エッセー

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やぶヘビだった学術会議

2020-11-02 17:41:46 | 読書

 政府による学術会議会員の任命拒否問題で揉めているニュースを見ながら、オヤと思ったことがある。                                                                         一つは政府の介入は学問の自由侵害だと反発している会員が実は公務員だということ。  もう一つは反発している学術会議の内部でデュアルユース(軍民両用)技術の研究に対して会議側から不当な圧力があったという。                  どちらのニュースにも違和感があって考えさせられた。た。                   
                                                                         ▼やぶヘビだった学術会議
 政府権力による学問の自由侵害、学術会議の独立性侵害が問題とされているが、年間10億の政府予算を使っている組織の公務員ならすくなくとも政権からの独立性はないと考えるのが常識ではないだろうか。

 学問の自由と学術会議の独立性を確保したければ早い話、民間組織にすればよいことも庶民からすれば常識だと思う。

 疑えば切りがないが、テレビに出ている学術会議関係者の発言を聞いていると公金(税金)に対する感覚が鈍いように感じられる。愛知トリエンナーレの少女増問題の時と似ているように思われた。                      歯切れよい発言で知られる橋本元大阪府知事はテレビで、こんなことを言っていた。「学術会議が庶民から応援されない原因は、会員の一部に自分たちが正しくて高尚なことをしているという、思い上がりがあるのではないか」。同感だ。                                  
                                                                   ▼デュアル・ユース(軍民両用)技術問題
 防衛省の安全保障技術研究推進制度に応募した北大の「船の摩擦抵抗を減らし、燃費を軽減する研究」が日本学術会議の圧力で辞退に追い込まれた、という。

  この件は根底に「国益と学問の自由」に関わる重大な問題がある。 原爆や毒ガスなど科学技術の軍事関与の反省からデュアル・ユース(軍民両用)技術に敏感なことは分かるが線引きが難しい。パソコンを始め軍事技術の民生転用、民間技術の軍事転用は数知れない。そもそも科学技術を軍事と切り離すことはできないという人もいる。
 まして左右いずれにしろイデオロギーに基づく偏った判断は危険でさえある。アメリカの原爆実験は「悪」だが、中国の原爆実験は平和のためだから許せる。という意見があったことを思い出した。

 デュアル・ユース(軍民両用)技術の線引きは「改憲・護」に直結する敏感な問題でもあり、難し過ぎて、簡単には解決しそうにもない。しかし少なくとも北大の「船の摩擦抵抗低減研究に学術会議が圧力を掛けることは行き過ぎ(オーバーシュート)に見える。
                                
知識人に対する不信感                                            学術会議会員の任命拒否問題では社会科学系会員がクローズアップされている。

 偏見かも知れないが私は知識人に対して以前から不信感を持っている。    
 戦前・戦中の軍部に対する知識人の迎合、戦後のGHQに対する隷従、これら知識人の言動について丸山真男は「不甲斐ない知識人」と言った。おこがましいが、同時代人の庶民としてまったく同感なのである。                             
 アメリカの占領が終わったあと「戦後民主主義者」は「弱い日本政府」に対して反体制・反権力というよりいじめに近い批判を続けている。
 アンパンマン作者やなせたかし氏の尻馬に乗るわけではないが、「犠牲を伴わない」戦後民主主義者の「我こそ正義の」言動はうさんくさい。                
                                                                ▼温和しすぎる日本のタックスペイヤー(納税者)    
  今回の学術会議問題では図らずも学問の自由に関連して公金(税金)、国益、という微妙な問題の存在がクローズアップされた。
  
  アメリカのタックスペイヤーは税金を払っていることに誇りを持って盛んに政治的発言をしている。                            
   日本の庶民は知識人に対して劣等コンプレックスを持っている。知識人批判は羨望嫉妬の裏返しであることが多い。このためどうしても発言が控えめになる。                                       しかし情報革命の時代だ。誰でもどこでも何にでも簡単に発言できる。ポピリュズムにも良い点が多い。日本の庶民もタックスペイヤーの立場から学術会議問題の議論に参加し、大いに意見を発信してはどうだろう。                                                                                  (2020/11/02 )