エッセー

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創造するAI(人工知能)

2018-12-15 11:44:06 | 読書

  最近AI(人工知能)関係の報道屋書籍がずいぶん増えている。たまたま書店で「人工知能に哲学を教えたら」(岡本裕一郎)という易しくて面白い解説書を見つけた。AIは人間と同様に独創し創造することができるというのだ。人間社会が激変するというシンギュラリテイ(技術的特異点)の前触れは既に始まっているのかもしれない                                    

ピカソと剽窃

「人工知能に哲学を教えたら」では小林秀雄の評論から「模倣は創造の母である」という言葉を引用し、高階秀爾著「ピカソ剽窃の論理」からは「ピカソには剽窃が多い」という説を引用している。その結果、要するにオリジナルとコピー、創造と模倣ははっきりと分断し区別できるものでないという。         

 そういえば「ピカソは本当に偉いのか」という題名の本があったことを思い出して、ネットで検索してみた。すると、ピカソの「凡人は模倣し天才は盗む」を始め、スティーブ・ジョブズ(Appleの創業者)、トーマス・エジソン、 サルバドール・ダリ、いずれも似たようなことを言っていることが書かれている。       

 つまりは「要素の違いと組み合わせで独創も創作もできる」のであり、したがってAI(人工知能)も人間と同様に「創造」できると論じているのだ。       
そういえば芥川竜之介の小説は「二次創作」が多いと何かの本で読んだことも思い出した。 科学技術についても「大発見大発明の時代は去り、現代は組み合わせの時代」だという誰かの言葉も思い出した。

AI(人工知能)と人間の未来像
 AI(人工知能)はあくまでも機械だ、マシーン・システムだと言っているうちに気がつけば創造的だと思っていた自分の仕事を奪われているかもしれない。新技術に一喜一憂するのも考えものだが、既にAIが小説を作ったり絵を描く時代である。新聞の社説やコラムもAI(人工知能)に書かせた方がよい、という時代がすぐ目の前に迫っているようだ。
 独創と創造が命の芸術家はどうなるのだろう。オピニオンリーダーを自負している新聞の論説委員はどうするか。余計なことだが気になる。

 2023年万博の日本開催が決まったが、万博のコンセプトとAI(人工知能)の進歩はがどう重なるのか、AIは明るい未来志向と調和できるのか。こちらは万博まで生きているのは無理な年齢なのだが、それでも気になる。                                   (2018/12/15)


国民投票とデジタル・ポピュリズム

2018-12-14 11:52:57 | 読書

  サイバーセキュリティーの担当大臣が{パソコンは使わない」と言ったことで、話題になり、海外メディアまでが報道する騒ぎがあった。
アメリカでは大統領選挙(2016年)のロシア干渉疑惑に絡んで「デジタル・ポピュリズム」やサイバー攻撃が問題になっている。                      福田直子著「 デジタル・ポピュリズム」では、「巧妙なサイバー戦略は日本の国民投票でも使われるのは間違いない」としている。この著書の副題は「操作される世論と民主主義」となっているが、日本では憲法改正の国民投票が現実味をおびて近づいている。 もともと「ポピュリズム」は愚民政治などと訳されてイメージが悪い。それがデジタル技術で情報操作されているとなると、なんとなく不気味で、心配になる。

デジタル技術と庶民の個人情報                       「デジタル・ポピュリズム」の記述には「フィルターバブル」、「ボット」、(注参照)など聞き慣れない言葉が頻繁に使われている。パソコンやスマホを使わない人には無縁のことのように見えるが、実はスーパーの「ポイントカード」などから情報がビッグデータに取り込まれ、否応なしにデジタル技術の空間に組み込まれているという。更にアメリ大統領選挙やイギリスのEU離脱国民投票におけるサイバー攻撃の仕組みがいろいろ説明されていて、本人が知らない間に意図的な世論操作に関与させられているという。

憲法改正の国民投票と「デジタル・ポピュリズム」
憲法改正問題で日本の世論は右と左に分断されている感がある。直接民意を問う国民投票を前にして、マスメディアは衰退しオピニオンリーダーとして世論を形成する力は既に無い。期待されたソーシャルメディアは未成熟で大部分の情報や意見はジャンク(がらくた、くず)だといわれている。選挙に強い創価学会と日本会議の政治活動はほとんど報道されない。こんな情報環境のなかでデジタル技術による
情報攪乱あるいは世論誘導が加わったらどうなるのだろう?    

メディア・リテラシーも限界?
 遅ればせながら巨大IT企業ガーフア(GAFA~グーグル、アマゾンドットコム、フェースブック、アップルの総称)に対して規制の動きがあり、中国のIT大企業「ファーウエイ」幹部も逮捕された。経済問題と軍事問題が複雑に絡み合っているようだ。

 戦前戦中は軍部とマスメディア(新聞・ラジオ)に、そして戦後は左翼マスメディアに煽動されて付和雷同してきた自分が惨めに見えることがある。そんなことから大いに反省したつもりで、メディア・リテラシーも少しは勉強した。           国民投票も自主的に考え抜いて一票を投じようと思っていた。だが「デジタル・ポピュリズム」の複雑で危険な流れを教えられて、今度はネットに振り回されるかもしれないと不安になる。                  

(注):ネット検索の要約                          *「フィルターバブル」
インターネットで、利用者が好ましいと思う情報ばかりが選択的に提示されてしまう現象。自身の作り出したフィルターで泡(バブル)のように包まれて、思想的に社会から孤立するさまを表す。米国の活動家イーライ=パリサーが自著で用いた造語。

*「ボット(Bot)」
 インターネット上の操作を自動でするプログラムのこと。不特定多数のブログに広告などを自動的に書き込んだりする不正目的のボットも存在する。
                           (2018/12/14)