする為に、型式の指定を受ける必要がある。これも、同法で規定される。


○道路運送車両法 75条

国土交通大臣は、自動車の安全性の増進及び自動車による公害の防止その他の環境の保全を図るため、申請により、自動車をその型式について指定する。
2  前項の指定の申請は、本邦に輸出される自動車について、外国において当該自動車を製作することを業とする者又はその者から当該自動車を購入する契約を締結している者であつて当該自動車を本邦に輸出することを業とするものも行うことができる。
3  第一項の指定は、申請に係る自動車の構造、装置及び性能が保安基準に適合し、かつ、当該自動車が均一性を有するものであるかどうかを判定することによつて行う。この場合において、次条第一項の規定によりその型式について指定を受けた装置は、保安基準に適合しているものとみなす。
4  第一項の申請をした者は、その型式について指定を受けた自動車(第二項に規定する者であつてその製作し、又は輸出する自動車の型式について第一項の指定を受けたもの(第八項において「指定外国製作者等」という。)に係る自動車にあつては、本邦に輸出されるものに限る。第七項及び第八項において同じ。)を譲渡する場合において、当該自動車の構造、装置及び性能が保安基準に適合しているかどうかを検査し、適合すると認めるときは、完成検査終了証を発行し、これを譲受人に交付しなければならない。
5  第一項の申請をした者は、その型式について指定を受けた自動車(国土交通省令で定めるものを除く。)に係る前項の規定による完成検査終了証の発行及び交付に代えて、政令で定めるところにより、当該譲受人の承諾を得て、当該完成検査終了証に記載すべき事項を電磁的方法により登録情報処理機関に提供することができる。
6  前項の規定により完成検査終了証に記載すべき事項が登録情報処理機関に提供されたときは、第一項の申請をした者は、当該完成検査終了証を発行し、これを当該譲受人に交付したものとみなす。
7  国土交通大臣は、その型式について指定を受けた自動車の構造、装置若しくは性能が保安基準に適合しなくなり、又は均一性を有するものでなくなつたときは、その指定を取り消すことができる。この場合において、国土交通大臣は、取消しの日までに製作された自動車について取消しの効力の及ぶ範囲を限定することができる。
8  前項の規定によるほか、国土交通大臣は、次の各号のいずれかに該当する場合には、当該指定外国製作者等に係る第一項の指定を取り消すことができる。
一  指定外国製作者等が第四項の規定に違反したとき。
二  指定外国製作者等が第七十六条の規定に基づく国土交通省令の規定(第一項の指定に係る部分に限る。)に違反したとき。
三  国土交通大臣が第一条の目的を達成するため必要があると認めて指定外国製作者等に対しその業務に関し報告を求めた場合において、その報告がされず、又は虚偽の報告がされたとき。
四  国土交通大臣が第一条の目的を達成するため特に必要があると認めてその職員に指定外国製作者等の事務所その他の事業場又はその型式について指定を受けた自動車の所在すると認める場所において当該自動車、帳簿書類その他の物件についての検査をさせ、又は関係者に質問をさせようとした場合において、その検査が拒まれ、妨げられ、若しくは忌避され、又は質問に対し陳述がされず、若しくは虚偽の陳述がされたとき。



以上の通り、型式指定に関して、燃費のデータは指定に必要不可欠な項目ではない。安全・公害防止等の為の保安基準(技術基準)に適合してさえいれば、型式指定は問題なく受けられる。燃費が、たとえ28km/lではなく18km/lであったとしても、指定は受けられよう。

また燃費ではなく有害物質除去装置のようなものが付いている場合でも、次の条文で規定され、三菱自動車の型式指定に必要な特定装置は燃費データに直接関与していない。


○道路運送車両法 75条の二

国土交通大臣は、自動車の安全性の増進及び自動車による公害の防止その他の環境の保全を図るため、申請により、第四十一条各号に掲げる装置のうち国土交通省令で定めるもの(以下「特定装置」という。)をその型式について指定する。
(以下略)


