ギリシャ神話あれこれ:黄金の雨に抱かれたダナエ

 
 ギリシャ神話を日々読んでいた小学生の頃、私は、雨に身を包まれるというのはどういう感覚なのか、経験したくてたまらなかった。シャワーで試すことを思いついたが、当時、家にはシャワーがなかった。
 で、それが唯一経験できる機会が、学校でのプールの時間だった。プールに入る前に、列になってシャワーの通路をくぐる、たった10秒ほどの瞬間。それを待ち侘び、それに賭けて、私は全神経を集中して、雨に包まれる感覚を味わおうとした。カルキのニオイを嗅ぎながら。こんなもんか? こんなもんなのかー?? と心のなかで首をかしげながら。

 アルゴスの王アクリシオスは、息子が欲しくて神託を受ける。が、神託は逆にこう告げる。お前には息子が授からないどころか、やがて生まれる、一人娘ダナエの息子に殺されるだろう、と。
 予言を恐怖した王は、いかなる男も近づけぬよう、ダナエを青銅の塔に幽閉してしまう。
 
 孤独と絶望で一人涙に暮れるダナエ。が、ダナエの美しさに眼をとめたゼウス神が、黄金の雨に姿を変えて、屋根の隙間(天窓みたいなものかな?)から、ダナエの上へと降り注ぐ。
 
 こうしてゼウスが通うようになってしばらくして、ダナエは身籠り、男の子を産む。この赤ん坊が、後にギリシャ神話屈指の最初の英雄となるペルセウス。

 やがて赤ん坊の存在は、父王の知るところとなる。厳重に監禁した娘が妊娠した時点で、相手は自分の力の及ばない存在なのだから、王は自分の運命に対してもっと達観すべきだったのに。
 が、王は驚愕し、パニックとなる。娘と孫を殺してしまうわけにもいかず(古代ギリシャでは近親間の殺人は最重罪。復讐の女神エリニュスたちがやって来る)、苦悩の末、二人を木の箱に閉じ込めて、海へと流すことにする。まあ、未必の故意。

 木箱のなかで、嬰児ペルセウスに歌を歌って聞かせるダナエ。やがて木箱は、セリフォス島へと流れ着く。漁の網にかかった二人は、島の王ポリュデクテスの弟に当たる、ディクテュスという漁師に拾われる。

 行く当てのない二人は、親切で気のよいディクテュスに養育を受け、ペルセウスは、凛とした逞しい若者へと成長する。

 画像は、マビューズ「ダナエ」。
  マビューズ(Mabuse, ca.1478-1532, Flemish)

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