ギリシャ神話あれこれ:エウロペの略奪

 
 ギリシャ神話関連の絵画には、「なんとかの略奪」という主題のものがたくさんある。「略奪」の英題は「レイプ(rape)」。レイプとは物品の略奪の他、女性の強姦、自然の破壊、道義の侵犯などの意味がある。
 こういう主題を、フェミニズムなんかはカンカンになって糾弾するけれど、私は、神話や聖書、絵画・音楽・文学などに関する限り、大らかに構えている。気分もほとんど悪くならない。

 エウロペは地中海東岸、フェニキアの美しい王女。このエウロペを、例によってゼウス神が眼をつける。

 あるときエウロペは、侍女たちを連れて、海辺の牧場で花を摘んだり、水浴びをしたりして遊んでいた。ここへ、雪のように真っ白な牡牛が近づいてくる。
 これ、一計を案じたゼウスの化けた牛。

 エウロペはこの優雅な牡牛にすっかり魅了されて、最初は怖る怖る、次第に大胆に、牡牛と戯れる。花冠を編んで角を飾り、背を撫でてやると、牡牛は擦り寄ってエウロペの傍らに腰を下ろす。
 で、おきゃんな彼女は、とうとうその背に乗ってみた。

 と、おとなしかった牡牛は、途端に、猛スピードで海上をダーッシュ!! 振り落とされまいと必死に角につかまるエウロペを背に乗せたまま泳ぎ続け、はるかクレタ島まで連れ去ってしまった。
 で、この地でゼウスは想いを遂げる。

 そしてエウロペはゼウスの子、ミノス、ラダマンテュス、サルペドンの3人を産んだ後、クレタ王と結婚。彼ら子孫の繁栄の地ヨーロッパは、エウロペの名に由来する。

 ゼウスはエウロペにいろいろと贈り物をしたらしく、例えば、クレタの地を守るために、タロスという青銅の巨人を、わざわざヘファイストスに作らせている(この巨人、後に、魔女メデイアの奸計で死んでしまった)。
 調和の女神ハルモニアの婚礼に贈られた、身に着けた者に抗いがたい魅力を付与するという黄金の首飾りも、もともとはゼウスがエウロペに贈ったものだとか。

 牡牛座はゼウスの化けた牡牛。エウロパは木星の衛星の名でもある。
 
 画像は、ヴァロットン「エウロパの略奪」。
  フェリックス・ヴァロットン(Felix Vallotton, 1865-1925, Swiss)

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