このほか、型式指定についての省令が別に存在する。
『自動車型式指定規則』である。この条文中、申請事項が規定されているので、これを見る。


○自動車型式指定規則 第3条

指定を申請する者(以下「申請者」という。)は、国土交通大臣に対し、次に掲げる事項を記載した申請書(第一号様式)を、独立行政法人交通安全環境研究所(以下「研究所」という。)に対し、その写しを提出し、かつ、申請に係る自動車であつて運行(この項の規定による提示のためにするものを除く。)の用に供していないもの及び国土交通大臣が定めるところにより走行を行つたもの(第四項において「走行車」という。)を、研究所に提示しなければならない。
一  車名及び型式
二  車台の名称及び型式
三  車体の名称及び型式
四  申請者の氏名又は名称及び住所
五  主たる製作工場の名称及び所在地
六  法第七十五条第四項 の検査(以下「完成検査」という。)を実施する工場の名称及び所在地
七  完成検査終了証を発行する事業所の名称及び所在地
八  検査主任技術者の氏名及び経歴
2  前項の申請書及びその写しには、次に掲げる書面(申請書の写しにあつては、第四号から第八号を除く。)を添付しなければならない。
一  自動車の構造、装置及び性能を記載した書面
二  自動車の外観図
三  道路運送車両の保安基準 (昭和二十六年運輸省令第六十七号)の規定に適合することを証する書面(法第七十五条の二第一項 の指定を受けた装置については、当該指定を受けたことを証する書面)
四  完成検査の業務組織及び実施要領並びに自動車検査用機械器具の管理要領を記載した書面
五  法第四十一条 各号に掲げる装置の検査の業務組織及び実施要領を記載した書面
六  完成検査終了証の発行要領を記載した書面
七  点検整備方式(自動車点検基準 (昭和二十六年運輸省令第七十号)第七条 の技術上の情報を含む。第五条の二において同じ。)を記載した書面
八  前条の購入契約を締結している者にあつては、当該契約書の写
3  国土交通大臣又は研究所は、前二項に規定するもののほか、申請者に対し、指定に関し必要があると認めるときは、必要な書面の提出を求めることができる。
4  次の各号に掲げる自動車であつて、走行時に排気管から大気中に排出される排出物に含まれる当該各号に掲げる物質の大気中への排出を第一項の国土交通大臣が定めるところにより走行を行つた状態においても有効に抑止できる装置を有する自動車として国土交通大臣が定めるものについて同項の申請をする者は、同項の規定にかかわらず、国土交通大臣が定める書面の提出をもつて走行車の提示に代えることができる。
一  ガソリンを燃料とする自動車 一酸化炭素、炭化水素及び窒素酸化物又は一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物及び粒子状物質
二  液化石油ガスを燃料とする自動車 一酸化炭素、炭化水素及び窒素酸化物
三  軽油を燃料とする自動車 一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物、粒子状物質及び黒煙




まず、分かり易い部分から。4項3号のディーゼル車の排ガスデータの偽装問題というのは、ここに引っ掛かるわけだ。が、三菱自動車の場合には、排気ガス中に含まれる有害物質の濃度(量)を捏造したりしたわけではない(除去装置なり低減用触媒装置なり?)から、ここでの規定を違反したというものではないはずだ。

仮に走行条件が変わることで、排ガス中の有害物質量が増加し、これをもって保安基準違反を構成するなら、そもそも上り勾配の道とか走行できないでしょう。
「排気ガスのデータが悪化するから」という理由で型式指定が取り消されるような自動車なら、異なる環境下で走行する日常使用には耐えられないに決まっている。そんな解説を付ける弁護士なり法学者なりがいるとすれば、是非存在を明らかにして欲しい。報道機関の責任において。


話を戻すが、燃費計測の基準となる走行方法というのは、確かに決まりごととしてあるわけだが、それは型式指定の申請事項には法的根拠をもって記載されない程度のものではないか、ということだ。

もしも自動車型式指定規則3条の規定に抵触する可能性があるとすれば、2項4号の完成検査の実施要領の記載が、実態と異なっていた、というようなことではないかな、と。
しかし、完成検査の内容については、当方は全く知らないです。なので、ここで燃費データの測定に関係する項目を実測しているかどうかが分からないのと、「実施要領」なるものが、記載すべき事項として法的に決められている範囲がどこまでなのかが分からないです。

排ガス規制を見る上で、走行条件に関する数値(仮に、以下「走行条件値」と呼ぶ)を企業が自己申告し、この数値を準用して燃費データ測定機関が燃費を算出しているのだとすると、測定機関は根拠法がないけれども準用して計測したまでに過ぎず、燃費データの偽装とまでは言えないのではないか。
法の規定なら、「燃費とは、~の数値から、これこれの計算式を用いて、算出したもの」とかの定義なり規定があるはずだから、だ。


なので、走行条件値を本来なら100と申告すべきところ、90として提出した、ということなら、これを便宜的に使用して算出した燃費データには、本来的に法的義務とか根拠法の裏付けのある数字、というものではないだろう。計測機関が、単にこれを用いて算出するのが慣例なのでそうしました、というだけに過ぎないのでは、ということだ。


もしも法令違反と問うとしても、正確な走行条件値を用いた場合、排ガス規制が制限範囲を超過するかどうか、だ。この保安基準の違反がないなら、違法を言うことはできないのではないか、ということである。


具体的に書けば(架空の話です)、「有害物質Aは、10ppm以下でなければならない」ところ、型式指定時には0.2ppmだったが、正確な走行条件値を用いて測定しなおしたら0.25ppmが結果だった、という場合、いずれにせよ10ppm以下の基準はクリアできているのだから、型式や保安基準違反でもないし取消事由にはならないでしょう、ということである。



三菱自動車の燃費データを巡る問題について~1

2016年04月24日 13時40分24秒 | 法関係
かつてのリコール隠し問題で、大揺れに揺れたことを記憶している方々も少なくないだろう。あの頃から、マスコミ各社が記者会見場において、不祥事企業への過剰な謝罪要求という光景をよく目にするようになったように思う。記者諸君のつるし上げ、というやつだ。


社会に甚大な損害を与えた企業なら、謝罪をするのも仕方のないことだろう。ただそれは、マスコミの取材記者諸氏個人に、何らかの特権を与えているものではないし、土下座させたり一斉に頭を垂れさせ、これを過剰にバッシングすることを正当化するものではないだろう。


三井不動産や住友不動産の販売したマンションの杭打ちデータ疑惑がとりあえず通過したかと思えば、今度は三菱自動車の燃費データの疑惑ということらしい。今日の朝刊には、三菱自動車の燃費データの偽装があれば、型式取消まであるかも、というような文言が見られたようだ。これは、本当なのだろうか?
どこの誰がそんなことを言っているのか、是非とも根拠を明確にしておくべきだろう。これが間違いの場合、報道機関は謝罪をするのか?お詫びして訂正報道を出すのか?

過去の法律上の争点となったもので、間違った解説など度々目にしてきたが、誰も謝罪もしないしお詫びの訂正記事さえ出されてこなかったではないか。他人の間違いを厳しく追及するなら、報道機関自身の間違いについても、同様の体制を採るべきだろう。


これまでもずっと言ってきている通り、当方は法曹でも行政関係者ではない。が、当方独自の見解をメモとして書いておきたい。


1)燃費データを規定する法律とは何か?

まずここが根本的な問題点。カタログ値なり、国交省が公表している燃費数値なりは、その数字が18km/lが正解であるべきところ、「20km/l」と記載されている場合、何の法律に違反しているのか?

報道各社で、これを正確に報じている所はあるか?この部分が曖昧なままでは、何も分からないのでは?
処分がどうなるだのという検討以前の問題だろう。少なくとも、国交省が立入検査実施の根拠とした、『道路運送車両法』には、燃費を根拠づける条文は存在しない。
今のところ、「道路運送車両法○条に基づく行政処分」とかいう話は、どうも出てこないのではないか、ということである(もしあるというなら、是非ともご教示下さいませ)。
すると、同法の罰則適用といった話には直結しないでしょう、ということです。


2)道路運送車両法の規定は何か

重要点について規定されているので、これを示す。行政権限が及ぶ範囲は、具体的に列挙されている。原発でも自動車でもほぼ同じ。保安基準・技術基準に適合してないと運行できません、というものである。


○道路運送車両法 40条

自動車は、その構造が、次に掲げる事項について、国土交通省令で定める保安上又は公害防止その他の環境保全上の技術基準に適合するものでなければ、運行の用に供してはならない。
一  長さ、幅及び高さ
二  最低地上高
三  車両総重量(車両重量、最大積載量及び五十五キログラムに乗車定員を乗じて得た重量の総和をいう。)
四  車輪にかかる荷重
五  車輪にかかる荷重の車両重量(運行に必要な装備をした状態における自動車の重量をいう。)に対する割合
六  車輪にかかる荷重の車両総重量に対する割合
七  最大安定傾斜角度
八  最小回転半径
九  接地部及び接地圧



ここに「燃費」の項目はない。次も見てみる。


○道路運送車両法 41条

自動車は、次に掲げる装置について、国土交通省令で定める保安上又は公害防止その他の環境保全上の技術基準に適合するものでなければ、運行の用に供してはならない。
一  原動機及び動力伝達装置
二  車輪及び車軸、そりその他の走行装置
三  操縦装置
四  制動装置
五  ばねその他の緩衝装置
六  燃料装置及び電気装置
七  車枠及び車体
八  連結装置
九  乗車装置及び物品積載装置
十  前面ガラスその他の窓ガラス
十一  消音器その他の騒音防止装置
十二  ばい煙、悪臭のあるガス、有毒なガス等の発散防止装置
十三  前照灯、番号灯、尾灯、制動灯、車幅灯その他の灯火装置及び反射器
十四  警音器その他の警報装置
十五  方向指示器その他の指示装置
十六  後写鏡、窓ふき器その他の視野を確保する装置
十七  速度計、走行距離計その他の計器
十八  消火器その他の防火装置
十九  内圧容器及びその附属装置
二十  その他政令で定める特に必要な自動車の装置



さて、この条文にも「燃費」を規定できる根拠はない。20号の「その他政令で定める装置」にも、燃費項目は関連がないのである。通常の自動車に関する根拠法としての基本的事項はこの法律に規定されているが、どこにも「燃費」算出に関する根拠は見当たらない。


これが、当方の主張する「道路運送車両法違反」を指摘できる事実は、今のところ発見できない、ということである。あるなら、知りたい。


更に見てみよう。41条に列挙される各装置類について、具体的な保安基準が定められており、これの規定は以下である。

道路運送車両の保安基準

>http://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_fr7_000007.html


これに関連して、『道路運送車両の保安基準の細目を定める告示』と同別添、というのもある。膨大な量なので読むのは面倒ですが、「燃費」を規定する項目は発見できない。あるのは、所謂「排ガス規制」関連のみ、である。これは例のVW社のデータ偽装が問題になったものだ。

少なくとも、三菱自動車に対し、「御社は道路運送車両法の40条乃至41条に違反していますね」という指摘を行える事実も根拠も、未だ発見できない、ということである。



玉井克哉東大教授の珍説~電力事業者は「原発を自発的に停止できない」(追記あり)

2016年04月19日 00時39分35秒 | 法関係
遂に、ここまで来ましたか。行政法のプロを自認する方が、驚くべき解釈を提示しているようです。


https://twitter.com/tamai1961/status/721969289612242944

(法律の学生向け)原子力発電所の運転を電気事業者が「自発的に」停止することなどできないということについて。電気事業法6条2項4号イ、同9条1項、同3項、同法施行規則10条1項ロ。こういう条文を10分以内に探し当てることができれば、セミプロ級といえる。



全くもって意味不明なのだが、電力事業者は自分たちの判断で原発を停止できないなら、一体全体誰が停止させられるというのだね?(笑)
プラントのどこかに不具合とかが発生したら、普通に事業者が停止するでしょうに。それすら許されないというのなら、あれですか、原子力規制委員会が一から十まで全部命令するとでも?


全く、何を言ってるんだか。東大の法学ってのは、こんなもんなんですかね?


参考までに、改正前の電気事業法についての記事は拙ブログでも幾度か取り上げたことがあります。

こんなのとか
2014年1月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/8da760d94d6e08b3bcd32f30c09ab5b5


全く法学の先生方ってのは、あてにならんな、とかの昔話はとりあえずおいといて。

今回の電気事業者が発電設備を運転したり停止したりするというのを、自発的にできない、などという解釈は全く成り立ちませんね。妄言に等しいでしょう。電気事業法6条事項の変更届出が9条に規定されている、というだけであって、原発に限らず、火力だろうと水力だろうと、どの設備を稼働させ発電するか、どれを停止させ点検に回すか、といったことは、ある程度の自由裁量が電気事業者に認められているに決まっているでしょうに。これが電気事業者は「自発的に停止できない」などとする根拠は条文から読み取ることなど不可能でしょう。


因みに、玉井教授の暴論を知る前から、当方も電気事業法を読み返していたのですが、その理由というのは川内原発を停止するよう大臣権限で要請できる根拠条文があるかどうか、という点を探したかったから、です。


結論からすると、経産大臣は直接的な停止命令権限を発動するというのは、あまり明確ではない、ということですね。これは想定された通りでした。が、完全否定かといえば、必ずしもそうでもないかもしれない、とは思えます。


(1)原発の主務大臣は経産大臣

基本的な原則というのは、原子力規制委員会の権限が主要なものとなっていますが、電気事業者への所管という観点からすると、主務大臣は依然として経済産業大臣である、ということです。

○電気事業法 第百十三条の二  
この法律(第六十五条第三項及び第五項を除く。)における主務大臣は、次の各号に掲げる事項の区分に応じ、当該各号に定める大臣又は委員会とする。
一  原子力発電工作物に関する事項 原子力規制委員会及び経済産業大臣
二  前号に掲げる事項以外の事項 経済産業大臣


1項1号にある通り、原子力発電工作物に関しては、規制委員会と経産大臣の並立ということになっています。従って「主務大臣である」と言うことは間違いではないし、依然としてそう主張することもできる、ということです。


(2)経産大臣権限(命令)は一般電気事業者に及ぶ

主要な監督権限というのは、原則として原子力規制委員会ということですけれども、場合により経産大臣からの命令があり得ないわけではない、という根拠を条文で示します。


○電気事業法 第三十条  
経済産業大臣は、事故により電気の供給に支障を生じている場合に電気事業者がその支障を除去するために必要な修理その他の措置を速やかに行わないとき、その他電気事業の運営が適切でないため、電気の使用者の利益を阻害していると認めるときは、電気事業者に対し、その電気事業の運営の改善に必要な措置をとることを命ずることができる。


ここで言う、「その他電気事業の運営が適切でないため、電気の使用者の利益を阻害していると認めるとき」に該当していれば、必要な措置を命ずることができます。九州の場合では、どういうことが考えられるか?
例えば、外部電源喪失となる可能性が十分想定されている時、川内原発が自動停止条件に現状では至っていなくとも、近々自動停止してしまう虞がある場合、です。なおかつ、その停止により代替供給余力が充足できない可能性が高いなら、自動停止に至る前に供給力の計画から落として、中国電力、中部電力や関電に広域融通を事前に計画に入れさせておく、という措置を命じるような場合です。


原発が緊急停止して178万kWの供給力が一気に脱落し、その瞬間から急いで手当するより、事前に織り込んで対策を講じておく方が電気使用者利益を阻害せずに済む、ということが考えられる場合です。通常であれば、原発が緊急停止しても(実際今年にも電力供給が途絶えたことがあった)、供給余力が自管内で確保されていることが多いですが、今回のような地震発生では原発以外の同時停止もあり得るから、ですね。


九電に対する電気事業の運営に関する措置命令は、こうした発電施設の稼働や他電力会社との融通をも含むと考えるのが妥当ではないかな、と。


別な条文も挙げてみます。

○電気事業法 第三十一条  
経済産業大臣は、電気の安定供給の確保に支障が生じ、又は生ずるおそれがある場合において公共の利益を確保するため特に必要があり、かつ、適切であると認めるときは電気事業者に対し、次の事項を命ずることができる。ただし、第三号の事項は、卸電気事業者に対しては、命ずることができない。
一  一般電気事業者、特定電気事業者又は特定規模電気事業者に電気を供給すること。
二  電気事業者に振替供給を行うこと。
三  電気事業者から電気の供給を受けること。
四  電気事業者に電気工作物を貸し渡し、若しくは電気事業者から電気工作物を借り受け、又は電気事業者と電気工作物を共用すること。
五  前各号に掲げるもののほか、広域的運営による電気の安定供給の確保を図るために必要な措置をとること。



この5号規定が使えるのではないかな、と。
すなわち、電気の安定供給の確保に支障を生じるおそれがある場合、「電気の安定供給の確保を図る」ために必要な措置をとることを「命ずることができる」ということです。公益の必要性と措置命令が適切である、という条件が必要ですけれども、前記のように説明が可能ではないかと考えます。


以上から、主務大臣は経産大臣であること、場合により措置命令は発動可能であること、というのが、拙ブログでの考え方です。措置命令については、裁量の余地があるものであり、見解の相違はあると思いますが、発電施設の運転・停止や広域融通を含むというのは、無理筋とは思いません。


話が戻りますが、玉井教授の見解は全く違うとしか思えないですね。

プロがこれで恥ずかしくはないのでしょうか?
意味がわかりません。


20日追記:

まとめができていたようです。

>>http://togetter.com/li/964467


東大の教授って、どういう感覚でこういう妄言を吐くんだろうね(笑)。一般常識的に考えれば、普通に分かることを、わざわざ解説付きで全然成り立たない解釈を大上段からぶってくるって、全く意味不明。


玉井曰く、『電気事業法上は原子力も火力も水力も「電気工作物」なので、いま挙げた条文は原子力に限らない。この辺も、基本がわかってないと感覚的につかめない』ってさ。


勿論、そんな玉井教授みたいな、感覚を持ってるわけないですよ。だって、そんな解釈はどう逆立ちしたって、出て来ませんもの。こういう解釈を発明できる玉井教授の「感覚」ってのが、信じられませんわ。


で、『20日以内に経済産業大臣が判断する仕組みになっていて、事業者の「自主的な」判断がすぐに実現しないようになっている。この辺、事前規制から事後規制への転換を(建前上は)図りつつ主務大臣の介入権限を残す、苦心の立法。』だと?


オイオイ、事業者の自主的判断が「すぐに実現しないようになっている」って、日々の電力供給の調節をどうやるのだね?
届出して、20日以内の判断を仰いでから、実現してるって?(笑)


寝言にもならないですね。
東大教授もこんなザマ、霞が関官僚集団の杜撰な法解釈といい、日本は危機的状況だなと実感できるわ。



川内原発差止め仮処分に関する福岡高裁宮崎支部の決定について

2016年04月16日 15時47分22秒 | 法関係
先頃、熊本を中心とした地震頻発により、被害を受けられた方々にお見舞い申し上げます。日本は、本当に自然災害と共に生きる国、ということなのでしょう。亡くなられた方がおられ、非常に悲しく、また痛ましく思います。


今月上旬に、川内原発の運転差し止め仮処分を巡る高裁決定が出された。それは、運転を停止させる仮処分は認めない、というものだった。裁判所の判断としては、事業者側が言ってることをほぼ丸のみして、「国の定める基準は正しいの一点張り」というに等しいものだった。


これは、差止め訴訟で敗北した福井地裁決定(15年12月)とほぼ同等の理屈を並べたもの考えてよいであろう。国が基準を作っており、その基準に合格したのだから、原発は安全だ、と強弁しているに過ぎないということ。例えば、基準地震動について、過去6年に5件の基準値超過があったという指摘に対してでさえ、実際にはそうだけど「原子力規制委員会が策定した基準に不合理はない」と何の根拠もなく裁判官個人が断定しているに過ぎないのである。宮城沖地震、新潟中越地震や東日本大震災という地震が極めて稀であって、地域特性に過ぎないのだ、と。
まるで「この患者特有の、特異体質に過ぎない、だから、仕方がない」という言い逃れをしている医療裁判での主張のようである。イマドキ、こんな言い分は殆ど通用しないだろう。特異体質が、「本当に特異体質であること」の立論ができてなければ認められるわけがない。


裁判官の屁理屈から言えば、「九州では起こらない」と自分勝手に決め付けただけのものに過ぎない、ということだ。


今回の熊本周辺で発生した地震について検討されることと思うが、事前にこの規模の地震が想定できたかどうかが問題となろう。九州電力の理屈から言えば、当然に想定範囲内であると断言できることだろう。想定できないのであれば、想定できてなくとも対応できるような体制をとるのが合理的だろう。いやそれとも、九電も裁判官も、「熊本が特異な地形なり地質だったに過ぎない、鹿児島では起こるわけがない」と言い切るだけの理由を有していることだろう。それを示せばいいのである。熊本では起こったが、鹿児島では起こらない、という具体的な理由を科学的に説明できよう。


仮処分の決定について、今回の熊本の地震がなかったとしても、追及できる可能性のある論点を指摘しておきたい。


1)川内原発を営業運転しなければならない理由とは何か?

最も重要かつシンプルな点がこれだ。何故運転をするのか?
当然、九電は民間企業であるから、営利的行動をとるということになるだろう。九電の理由を具体的に挙げさせるべきである。営利目的とは、要するに経済的利益を追求すること、である。

そこで、九電が川内原発に基準合格を得る為に実施した、追加的コストを正確に出させるべきである。また廃炉予定までの実稼働年数を正確に出させ、検査以外の営業運転時間を出すよう求める。運転により増加する使用済み核燃料・放射性廃棄物の処理コストや維持管理コストも当然算出させる。


これら費用と同じ額を、別な(例えばガス等火力や再生可能エネルギー)発電所を設置した場合のコストを比較して、発電量の差を見るのである。例えば、1000億円で火力を設置して同じ稼働年数を経過した場合の、発電コストの差を比べるのだ。それとも、他電力会社からの電力買入した場合と比べるのである。

この時、経済的利益を目的とするのが九電の民間企業としての役割である、ということなら、具体的に経済的利益の大きさの比較を行えばよいのだ。もしも、川内原発の再稼働の為にかかった費用の方が割高であって、更に、九電がいう安全レベルではなく、より大きな基準地震動に対応できる安全レベルにする場合の追加コストが大きい場合には、九電の経済的利益を優先するという点で、民間企業の役割に反していることになるのであるから、そもそも自己矛盾でしかない。

別な電力会社から購入した方が安上がりであれば、再稼働をする必然性という点において、株主利益に反し電力事業者としての本義に反するのは明らかである。

医薬品の副作用は、他に替え難い手段であり、利益享受側が圧倒的に多いので、ある限度においてリスクが許容されているのである。裁判官が言う、リスクを受け入れるのはやむを得ない、というのは本来そういうことであって、他に代替可能とか、敢えて損失を受け入れるべき理由がないなら、その薬剤である必然性がない。「どうしてもその薬剤でなければならない」という理由がなければ、薬剤として認可すべきとは言えない。また薬剤のリスク受け入れというのは、そもそも各個人に使用の選択権が与えられているものであって、「リスクを承諾した上で使用する」かどうかは、個人が決定できるものだ。リスクを承諾できない人は、使用しなければよい、という原則が守られているのだ。飛行機搭乗でも、鉄道利用でも同様である。稀に事故が発生するが、そのリスクを承諾できない人は利用しなければよい、という原則になっている。原発は、そうなっていない。裁判官はリスクの受け入れの考え方が、根底からして不適切である。


2)運転から30年以上経過した原子力施設の劣化問題

九電も裁判所も、原発で過酷事故が発生しても、多重防御で大丈夫だと言う。ならば、実際に過酷事故が発生した際に、現実にどうやって対処するかを答えるべきである。
主蒸気管が大破断したら、どうやって冷却するのか?
その場合、冷却水はどうやって圧力容器を冷やすか?

さて、ここで問題がある。
東電が福島原発事故後に「1号機のICを手動停止せねばならなかった理由」を覚えておいでだろうか?

マニュアルによれば、55℃/h以下の冷却速度を守らねばならなかったから、だったであろう?
現実に事故が発生したら、計測機器も満足に読めないとか、パラメータが分からないとか言っていたでしょう?
それと同等の状況が発生するかもしれない、ということだ。そして、冷却手段がある限り、手探りだろうとも冷却する、ということになってしまうわけである。


では、冷やせる機能が残存していれば、それで問題がないのか?
ここで先の1号機停止の理由というのが関係してくるのである。とても冷えた水をかけてしまうと、場合によっては金属製の部材が破損するかもしれない、という問題が発生するのである。

圧力容器に冷却水が大量にかけられた時、水は金属部分に当然かかるわけである。その金属は、本当に破壊されないのか?圧力容器本体は、すぐには温度が下がらないだろう。しかし、貫通する配管類はどうか?バルブ周辺の接合部はどうなのだろうか?バルブを動かす部分は?

ここに、「熱衝撃」の問題が潜んでいるはず、ということだ。福島原発のBWRと違い、加圧水型PWRは圧力容器の圧力がずっと高く(約2倍以上)設定されており、熱衝撃により金属部分に亀裂を生じたりすると、それが時間経過と共に強圧が加わることで拡大しうる、ということが考えられる。
しかも、長期稼働原子炉の場合、中性子線照射の影響などにより照射脆化も生じること、加圧と減圧(炉停止)のサイクルによる疲労蓄積、腐食、等の問題を生じることは回避できない。


従って、たとえ冷却手段は残されており機能する、と主張できたとしても、これが安全性を担保することには直結せず、かえって冷却手段を用いることが加圧熱衝撃による破壊を惹起しうる、ということである。

すなわち、
・30年以上運転期間を経過し
・劣化している材質が必ず存在し
・事故時の限定的な冷却手段しか用いることができない

としても、どのような場合であろうと、
ア)熱衝撃による破壊を免れる、
イ)たとえ圧力容器から漏洩しても何ら問題なく処理できる、
といういずれかの立論が必要となる。


ア)の場合だと、例えば
・各部の細かい温度が必ず計測できるので、一定以上の温度低下にならないように冷却をコントロールできる
・どのような温度低下が生じても、各部材の強度、耐久性が上回っているので、熱衝撃で破壊されることはない(=実証実験が存在する)
のいずれかを証明できればよい。


冷却方法をコントロールできる、というのは、福島原発の場合だと「ICを手動停止する」とか、「動いていたHPCIを手動で止めたら他が動かせなくなってしまった」というようなことである。冷却を止めたり動かしたり、というのが自由自在に可能だ、というようなことですかね。
一口に「冷却速度を調節する」と言うが、簡単なことではないし、多重過酷事故の最中に55℃/h以下の基準を守って冷却する、というのが、至難の技であり芸当というか職人芸的能力発揮を必要とされることを裁判官は無知ゆえに知らないのだろう。温度計全部を本当に管理でき、各部温度変化も基準値内に収める、ということが事故時に本当にできるのか、という問題なのだ。できる、と主張するなら、その証拠を見せてみよ、と。そういうこと。


ア)の後者の場合であれば、30年以上の照射年限を経過した材料で、現実の稼働原発と同等条件下で、見境なく冷却してみたとしても、配管やバルブやバルブ周囲の可動部に用いられてる金属材なりが、熱衝撃により破壊されず耐え得る、という実証をすることだ。30年稼働(照射)という条件が、クリアできるかな?圧力容器本体は同等材料が入れられており、定期的に検査されていると思うが、本体が破壊されずとも、他部材に冷却水が大量にぶっかけられて、加圧された状況下でも本当に耐え得るものなのかどうか、その証明は本当にできるのか?



イ)であるが、BWRよりもずっと高温強圧に加圧された圧力容器に接続するどこかに破壊が生じたとしても、プラントの健全性は保たれる、と。格納容器のどこにも脆性は存在しない、と。作業員は何ら問題なく、事故対応が継続できる、と。そういう証明ができることでしょう。
仮に今後20年以上の稼働期間を見込んでいるなら、運転開始から50年以上経過したプラントの安全性について評価する方法を持っていることでしょう。それを示せばよいのだ。


それから、フランスの原発について、ニュースを少し。

ドイツが隣国フランスの原発を廃止するよう求めていた件である。

>http://www.afpbb.com/articles/-/3079347


フェッセンハイム原発を廃止せよ、と他国民がフランスに対し要求するという、日本では考えられないような事態ということである。当然、自国の政策なのだから、フランスとしては突っぱねたいところだが、何せ関係の深い両国ということもあり、何とフランスが受け入れを表明した、とのことである。

>http://www.afpbb.com/articles/-/3079469


また、スイス・ジュネーブはやはり隣国フランスのビュジェ原発について、『故意に住民を命の危険にさらし、水を汚染している」として提訴』(AFP記事より)となっている。
日本人の提訴が国際的に見て特別変わっているわけではない、ということである。


裁判官を米国に研修に派遣する、という話があったと思うが、そもそも派遣以前に国際的な事情なり知識を欠如した裁判官たちをどうにかするべきなのだ。
いやいや、国際感覚云々以前の、日本のごく普通の常識的なことを、ごく普通に思考できる判事となれるよう、教育なり研修なりをするべきなのである。


アメリカのインチキ経済はどうすんの?~5 隠蔽される米国債務

2016年04月03日 14時27分47秒 | 経済関連
かつて、日本経済が危機的状況に陥った時、90年代終わり頃の「金融危機」と喧伝された時代には、日本の当局者たちが「債務を隠してるんだ、不良債権を隠蔽してるんだ」ということで、濡れ衣だろうと何だろうと、無理矢理数字を出させられた。


あの時代、銀行の人間たちは大勢が自殺したり、リストラの嵐に巻き込まれたりした。
監督官庁の大蔵解体、日銀も被害と無関係でいられるはずもなかった。


そして、下火になった後になってでさえ、竹中平蔵が登場してきて、やっぱり同じように「不良債権問題」という虚像を作り出され、一部銀行等金融機関が生贄とされたんだ。「貸し剥がし」「貸し渋り」が横行し、監査法人をも標的とされた。


これらの時代に共通していたのは、兎に角、海外投資家勢の「情報を開示しろ、もっと不良債権があるんだろ、借金を隠しているんだろ」という強行な主張であった。買い叩きに遭ったんだ。


そして、日本は国家破綻する、と喧伝された。
格付けは、みるみる引き下げられ、為替暴落だの国債暴落だのという脅し文句に屈したわけだ。


ところが、である。
未だに、日本円は「安全資産だから通貨が買われ、円高になる」などという”デタラメ”の風説が報道でも堂々と流されているのである。そんなバカなことを言う前に、まず米英日等の主要国の格付けの一覧を出してから、「ドルより円が買われました」とか「ポンドより円が買われてしまいました」とか「ユーロより円が買われるという不可解現象が起こっています」、等々、解説すべきだろう。



トリプルAって、どこの国の話ですか?そこより、円が安全資産なんて話は、どこからどうやったらできるのですか?、って聞いてやれよ(笑)。

ま、昔話はいい。


問題は、米国の債務が本当はどうなっているのか、という話だ。

>http://thutmose.blog.jp/archives/30026570.html


少し以前の記事のようですが、ネットで偶然遭遇したので。
この記事によれば、2010年頃に連邦債務以外の、州政府や自治体の債務の推定規模について、米国での論文があったということのようです。
(『元米財務副長官のロジャー・アルトマンという人物が2010年に債務に関する論文を発表』との記述あり)


偶然と言ってはなんだが、拙ブログ記事でも当時から書いていた。

こちら
2010年1月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/0e68ef2c26b510113796569367a13ff9


当方は、日経記事を契機として、推計を書いてみたものですが、当時からGDP比で200%という推計は、そんなに大きく外れていないのではないかという感触を得ていました。アルトマン氏の論文というのがいつのものか不明ですが、直観的には似た線になっても不思議ではないかな、と思えます。


で、その後にも、米国債務とか、米国の経済統計の数字の変更や不一致というのが、過去に遡って行われているのではなかろうか、という疑いは続いていたわけです。


2013年10月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/ebe17155a61443acd2fcc2f59b826765

2015年2月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/63415ff19126e62f57161dd7609eabc2

2015年2月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/3532fc5a0ba66037db67b5c00aecbe7a

2015年7月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/8ed53e767d3f8a4df57a4b194119e166



2013年10月
>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/0bf8e08970c02a347fdd35eab731f22f

>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/f0374cef63396afc2d7530ffcac823a7




どうして、米国の巨額債務の持続可能性は、問題とされないのか?
プエルトリコのデフォルトくらいとはケタが違う。海外勢が債務を支えないと無理なのに、一体全体誰が米国債を買っているのか?

米国の家計と企業が一般政府債務を支えているって?
本当ですかね?

なら、経常赤字が継続しないでしょう?
海外からの入金が超過しているんですよ。とすると、海外勢の比率が過半数となってもよさそうなのに、何故かそうならないわけだ。おかしいですよね?
外貨準備が減ってるなら、誰もドルを買えないはずなのに、ロシアルーブルも人民元もブラジルレアルも、対ドルで歴史的通貨安が達成されているわけですわ。誰か、どうやってドルを買っているのでしょう?何の通貨で?(笑)

円ですか?
違いますよね、だって、円高になったから。対ドルでは、円が買い超過であり、ドルは相対的に売られているわけで。ならば、ユーロでドルを買っていると?

ユーロは対ドルで上がっているから、やっぱりドル売りユーロ買い、という傾向にあるというはずですわな。
ドルでドルは買えない(爆)。


これが、胴元のかっぱぎシステムってやつですか?
為替支配、通貨取引システムを制御している側の特権、と?


謎すぎる。


日本には、極端なまでに情報を開示せよ、と要求しておきながら、米国は情報隠蔽、経済統計数値の「条件変更」という名の捏造同然の書き換え等、怪しいことが多いのだ。
中国の統計に文句など言える立場にはない。